表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
果てなき世界  作者: 影川明空人
第3章 学園1年目
106/184

第105話

第105話


 ガイウスとレオンの姿が見えなくなる。


 夕方の学園。赤く染まった空が、石造りの建物を淡く照らしていた。昼間の喧騒は少し落ち着き、周囲には静かな空気が流れている。


 残ったのは、ルシアンとクラリスの二人だけだった。


 しばらく沈黙が続く。


 クラリスはゆっくりと視線を向ける。


「それで」


 静かな声だった。


「用って何があるの?」


 ルシアンは落ち着いた様子で答える。


「クラリスが私に用がありそうだなと思ったので」


 一瞬。


 クラリスの表情がわずかに崩れる。


 ほんの少しだけ――笑った。


「……なんだ」


 小さく息を吐く。


「バレバレか」


 柔らかな笑みだった。ほんの一瞬だったが、どこか安心したような空気があった。


「相変わらずね」


 小さく言う。


 ルシアンは何も言わない。


 ただ静かに見ている。


 クラリスは一歩近づいた。


「ねえ」


 少しだけ真剣な声。


「手合わせ、してくれない?」


 ルシアンは視線を動かさない。


 クラリスは続ける。


「なんとなく分かったけど」


 ルシアンの気配を感じ取るように目を細める。


「でも――」


 わずかに視線を向ける。


「実際に、どれくらいあなたと差があるか知りたいの」


 真っ直ぐな言葉だった。


 ルシアンは少しだけ沈黙する。


 そして静かに答えた。


「……いいですよ」


 短い言葉。


 クラリスの表情がわずかに柔らぐ。


「助かるわ」


 小さく言って背を向ける。


「ついてきて」


 歩き出す。


 ルシアンは静かに後を追う。


 並んで歩く。


 夕暮れの学園は静かだった。昼間より人の数も減っている。


 しばらく無言が続く。


 だが、その沈黙は不思議と自然だった。


「手合わせも一年ぶりね」


 クラリスが前を見たまま言う。


「……ええ」


 ルシアンが短く答える。


 クラリスは小さく息を吐く。


「前は……」


 少しだけ言葉を止める。


「まだ、追いつけると思ってた」


 ルシアンは何も言わない。


 クラリスも、それ以上は続けない。


 やがて、校舎の奥へと進む。


 人の気配がほとんどなくなる。


 さらに奥へ。


 クラリスが立ち止まった。


「ここよ」


 扉の前だった。


 クラリスが手をかざす。


 魔法陣が一瞬だけ光る。


 扉が静かに開いた。


 中は広い空間だった。


 外の訓練場よりも整えられている。床には精密な魔法陣が刻まれ、結界も張られているのが分かる。


「私に与えられている個人訓練場」


 クラリスが言う。


 静かな空間だった。


 誰もいない。


 外の音もほとんど聞こえない。


 クラリスが歩き、中央で立ち止まる。


 ゆっくりと振り返る。


「久しぶりね」


 静かな声。


 ルシアンも数歩進む。


「……ええ」


 短く答える。


 クラリスは剣を抜く。


 静かな音が響く。


 構える。


 ルシアンも静かに立つ。


 空気が変わる。


 夕暮れの光が差し込む中。


 二人の距離が、ゆっくりと詰まっていく。


 互いに視線を外さない。


 静かな緊張が、空間を満たす。


 そして――


 クラリスの足が、わずかに動いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ