第121話
第121話
遠征三日目。
朝の森は静かだった。
夜露が葉に残り、空気はひんやりとしている。野営を終えたレオン班は、再びフェルディア大森林の奥へと進んでいた。
すでにグラスラビットとミラーバードの素材は確保済みだった。
残るは三種類。
レオンが歩きながら言う。
「今日はスリープバインだな」
ルシアンが頷く。
「はい。比較的この辺りに多いはずです」
ノエルが目を閉じる。
索敵。
しばらくして、静かに口を開く。
「……前方」
少し間を置く。
「植物型」
ルシアンが言う。
「おそらくスリープバインですね」
慎重に進む。
やがて――
木々の根元。
蔓が絡み合った植物があった。
淡い紫色の花を咲かせている。
「……スリープバイン」
ルシアンが静かに言う。
レオンが小さく頷く。
「どうする?」
「フィアナとノエルでいきましょう」
二人が視線を向ける。
「胞子対策が必要です」
フィアナが頷く。
「対状態異常魔法を使います」
静かな光が広がる。
フィアナの周囲に淡い光がまとわりつく。
さらにノエルにも魔法をかける。
「これで眠りの胞子は防げます」
ノエルが小さく頷く。
「……行く」
二人が前に出る。
慎重な動き。
スリープバインは動かない。だが近づくと、花がわずかに揺れた。
紫色の胞子が漂う。
だがフィアナの魔法がそれを弾く。
ノエルが短剣を取り出す。
静かな動きで蔓を切る。
慎重に。
素材を傷つけないように。
その時だった。
ノエルが小さく言う。
「……気配」
ルシアンも感じていた。
別の魔物の気配。
しかも――
速い。
レオンが剣を抜く。
「来るぞ」
茂みが揺れる。
飛び出してきたのは――
大型の狼型魔物。
灰色の毛並み。
鋭い牙。
「フォレストファング」
ルシアンが言う。
Bランクの魔物だった。
しかも二体。
ガイウスが前に出る。
「フィアナたちに近づけるな」
「はい」
レオンが踏み込む。
フォレストファングが飛びかかる。
剣で受ける。
重い。
だが押し返す。
もう一体が横から来る。
ガイウスが盾で防ぐ。
衝撃。
だが動かない。
テオドールが魔法を展開する。
雷撃。
フォレストファングが怯む。
ルシアンが位置を調整する。
フィアナとノエルの位置を確認。
(……問題ない)
レオンが連撃を仕掛ける。
フォレストファングが下がる。
ガイウスが盾で押し込む。
テオドールが風の魔法で動きを制限する。
連携。
フォレストファングの動きが鈍る。
「今だ」
レオンが踏み込む。
一体を斬る。
倒れる。
もう一体が後退する。
だが逃がさない。
ガイウスが進路を塞ぐ。
テオドールの魔法。
レオンがとどめを刺す。
静かになる。
戦闘終了。
ルシアンが後方を見る。
フィアナとノエルは無事だった。
ノエルが蔓を回収する。
「……取れた」
フィアナも頷く。
「問題ありません」
レオンが笑う。
「いい連携だったな」
ガイウスが頷く。
「ああ」
ルシアンも静かに頷いた。
(……順調だ)
スリープバインの素材をマジックバックに収納する。
三つ目の素材。
遠征は順調に進んでいた。
だが――
フェルディア大森林はまだ奥が深い。
残るはBランク一種とAランク。
遠征はまだ続く。




