第121話 令和19年初場所
横綱66場所目のコシはとある会社に頼まれCM制作を行っていた。当初はかなり渋って撮影に難色を示していたコシであったが、親方から気分転換に行ってこいと言われた。
「コシ関がCM?」
「どんなCMかは非常に気になりますね。」
「親方もよく許しましたね?」
「まぁ、相撲漬けだったしな。」
「気分転換でやるような事じゃねーだろ?」
「あ、コシ関!お帰りなさい。」
「コシ?どうだった?」
「もう最悪だよ。これがCMとして地上波に流れるのかと思うととても憂鬱だ。」
と、まぁすったもんだあったが、収益がそのまま部屋に入ると言う事で手打ちとなった。
コシは稽古を再開し、クリスマスや年末年始を返上して家には帰らず部屋で過ごした。
「なぁ、中村?俺はもう限界かもしれない。」
「何言ってんすか?まだ老け込む様な年じゃないっすよ?」
「横綱になって11年。充分じゃねーか?」
「弱気になるなんてコシ関怪我でもしたんですか?」
「いや怪我はしていないし、病気でもない。」
「では何故?」
「早熟だったからな。あと何年横綱を張れるか分からん。」
「何言ってんですか?まだ20代じゃないですか?まだまだやれますって。」
「そうかな?」
と、自分の将来に一抹の不安を覚えるコシであったが、土俵に上がるとそんな気持ちは失せていた。だが、相撲の神様はコシに試練を与えた。3連勝して迎えた初場所4日目結びの一番で西前頭3枚目の焼津丸との一番で、ぶちかましに失敗。後手後手になり焼津丸に押し出しで敗れた。その際、土俵下に転落。右足アキレス腱を断裂する大怪我を負った。即座に力士用車イスに乗せられ救急車で運ばれた。
「あいってー!」
「横綱!起きないでください。」
「どこ怪我したの?」
「右足アキレス腱断裂です。」
「マジかよ!?全治どのくらい?」
「相撲診療所の見立てでは全治6ヶ月だそうです。」
「とりあえず入院してもらいますので、ご家族に連絡しますね。」
「入院?パパが?」
「みんな?ママ病院に行くけど留守番よろしくね。」
「えー?僕も行く!」
「なら俺も!」
「二人が行くなら俺も!」
「じゃあ急いで準備しなさい。」
「パパ!!」
「あなた!」
「右足アキレス腱断裂だってさ。全治6カ月だと。」
「それだけ?」
「あぁそれだけ。」
「パパ休場するの?」
「ああ。大怪我だからな。力士生命に関わるかもしれない。でもパパはまた優勝するぞ!」
「本当?」
「あぁもちろんだ。約束する。」
「コシ!」
「親方!すみません。ご心配をおかけして。」
「怪我の状態は主治医から聞いた。周りは騒ぐかも知れないが、まぁ気楽に行こう。」
「親方…。」
「力士生命に関わる怪我にならないと良いのですが。」
「あぁ大丈夫。必ず復活させるよ。」
時津川部屋では大きな混乱があったが、中村と山中の二人の横綱が中心となってマスコミ対応していた。
「コシ関ィー!」
「ったく場所中だってのによ。」




