第142話
第142話
学園都市アーカディアを出発して半日。
レオンたちは西部森林地帯へと到着していた。
この森は、学園の訓練や任務でもよく使用される場所だった。危険度は通常Bランク前後。Aランクの魔物が稀に出現する程度で、Sクラスの実戦訓練にも使われる場所だった。
しかし――
今回は事情が違う。
魔物の活性化が報告されている。
アルベインが地図を広げる。
「今回の調査期間は五日間の予定です」
全員が耳を傾ける。
「長くても一週間以内に撤収します」
穏やかな声で続ける。
「無理に長引かせる必要はありません」
「情報を集めることが目的です」
レオンが頷く。
「分かりました」
アルベインが続ける。
「最初の二日間は生態調査を中心に進めましょう」
「魔物の分布、数、行動パターンの変化を確認します」
全員が同意する。
こうして調査が開始された。
森の中を慎重に進む。
隊列はアルベインの指示で二列。警戒しながら進んでいく。
しばらく進んだところで、弓使いの女性が小さく呟いた。
「……多いな」
レオンが周囲を見る。
確かに――魔物の気配が多い。
通常よりも密度が高い。
アルベインも頷く。
「……そうですね」
さらに進む。
しばらくして――
レオンが小さく言う。
「……この森には何度か来ていますが」
周囲を見渡す。
「少し魔物の分布が変わっていますね」
ルシアンも同意する。
「ええ」
「以前より奥にいた魔物が、手前に出ています」
さらに――
弓使いの女性が指差す。
「……あれ」
そこにいたのは――
見慣れない魔物。
狼型の魔物だったが、この森では確認されていない種類だった。
アルベインが静かに言う。
「……この森では確認したことのない魔物ですね」
剣士の男性が頷く。
「他の地域の魔物かもしれないな」
大柄な男が腕を組む。
「縄張りが変わってるのか」
回復役の女性が少し不安そうに言う。
「……やはり活性化の影響でしょうか」
アルベインが静かに答える。
「可能性は高いですね」
ルシアンは黙って観察する。
(魔物の移動……)
(縄張りの変化……)
明らかに異常だった。
だが――
まだ断定はできない。
こうして――
一日目は生態調査を中心に進んだ。
魔物の数は増えている。
分布も変わっている。
見慣れない魔物も確認。
明らかに異変が起きていた。
そして――
二日目。
調査はさらに奥へ進む。
この時――
まだ誰も知らなかった。
この森で起きている異変が、想定以上であることを。
そして――
戦闘が始まる。




