第140話
第140話
武闘大会まで残り三週間。
授業再開から一週間が過ぎていた。Sクラスの空気は明らかに変わっている。遠征を経て、全員の意識が高まっていた。
そんな中――
レオニードが教室に入ってきた。
「……今日は連絡事項がある」
全員の視線が集まる。
「本日から個別任務を与える」
教室の空気がわずかに変わる。
個別任務。
Sクラスにおいて評価に大きく関わる制度だった。
「任務をクリアすれば評価が上がる」
「授業に出席できない分は免除する」
「希望すれば補講も行う」
レオニードは続ける。
「任務は単独のものもあれば、複数での対処が許可されるものもある」
「同行者も貢献度に応じて評価対象とする」
つまり――同行者も評価が上がる。
「なお、一年生はまだ経験不足のため、任務によっては学園側が同行者を付ける場合がある」
「二年生以降は基本的に同行者は付かない」
「一年生のうちに経験を積め」
全員が静かに頷く。
そして――
「最近、各地で魔物の活性化が確認されている」
レオニードの言葉に、空気が少し引き締まる。
「以前よりも高ランクの魔物が出現する傾向にある」
「原因は不明だが、油断するな」
短い言葉だったが、重みがあった。
遠征でも感じていた違和感。
それが各地で起きている。
「今回の任務は都市から三日圏内」
「長期遠征ではないが、実戦経験としては十分だ」
「今回は上位五名に任務を与える」
「グランヴェル」
「レティシア」
「フィアナ」
「テオドール」
「レオン」
五人が立ち上がる。
資料が配られる。
まず――
グランヴェル。
都市の北西にある山岳地帯に出現したAランクの魔物「ストームグリフォン」の討伐。
単独任務。
グランヴェルが口角を上げる。
「……単独か」
むしろ歓迎だった。
「悪くない」
次に――
レティシア。
古代遺跡の調査。
危険度Bランク。
最近発見された小規模遺跡の確認。
レティシアの目が輝く。
「……遺跡」
すぐに横を見る。
「シャロン」
シャロンがため息を吐く。
「……同行します」
次に――
フィアナ。
聖国リュミエルからの依頼。
巡礼路の安全確認。
単独任務。
フィアナが静かに頷く。
「……分かりました」
次に――
テオドール。
東部森林地帯での魔物の群れの討伐。
Aランクの魔物を含む群れ。
テオドールが横を見る。
「ガイウス、ノエル」
ガイウスが笑う。
「いいぜ」
ノエルが視線を向ける。
「……どうして私?」
「近接戦になる可能性がある」
テオドールが言う。
「俺一人だと厳しい」
ノエルが少し考える。
「……足手まといにならなければいいけど」
皮肉混じりだった。
だが――
「いい」
短く答える。
そして――
最後はレオン。
魔族領近郊の西部森林地帯での魔物活性化調査。
危険度Aランク。
レオンが資料を見る。
そして――
「ルシアン」
視線を向ける。
「一緒に来てくれないか」
ルシアンは少し考える。
魔物の活性化。
調査任務。
そして――
レオンの鍛錬にもなる。
「……いいですよ」
レオンが頷く。
「助かる」
ルシアンは静かに考える。
(魔物の活性化……)
遠征でも感じた違和感。
各地で起きている異変。
偶然ではない可能性もある。
だが――
今はまだ判断できない。
レオニードが最後に言う。
「任務開始は明日からだ」
「各自、準備を整えろ」
「以上だ」
短く言って、教室を出ていく。
Sクラスの面々がそれぞれ動き始める。
武闘大会まで――残り三週間。
そして――
個別任務が始まる。




