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果てなき世界  作者: 影川明空人
第4章 学園1年目 武闘大会編
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第175話

第175話 


 炎が渦巻く。光が脈打つ。


 闘技場の中心、二つの力が激突寸前まで高まっていた。


 グランヴェルは剣を構える。全身に纏う炎は、先ほどまでよりもさらに濃く、重く、周囲の空気すら歪めている。


 対するレオン。


 肩で息をしながらも、剣を握る手は緩まない。光の下位精霊が傍らでふわりと浮かび、優しく微笑む。その光がレオンの体へと流れ込み、最後の力を引き出していた。


(……これで、最後だ)


 レオンは踏み込む。


 同時に――


 グランヴェルも動いた。


 地を蹴る音が重なる。


 速度は互角。


 距離が一瞬で消える。


 レオンの剣に光が集束する。


 グランヴェルの剣に炎が収束する。


 極限まで圧縮された力。


 互いに、一撃にすべてを乗せる。


「――っ!」


「来い!」


 同時に振り抜く。


 光と炎が正面からぶつかる。


 衝突。


 一瞬の静止。


 次の瞬間――


 爆発。


 轟音が闘技場を揺らす。


 衝撃波が観客席にまで届き、思わず目を覆う者もいる。


 砂煙が舞い上がり、視界が完全に遮られる。


 静寂。誰も声を出せない。


 やがて――


 煙が、ゆっくりと晴れていく。


 そこに立っていたのは――


 グランヴェルだった。


 剣を下ろし、静かに立っている。


 その足は、微動だにしていない。


 対して。


 少し離れた場所に、レオンが倒れている。


 動かない。


 戦いが決する。


 審判の声が響く。


「――勝者、グランヴェル!」


 歓声が爆発する。


「すげぇ……!」


「やっぱりグランヴェルか……!」


 グランヴェルは小さく息を吐く。


 そして、倒れたレオンへと視線を向ける。


「存外、楽しめたぞ」


 それだけ言って、踵を返す。


 炎はすでに消えていた。


 医療班がレオンのもとへ駆け寄る。


 担架に乗せられ、医務室へと運ばれていく。


 グランヴェルはそれを見届けることなく、自らの足で退場していく。


 その背中には、まだ余力が残っていた。


 レオニードが中央へと進み出る。


「――これにて一年生武闘大会、全日程を終了する」


 静かな声が、会場全体に響く。


「最終順位は以下の通りだ」


 一拍。


「第一位、グランヴェル」


 拍手。


「第二位、レオン」


「第三位、レティシア」


「第四位、ガイウス」


 歓声と拍手が重なる。


「この後、しばらく時間を置いて表彰式を行う」


 闘技場の熱が、ゆっくりと落ち着いていく。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


医務室。


 静かな空間。


 中にはすでにフィアナがいた。


 レオンの治療を進めている。


 その扉が開く。


 ルシアン、ノエル、テオドール、ガイウス――そしてレティシアとシャロンも入ってくる。


「……あら、またここね」


 レティシアが小さく息をつく。


 シャロンはすぐに状況を確認する。


「フィアナ様、状態は」


「問題ありません。少し休めば回復します」


 穏やかな返答。


 ガイウスが部屋を見回す。


「グランヴェルはいねぇな」


 テオドールが答える。


「護衛のヴァルクとディアナと共に退出したようだ」


 レティシアが肩をすくめる。


「最後まであの調子ね」


 その時、ベッドの上のレオンがゆっくりと目を開ける。


「……ん……」


 意識が戻る。


 しばらく天井を見つめ――


「……負けたか」


 ぽつりと呟き、拳を握る。


「くそ……」


 悔しさが滲む。


「あと少しだったのに……」


 そのすぐそばで、小さな光が揺れる。


 光の下位精霊。


 優しく寄り添うように浮かんでいる。


 ノエルがそれに気づく。


「……あれ」


 目を細める。


「レオンはともかく、ルシアン見えるんだ」


 ルシアンは淡々と答える。


「ええ。一応は」


 ノエルが小さく鼻を鳴らす。


「……ふーん」


 その視線には、まだ僅かな警戒が残っていた。


 レオンは精霊を見る。


「……ありがとな」


 小さく呟く。


 精霊は笑う。


 言葉はない。


 だが、確かな意思がそこにあった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


闘技場。


 再び人が集まる。


 表彰式。


 壇上に学園長が立つ。


 順位が読み上げられる。


 第一位、グランヴェル。

 第二位、レオン。

 第三位、レティシア。

 第四位、ガイウス。


 拍手。


 そして――レオニードが前に出る。


「今回の大会、よく戦った」


 全体を見渡す。


「上位四名は言うまでもない」


 一拍。


「だが――Aクラスや他のクラスの者たちも見事だった」


 観客席が静まる。


「実力差があろうとも、食らいつき、己の力を示した。特にBクラス上位の者たちの戦闘判断、Aクラスの総合力は評価に値する」


 さらに続ける。


「下のクラスにも、確かな“芽”がある。それを見出すのも、この場の意義だ」


 視線が鋭くなる。


「そして――」

「グランヴェル、レオン、レティシア、ガイウス」


「お前たち四人は、一ヶ月後に行われる学園全体の武闘大会に一年生代表として出場する。更なる研鑽を積め。健闘を祈る」


 拍手が広がる。


 こうして――


 一年生武闘大会は、幕を閉じた。


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