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果てなき世界  作者: 影川明空人
第4章 学園1年目 武闘大会編
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第194話

第194話


 準々決勝――第一試合。


 闘技場の空気は張り詰めていた。


 ここから先は、真の強者同士の戦い。


 敗北のない者たちが、初めて“負ける可能性”と向き合う舞台。


「――第一試合」


「グランヴェル・レグナス」


 歓声。堂々と歩み出る。


 傲然と顎を上げるその姿には、一切の迷いがない。


 当然だ。敗北など、想定していない。


(この程度の舞台で、俺が止まるはずがなかろう)


 対するは――


「カイン・ブラッドレイ」


 その名が響いた瞬間。空気が変わる。静まる。


 現れた男は――


 剣を肩に担ぎ、無造作に歩いてくる。


 獣。


 だが、それだけではない。


 “戦うために生まれた何か”。


 グランヴェルの眉がわずかに動く。


(……不快だな)


 理解できない。だからこそ、苛立つ。


 中央で向かい合う。


 カインが口を開く。


「お前が一年の優勝者か」


 粗野な声。


 だが、その視線は鋭い。


「悪くねぇな」


 グランヴェルが鼻で笑う。


「当然だ」


 剣を構える。


「貴様のような野獣に評価される筋合いはないがな」


 カインが笑う。


「はは、いいねぇ」


 剣を構える。


 その構えは――荒い。


 型も何もない。だが、妙に“隙がない”。


 レオニードの手が上がる。


「――始め」


 瞬間。


 グランヴェルが動く。


 距離を取る。


 火属性の魔法を圧縮して放つ。


 高速の火弾が直撃する。


 だが――


 カインは歩いた。


 ただ一歩。


 それだけで、外れる。


「……は?」


 もう一発。今度は軌道を変え、逃げ場を潰す。


 だが――


 当たらない。


 “そこにいない”。


(読んでいるのか……?)


 違う。


(違うな……)


 剣を抜き、踏み込む。近接戦、斬りかかる。


 だが――


 カインが剣を振るう。


 ぶつかる。


 金属音。


 重い。


「……っ」


 押される。さらに連続で斬る。


 だが――


 全部、当たらない。


 いや。


 “当たる位置にいない”。


 カインはただ剣を振るう。だがそれが、すべて噛み合う。


 防ぐ、斬る、避ける。


 すべてが自然。


「……なんだそれは」


 グランヴェルの声に、苛立ちが混じる。


 カインが笑う。


「なんだって?」


「……ふざけるな」


 魔力が膨れ上がる。


 火炎による範囲攻撃で逃げ場を潰す。


 爆炎で視界が埋まる。


(これで――)


 だが、その中から、影が出る。


 踏み込んでくる。


 剣が振り下ろされる。


 防御が間に合わない。


 攻撃が直撃し、吹き飛ばされ、叩きつけられる。


「……ぐっ……!」


 立ち上がる。だが、理解できない。


(なんだ……こいつは)


 ルシアンを思い出す。あの時の敗北。


 だがあれは違う、理解できた。技術だった。


 だが――


 これは違う、理解できない。ただ、負ける。


 それだけが現実。


「どうした?」


 カインが笑う。


「もう終わりか?」


 グランヴェルの目が歪む。


「……舐めるな」


 魔力が爆発する。全力。これまでの最大。


 火力を極限まで圧縮し、剣に宿す。


「我が全力を、その身に刻め」


 踏み込み、最大火力で斬る。


 直撃。


 カインは――


 笑った。


「いいじゃねぇか」


 剣を振るう。真正面から衝突。


 爆発。


 衝撃で闘技場が揺れる。


 煙。


 静寂。


 そして――


 立っているのは、カイン。


 肩口から血が流れている。


 だが、それだけ。


「……へぇ」


 笑う。


「やるじゃねぇか」


 その先。


 グランヴェルは――


 膝をつき、そのまま崩れ落ちた。


 意識が途切れる。


 初めて、完全に叩き潰された。


「……勝者、カイン・ブラッドレイ」


 歓声。


 カインは振り返る。


 倒れたグランヴェルを見る。


「気に入ったぜ」


 短く言う。そのまま去る。


 グランヴェルにとって、それはただの敗北ではない。


 初めて、理解できない壁にぶつかった瞬間だった。


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