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果てなき世界  作者: 影川明空人
第3章
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第174話

第174話


 炎が唸る。


 グランヴェルの剣から放たれる斬撃は、もはやただの斬撃ではなかった。振るうたびに火が爆ぜ、空気そのものを焼き裂く。


 レオンがそれを受ける。


 弾く。


 避ける。


 だが――


「っ……!」


 完全には捌ききれない。


 肩を掠める。腕を焼く。


 踏み込みの一瞬を狙われ、腹部に衝撃が走る。


 距離を取る暇もない。


 グランヴェルは止まらない。


「フレアスラッシュ」


 横薙ぎ。


 炎が帯となって走る。


 レオンが剣で受ける。だがその瞬間、爆ぜる。


 衝撃が倍加し、レオンの体が弾かれる。


「ぐっ……!」


 着地。


 だが足が揺れる。


 観客席がどよめく。


「押されてる……!」


「やっぱりグランヴェルか……!」


 ルシアンは静かに見ていた。


(……圧倒的ですね)


 火力、剣速、判断。


 すべてにおいてグランヴェルが上。


 レオンは食らいついている。


 グランヴェルが踏み込む。


 炎を纏った斬撃が振り下ろされる。


 レオンが避ける。


 だがその直後――


 爆発。


 余波で体勢が崩れる。


 さらに追撃。


「バーストフレア」


 至近距離。爆ぜる炎が直撃する。


 レオンが吹き飛び、地面を転がる。


 立ち上がるが、呼吸が荒い。


 全身に傷が増えていく。


(……このままじゃ)


 レオンの脳裏に危機感が走る。


 加護の力は、確かに働いている。


 軌道が見える。タイミングが分かる。


 だが――


(足りない)


 出力が足りない。受けきれない。押し返せない。


 グランヴェルが笑う。


 楽しんでいる。


「どうした、勇者」


 炎を纏いながら歩く。


「その程度か?」


 レオンが歯を食いしばる。


 踏み込む。


 斬る。


 だが受け止められ、弾かれる。


 さらに斬撃が返ってくる。


 避けようとするが、間に合わず。肩を裂かれる。


「っ……!」


 血が滲む。


 ノエルの目がわずかに細くなる。


「……まずい」


 その時だった。


 レオンの視界の端に、光が揺れる。


 小さな、淡い光。


 最初はただの残像のように見えた。


 だが――


(……?)


 それは確かに、そこに“いた”。


 小さな人型。


 透き通るような輪郭。


 優しく、柔らかい光を纏っている。


 笑っている。言葉はない。


 だが――


 はっきりと分かる。


 “力を貸す”という意思。


 レオンの体に、光が触れる。


 次の瞬間――


 温もり。


 痛みが、わずかに引く。


 重かった体が、少しだけ軽くなる。


 魔力が満ちる。


(……なんだ、これ……)


 困惑。


 だが――


 悪いものではない。


 むしろ、自然に受け入れられる。


 ノエルがわずかに目を見開く。


「……精霊?」


 ぽつりと呟く。


 テオドールが反応する。


「何だと?」


「……いる」


 ノエルがレオンを見つめる。


「光の……下位精霊」


 ルシアンもわずかに目を細める。


(……なるほど)


 精霊の加護。


 しかも自発的な介入。


 グランヴェルが眉をわずかに動かす。


「……何か変わったな」


 気配。


 出力。


 ほんの僅かだが、違う。


 レオンが剣を構える。


 先ほどまでとは違う。


 呼吸が整う。


 目が、まだ死んでいない。


「……まだ、いける」


 小さく呟く。


 グランヴェルの口元が歪む。


 炎がさらに強く燃え上がる。


「いい」


 笑う。


「そうでなくてはな」


 火を纏い、踏み込む。


 レオンも動く。


 光を纏い、前へ出る。


 炎と光がぶつかり、衝突する。


 爆ぜ、空気が震える。


 観客席が総立ちになる。


「まだやるのか……!」


「止まらねぇ……!」


 ルシアンは静かに見ていた。


(……勝負は、次で決まりますね)


 火と光。


 二つの力が、激突する。


 決着は――


 すぐそこまで迫っていた。


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