第114話
第114話
入学から二ヶ月が経った。
Sクラスの空気は、すでに落ち着いていた。最初の緊張感は消え、それぞれの立ち位置も少しずつ見えてきていた。
戦闘授業、魔法理論、実技訓練。Sクラスの授業は厳しく、密度も高い。だが、生徒たちは着実に成長していた。
ルシアンは窓際の席から教室を見渡す。
レオンがガイウスと話している。何か戦闘の話のようだった。身振りを交えながら説明している。
フィアナは静かに本を読んでいる。魔法書だった。相変わらず表情は変わらない。
テオドールはノートに何かを書き込んでいる。魔法理論の整理でもしているのだろう。
ノエルは窓際に立ち、外を見ていた。誰とも話さないが、以前よりも教室に馴染んでいた。
ルシアンは静かにその様子を見ていた。
(……悪くない)
関係は悪くない。むしろ良好だった。
レオンがルシアンに気づく。
「ルシアン」
声をかける。
「今度の遠征、もうすぐだな」
ルシアンは頷く。
「そうですね」
ガイウスが笑う。
「楽しみだな」
テオドールが顔を上げる。
「実地での戦闘は貴重だ」
ノエルが小さく言う。
「……面倒」
だが、否定はしていない。
フィアナが静かに言う。
「一週間でしたね」
「パーティ単位で行動と聞いています」
レオンが頷く。
「そうらしいな」
少し間が空く。
ガイウスが言う。
「どんな課題になるんだろうな」
テオドールが答える。
「恐らく討伐や調査だろう」
理論的な推測だった。
ルシアンは静かに聞いていた。
(……実地訓練)
学園の外。
危険もある。
だが――
ちょうどいい。
実力を見るには。
その時、教室の扉が開く。
レオニードが入ってくる。
教室の空気が引き締まる。
「席に着け」
短い声。
全員が動く。
レオニードが周囲を見渡す。
「遠征学習について説明する」
その言葉に、教室の空気が変わる。
いよいよ――
遠征学習が、始まろうとしていた。




