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果てなき世界  作者: 影川明空人
第4章 学園1年目 武闘大会編
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第150話

第150話


 個別任務から帰還して数日が過ぎていた。


 武闘大会まで残り十日。


 Sクラスの空気は、明らかに変わっていた。個別任務を終え、それぞれが確実に成長している。訓練場では、以前よりも鋭い気配が増えていた。


 レオンも例外ではない。


 ルシアンは訓練場の端で、レオンの動きを見ていた。剣の踏み込みは以前よりも深く、無駄な動きも減っている。まだ粗はあるが、それでも確実に強くなっていた。


 レオンが剣を振り下ろす。


 ガイウスが盾で受ける。


 重い音が響く。


「……おっ、前より重いな」


 ガイウスが笑う。


「そうかな?」


「間違いねぇ」


 レオンが少し嬉しそうに息を吐く。


 ルシアンは静かに目を細めた。


 その時――


「……全員、教室へ戻れ」


 レオニードの声が響いた。


 Sクラスの面々が動きを止める。


 武闘大会に関する連絡だろうと、誰もが察していた。


 ルシアンも静かに教室へ向かった。


 


 教室に入ると、すでに全員が揃っていた。レオニードは腕を組んで立っている。


「……武闘大会の代表選抜について説明する」


 教室の空気が引き締まる。


「今回の武闘大会は全クラス参加だ」


 予想通りの言葉だった。


「各クラスから選抜を行う」


「Sクラスからは八名」


 ルシアンは静かに周囲を見た。


 誰もが真剣な表情だった。


「選抜はランキング上位から行う」


 資料が配られる。


 ルシアンも目を落とした。


 一位 グランヴェル

 二位 レティシア

 三位 フィアナ

 四位 テオドール

 五位 レオン

 六位 シャロン

 七位 ヴァルク

 八位 ガイウス

 九位 ノエル

 十位 リオルド


 順位は把握していたが、改めて見ると変化が分かる。特に十位の名前。


 リオルド。


 入学当初は中位だったはずだが、ここ最近で順位を上げてきていた。


 ルシアンは視線を向ける。


 リオルドは落ち着いた様子で資料を見ていた。体格はガイウスに近いが、雰囲気は軽い。だが、姿勢は崩れていない。無意識に体の軸が整っている。


 鍛錬を積んできた者の体だった。


「ただし、辞退者がいる」


 レオニードの言葉に視線が動く。


 フィアナが立ち上がる。


「私は辞退します」


 静かな声だった。


「武闘大会では怪我人が出ると思います」

「私は回復役に回ります」


 誰も異論を挟まない。


 フィアナらしい判断だった。


「承認する」


 続いてシャロンが立ち上がる。


「私も辞退します」

「レティシア様の護衛を優先します」


 レティシアが小さく頷く。


 これも自然な流れだった。


「繰り上げだ」


 レオニードが言う。


「九位ノエル」


「十位リオルド」


 二人の名前が呼ばれる。


 ノエルが小さく息を吐く。


「……まあ、そうなるよね」


 リオルドは一瞬だけ驚いたが、すぐに笑った。


「了解です」


 ガイウスが声をかける。


「よろしくな」


「ああ、よろしく」


 リオルドが頷く。


 そのやり取りを見ながら、ルシアンは周囲を観察する。


 グランヴェルは腕を組んだまま、特に反応を示さない。興味がないのは明らかだった。


 レオンはリオルドを見ている。戦力を確認するような視線だった。


 リオルドは気にした様子もない。


「強いやつと戦えるなら、それでいい」


 軽く言う。


 レオンが小さく笑う。


「そうだな」


 レオニードが言う。


「以上八名」


「武闘大会に向けて準備しろ」


 代表が決まった。


 武闘大会まで残り十日。


 教室の空気が静かに変わる。


 それぞれが、戦いを意識し始めていた。


 ルシアンは静かに席を立つ。


 訓練場へ向かう者も多い。


 レオンも立ち上がった。


「ルシアン」

「今日も頼む」


「ええ」


 短く答える。


 武闘大会まで残り十日。


 時間は多くない。


 だが――


 十分だった。


 それぞれの思いを胸に、準備が進んでいく。


 戦いは、すぐそこまで迫っていた。


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