第141話
第141話
個別任務が決定した後、それぞれ準備に入っていた。
レオンとルシアンも学園都市アーカディアの装備区画へ向かっていた。
武器の点検。保存食の準備。回復薬の補充。三日圏内とはいえ、油断はできない。
レオンが剣の状態を確認し、防具の紐を締め直す。
ルシアンは静かにそれを見ていた。
「……レオン」
「どうかした?」
「なぜ私を選んだんですか」
レオンが少し驚いたような顔をする。
「……やっぱり聞くよな」
少し考える。
「正直に言うと……」
「まだ単独で臨むのは早い気がしたんだ」
ルシアンは黙って聞く。
「単独でやるのも経験になると思うけど……今回は調査任務だし、何が起きるか分からない」
「だから……」
レオンがルシアンを見る。
「ルシアンが一番頼りになりそうだと思った」
素直な言葉だった。
レオンは続ける。
「しばらく一緒に行動してきたし……何となく分かるけど」
「ルシアン、まだ本気出したことないよね」
ルシアンの目がわずかに細くなる。
「理由は分からないけど……」
「でも、いつも俺たちを助けてくれる」
「遠征の時もそうだったし」
「だから……」
少し笑う。
「信頼してる」
まっすぐな言葉だった。
ルシアンは一瞬だけ黙る。
「……そうですか」
静かに答える。
「期待には応えますよ」
レオンが頷く。
「頼りにしてる」
二人は準備を終える。
そして――翌日。
出発の朝。
学園の門前にレオンとルシアンが向かうと、すでに数人の姿があった。
「おはようございます」
穏やかな声がする。
ローブ姿の青年が歩み寄ってくる。
「今回、同じ調査任務を依頼された冒険者パーティです」
柔らかく笑う。
「リーダーのアルベインです」
落ち着いた雰囲気の魔法使いだった。
レオンが頭を下げる。
「レオンです」
「ルシアンです」
アルベインが頷く。
「よろしくお願いします」
後ろの仲間も軽く会釈する。
剣士の男性。
弓使いの女性。
斧を背負った大柄な男。
回復魔法を扱う女性。
大柄な男が腕を組みながら笑う。
「へぇ……学園のSクラスか」
「将来有望だな」
落ち着いた低い声だった。威圧感はあるが、どこか柔らかい雰囲気もあった。
弓使いの女性が腕を組む。
「遠征でSランクとやり合ったって噂聞いたけど」
「無茶してんじゃねぇの?」
少し乱暴な口調だった。
だが、その視線は二人の怪我の有無を確認していた。
「まあ……若いし無理するのも分かるけどさ」
「死んだら意味ねぇからな」
レオンが少し苦笑する。
「はい……」
回復役の女性が微笑む。
「無理はしないでくださいね」
「調査とはいえ、何が起きるか分かりませんから」
剣士の男性も頷く。
「俺たちも前に出る」
「無理はするな」
アルベインが穏やかに言う。
「今回の任務は調査です」
「戦闘は極力避ける方向で行きましょう」
レオンが頷く。
「分かりました」
ルシアンは静かに観察する。
動き。気配。立ち位置。
連携も取れている。
実力は――Sランク相当。
経験も豊富。
そして――
余裕がある。
(悪くありませんね)
アルベインが周囲を見回す。
「では、そろそろ出発しましょうか」
レオンが頷く。
「はい」
門が開く。
学園都市アーカディアを出る。
こうして――
レオンとルシアンの任務が始まる。




