第131話 令和20年初場所
「良かったんですか本当に?」
「良いも悪いも弟弟子に後を任せる訳にもいくまい。」
「それより自分で言うのもなんだか部屋の稼ぎ頭がいなくなったんだ。その辺りは中村と山中の両横綱に頑張ってもらわねーとな。」
「でも色々あったし今場所は稽古不足ですよ?」
「言い訳がましいのは嫌いだ。お前らならやれる。これは亡き親方に捧げる白星なんだ。」
と、まぁ親方ぶった所で30歳にも満たないちょんまげ親方の言う事には説得力が無かった。場所入りすると、新時津川親方には相撲協会の仕事が山積していた。
「おい、おい。現役時代の成績なんかまるで加味されないんだな?まぁ確かに親方としては最下級の年寄だから仕方無いな。」
「スーツ一式揃えたけどもう一式揃えるか。」
「何言ってんのよ?今までのもあるんだし、少しはダイエットしなさい。」
「ゆいPも女将さんらしくなってきたじゃないか?」
「本来ならもう少し現役を続けて欲しかったわ。まぁ、事情も事情だし仕方無いか?」
「仕方無いな…やないで。俺の体はボロボロだったんだぜ?」
「そうなの?他に痛めていた所はあったの?」
「あぁ、色々とな。前親方の死は想定外だったけと、まあ30歳が一つの節目になる事は俺も覚悟していた。」
令和20年初場所は中村が制し、何とか前時津川親方への弔い場所を部屋の力士が制した。
「おめでとう中村!つーか協会の仕事が多すぎて全く見れんかったわ。でもお客さんが泣いてるのは目に見えていたぞ。天国の親方(先代)にも祈りが届いちゃうんかな?」
「親方?いつから関西弁に?」
「引退して親方になったら大好きな関西弁で指導しようと思うてたんよ。」
「何か違和感ありますね。」
「そうよ。貴方新潟の出身じゃない?」
「ちなみにワイは学生時代からガンガン大阪弁使うてましてな。もう現役力士を引退したんさかい、解禁やで。」
「普通に話せば?やっぱり変よ?」
「パパはどんな言葉を話してもパパだから俺は良いと思う。」
「オラもそう思う。」
「おいらも。」
「子供の支持は大きいで。」
「ねぇ?ママ?いつになったら稽古させてもらえますか?」
「それはパパ(親方)が決める事よ。」
「中学生になって身長が165cmを超えたらな。部屋の力士とガンガン稽古させてやるよ。」
「マジかよ。」
「あぁ、ガチだ。」
「竜二、竜三聞いたか?」
「あぁ、ボイスレコーダーに入っている。」
「ご飯沢山食わなくちゃな!」
「お前達本当に中学を卒業したら、時津川部屋に入門するのか?」
「だって他にやりたい事ないし、パパだって中学卒業してから10代で横綱になっているじゃないか?」
「そんなに甘いもんじゃないぜ?パパとしては高校を出てからでも…。」
「その3年間が大事なんじゃない?」
「そうだよ、竜一兄ちゃんの言う通りだぜ?安定なんか求めていたら関取にすらなれないよ?」
「史上初の三つ子の横綱になる。師匠に捧げる白星っていつも口うるさく言ってたんじゃん。それと同じだよ。」




