第128話
第128話
祝福の光がレオンを包み込む。
身体の奥から力が湧き上がる。疲労が軽くなり、鈍っていた感覚が研ぎ澄まされる。先ほどまで重く感じていた剣が、まるで羽のように軽い。視界も広がり、黒皮のオーガの動きがはっきりと見える。
勇者の身体強化に加え、聖女の祝福。二つの力が重なり、レオンの魔力は一気に膨れ上がった。
黒皮のオーガが唸り声を上げる。再び踏み込む。拳が振り下ろされる。
レオンが動いた。
速い。
拳を紙一重で回避する。そのまま踏み込み、剣を振るう。斬撃が腕を深く切り裂く。黒皮のオーガが初めて明確に苦悶の声を上げた。
しかし、傷がゆっくりと閉じていく。再生能力。だが、先ほどよりも再生が遅い。
「再生が……遅くなってる……!」
テオドールが気づく。
レオンが踏み込む。
「押し切るぞ!」
連撃。黒皮のオーガが後退する。そこへノエルが飛び込む。死角から短剣を突き立てる。脇腹に深く刺さる。
黒皮のオーガが腕を振るう。ノエルがすぐに離脱する。
ガイウスが前に出る。盾で押し込む。黒皮のオーガの体勢が崩れる。
「今だ!」
テオドールが雷撃を放つ。雷が黒皮のオーガを包む。動きが鈍る。
レオンが踏み込む。
剣が閃く。
さらに深く斬り裂く。
黒皮のオーガが後退する。
連携が噛み合い始めていた。レオンの覚醒により、全員の動きが一段階引き上げられている。
一方――
フィアナはルシアンの元へ駆け寄っていた。
「ルシアン……!」
膝をつき、回復魔法を展開する。光がルシアンの傷を包み込む。裂けた傷口がゆっくりと塞がっていく。
フィアナの呼吸は荒い。祝福を発動し、さらに回復魔法を使っている。魔力の消耗は激しい。
「私たちが……不甲斐ないあまりに……」
フィアナの声が震える。
「ごめんなさい……」
ルシアンが小さく息を吐く。
「……大丈夫ですよ」
弱々しいが、穏やかな声だった。
「私はこうして生きていますし……問題ありません」
フィアナが顔を上げる。
ルシアンは小さく微笑んだ。
「それに……祝福も使えたじゃないですか」
フィアナの目が揺れる。
「よかったです」
ルシアンが静かに言う。
「あとちょっとです。がんばりましょう」
フィアナが強く頷く。
「……はい」
回復魔法をさらに重ねる。ルシアンの呼吸が少し落ち着く。完全ではないが、戦える程度には回復していた。
その間も、レオンたちは押し込んでいた。
黒皮のオーガが拳を振るう。レオンが回避する。ガイウスが盾で押し返す。ノエルが斬る。テオドールが雷撃。
再生が追いつかない。
レオンが踏み込む。
剣が閃く。
黒皮のオーガがよろめく。
「いける!」
ガイウスが叫ぶ。
ノエルが飛び込む。短剣が喉元に突き刺さる。黒皮のオーガが苦悶の声を上げる。
テオドールが雷撃を重ねる。
動きが止まる。
レオンが最後に踏み込む。
「終わりだ!」
一閃。
深く斬り裂く。
黒皮のオーガが崩れ落ちた。
地面が震える。
撃破。
レオンが息を吐く。身体強化の光がまだ残っている。
だが――まだ終わっていない。
フリードの戦闘音が響いている。
残る二体。
だが――
レオンの目には、もう迷いはなかった。
「行こう」
レオンが言う。
全員が頷く。
戦いは、まだ続く。




