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果てなき世界  作者: 影川明空人
第3章 学園1年目
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第100話

第100話


 翌朝。


 アーカディア学園の正門前は、早くから人で溢れていた。石畳の広場には受験者たちが集まり、落ち着かない様子で掲示板の方を何度も見ている。緊張、期待、不安。様々な感情が入り混じった空気だった。


「まだかよ……」


「そろそろ貼り出されるって聞いたぞ」


「今年、相当多かったらしいな」


 そんな声があちこちから聞こえる。


 ルシアンは少し離れた位置に立っていた。人混みに入る気はない。どうせ結果は変わらない。


 その隣に、静かな声が落ちる。


「来ていたか」


 振り向くとグランヴェルがいた。ヴァルクと、その隣に一人の女性。昨日の決闘が嘘のように、三人とも落ち着いている。


「おはようございます」


「ああ。昨日は世話になったな。とても有意義な時間だった」


 ルシアンも頷く。


「ええ。私もです」


 その横で、女性が一歩前に出る。


「まだ名乗っていませんでしたね」


 落ち着いた声だった。


「ディアナ・リーヴェルです」


「帝国の武門、リーヴェル家の人間です」


 軽く一礼する。


「ヴァルクと同じく、将来的には騎士団の中核を担う立場になります」


 ヴァルクが肩をすくめる。


「つまり皇子の護衛だ」


 ディアナは小さく笑った。


「そういうことになります」


 その時だった。


 学園の職員が数人、紙を持って現れる。ざわめきが一気に大きくなる。


「来たぞ!」


「貼られる!」


 掲示板に紙が貼り出される。


 瞬間、人の波が一斉に押し寄せた。


「見えねぇ!」


「押すな!」


「番号どこだ!?」


 混乱と歓声が入り混じる。


「やった!!」


「落ちた……」


「くそ……!」


 結果はすぐに広がっていく。


 グランヴェルは動かない。腕を組んだまま、静かに待っている。やがてヴァルクが人混みから戻ってきた。


「皇子」


「どうだった」


 ヴァルクは苦笑する。


「聞くまでもないでしょう」


「首席です」


 グランヴェルは軽く息を吐く。


「……当然だな」


 ディアナが紙を確認する。


「二位はレティシア・バルセリオン」


 グランヴェルが頷く。


「順当だ」


 ディアナは続ける。


「三位はフィアナ」


 ルシアンはわずかに視線を動かす。


(聖女)


 やはり上位。


 ヴァルクが続ける。


「四位テオドール・ウォーデン」


「五位レオン」


 グランヴェルがわずかに口元を緩める。


「勇者か」


 ヴァルクが言う。


「どうやら本物みたいですね」


 ルシアンは静かに納得する。


(レオン)


 あの少年の姿が思い浮かぶ。


 ヴァルクはさらに紙を見る。


「七位……俺ですね」


 肩をすくめる。


「まあ悪くない」


 ディアナも続ける。


「十一位、私です」


 ヴァルクが笑う。


「しっかり入ってるな」


 そしてヴァルクが紙を見直す。


「十五位」


 視線がルシアンへ向く。


「ルシアン・ヴェルグレイヴ」


 グランヴェルが静かに言う。


「……予定通りか?」


 以前よりも低く、確信を含んだ声だった。


 ルシアンは何も言わない。


 グランヴェルはそれ以上追及しない。ただわずかに笑った。


「まあいい。ここからだ」


 その視線が掲示板へ向く。


 そこには、さらにもう一枚の紙が貼られていた。


 ――クラス分け。


 ざわめきが再び広がる。


「Sクラスどこだ!?」


「名前あるか!?」


 新たな序列。


 新たな舞台。


 アーカディア学園での生活が、ここから始まる。


 ルシアンは静かに掲示板を見つめていた。


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