第104話
第104話
クラリスは振り返り、軽く腕を組んだ。
「担任から軽く説明はあったと思うけど――」
そう前置きしてから歩き出す。
「この学園は基本的に選択制よ」
中央棟の廊下を進みながら説明を続ける。
「必修はあるけど、それ以外は自分で選ぶことになるわ」
ガイウスが少し驚く。
「結構自由なんだな」
「自由な分、結果は全部自分に返ってくる」
クラリスは淡々と言う。
「伸びるかどうかは自分次第」
レオンが頷く。
「合理的ですね」
クラリスは軽く肩をすくめる。
「この学園らしいでしょ」
やがて、大きな扉の前で立ち止まる。
「ここは模擬戦訓練場」
扉を開けると、広い空間が広がっていた。区画ごとに魔法陣が刻まれ、いくつもの戦闘スペースが用意されている。
「模擬戦や実戦訓練に使うわ」
ガイウスが目を輝かせる。
「すげぇ……!」
「こういう場所もいくつかある」
クラリスは続ける。
「ただし――」
少しだけ間を置く。
「ランキングによって使える場所が変わる」
ルシアンが静かに視線を向ける。
「ランキング制度があるの」
「ランキング?」
ガイウスが聞き返す。
「二種類ある」
クラリスは歩きながら説明する。
「クラス内ランキングと、全学年共通ランキング」
レオンが少し驚く。
「全学年ですか」
「ええ」
クラリスは頷く。
「模擬戦、任務、評価。それらすべてで順位が変動する」
「強い者が上に行く。それだけ」
静かな言葉だった。
「上位に入れば待遇も変わる」
クラリスは続ける。
「特別任務、個別指導――」
そして。
「個人訓練場も与えられる」
ガイウスが驚く。
「個人?」
「各学年のランキング上位五人まで」
クラリスはあっさり言う。
「専用の訓練場が使える」
レオンが視線を向ける。
「クラリスさんは……?」
クラリスは軽く答える。
「二年の三位」
それだけだった。
ガイウスが目を見開く。
「え……?」
「だから、使えるわ」
淡々とした口調。
だが、その実力は明らかだった。
ルシアンは静かに聞いていた。
(……なるほど)
個人訓練場。
人目を避けて動ける場所。
(悪くない)
内心で評価する。
クラリスはそのまま歩き続けた。
「図書館はあっち」
「寮は向こう」
「食堂は中央棟の裏」
淡々と案内が続く。
訓練施設、実戦区画、生活区画。いくつもの場所を回っていく。
――そして。
気が付けば、空が赤く染まり始めていた。
夕方だった。
ガイウスが空を見上げる。
「もうこんな時間かよ」
クラリスも足を止める。
「一通りは案内したわ」
軽く言う。
「他にも色々あるけど、それはまた今度」
レオンが頷く。
「ありがとうございました」
ガイウスも笑う。
「助かったぜ!」
クラリスは軽く頷いた。
「今日はここまでね」
少し沈黙。
その時、ガイウスが言う。
「なあ、飯行かねぇか?」
レオンを見る。
「せっかくだし」
レオンは少し考え、頷いた。
「いいですね」
ガイウスがルシアンを見る。
「ルシアンも来るか?」
ルシアンは首を横に振る。
「いえ、少し用があります」
短く答える。
ガイウスが肩をすくめる。
「そっか、また今度な」
レオンも軽く頷く。
「では、また明日」
二人は歩き去っていった。
その場に残るのは――
ルシアンとクラリス。
静かな空気が流れる。
クラリスがゆっくりと視線を向けた。
わずかに、表情が変わる。
先ほどまでとは違う空気だった。




