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果てなき世界  作者: 影川明空人
第4章 学園1年目 武闘大会編
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第146話

第146話


 魔族の苛立ちは、もはや隠しきれなくなっていた。レオンを押し切れない。それどころか、徐々に押し返され始めている。そして後ろにいるルシアンの存在が、さらに流れを乱していた。必要な瞬間だけ介入してくるせいで、決定打を作れない。魔族の歯が軋む。


「……舐めるな」


 魔力が膨れ上がる。黒い魔力が剣に絡みつき、周囲の空気が重くなる。レオンが息を整えた。この魔族は、本気で仕留めに来るつもりだ。


「……来ますよ」


 ルシアンが静かに告げる。


「ああ」


 レオンが剣を構えた。


 魔族が踏み込む。今までよりも速い。剣が閃き、レオンが受ける。衝撃が腕に走るが、押し負けない。勇者の力が、まだ不完全ながらも身体を強化していた。


 魔族の連撃が続く。一撃、二撃、三撃。レオンが捌く。四撃目、強引な振り下ろし。レオンは半歩ずれて軌道を流し、すぐに斬り返す。魔族が受ける。衝突し、拮抗する。互角だった。


 魔族の目が見開かれる。


「……何だと」


 さっきまでは押していた。だが今は違う。レオンが押し返している。


 レオンが踏み込む。剣が閃く。魔族が防ぐが、体勢がわずかに崩れる。レオンはそこを逃さず追撃する。連撃の鋭さが、明らかに増していた。戦闘の最中でも、レオンは成長していた。


 魔族が舌打ちする。


「調子に乗るな……!」


 魔力がさらに膨れ上がる。横薙ぎの一撃。レオンが受ける。衝撃で足が地面にめり込むが、踏み止まる。そのまま押し返す。剣が弾かれる。レオンが踏み込み、魔族の腕を浅く裂く。


 魔族が後退する。呼吸が乱れ始めていた。


 レオンも息を荒くしている。まだ余裕はない。勇者の力も安定していない。油断すれば逆転される可能性は十分にある。


 魔族が低く唸る。


「……人間風情が」


 突きが放たれる。速い。レオンは半歩ずれて躱し、そのまま横から斬る。魔族が受ける。互角の衝突。レオンがさらに踏み込む。その瞬間、足元の地面がわずかに隆起した。ルシアンの補助だった。


 レオンの踏み込みが伸びる。


 魔族の目が見開かれる。


 剣が肩口に深く入る。血が噴き出した。


「っ――!」


 魔族が大きく後退する。


 確実に押していた。


 ルシアンは静かに見守る。もうレオンは戦えている。あとは自分で勝つだけだった。


 魔族が息を荒くしながら構える。そして――


「……舐めるなあああ!!」


 最後の猛攻だった。


 踏み込みは今までで最速だった。剣が連続して振るわれる。一撃、二撃、三撃。重い。速い。レオンが押される。四撃目の横薙ぎで後退し、五撃目の振り下ろしで地面が砕ける。六撃目の突きが頬を掠め、血が流れた。


 それでもレオンは下がらない。


 踏み止まり、呼吸を整える。


 視界が澄む。


 動きが見える。


 レオンが踏み込む。剣を振るう。魔族が受ける。拮抗する。ルシアンがわずかに風を操る。レオンの身体が軽くなる。踏み込みがさらに伸びる。


 押し合い。


 そして――


 わずかにレオンが勝った。


「はあああああ!!」


 レオンが叫び、剣を振り抜く。魔族の剣が弾かれる。隙が生まれる。レオンが踏み込む。


 一閃。


 魔族の胴を深く斬り裂いた。


 血が舞う。魔族が膝をつく。


「……人間、が……」


 魔族が睨む。だがもう動けない。レオンが剣を構える。本来なら生かして情報を得るべきだった。だが、そこまでの余裕はなかった。


 レオンが振り下ろす。


 最後の一撃だった。


 魔族が倒れる。


 戦闘終了だった。


 レオンが大きく息を吐く。


「……勝った」


 肩で息をしながら剣を下ろす。


 ルシアンが静かに近づく。


「見事でした」


 レオンが苦笑する。


「……結構ギリギリだったけどな」


「ですが、勝ちは勝ちです」


 その時、別の方向から足音が聞こえる。アルベインたちだった。全員多少の傷を負っていたが、無事だった。


「……終わったか」


 剣士の男が言う。


「ええ」


 ルシアンが答える。


 弓使いの女性が倒れている魔族を見る。


「……倒したのか」


 レオンが頷く。


「何とか」


 大柄な男が驚いたように笑う。


「おいおい……二人だけで倒したのか?」


「……はい」


 アルベインが少し驚いた表情を見せる。


「正直、驚きました。上位の魔族でしたから」


 弓使いの女性が腕を組む。


「……よくやったじゃねぇか」


 少しぶっきらぼうな口調だったが、どこか嬉しそうだった。


 アルベインが倒れた魔族を見ながら言う。


「魔族がこの森にいた……しかも複数」


 剣士の男が頷く。


「偶然とは思えないな」


 大柄な男が言う。


「今回の異常……魔族の仕業かもしれねぇな」


 全員が静かに頷いた。


 森の異変。


 強くなった魔物。


 そして魔族の出現。


 すべてが繋がり始めていた。


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