第172話
第172話
翌日。
闘技場は、昨日以上の熱気に包まれていた。
観客席はほぼ満員。ざわめきと期待が渦巻いている。
今日は最終日。
三位決定戦、そして決勝戦。
すべてがここで決まる。
中央に立つレオニードが、ゆっくりと口を開く。
「――これより三位決定戦を行う」
その一言で空気が引き締まる。
「レティシア対ガイウス」
歓声。
二人が闘技場へと歩み出る。
レティシアは静かに杖を構え、ガイウスは盾を軽く叩いて気合を入れる。
ルシアンは観客席からそれを見下ろしていた。
(……ここはレティシアでしょうね)
淡々とした分析。
「遠距離から間髪入れずに魔法を撃ち続けられれば、いくらガイウスといえど防ぎ切れないでしょう」
ノエルが小さく呟く。
「……あいつの防御でも、限界はある」
テオドールも頷く。
「単純な相性だな」
開始の合図。
その瞬間、レティシアが動く。
「エアカッター」
風刃が一直線に走る。
ガイウスが盾で受ける。
だが間を与えない。
「フレアボルト」
爆炎。
さらに――
「ルミナバレット」
光弾が追撃する。
連続。
途切れない。
ガイウスが踏みとどまる。
「……っ、やっぱり来るよな!」
受け、耐える。
だが、押される。
一歩、また一歩と後退する。
観客席がどよめく。
「もう押されてるぞ……!」
「止まらねぇ……!」
レティシアは一切の迷いなく魔法を重ねていく。
距離を詰めさせない。
主導権を渡さない。
ただ、最適な攻撃を積み重ねる。
ルシアンは静かにその光景を見ていた。
(……予想通りですね)
場面は切り替わる。
選手控え室。
静寂の中、そこにいるのは二人。
グランヴェルとレオン。
言葉はない。
ただ、張り詰めた空気だけが存在している。
先に口を開いたのはグランヴェルだった。
「レオンよ」
視線を向ける。
「最初から本気で来い」
淡々とした声音。
「でなければ、つまらん」
レオンは即座に答える。
「最初からそのつもりだ」
真っ直ぐに見据える。
「俺は勝ちに来たんだからな」
一瞬の間。
グランヴェルの口元が僅かに歪む。
「そうか」
短く言う。
「せいぜい俺を失望させないでくれ」
レオンは力強く頷く。
「ああ!」
その瞬間。
扉が開く。
「グランヴェル、レオン」
係員の声。
「準備を」
二人が同時に動き出す。
闘技場へ向かう。
ちょうどその時――
三位決定戦が終わりを迎えていた。
歓声が一段大きくなる。
レオニードが再び中央に立つ。
「――三位決定戦、終了」
間を置く。
「第三位、レティシア」
拍手。
「第四位、ガイウス」
観客席が再び沸く。
そして――
レオニードが続ける。
「続いて」
一拍。
「一年生武闘大会、決勝戦を行う」
空気が変わる。
すべての視線が、入口へと向く。
そこに――
グランヴェルとレオンが現れる。
決勝が、始まる。




