第148話
第148話
五日間の調査を終え、レオンたちは学園都市アーカディアへ帰還していた。
学園の門が見えた瞬間、レオンが小さく息を吐いた。
「……やっと帰ってきたな」
疲労はある。だが表情は悪くない。むしろ遠征前よりも、どこか自信が宿っているようにも見える。
アルベインが穏やかに笑う。
「お疲れ様でした」
「今回は想定以上の事態でしたね」
レオンが頷く。
「そうですね……魔族と遭遇するとは思いませんでした」
弓使いの女性が腕を組む。
「正直、あの強さは想定外だったな」
大柄な男も頷く。
「それでも勝ったんだから大したもんだ」
視線がレオンに向く。
「特にお前な」
レオンが少し照れたように笑う。
「いや……ルシアンのサポートがあったから」
ルシアンは淡々と答える。
「レオンが勝ったのはレオンの力です」
短い言葉だったが、レオンは少し嬉しそうに笑った。
学園の門をくぐる。
すぐに学園職員が歩み寄ってくる。
「お帰りなさい」
「調査報告はレオニード教官へお願いします」
アルベインが頷く。
「分かりました」
一行はそのままレオニードの元へ向かった。
レオニードの部屋。
扉を叩く。
「入れ」
中へ入ると、レオニードが腕を組んで待っていた。
「……戻ったか」
短い言葉だったが、わずかに安堵が混じっていた。
アルベインが報告を始める。
魔物の分布の変化。
魔物の強さの上昇。
そして――魔族との遭遇。
レオニードの表情がわずかに変わる。
「……魔族か」
レオンが頷く。
「三人いました」
「一人は逃走。残り二人は撃破しました」
「いずれもSランク相当の強さでした」
レオニードが静かに目を細める。
「……そうか」
アルベインが続ける。
「今回の異常は、魔族が関与している可能性が高いと考えます」
レオニードが頷く。
「妥当だ」
そしてレオンを見る。
「……お前が倒したのか」
「はい」
「ルシアンの補助もありましたが」
レオニードがルシアンを見る。
「そうか」
短い返答だったが、評価は明らかに上がっていた。
「ご苦労だった」
「今回の件は上に報告する」
「警戒を強めることになるだろう」
報告は終了した。
部屋を出る。
レオンが息を吐く。
「……やっと終わったな」
「ええ」
ルシアンが頷く。
「レオン、動きは確実に良くなっています」
レオンが少し笑う。
「まだまだだけどな」
「武闘大会までにもっと強くならないとな」
「ええ」
二人は教室へ向かった。
教室に入ると、すでに数人が戻っていた。
グランヴェルが腕を組んで座っている。
「……戻ったか」
レオンが笑う。
「そっちも終わったのか」
「ああ」
短い返答だったが、どこか余裕がある。
フィアナも戻っていた。
「お帰りなさい」
穏やかな声。
「フィアナも終わったのか」
「はい。昨日戻りました」
レオンが周囲を見る。
「……テオドールたちは?」
フィアナが答える。
「まだ戻っていません」
「レティシアさんたちも」
グランヴェルが言う。
「任務内容を考えれば妥当だろう」
「奴等はもう少しかかるはずだ」
レオンが頷く。
「……確かに」
それぞれの任務は難易度も違う。戻る時期に差があるのも当然だった。
ルシアンは静かに席に座る。
そして考える。
武闘大会まで残り約二週間。
時間は決して多くない。
「レオン」
「ん?」
「今日もやりますよ」
レオンが少し笑う。
「ああ」
「もちろん」
レオンの目には、以前よりも強い意志が宿っていた。
魔族との戦い。
あの経験は、確実にレオンを成長させていた。
そして――
武闘大会まで、残り二週間。
Sクラスの鍛錬は、さらに激しくなっていくのだった。




