第116話
第116話
遠征学習まで、あと数日。
Sクラスの生徒たちはそれぞれ準備を進めていた。
訓練場では、いつもよりも実戦を意識した動きが増えている。装備の確認、連携の確認、魔法の調整。空気はどこか引き締まっていた。
レオンとガイウスが打ち合っている。
盾と剣のぶつかる音が響く。
レオンが踏み込む。
だが、やや大きい動きだった。
ガイウスが盾で受ける。
「……少し踏み込みが大きいな」
ガイウスが言う。
「分かってる」
レオンが答える。
だが動きはまだ荒い。
少し離れた場所で、ルシアンが静かに見ていた。
そして、何気なく口を開く。
「……盾役がいる場合、無理に踏み込む必要はありません」
自然な声だった。
レオンが少し考える。
「……確かに」
次の動き。
レオンが踏み込みを抑える。
ガイウスが頷く。
「今の方がいいな」
ルシアンはそれ以上言わない。
ただ静かに剣を振り始める。
その近くでテオドールが魔法の調整をしていた。
「移動用の補助魔法を試している」
短く言う。
「長距離移動では消耗が問題になる」
理論的だった。
ルシアンは軽く頷く。
「持続時間はどの程度ですか」
「約三時間」
テオドールが答える。
ルシアンは少し考える。
「交代で使用すれば効率が良さそうですね」
テオドールがわずかに目を細める。
「……そうだな」
自然なやり取りだった。
フィアナは光の魔法の調整をしていた。防御の展開。精度を上げている。
ルシアンが静かに言う。
「移動中の奇襲を想定するなら、展開速度も重要ですね」
フィアナが静かに頷く。
「……そうですね」
再び魔法を展開する。
速度が少し上がる。
ノエルは高い場所に立ち、周囲を見ていた。索敵の練習だろう。
ルシアンが何気なく言う。
「……遠征では地形の確認も重要になります」
ノエルがわずかに視線を向ける。
「……分かってる」
短い言葉。
だが、その後の視線の動きが変わる。
より広く観察するようになった。
レオンが小さく笑う。
「……自然にアドバイスしてるな」
ルシアンは首を振る。
「気づいたことを言っただけです」
それだけだった。
だが――
全員の動きが少しずつ良くなっていた。
(……悪くない)
ルシアンは静かに剣を振る。
遠征まで、あと数日。
六人は静かに準備を進めていた。
まだ完全なパーティではない。
だが――
少しずつ、まとまり始めていた。




