第203話
第203話
準決勝第一試合。
カイン・ブラッドレイ対ゼノス・ラグナート。
その決着から、しばらく。
闘技場には、奇妙な静けさが残っていた。
歓声はあった。
だが――
どこか戸惑いが混じっている。
それも当然だった。
ほとんどの観客にとって、何が起きたのか分からなかったのだから。
観客席の一角。
ガイウスが頭をかく。
「……マジで何が何だかわからなかった」
正直な感想。
テオドールが腕を組む。
ノエルはまだ闘技場を見ている。
その中で、ルシアンが静かに口を開いた。
「ここまで残った四人は、全員がSランクを超えたSSランクの強さです」
淡々とした言葉。
「彼らの強さは、世界の中でも上澄み。流石はアーカディア、といったところでしょうか」
ガイウスが小さく息を吐く。
「上澄み、ね……」
テオドールが続ける。
「普通に生きていれば、これほどの戦いを目にすることはない」
「そういう意味では――」
周囲の観客へと視線を向ける。
「俺たちも含めて、観客にとっては貴重な体験だろう」
ノエルが肩をすくめる。
「見えなきゃ意味なくない?」
冷めた言葉だが、否定はしない。
ルシアンはわずかに目を細める。
「これほどの強さを持つ者が、このアーカディアにいる。それを知らしめる意味もあるのではないでしょうか」
ガイウスが首を傾げる。
「強い奴がいるから安心して暮らしてくれってことか?」
ルシアンは小さく頷く。
「そういう意図もあるかもしれませんね」
視線を遠くへ向ける。
「最近は、世界各地で魔物が活性化しています。不安に思う人もいるでしょう。そのためにも強さを示す必要がある。」
一拍。
「今回の大会は、図らずも勇者のお披露目になったわけですし」
テオドールが静かに言う。
「学園の卒業生は世界各地に散っていく。俺たちが考えているよりも、色々な意味があるんだろう」
ガイウスが腕を組む。
「そういうもんか」
完全に理解したわけではないが、納得はしている。
ノエルは何も言わず、闘技場を見ている。
そこには――
次の戦いの準備が整いつつあった。
カインの勝利。
それは終わりではない。
むしろ――
ここからが本番。
アナウンスが響く。
「――準決勝、第二試合」
空気が一変し、観客席がざわめく。
「アルト・セイリオス」
無駄のない動きで、アルトが現れる。
そして――
「対」
一拍。
「アレス・グランツヴァルト」
歓声が爆発する。
絶対王者アレス。未だ底を見せない存在。
闘技場の中央へ、二人がゆっくりと歩み寄る。
次の試合が始まろうとしていた。




