第127話
第127話
黒皮のオーガ二体と対峙するフリードは、わずかに眉をひそめていた。
剣を振るう。黒皮のオーガの腕を斬り裂く。だが深くは入らない。分厚い皮膚と筋肉が斬撃を鈍らせる。
ミレイがすぐに支援魔法を重ねる。フリードの身体能力が底上げされる。フリードが踏み込む。一体を押し込む。だが、もう一体が横から拳を振るう。フリードが受け流すが体勢が崩れる。
攻め切れない。
(……二体は厄介だな)
一体なら押し込める。ミレイの支援があれば、時間はかかるが倒すことも可能だろう。だが二体同時となると違う。どうしても守勢に回るしかない。
フリードが再び斬りつける。黒皮のオーガの肩が裂ける。血が流れる。だが、その傷がゆっくりと閉じていく。
フリードの目がわずかに細まる。
(再生……か)
微量だが確実に再生している。ただでさえ硬い個体に再生能力まである。削っても削っても倒しきれない。
黒皮のオーガが同時に踏み込む。拳が振るわれる。フリードが回避し、反撃する。だが決定打にならない。ミレイが支援魔法を維持し続けているが、それでも押し切れない。
フリードが小さく息を吐いた。
(……悔しいが)
自分とミレイだけでは、この二体を倒すのは難しい。持ち堪えることはできる。だが勝てない。
フリードが一瞬だけレオンたちへ視線を向ける。
「……頼むぞ、一年ども」
小さく呟く。
そして再び、二体の黒皮のオーガへ向き直った。
一方――残る一体の黒皮のオーガがレオン班へ迫る。巨体が踏み込み、地面が揺れる。拳が振り下ろされる。
「来るぞ!」
ガイウスが前に出る。盾を構える。轟音。衝撃がガイウスを襲う。
「っ……!」
足元が沈む。圧倒的な膂力だった。
レオンが横から斬り込む。剣が腕を捉える。だが浅い。
「硬い……!」
ノエルが死角から飛び込む。短剣を突き立てる。だが深く入らない。黒皮のオーガが腕を振るう。
「……っ!」
ノエルが吹き飛ばされ、地面を転がる。フィアナがすぐに回復魔法を送る。ノエルが立ち上がるが、動きが鈍い。
テオドールが雷撃を放つ。だが動きが止まったのは一瞬だった。黒皮のオーガが踏み込む。
ガイウスが受ける。衝撃。盾ごと弾き飛ばされ、ガイウスが転がる。
黒皮のオーガの視線がレオンへ向く。踏み込む。速い。レオンが剣を構えるが遅れる。
拳が振り下ろされる。ルシアンが風魔法を撃つ。だが完全には逸れない。レオンが受ける。衝撃。さらに追撃。横から拳が振り抜かれる。
避けきれない。
その瞬間――
ルシアンが踏み込んだ。
レオンの前に出る。
拳が直撃する。
鈍い音。
「……っ!」
ルシアンの身体が弾き飛ばされる。木に叩きつけられ、地面に崩れ落ちる。血が飛び散る。
「ルシアン!」
レオンの声が響く。
ルシアンの肩から胸にかけて深い傷が走る。呼吸が荒い。立ち上がれない。
レオンの胸の奥で怒りが爆発する。
守られた。
まただ。
自分が弱いから。
「……っ!」
魔力が溢れる。空気が震える。光がレオンの身体を包む。
勇者の身体強化。
レオンが踏み込む。速い。黒皮のオーガが拳を振るう。回避。斬撃。深く斬り裂く。黒皮のオーガが後退する。
さらに連撃。黒皮のオーガが押される。
フィアナがルシアンを見る。血が流れている。守れなかった悔しさが溢れる。
光がフィアナを包む。
祝福。
「レオン!」
光がレオンを包む。身体強化がさらに強まる。疲労が軽減される。微量回復。耐性上昇。
レオンの魔力がさらに増す。
レオンが踏み込む。剣が閃く。黒皮のオーガが大きくよろめく。
戦況が――変わった。




