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果てなき世界  作者: 影川明空人
第3章
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第118話

第118話


 遠征はパーティ単位での移動となった。


 学園の門を出てしばらく進んだ先に、各班ごとに用意された馬車が並んでいた。大型の馬車で、長距離移動を前提としたものだった。


 レオン班の八人は一台の馬車へと乗り込む。


 荷物を積み込み、それぞれが席に着く。


 やがて馬車がゆっくりと動き出した。


 車輪が地面を踏みしめる音が一定のリズムで響く。窓の外の景色がゆっくりと流れていく。


 しばらくは誰も口を開かなかった。


 遠征という言葉が、自然と緊張感を生んでいた。


 フリードはすでに目を閉じている。腕を組み、完全に会話に入る気配はなかった。


 ガイウスが小さく呟く。


「……寝てるのか?」


 ミレイが穏やかに笑う。


「いえ、起きてますよ」


「フリードはこういう人なんです」


 ガイウスが苦笑する。


「なるほど……」


 レオンが口を開く。


「ミレイ先輩、改めて自己紹介をしてもいいですか」


「もちろんです」


 ミレイが軽く頷く。


 レオンが姿勢を正す。


「レオンです。前衛で剣を使います」


「よろしくお願いします」


 ミレイが柔らかく微笑む。


 ガイウスが続く。


「俺はガイウス。前衛で盾を使った、防御中心に動くぜ」


「頼もしいですね」


 フィアナが静かに口を開く。


「フィアナです。光魔法を使います。支援と防御が中心です」


「光魔法……」


 ミレイが少し驚いたように言う。


「それは貴重ですね」


 テオドールが続く。


「テオドール。魔法全般を扱う。遠距離支援が主だ」


 やや上から目線の口調だった。


 ミレイは気にせず頷く。


「魔法使いはパーティにとって重要ですね」


 ノエルが短く言う。


「ノエル。索敵」


 それだけだった。


 ミレイが穏やかに微笑む。


「斥候がいるのは安心ですね」


 最後にルシアンが口を開く。


「ルシアンです。全体を見て動きます」


 簡潔な言葉だった。


 ミレイがわずかに目を細める。


「……よろしくお願いします」


 短いが、少しだけ興味を持ったような反応だった。


 ガイウスがふと思い出したように言う。


「そういえば……ミレイ先輩って4年Sクラスですよね」


「はい」


「順位ってどれくらいなんですか?」


 ミレイは少しだけ考えてから答える。


「23位です」


 ミレイが続ける。


「ちなみにフリードは6位です」


 空気が少し変わる。


 ガイウスが思わずフリードを見る。


「6位……」


 フリードは目を閉じたまま動かない。


 だが、その存在感ははっきりとあった。


 レオンが静かに言う。


「かなり上位ですね」


「ええ」


 ミレイが頷く。


「4年Sクラスの6位はかなり上位になります」


 テオドールが小さく言う。


「納得だ」


 ルシアンは静かにフリードを見る。


(……強い)


 無駄のない気配。完全に戦闘慣れしている。


 おそらくSランク上位くらいの実力だろう。


 その時、ミレイがふと聞いた。


「そういえば、皆さんの順位は?」


 ガイウスが答える。


「俺たちは入学時の順位のままですね」


 ミレイが頷く。


「そうなんですね」


 レオンが言う。


「俺は5位です」


 ミレイが少し驚いたように言う。


「5位……」


 フィアナが続く。


「私は3位です」


 ミレイが目を少し見開く。


「3位……」


 テオドールが言う。


「4位だ」


 ミレイが小さく息を呑む。


 ガイウスが続く。


「俺は8位」


 ノエルが短く言う。


「10位」


 最後にルシアンが言う。


「15位です」


 ミレイが静かに頷く。


「……優秀な子たちが集まったパーティなんですね」


 素直な感想だった。


 ガイウスが少し笑う。


「確かにそうかもしれませんね」


 レオンが静かに言う。


「でもまだ実力は足りません」


 ミレイが穏やかに言う。


「そういう姿勢は大事ですね」


 ガイウスがさらに聞く。


「ミレイ先輩はどんな戦い方なんですか?」


「私はサポート中心です」


「強化魔法、回復、結界などですね」


 フィアナが頷く。


「……サポート特化」


「はい」


 ミレイが微笑む。


「前線にはあまり出ません」


 ガイウスが感心する。


「でも4年Sクラスってすごいですね」


 ミレイが静かに言う。


「サポートも重要ですから」


 そして続ける。


「ちなみに今回の同行は私たちにとっても実習になります」


 レオンが聞き返す。


「実習?」


「はい」


 ミレイが頷く。


「上級生としての判断力を鍛えるためです」


「危険判断、介入のタイミング」


「そういった経験を積みます」


 ガイウスが納得する。


「なるほど」


 ルシアンは静かに聞いていた。


(……合理的)


 悪くない仕組みだった。


 ガイウスがさらに聞く。


「そういえばこの遠征が終わった後って何かありますか?」


 ミレイが答える。


「もう少ししたら武闘大会がありますね」


 レオンが反応する。


「武闘大会……」


「はい」


「学年ごとの大会になります」


 テオドールが小さく言う。


「……実力確認にはちょうどいい」


 ノエルが呟く。


「……面倒そう」


 だが興味はありそうだった。


 ミレイが穏やかに言う。


「遠征はその前の大事な経験になります」


 そして少し表情を引き締める。


「ですが――」


「まずはこの遠征です」


 静かな声だった。


「この課題をクリアすることが大切です」


 全員が静かに頷く。


 馬車は揺れながら進んでいく。


 遠征はまだ始まったばかりだった。


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