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真・土俵の鬼達〜師匠に捧げる白星(ホワイトスター)〜  作者: 佐久間五十六


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第117話 令和18年秋場所①

横綱64場所目のコシは熱中症対策の為、夏場は夕方から夜にかけて稽古をし、朝から昼は冷房の効いた部屋でライバル力士の傾向と対策をするなどして、工夫をこらしこの酷暑を乗り切ろうとしていた。

9月に入っても暑さは衰えず、寝苦しい日々が続いた。夜間集中型の稽古は暑さに対しては一定の効果があるものの、リズムを崩しやすくもとに戻すのが大変だと言うリスクもあった。最も夜に稽古をする部屋は少なく、どんなに暑くても朝から昼の時間帯に稽古をしている部屋がほとんどであった。

「コシ関?もう23時を過ぎてますよ?」

「朝昼稽古をしていないんだから、てっぺんまわっても稽古をしねーと駄目だろ?」

「そうですよ中村さん?日中は冷房ガンガン効かせてアイス食いながら、ライバル力士の研究をじっとして、夕食からの稽古ですからね。昼寝の分を差し引いても夜型稽古だとどうしても、こんな時間になっちゃいますよ。仕方ないじゃないですか?」

「量より質だ中村。」

「そりゃそうなんすけどね。やっぱ夜型稽古は体内リズムが狂ってしまうと言うか…。」

「あのな?このクソ暑い中、ただでさえ暑苦しい俺達力士がぶつかり合うなんて、時代錯誤だぜ?」

「確かに地球は温暖化していますからね。」

「っだから夜型稽古に切り替えているんだろうが?」

その熱中症対策が功を奏したのか、場所入りしてからの時津川部屋勢の活躍はすこぶる目立っていた。特に時天山(中村)、時虎丸(山中)の両横綱は初日から8連勝で、中日給金直し。コシも7勝1敗とまずまずの秋場所前半戦だった。

「ねぇ?あなた?私、おかみさんになるのよね?」

「まぁ、そう遠くない将来にはなるがな。」

「私、子育てで精一杯で女将修行なんて全くしてなかったから、不安だわ。」

「まぁ、それで良いんだよ。その気持ちがあれば、ゆいPに覚悟があるならそれが一番大事なんだ。3人の子供も、それぞれ自分の事は自分で出来る年齢になったしな。」

「本当に3人とも、力士になる気なのかしら?」

「いや、そりゃ本人達が決める事だから。俺やゆいPの気持ちは二の次さ。それに今は一生懸命相撲に取り組ませてはいるが、勉強していくうちに他にやりたい事が出てくるかもしれないからな。寧ろその方が確率としては高い。」

「でも、こんな親だと子供達も意識しちゃうでしょ?だって横綱だよ?お金の心配はいらないし、怪我や病気さえ無ければ、そんじょそこらのサラリーマンの年収なんか軽く越えられるでしょ?」

「まぁ、金目的で力士になろうなんて奴は本質的に駄目だよ。そう言うのはモチベーションにはなるけど、上がれても関脇までだな。大関や横綱になる為には、やっぱり心の底から強くなりたいと思って、ひたすら努力出来る奴じゃないと駄目だな。まぁ、言われなくても嫌と言うほど相撲をとっていれば、そんな事は理解しているはず。努力出来るのは立派な才能だし、それは相撲に限らない。」

「わが子にも容赦はしないのね?」

「それが大相撲の伝統であり、しきたりだからな。親方と弟子ってのはそう言うもんさ。」


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