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果てなき世界  作者: 影川明空人
第4章 学園1年目 武闘大会編
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第181話

第181話


 空が裂ける。


 結界の内側、魔力が渦巻き、世界そのものが歪んでいた。


 ルシアンの魔法が空間を埋め尽くす。雷が走り、炎が爆ぜ、氷が突き、風が裂ける。重力が沈み、地が持ち上がり、光と闇が衝突する。


 だが――


 届かない。


 ゼルキスはそのすべての“直前”にいない。


「まだだね」


 軽い声。振り返る前に、背後にいる。


 ルシアンは即座に剣を抜き、受ける。


 重い一撃を押し返し、距離を取る。そして、踏み込み連撃。


 だが――


 届かない。


 わずかにずれるだけで、すべてが空を切る。


「もっと見せてよ」


 楽しそうな声。


「こんなものじゃないんでしょ」


 一歩、近づく。圧が増す。


「これじゃ俺の退屈は壊せないよ」


 ――足りない。


 ルシアンは息を吐く。


 一瞬だけ目を閉じる。


 そして、開く。


 決断。


(……なら)


 魔力が変わる。


 風が唸る。


 ただの風ではない。空間を裂く意思を持つ暴風。


 ――風の神・シルヴァリオン。


 次の瞬間、身体が軽くなる。


 いや、違う。


 強くなる。


 踏み込みが変わる。速度が上がる。反応が研ぎ澄まされる。


 ――闘いの神・ベルグラード。


 さらに――影。


 足元から伸びる影が刃となり、ゼルキスへと襲いかかる。


 ――影の神・ラウネリス。


 三柱の力が重なり、質が変わる。


 ルシアンが踏み込む。


 今までとは違う速さ。


 風がゼルキスの退路を断つ。


 影が拘束する。


 そこへ――剣。


 斬撃が届き、ゼルキスの頬をかすめる。


 さらに追撃。雷が落ち、炎が爆ぜ、氷が貫く。


 連撃。


 確かに――届いている。


 ヒューギルの目がわずかに細くなる。


「……これは」


 ゼルキスが、笑う。


「いいね!」


 嬉しそうに。


 だが――次の瞬間。


 消える。視界から、完全に。


「っ――」


 頭上に気配。


 反応するより先に――


 ゼルキスの拳が直撃する。


「――ッ!!」


 ルシアンの身体が吹き飛ぶ。


 空中で回転し、地面へ叩きつけられる直前で体勢を立て直すが――衝撃は抜けない。


 地面を滑り、止まる。息が詰まる。


「……っ……」


 立ち上がる。


 だが、ダメージは明確。


 ゼルキスがゆっくりと降りてくる。


「悪くないよ」


 軽く手を振る。


「ちゃんと強くなってる」


 一歩。近づく。


「でもさ――」


 その目が細くなる。


「まだ足りないよ」


 断言。


 絶対的な差。


 ルシアンの瞳が揺れる。


(……これでも届かない)


 歯を食いしばる。


(なら――)


 決断。


(こうなったら)


 意識を内へ。



 ――別視点。


 森の奥。


 静寂の中、レイヴンが目を開く。


(すまない、レイヴン。統合して欲しい)


 短い。


(急だな。どうした)


(いまゼルキスと戦っているが、出力が足りない)


 一瞬の沈黙。


(ゼルキスか……)


 そして、ため息。


(わかった)


 小さく笑う。


(エルフの森の調査は後でもいいしな)


 存在が解ける。


 統合。



 戻る。


 ルシアンの魔力が――跳ね上がる。


 質が変わり、密度が変わる。


 “重さ”が変わる。


 ゼルキスの目が輝く。


「おっ!」


 明確な変化。今までとは別物。


 ついに――並ぶ。


「いいね!」


 心からの声。


 ルシアンが踏み込む。


 今度は消えない。


 剣が届く。


 斬る。


 血が舞う。


 ゼルキスの動きが、わずかに止まる。


「……ははっ」


 笑う。


 さらに魔力が膨れ上がる。


「ここまで本気を出せそうなのは、久しぶりだよ!」


 楽しそうに。


「最高だ、ルシアン!」


 空が裂け、大地が鳴る。


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