第108話
第108話
レオニードの指示で、Sクラスの生徒たちは移動を始めていた。
向かうのは実戦訓練場。
校舎の外にある広い施設だ。
ルシアンはレオンとガイウスの隣を歩いていた。
「戦闘授業か」
ガイウスが少し楽しそうに言う。
「いきなりだな」
「Sクラスだからな」
レオンが答える。
「実力を見る意味もあるんだろう」
ルシアンは静かに歩きながら、ふと口を開いた。
「……レティシアですが」
レオンがわずかに反応する。
「ずいぶん親しそうでしたね」
レオンは少しだけ息を吐く。
「……同じ国だからな」
それだけでガイウスは納得する。
「ああ、なるほど」
だがルシアンは続ける。
「それだけではなさそうでしたが」
レオンは少し沈黙する。
そして小さく答える。
「俺が勇者として国に呼ばれるようになってから、いろいろ教えてもらった」
礼儀や振る舞い。
王族との接し方。
貴族との距離の取り方。
そういったことを。
ガイウスが感心したように言う。
「へぇ、面倒見いいんだな」
「……まあな」
レオンは曖昧に答える。
少し間を置く。
「苦手だけど」
ガイウスが笑う。
「苦手なのかよ」
「悪い人じゃないんだけど……」
レオンは言葉を選ぶ。
「なんていうか……」
少し考える。
「見透かされてる感じがする」
ルシアンは静かに聞いていた。
(……なるほど)
確かにそういう印象だった。
人を観察し、内面まで見ようとするタイプ。
レオンはそれ以上言わなかった。
本当は知っている。
レティシアの素の性格を。
だが、それは口にしなかった。
やがて実戦訓練場が見えてくる。
広い空間。
すでに数名の生徒が集まっていた。
レオニードが前に立つ。
「集まったな」
低い声が響く。
全員の視線が向く。
「今日は戦闘授業だ」
短く告げる。
空気が引き締まる。
「まずは実力を見る」
「順に組ませる」
Sクラスの戦闘授業が、始まろうとしていた。




