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果てなき世界  作者: 影川明空人
第4章 学園1年目 武闘大会編
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第189話

第189話


 剣と剣が、真正面からぶつかる。


 ――轟音。


 衝撃が空間を震わせ、闘技場の地面が軋む。


 レオンとディルク。互いに一歩も引かない。


 力と力の純粋な正面衝突。


「っ……!」


 レオンの腕が震える。


 だが、その瞳は揺らがない。その肩で、淡い光が揺れる。


 光の下位精霊。


 小さく、しかし確かに――力を貸している。


 そして、レオンの内側から、さらに別の力が溢れる。


 勇者の力、身体能力の強化、反応速度の上昇。


 すべてが、一段上へと引き上げられる。


 踏み込む。先ほどまでとは、明確に違う。


 ディルクの一撃を、今度は真正面で受け止める。


 押し負けない。


 むしろ――


 押し返す。


「……っ?」


 ディルクの目が、わずかに見開かれる。


 レオンが剣を振り抜く。鋭い一撃。


 ディルクが受ける。


 だが――


 今度は、後退した。


 ほんの一歩。


 だが、それは確かな変化。


 観客席がざわめく。


「押した……!」


「さっきまでと違うぞ……!」


 レオンは止まらない。


 連続での斬撃。


 踏み込み、斬る。


 無駄が減り、洗練されてきている。


 ディルクが腕で受ける。


 鈍い音。


 だが――


 血が滲む。


「……はは」


 ディルクが笑う。楽しそうに。


 さらに踏み込み、重い一撃を振り下ろす。


 レオンが受ける。


 だが今度は、流す。


 横へ逸らす。体勢を崩さない。


 そのまま――反撃。


 ディルクの肩を掠める。


 血が舞う。


 確実に、削っている。


「いいな……!」


 ディルクが笑い、さらに力を込める。


 攻撃を止めない。傷を負っているはずなのに、関係ない。


 むしろ――


 勢いが増している。


 剣がぶつかる。何度も、何度も。


 火花が散り、空気が裂ける。


 互いに踏み込み、互いに引かない。


 ディルクの身体に、傷が増えていく。


 腕、肩、足。


 確実にダメージは蓄積している。


 だが――


 止まらない。


「楽しいなぁ!」


 笑う。


「レオン!」


 その声に狂気はない。純粋な喜び。


 戦うことそのものを楽しんでいる。


 さらに踏み込む。重い一撃。


 レオンが受け、足元が沈む。


 だが――崩れない。


 目が合う。


 互いに笑っているわけではない。


 だが、その奥にあるものは同じ。


 “譲らない”という意思。


 レオンが息を整える。


(……これで)


 集中。


 すべてを一撃へ。


 精霊の光が、わずかに強まる。


 勇者の力が、さらに引き上がる。


 ディルクもまた、構える。


「来い!」


 叫ぶ。


 互いに全力。


 振りかぶる。


 レオンも剣を振り上げる。


 そして――


 同時に踏み込み、衝突する。


 ――閃光。


 音が消える。


 次の瞬間、爆発的な衝撃が広がる。


 地面が砕け、観客席にまで風が届く。


 煙が舞い上がる。


 静寂。


 誰もが息を呑む。


 やがて――


 煙が晴れる。


 そこに立っていたのは――


 レオンだった。


 肩で息をしている。剣を握ったまま。


 だが、確かに立っている。


 対するディルクは――


 膝をついていた。


 そのまま、ゆっくりと倒れる。


 勝負は決した。


「……勝者、レオン」


 レオニードの声が響く。


 一瞬の静寂のあと――


 歓声が爆発する。


「うおおおおお!!」


「やった……!」


「勝った……!」


 レオンはその場に立ったまま、息を整える。


 全身が軋む。


 だが――


 倒れない。


 ディルクは仰向けのまま、空を見ていた。


 そして、小さく笑う。


「……はは」


 満足そうに。


「いい戦いだった」


 それだけ言って、目を閉じた。


 担架が運び込まれる。


 観客席の熱は、まだ冷めない。


 第四ブロック第一試合。


 レオン vs ディルク。


 その勝者は――


 勇者、レオンだった。


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