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果てなき世界  作者: 影川明空人
第3章 学園1年目
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第119話

第119話


 数日後。


 馬車はゆっくりと速度を落とした。


 視界の先に、広大な森が見えてくる。


 深い緑。背の高い木々が密集し、奥へ進むほど光が遮られていく。静かな森だったが、その奥には確かな危険の気配があった。


「……ここか」


 レオンが小さく呟く。


 馬車が止まる。


 全員が降りると、すでに他の班も到着していた。


 レオニードが前に出る。


「ここが遠征地だ」


 静かな声が森に響く。


「フェルディア大森林」


 その名前が告げられる。


「この森は学園が管理している」


「定期的に魔物の間引きが行われている」


 テオドールが小さく頷く。


「管理された森か」


 レオニードが続ける。


「基本的に出現する魔物はAランクまで」


 ガイウスが少し安心した様子を見せる。


「ただし」


 空気が引き締まる。


「稀にSランクが出現することもある」


 全員の表情が変わる。


「その場合は無理をするな」


「同行している上級生に頼れ」


 フリードは腕を組んだまま目を閉じている。ミレイも静かに立っているだけだった。


「各班に課題を配る」


 紙が配られていく。


 さらに、もう一つ。


「各班にマジックバックを支給する」


 袋が渡される。


 ガイウスが驚く。


「マジックバック?」


 テオドールが説明する。


「収納魔法がかかっている」


 レオニードが頷く。


「素材や荷物を入れろ」


「容量には余裕がある」


 遠征用の装備だった。


 レオンが紙を開く。


「素材調達……か」


 ルシアンも確認する。



■課題内容


Aランク素材

・アイアンホーンベアの角


Bランク素材

・シャドウウルフの牙

・スリープバインの蔓


Cランク素材

・グラスラビットの毛皮

・ミラーバードの羽



 ガイウスが呟く。


「Aランクからあるのか……」


 ルシアンが静かに言う。


「アイアンホーンベアは近接タイプです」


「前衛向きの魔物ですね」


 レオンが頷く。


「俺とガイウスだな」


 ガイウスが笑う。


「任せろ」


 ルシアンが続ける。


「シャドウウルフは斥候型です」


 ノエルが小さく頷く。


「……速い」


「群れで動くこともあります」


 ルシアンが続ける。


「索敵が重要になります」


 ノエルが短く言う。


「問題ない」


 ルシアンが紙を見る。


「スリープバインは植物型です」


 ガイウスが首を傾げる。


「植物?」


「眠りの胞子を出します」


「それほど強くはありませんが、胞子を吸うと厄介です」


 テオドールが小さく言う。


「……状態異常系か」


 ルシアンが頷く。


「さらに蔓を傷つけると素材として使えません」


 ガイウスが苦笑する。


「面倒だな」


「取得難度が高いタイプですね」


 ルシアンが静かに言う。


 続いてCランク。


「グラスラビットは問題ありません」


「警戒心は強いですが、戦闘力は低いです」


 ルシアンが続ける。


「ミラーバードは少し厄介です」


 ノエルが視線を向ける。


「……飛ぶ」


「はい」


 ルシアンが頷く。


「羽を傷つけると素材になりません」


 テオドールが小さく言う。


「捕獲系か」


 ルシアンが頷く。


「そうなります」


 レオンが小さく笑う。


「バランスいいな」


 ルシアンも頷く。


(……悪くない)


 戦闘だけではなく、技術も必要になる。


 いい課題だった。


 レオニードが言う。


「期間は一週間」


「開始は自由」


「以上」


 短い指示だった。


 そして――


 遠征が始まる。


 レオンが振り返る。


「まずどうする?」


 自然にルシアンを見る。


 ルシアンは少し考える。


「Cランクからいきましょう」


「森に慣れる意味もあります」


 レオンが頷く。


「それがいい」


 ガイウスも頷く。


「賛成」


 ノエルが静かに言う。


「……近くにいる」


 すでに索敵していた。


 テオドールが小さく言う。


「優秀だな」


 フィアナが静かに言う。


「行きましょう」


 フリードとミレイは後ろからついてくるだけだった。


 口出しはしない。


 見守るだけ。


 そして――


 レオン班は森へと踏み込んだ。


 フェルディア大森林の中は、外から見た以上に静かだった。


 木々が密集し、日差しがほとんど届かない。地面には落ち葉が積もり、足音が吸い込まれるように消えていく。


 ノエルが先頭に立つ。


 足取りは軽い。ほとんど音を立てない。斥候としての動きだった。


 レオンとガイウスがその後ろに続く。


 さらにフィアナとテオドール。


 ルシアンが全体を見ながら歩く。


 フリードとミレイは少し後ろを歩いていた。


 完全に見守る位置だった。


 しばらく進む。


 ノエルが手を上げる。


 全員が止まる。


「……前方」


 小さな声だった。


 レオンが視線を向ける。


 茂みがわずかに揺れる。


 そして――


 小型の魔物が姿を現す。


 草色の毛並み。


 小さな体。


 長い耳。


「……グラスラビット」


 ルシアンが静かに言う。


 レオンが頷く。


「早速か」


 グラスラビットは警戒するように周囲を見ている。逃げる準備をしている様子だった。


 ノエルが小さく言う。


「……逃げる」


 ルシアンが静かに言う。


「包囲しましょう」


 自然な指示だった。


 レオンが頷く。


「ガイウス、右」


「了解」


「ノエル、左」


「……分かった」


「テオドール、逃げ道封鎖」


「任せろ」


 短い連携。


 フィアナが静かに構える。


 ルシアンは後方から様子を見る。


 フリードは静かに目を開いていた。


 だが何も言わない。


 ただ観察している。


 ミレイも同じだった。


 グラスラビットが動く。


 逃げようとする。


 だが――


 風の魔法が展開される。


 テオドールだった。


 逃げ道を遮る。


 グラスラビットが方向を変える。


 そこに――


 ノエルが現れる。


 静かな動き。


 逃げ道を塞ぐ。


 グラスラビットがさらに方向を変える。


 正面。


 レオンが踏み込む。


 剣の柄で軽く叩く。


 グラスラビットが倒れる。


 気絶。


 フィアナがすぐに拘束魔法を展開する。


 動きを止める。


「……捕獲完了」


 フィアナが静かに言う。


 ガイウスが笑う。


「いい感じだな」


 ルシアンが頷く。


「問題ありません」


 素材を確認する。


 グラスラビットの毛皮は傷ついていない。


 レオンが言う。


「一つ目だな」


 マジックバックに収納する。


 フリードが小さく呟く。


「……悪くない」


 短い評価だった。


 ガイウスが少し驚く。


「お、評価もらった」


 フリードはそれ以上言わない。


 再び静かになる。


 ミレイが小さく微笑む。


 ルシアンは静かに前を見た。


(……順調だ)


 だが遠征は始まったばかりだった。


 フェルディア大森林の奥へ。


 彼らはさらに進んでいく。


 静かな森の奥へと。


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