第133話
第133話
遠征終了後、Sクラス一行は学園都市へ向けて帰路についていた。
移動は来た時と同じく馬車だった。
複数台の馬車が街道を進む。フェルディア大森林を抜けたことで道は整備され、揺れも比較的少ない。それでも遠征の疲労が残る身体には、長時間の移動は楽ではなかった。
レオンは窓の外をぼんやりと見ていた。遠ざかっていく森を眺めながら、ようやく遠征が終わった実感が湧いてくる。
ガイウスが大きく息を吐く。
「……やっと帰れるな」
テオドールが苦笑する。
「ベッドで寝たい……」
ノエルが短く言う。
「……同意」
フィアナも小さく頷く。
「はい……」
レオンが苦笑する。
「流石に今回は疲れたな……」
ガイウスが頷く。
「Sランク三体だからな……そりゃ疲れる」
ルシアンは静かに全員の様子を確認していた。まだ疲労は残っているが、大きな問題はない。
しばらく進んだところで、馬車が停止する。
休憩だった。
全員が馬車から降り、軽く身体を伸ばす。長時間同じ姿勢だったため、筋肉が固まっていた。
その時――
「ふん……」
尊大な声が聞こえる。
ルシアンが声の方を見て応える。
「お疲れ様です。グラン」
グランヴェルだった。ヴァルクとディアナも一緒だ。
グランヴェルが腕を組む。
「貴様ら、まだ消耗しているな」
ガイウスが苦笑する。
「そりゃな……」
ヴァルクが言う。
「Sランク三体だろ?そりゃきついわ」
レオンが頷く。
「はい……正直、かなりギリギリでした」
ディアナが静かに言う。
「それでも全員生き残ったのは見事です」
グランヴェルがわずかに笑う。
「勇者の覚醒……か」
その時――
「レオン」
聞き慣れた声がする。
振り向くと、レティシアが歩いてきていた。後ろには護衛役のシャロンもいる。
「レティシア」
レオンの声が少し硬くなる。
レティシアは穏やかに微笑む。
「怪我は大丈夫なの?」
「まあ。まだちょっと痛いけど」
「そう……よかった」
少しだけ安心したような表情を見せる。
だが――
次の瞬間、目の色が変わる。
「ところで勇者の力だけど」
レオンが内心でため息をつく。
(やっぱり来た……)
レティシアが一歩近づく。
「どんな感覚だった?」
「身体が軽くなった感じ?」
「それとも魔力が増えた感じ?」
「持続時間は?」
「負荷は?」
一気に質問が飛んでくる。
ガイウスが苦笑する。
「始まったな」
ヴァルクが笑う。
「相変わらずだな」
シャロンが小さくため息をつく。
「レティシア様……」
だが止めない。
レオンが少し困る。
「えっと……なんていうか、体が勝手に動いた感じだ」
レティシアの目が輝く。
「無意識型……?」
「それとも潜在能力型?」
さらに距離が近くなる。
レオンが少し下がる。
「おい、近いって」
「いいじゃない」
さらっと言う。
レオンが困った顔になる。
レティシアはさらに続ける。
「聖剣は?」
「召喚できそう?」
「それともまだ?」
レオンが頭を掻く。
「分からない……あの時は必死だったし」
レティシアが頷く。
「なるほど……」
すでに思考が回っている。
今度はフィアナへ向く。
「フィアナさん」
「聖女の祝福についても聞きたいわ」
フィアナが少し戸惑う。
「えっと……」
「三重効果なのよね?」
「身体強化、各種耐性、回復」
「しかも自動回復付き」
「持続時間は?」
「魔力消費は?」
フィアナも押される。
「えっと……かなり消耗しました……」
「やっぱり高位の魔法に分類されるのかしら……」
レティシアがぶつぶつと考え始める。
ディアナが苦笑する。
「相変わらずですね」
ヴァルクが言う。
「魔法の話になると止まらねぇな」
グランヴェルが軽く笑う。
「猫を被っていても意味がないな」
レオンが小さく頷く。
「……まあ、そうだな」
ルシアンは静かにその様子を見ていた。
Sクラスの空気は確実に変わっていた。
遠征を経て、互いの距離は少し縮まっている。
やがて休憩が終わる。
再び馬車に乗り込む。
馬車が動き出す。
学園都市へ向けて――
帰路は静かに続いていくのだった。




