第120話
第120話
グラスラビットの捕獲を終えた後、レオン班はさらに森の奥へと進んだ。だが深追いはしない。初日は森に慣れること、そして連携の確認が目的だった。日が傾き始めると、木々の間から差し込む光が赤く染まり、森の奥はすでに薄暗くなり始めていた。
レオンが立ち止まる。
「……今日はこの辺にするか」
ルシアンは周囲を見渡す。魔物の気配は薄い。木々の密度もやや低く、野営に適した場所だった。
「問題ないと思います」
ノエルが目を閉じ、周囲を探る。
「……強い気配なし」
ガイウスが息を吐いた。
「ちょうどいいな」
「ここに拠点を作ろう」
全員が動き出す。ガイウスが倒木を動かして空間を確保し、レオンが周囲の見回りを行う。ノエルは索敵を続け、テオドールは簡易光源の魔法を展開する。ルシアンは全体を見ながら自然に作業の流れを整えていた。
しばらくして、野営地が整う。
フィアナが前に出る。
「結界を張ります」
光の魔力が静かに広がる。淡い光が地面をなぞり、やがて見えない壁のように周囲を覆った。空気がわずかに変わる。
「……簡易ですが、警戒はできます」
テオドールが小さく頷く。
「十分だ」
ガイウスが地面に座り込む。
「これなら安心だな」
レオンが周囲を見て言う。
「火も起こしておこう」
枯れ枝を集め、火を起こす。炎が揺れ、周囲が暖かな光に包まれた。森の夜の冷気が和らぐ。
レオンが言う。
「夜番は二人一組でいこう」
ルシアンが頷く。
「それがいいですね」
「最初は俺とフィアナ」
「次はテオドールとガイウス」
「最後がルシアンとノエル」
全員が頷く。
夜が深まる。火が静かに揺れ、森の中に虫の声が響く。
時間が過ぎ、最後の番。
ルシアンとノエルが火の前に座る。炎が揺れ、二人の影が地面に伸びる。ノエルは膝を抱えるように座り、周囲を警戒していた。
しばらく沈黙が続く。
「……静か」
ノエルが小さく言う。
「そうですね」
ルシアンも周囲を見る。結界は安定している。魔物の気配もない。
火の薪が崩れる音がした。
ノエルが炎を見ながら言う。
「……フリード」
「強い」
短い言葉だった。
「そうですね」
ルシアンが答える。
少しの沈黙。
ノエルが続ける。
「……あなたも」
ルシアンが視線を向ける。
ノエルは炎を見たまま言う。
「強い」
「でも……」
少し言葉を探す。
「……不思議な感じがする」
ルシアンは何も言わない。
ノエルもそれ以上は聞かなかった。
再び沈黙が訪れる。だが先ほどよりも、わずかに空気が柔らいでいた。
やがて朝が来る。
野営地を片付け、簡単な食事を終え出発する。
「今日はミラーバードだな」
レオンが言う。
ノエルが目を閉じる。
「……いる」
少し先だった。
慎重に進む。
やがて木の上に数羽の鳥が見えた。青白い羽、鋭い目。
「……ミラーバード」
ルシアンが静かに言う。
「三羽」
ノエルが補足する。
レオンが剣に手をかけるが、ルシアンが止める。
「待ってください」
「羽を傷つけると素材になりません」
ガイウスが苦笑する。
「俺たちは向いてないな」
ルシアンが言う。
「フィアナ、テオドール。動きを制限してください」
二人が頷く。
フィアナが光の魔法を展開する。逃げ場を囲うように光が広がる。テオドールが風の魔法で上空の動きを制限する。
ミラーバードが飛び立とうとする。
だが動きが制限される。
その瞬間――
ルシアンが跳躍する。枝を蹴り、一羽を捕らえる。着地と同時に再び跳ぶ。二羽目を捕獲。
最後の一羽が逃げる。
ノエルが素早く進路を遮る。
その隙にルシアンが三羽目を捕らえた。
静かに着地。
すべて確保された。
ガイウスが驚く。
「……すごいな」
レオンも頷く。
「きれいな動きだ」
ルシアンは静かに答える。
「問題ありません」
羽は傷ついていない。
マジックバックに収納する。
遠征は順調に進んでいた。
フェルディア大森林の奥へ――
彼らはさらに進んでいく。




