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真・土俵の鬼達〜師匠に捧げる白星(ホワイトスター)〜  作者: 佐久間五十六


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第119話 令和18年九州場所②

キリキリとした優勝争いをしている時に物を言うのは、やはり日頃の稽古量の貯蓄である。

「一番一番に集中します。」

と、簡単に言うが目の前の一番だけに集中するのは当然の事で、優勝する為には物足りない。とは言え15日間戦って全勝する為には稽古するに他はない。数多の修羅場を乗り越えて来たコシの様な大横綱でも一寸先は闇と言う。とは言え経験値や稽古の貯蓄でコシは優勝して来た。コシと他の力士の違いはそれだけの事である。コシの師匠の時津川親方もコシの強さは、その豊富な稽古量に耐え得る強靭な肉体にあると言う。特に目立った筋トレはしていないが、相撲に必要不可欠な筋力は他力士のついづいを許さない。コシはそれに加えて怪我をしない。コシ曰く、弱いから稽古量不足だから怪我をすると常に言ってきた。そんなコシの強さを体現するかの様に2場所ぶり51回目の幕の内最高優勝を成し遂げた。


決まり手の9割が押し出しか寄り切りで、豪快な投げ技や引く相撲は皆無であった。とにかく前に出る相撲。それが第75代横綱越乃海の真骨頂である。だが、そう言う突き押しだけでは乗り越えられなかった時期に覚えたのが右寄つの型である。もしまわしにを引いてしまった場合には咄嗟に神の右をさっと取る。相手も頭では理解していても、コシはその上を行く技術力で上手く右寄つになる。初代大鵬や千代の富士や貴乃花や白鵬と言った名だたる名横綱さえなしえなかった優勝50回超え。コシは正に相撲の申し子であった。


「ゆいPただいま。」

「あなた!早かったわね。」

「優勝祝賀会途中で抜けて来た。最低限の荷物だけ持って東京に戻って来た。子供達は?」

「こんな時間だしもう寝てるわ。あなたが帰ってくるのを心待ちにしてたのよ?テレビの前で父親が優勝したから友達からはヒーロー扱い。」

「そっか。それより腹減ったわ。何か食べたい。」

「お茶漬けでも良い?」

「ありがとう。それ食べたらもう寝る。俺もうクタクタだわ。」

「了解。」

「親方!コシ関、昨夜の便で東京帰ったらしいですわ。」

「まぁ、奴にも考えがあっての事だろう。」

「今まではこんな事は無かったんですけどね?」

「山中?お前も結婚して子供を持てば、コシの気持ちが分かるはずさ。」

「コシには俺の方から厳しく言っておくから、許してやってくれ。」

「はい。」

「コシ?どうして何も言わず東京へ帰った?」

「すみません。酒飲み過ぎていたら急に家族に会いたくなって。」

「お前はもうルーキーじゃないんだぞ?部屋頭なんだからしっかり自覚を持て。」

「はい。すみません。」

時津川親方にこってり怒られたコシは既に次の場所を見据え始動していた。

「これで良いだろ?」

「すみません親方。」

「こうでもしないと示しがつかないからな。」

「コシ?お前ももう28歳なんだ。勝手な行動は許されない。」

「あ~はいはい。」

「なんだその態度は?鉄砲5000回だ!」

「ひえ~。」

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