第160話
第160話
準々決勝第三試合。
レオン対リオルド。
観客席の空気が、これまでとは明らかに違っていた。
グランヴェルの圧勝。
ガイウスの泥試合。
それらを経て、観客の期待は自然とこの試合へ集まっていた。
Sクラスの中でも注目される二人。
レオンとリオルド。
両者が闘技場へと上がる。
レオンは剣を構える。
対するリオルドは、いつも通り素手だった。
軽く肩を回す。
力みはない。
だが――
隙もない。
観客席がざわめく。
「リオルドか……」
「近接は相当強いらしいぞ」
「でも相手はレオンだ」
ルシアンは静かに見ていた。
(……厳しいですね)
リオルドの近接技術はSクラスでもトップクラス。剣士であるレオンにとっても、距離を詰められれば厳しい相手だった。
審判が手を上げる。
「――始め!」
開始。
次の瞬間――
リオルドが動いた。
速い。
一気に距離を詰める。
「っ――!」
レオンがとっさに剣を振るう。
だが――
空を切る。
リオルドはすでに横へ回っていた。
拳。
レオンが剣で受ける。
重い衝撃。
続けて蹴り。
レオンが後退する。
リオルドが追う。
連撃。
速い。
レオンが防ぐ、だが押される。
(……速い!)
想像以上だった。
リオルドの動きは無駄がない。間合いの詰め方、攻撃の繋ぎ、すべてが洗練されていた。
拳、蹴り、肘。
連撃が続く。
レオンが防戦一方になる。
観客席がざわめく。
「押されてる……」
「リオルド強いな」
ルシアンは静かに見ていた。
(……やはり)
予想通りだった。
リオルドの近接技術はレオンを上回る。
レオンが距離を取ろうとする。
だが――
リオルドが追う。
距離を詰め、拳を振るう。
レオンが受ける。
衝撃で、腕が痺れる。
続けて蹴り。
レオンが後退する。
完全に押されていた。
(……まずいな)
レオンが呼吸を整える。
再び踏み込む。
剣を振るう。
だが――
リオルドが懐へ潜り込み、拳を放つ。
レオンがとっさに避ける。
だが掠める。
観客席がどよめく。
リオルドが止まらない。
連撃。
レオンが防ぐ。
押される。
防戦一方。
ルシアンの目が細くなる。
(……厳しい)
だが――
レオンの動きが、わずかに変わる。
リオルドの拳。
レオンが半歩ずれる。
回避。
続く蹴り。
剣で受ける。
距離を取る。
わずかだが、対応できている。
(……?)
ルシアンが違和感を覚える。
リオルドが再び踏み込む。
速い。
拳。
だがレオンが避ける。
続けて斬撃。
リオルドが回避。
レオンが距離を取る。
少しずつ。
だが確実に。
対応し始めていた。
(……これは)
ルシアンの目が細くなる。
レオンの動きが自然だった。
まるで――
次の動きを予測しているかのような。
リオルドが踏み込む。
拳。
レオンが避ける。
蹴り。
剣で受ける。
反撃。
リオルドが回避。
拮抗。
観客席がざわめく。
「対応してきた……」
「さすがレオン」
だがルシアンは違った。
(……違う)
ただの慣れではない。
わずかだが、レオンの動きには予測のようなものがあった。
そして――
思い出す。
魔族との戦い。
あの時も似たような現象があった。
(……やはり)
レオンから微弱な神性を感じる。
ごくわずか。
だが確かに存在する。
(神の加護……)
ルシアンが内心で呟く。
レオンは気づいていない。
だが確実に、導かれている。
リオルドが踏み込む。
連撃。
レオンが捌く。
先ほどよりも明らかに対応できていた。
剣が閃く。
リオルドが避ける。
距離を取る。
リオルドの表情がわずかに変わる。
「……やるな」
レオンが息を吐く。
「……速いな」
再び構える。
戦いは続く。
だが――
先ほどまでとは違う。
レオンは確実に対応し始めていた。
リオルドが踏み込む。
拳。
レオンが避ける。
剣。
リオルドが防ぐ。
拮抗。
観客席の熱気が高まる。
レオンは押されながらも、徐々に対応していた。
近接の怪物、リオルド。
だが――
レオンはその動きを読み始めていた。
戦いは、さらに激しくなるのだった。




