第111話
第111話
「テオドール」
テオドールが前へ出る。
「相手は――ガイウス」
ガイウスが軽く肩を回しながら前に出る。
「よろしくな」
テオドールは軽く頷くだけだった。
「……ああ」
二人が距離を取る。
ガイウスは大楯を構える。
左手の大楯。右手には片手剣。堅実な前衛の構えだった。
対するテオドールは、杖を軽く持つだけ。
「始め」
レオニードの合図。
ガイウスが前に出る。
速くはない。だが無駄がない。
盾を前に構え、確実に距離を詰める。
テオドールが魔法陣を展開する。
雷撃。
ガイウスは盾で受ける。
衝撃が走る。
だが止まらない。
さらに前へ出る。
(……硬い)
ルシアンは静かに見ていた。
ガイウスは防御を重視している。
無理に攻めない。
まずは距離を詰める。
堅実な戦い方だった。
テオドールが風魔法で距離を取る。
ガイウスは追う。
雷撃。
盾で受ける。
地魔法。
足元が揺れる。
だが盾を支えに体勢を維持する。
(……安定している)
ガイウスの動きは派手ではない。
だが崩れない。
そして――
距離が詰まる。
ガイウスが踏み込む。
盾で押し込む。
テオドールの体勢が崩れる。
片手剣が伸びる。
だが――
閃光。
視界が白くなる。
ガイウスの動きが一瞬止まる。
その隙。
テオドールが距離を詰める。
杖を向ける。
喉元へ。
「……そこまで」
レオニードの声。
テオドールが杖を下ろす。
ガイウスが苦笑する。
「惜しかったな」
テオドールは静かに言う。
「盾がなければ、もっと早く終わっていた」
冷静な評価だった。
ガイウスは笑う。
「盾があるのが俺だからな」
その言葉に、テオドールはわずかに頷いた。
「……それもそうか」
戻ってくる。
ノエルが小さく呟く。
「……堅い」
短い評価だった。
ルシアンは静かに頷く。
(……前衛として優秀)
守りが堅い。
無理に攻めない。
パーティの盾として理想的だった。
レオニードが再び口を開く。
「次」
「ノエル」
ノエルが前に出る。
静かな足取り。
気配が薄い。
(……)
ルシアンの目が細くなる。
ノエルの存在感が、消えていた。
まだ戦闘前だというのに。
斥候の動きだった。
相手の名前が呼ばれる。
模擬戦が始まろうとしていた。




