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果てなき世界  作者: 影川明空人
第4章 学園1年目 武闘大会編
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第198話

第198話


 準々決勝――第四試合。


 闘技場の空気は、これまでとは明らかに違っていた。


 観客の視線は一点に集まっている。


 勇者レオン。


 そして――アレス・グランツヴァルト。


 入場口から、レオンが姿を現す。一歩一歩、確かめるように歩く。肩には、淡く光る精霊。


(……大丈夫だ)


 呼吸を整え中央へ。


 すでに、そこにはアレスがいる。


 動かない。ただ立っているだけ。それだけで、空気が支配されている。


 レオンが止まり、向き合う。


 アレスが口を開く。


「勇者、か」


 静かな声。


「いい目をしている」


 レオンは短く返す。


「……どうも」


 レオニードの手が上がる。


「――始め」


 瞬間。


 レオンが踏み込む。迷いなく、正面から剣を振るう。


 だが――


 止められる。


 アレスの剣が、わずかに動くだけ。それだけで軌道が逸れる。


(……軽い?)


 違う。


(完全に流されてる)


 距離を取り、魔力を練る。


 火を圧縮して放つ。


 高速の火弾。


 だが――


 アレスはわずかに身体をずらす。


 それだけで回避。


 続けて水を刃のように形成。


 軌道を変えて連続で放つ。


 だが――


 すべて外れる。


 “当たる位置にいない”。


(読んでるのか……?)

(違う……)


 剣を構え、再び踏み込む。


 だが――


 最小限の動きで受けられる。さらに押される。


「……っ」


 重い。力ではない。あらゆる精度が高い。すべてが噛み合っている。


 レオンは止まらない。


 火を剣に纏わせ、斬撃に熱を乗せる。


 さらに水を混ぜる。爆ぜるような複合。


 だが――


 すべて処理される。


 アレスは変わらない。ただ、最適に対処する。


(崩れない……!)


 距離を取る。息が上がるが、それでも前に出る。


 精霊の力でわずかに身体能力が上がる。


 踏み込み。


 速度を上げる。


 剣と魔法の同時攻撃。


 火と水の連撃。


 光の補助。


 だが――


 アレスが一歩動く。


 それだけで、すべてが処理される。魔法は逸れる。剣は止まる。


 反撃が来る。レオンは防ぐ。


 だが、押される。


 吹き飛び、地面を滑る。


「……っ!」


 すぐに立つ。


(……違う)


 分かってきている。


(この人は……)


 強いだけじゃない。


 それでも踏み込む。


 全力で剣を振るう。


 その一撃がわずかに。


 アレスの頬をかすめる。


 血。


 ほんの少し。


 観客がどよめく。


「当たった……!」


 アレスがわずかに目を細める。


 触れる。


 血を確認する。


「……悪くない」


 静かに言う。それだけ。


 かすり傷程度、ダメージになっていない。


 レオンは息を荒げる。


(……いける)


 一瞬だけ。ほんの一瞬。届いた感覚。


 だが――


 アレスが踏み込む。今までより一段上の速さ。


 剣が来る。レオンは防ぐ。だが、重い。


 押し切られ、吹き飛ぶ。


 壁に叩きつけられる。


(……これが)


 理解する。


(本気じゃない)


 それでも差がある。


 アレスが剣を下ろす。


「続けるか?」


 淡々と余裕な表情で。


 レオンは立ち上がり、剣を握る。


「……当然だ」


 目は折れていない。


 アレスはわずかに頷く。


「そうか」


 二人が再び構え、戦いは続く。


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