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果てなき世界  作者: 影川明空人
第4章 学園1年目 武闘大会編
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第165話

第165話


 空気が変わる。


 ほんのわずか――だが、確実に。


 グランヴェルの周囲に、揺らぎが生まれた。


 熱。


 それは錯覚ではない。


 剣を握る手元から、じわりと赤い光が滲む。


 次の瞬間――


 炎が走った。


 剣に纏わりつくように、鮮やかな紅が燃え上がる。


 観客席がどよめく。


「……火属性!」


「さっきまでと違うぞ……!」


 ガイウスが歯を見せて笑う。


「……来たな」


 構えを崩さない。


 だが、理解している。


 ここからが本番だと。


 ルシアンは静かに目を細めていた。


(……やはり)


 揺らぐ炎。


 その密度。


 ただの属性付与ではない。


「……相変わらず、凄まじい火力ですね」


 小さく呟く。


 あの時。


 全力のグランヴェルと対峙した時と同じ感覚。


 明らかに異常な出力。


(火属性に限って言えば……規格外)


 グランヴェルが踏み込む。


 速い。


 そして――


 重い、一閃。


 炎を纏った斬撃が空気を裂く。


 ガイウスが盾で受ける。


 衝撃。


 その瞬間――


 爆ぜる。


「っ――!」


 炎が弾け、衝撃が倍加する。


 ガイウスの足が滑る。


 一歩。


 初めて後退した。


 観客席がどよめく。


 ガイウスが歯を食いしばる。


(重い……だけじゃねぇ)


 熱。


 衝撃。


 両方が同時に来る。


 単純な斬撃ではない。


 受けるたびに、蓄積する。


 グランヴェルが再び踏み込む。


 二撃目。


 三撃目。


 すべてに炎が乗る。


 ガイウスが受ける。


 だが――


 徐々に押される。


 踏ん張る足が軋む。


 ルシアンが静かに観察する。


(防御そのものは崩れていない)


 だが。


(負荷が増え続けている)


 いずれ限界が来る。


 グランヴェルの口元がわずかに歪む。


 楽しんでいる。


 ガイウスが踏み込む。


 盾で押し込み、反撃を試みる。


 だがグランヴェルはそれを受け流す。


 最小限。


 そして――


 炎が膨れ上がる。


「フレアスラッシュ」


 横薙ぎ。


 炎が帯となって広がる。


「うおっ……!」


 ガイウスが盾で防ぐ。


 だが衝撃で弾かれる。


 体勢が崩れる。


 さらに――


「バーストフレア」


 爆発。


 至近距離で炎が弾ける。


 ガイウスが大きく後退する。


「それは流石にやばいって!」


 思わず声が漏れる。


 観客席が沸く。


 ルシアンの視線は変わらない。


(……剣だけではない)


 火属性魔法。


 それを自然に織り交ぜている。


 近接と魔法の融合。


(本気に近づいていますね)


 ガイウスが踏みとどまる。


 盾を構える。


 息は荒い。


 だが――


 まだ折れていない。


「……まだ、いけるぜ!」


 踏み込む。


 全力。


 盾で押す。


 グランヴェルが受ける。


 だが微動だにしない。


 次の瞬間――


 炎が爆ぜる。


 至近距離。


 衝撃。


 ガイウスの体が弾かれる。


 距離が開く。


 グランヴェルが歩く。


 一歩、また一歩。


 逃がさない。


 ガイウスが構える。


 だが足が重く、限界が近い。


 グランヴェルが踏み込む。


 炎が収束する。


 剣へ。


 一点へ。


「……終わりだ」


 一閃。


 炎が直線となって走る。


 ガイウスが盾で受ける。


 爆発。


 視界が赤く染まる。


 そして――


 ガイウスの体が吹き飛ぶ。


 地面を転がり、動かない。


 静寂。


 審判の声が響く。


「――勝者、グランヴェル!」


 歓声が爆発する。


「強すぎる!」


「やっぱりグランヴェルだ!」


 ルシアンは静かに見ていた。


(……順当ですね)


 だがその視線は、ほんのわずかだけ変わる。


(ガイウスも……よく耐えました)


 グランヴェルは何も言わない。


 ただ剣の炎を消し、踵を返す。


 興味はすでに次へ。


 準決勝第一試合。


 勝者は――


 グランヴェル。


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