表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
果てなき世界  作者: 影川明空人
第3章 学園1年目
131/183

第130話

第130話 


 黒皮のオーガが崩れ落ちた。


 巨体が地面に倒れ込む音が、森の奥へと重く響く。三体すべての黒皮のオーガが倒れ、ようやく戦いが終わった。


 だが――誰もすぐには動けなかった。


 レオンは剣を支えに立っていた。呼吸が荒い。全身が震えている。勇者の身体強化はすでに解けていた。限界を超えて動いていた反動が、一気に襲ってくる。


 ガイウスはその場に膝をついていた。盾を地面に立てかけるようにして支えているが、腕が震えている。汗が滝のように流れていた。


 ノエルも木にもたれかかっていた。呼吸は浅く速い。短剣を握る手がわずかに震えている。


 テオドールはその場に座り込んでいた。魔力の消耗が激しいのか、顔色がかなり悪い。


 フィアナも同様だった。立ってはいるが、足元がふらついている。祝福と回復魔法を連続で使った反動は大きい。


 ルシアンも深く息を吐いた。大怪我を負った直後の戦闘だった。さすがに消耗している。


 フリードが剣を収めながら周囲を見回した。


「……終わったな」


 誰も返事をしない。返事をする余裕がなかった。


 レオンが一歩踏み出す。


 だが――


 そのまま崩れ落ちた。


「レオン!」


 ガイウスが声を上げるが、そのガイウスも力が抜けたように横へ倒れた。


 二人とも気絶していた。


 ノエルがそれを見て、小さく息を吐く。


「……限界」


 テオドールも苦笑するように言う。


「……正直、俺もだ」


 フィアナも立っているのがやっとだった。


 フリードが小さく息を吐く。


「……これは」


 珍しく表情が険しかった。


「異常事態だな」


 ミレイも頷く。


「Sランク三体は……流石に想定外です」


 フリードが周囲を見渡す。


「この件は上に報告しなければならん」


 短く言った。


「とりあえず――場所を移すぞ」


 フリードがガイウスの身体を担ぎ上げる。大楯使いの体格は大きいが、フリードは難なく持ち上げた。


 ルシアンもレオンを背負う。まだ意識は戻らない。呼吸は安定しているが、完全に限界だった。


 ミレイがノエルとテオドールを支える。


 ゆっくりと移動する。


 少し進んだ場所に、比較的開けた場所を見つけた。周囲の視界も悪くない。野営には適していた。


「ここでいい」


 フリードが言う。


 ガイウスを横に寝かせる。ルシアンもレオンを慎重に下ろす。


 ノエルとテオドールも座り込むように休む。フィアナは二人の様子を確認しようと歩き出す。


 だが――


 ふらついた。


 そのまま崩れる。


 ルシアンがすぐに支える。


「フィアナ」


 呼びかけるが、返事はない。


 気絶していた。


 ミレイが静かに言う。


「……限界ですね」


 ルシアンがフィアナを横に寝かせる。


 フリードが小さく息を吐く。


「無理もない」


 ここまでの戦闘は、完全に想定外だった。


 フリードが周囲を見渡す。


「野営の準備をする」


 ルシアンが頷く。


 簡単な野営の準備を進める。火を起こし、周囲の確認を行う。だが今回は、ほとんどフリードとルシアンが中心だった。


 しばらくして、準備が整う。


 ミレイが魔法陣を展開する。


 淡い光が広がる。


 結界だった。


「フィアナさんの代わりに私が張ります」


 フリードが頷く。


「頼む」


 結界が展開される。周囲の魔力が静かに安定する。


 フリードが続けて言う。


「夜の見張りも俺たちがやる」


 ルシアンを見る。


「お前も休め」


 ルシアンは少しだけ考えた。


 だが――


「……分かりました」


 素直に頷いた。


 確かに消耗している。ここで無理をする意味はない。


 フリードが静かに言う。


「お前たちはしっかり休め」


 ノエルもテオドールもすでに横になっていた。すぐに眠りに落ちる。


 森の夜が静かに訪れる。


 フリードとミレイが見張りに立つ。


 焚き火の光が、倒れた一年生たちの顔を照らしていた。


 異例の戦闘だった。


 だが――


 確かな成長もあった。


 フリードは静かに目を細めた。


「……悪くない」


 小さく呟いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ