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果てなき世界  作者: 影川明空人
第4章 学園1年目 武闘大会編
202/279

第201話

第201話


 武闘大会も残すところは、準決勝、三位決定戦、決勝。


 頂点を決める戦いは、いよいよ終盤へと差し掛かっていた。


 観客席には、すでに多くの人が集まり始めている。


 準決勝当日とはいえ、話題の中心はただ一つ。


「そういえばさ」


 一人の観客が口を開く。


「今年の優勝者って、何を願うんだろうな」


「たしか前回優勝のアレスは武器を望んでたよな」


「ああ、それでドワーフ製のすごい剣を手に入れたって話だぜ」


「こういう時は使わなくて、本気の時しか使わないらしいからな」


「ほとんど見たことあるやついないらしいけど」


 笑いが起こる。


「どうせ今年の優勝もアレスだろうけどな」


「今度は何を望むんだろうな」


 自然な流れ。


 誰もがそう思っている。


 別格。


 それが、あまりにも明確だったから。



 観客席の一角で、ルシアンたちも、その様子を眺めていた。


 ガイウスが腕を組みながら言う。


「そういえば、そんな話もあったな」


 テオドールが頷く。


「それが目的で戦っている者は少ないがな」


 ノエルが興味なさそうに肩をすくめる。


「望みなんて、どうせしょうもないのしか叶えてもらえないでしょ」


 その言葉に、ルシアンが静かに口を開く。


「そうでもないようですよ」


 ノエルがちらりと視線を向ける。


「前々回優勝者は、貴重な霊薬を授与されたと聞いています」


「それに――」


 一拍。


「過去には、平民だった生徒が、恋仲の貴族との婚姻を認めてもらうために優勝し、実現したという話もあります」


 ガイウスが目を丸くする。


「そうなのか!?」


 テオドールが補足する。


「すべてが叶うわけではないがな。望みの内容によっては制限がある」


 ノエルが軽く首を傾げる。


「たとえば?」


 ルシアンが淡々と答える。


「守護者にして欲しい、だとか。純粋に“力が欲しい”といった願いは、認められなかったはずです」


 テオドールが続ける。


「“力が欲しい”に関しては、代替案として守護者から特殊な技法を授けられた例がある」

「結果的に力は得られたが――」

「本人の望んだ形ではなかったらしい」


 ノエルが小さく鼻で笑う。


「ふーん。そうなんだ」


 視線を闘技場へ戻す。


「で、結局何を望むんだろうね」


 テオドールは肩をすくめる。


「さあな」


 ルシアンは何も言わない。


 ただ、静かに前を見ている。


(……望み、ですか)


 視線の先。


 アレスの姿が脳裏をよぎる。


(あの男が、何を望むのか)


 それは――


 誰にも分からない。



 その頃、医務室。


 静かな空間の中、レオンはまだ眠り続けていた。


 呼吸は安定している。だが、目を覚ます気配はない。


 ベッドの脇に座るフィアナが、静かに見守っている。


「……まだ、ですね」


 小さく呟く。返事はない。


 ただ、穏やかな時間が流れていた。



 そして――


 再び、闘技場に熱が戻る。


 観客席が埋まり、ざわめきが広がる。


 ついに準決勝。


 アナウンスが響く。


「――準決勝、第一試合」


 一瞬で、空気が張り詰める。


「カイン・ブラッドレイ」


 歓声。


「対」


 間。


「ゼノス・ラグナート」


 爆発的な歓声。


 怪物と怪物。


 頂点へ挑む者たちの戦いが始まろうとしていた。


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