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真・土俵の鬼達〜師匠に捧げる白星(ホワイトスター)〜  作者: 佐久間五十六


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第116話 令和18年名古屋場所②

久し振りに優勝争いに加わっている事を嬉しく思う反面、コシは体力の衰えを感じ出していた。強力な突き押しを可能にして来た腕も日々の鉄砲で酷使して来たせいか、痛みを感じる様になった。それでもコシは体に鞭を打った。多少の衰えや腕の痛みなど、稽古不足の証しだと言い聞かせ、横綱の責任を全うしようとしていた。

だが、病院で診てもらうと意外な診断が出た。重度の熱中症と診断されたのだ。体力の衰えや腕の違和感は全て熱中症のせいだった。名古屋は連日35℃越えの猛暑。入院には至らなかったが、体を冷却し生理食塩水を点滴しながら何とか、9日目以降も出場した。付け人に首を氷であててもらいながら、その日の一番に集中した。体調は万全とはほど遠かったが、いざ取り組みとなると人が変わった様な強さを見せた。だが、スタミナ温存の為なるべく突き押しの短期決着を心がけていた。

と、あれこれ工夫し迎えた14日目。ここまで無敗の越乃海と、綱取りで同じく全勝の大関武蔵山との直接対決の一番が組まれた。コシのコンディション不良は、大関も承知していていたがまわしを取られ、組止められたら残せる体力は無かった。時津川親方からは、立ち合いとその数秒で勝敗は決する。と言われていた。勿論、コシもそのつもりで腹をくくっていた。ただ、連日の治療の成果もあり熱中症の症状は改善していた。事実上の優勝決定戦を落とす訳にはいかない。それ以上に大関武蔵山は手負いの先輩横綱を倒し、綱取りを決めたかった。

「コシ関!いつも通りコテンパンにやっつけましょう!」

「氷、助かったよ!ありがとう。じゃ、行ってくるな!」

土俵下では中村や山中が既に勝ち残りで控えて結びの一番を見守った。力士の星勘定を把握している観客も固唾を飲んで結びの一番を待ちわびていた。

「越乃海!大横綱!」

と、コシを応援する声もあったが、それよりも綱取りのかかる大関武蔵山への声援の方が大きかった。

「いっちょやったれ!ここが男の見せ所じゃぞ!」

観客の声援はいつも力士達に伝染する。だが仕切っている間に様々な声を耳にしても、ゾーンに入ると集中して耳に入らなくなる。そして呼び出しが立ち上がり最後の塩に分かれた。第43代立行司木村庄之助が結びの一番をさばく。

「まったなし!手をおろして!」

緊張は最高潮に達していた。

「ハッケヨイ!」

立ち合い成立!

「のこった!のこった!」

コシは珍しくかち上げを選択。ぶちかまして来ると思っていた武蔵山は虚を突かれたが、そこからは激しい突っ張り合いになる。まわしがどうしても欲しい武蔵山ではあったが、立ち合いで先手を取れなかった時点で勝負ありだった。押し出しで横綱越乃海が勝利し、全勝対決を制した。翌日の千秋楽、コシは大関若元夏にも勝ち全勝で、3場所ぶり50回目の幕の内最高優勝を達成した。尚、14勝1敗で次点だった大関武蔵山は優勝こそ逃したが、審判部は満場一致で武蔵山を81代横綱に推挙する事を決定。武蔵山の横綱昇進が確実となった。これにより、4横綱2大関体制となり依然として横綱飽和状態が続く事になった。

「コシ関、やっぱ流石っすね。」

「うるせぇ。」

「ヒカリ?少しはコシのガッツを見習え!」

「はい…。すみません。」


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