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真・土俵の鬼達〜師匠に捧げる白星(ホワイトスター)〜  作者: 佐久間五十六


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第115話 令和18年名古屋場所①

横綱63場所目のコシは、途中休場した先場所の悔しさを晴らす為、地道な基礎運動のやり方を改めて見直し、また一から体を作り上げていた。

「フー。あっちぇ。つーか、まだ稽古をするんですかコシ関?」

「あぁ。今、良い感じに仕上がって来たからな。」

「流石っすね。やっぱ先場所の途中休場がこたえたんすかね?」

「中村?邪魔するな!」

「はい。すみません。」

「コシ!その辺にしておけ。」

「まだ、鉄砲を20回…。」

「さっさとやれ!皆ちゃんこ待ちだぞ?」

「すみません。終わりました。」

「このクソ暑い中鉄砲2000回って、半端ねぇっすね?」

「先場所の休んでた分取り返さないとな?」

と、名古屋に入ってからもバキバキに肉体をいじめ抜くコシであった。

初日は前頭2枚目の鳳凰戦。立ち合いからぶちかまして、鉄砲で鍛えた突き押しで圧倒した。10秒かからず押し出した。2日目、3日目と格下相手に自信を持っている立ち合いからのぶちかましで、相手を起こしそこからの喉輪やテンポの良い突き押しで押し出す。まわしに一切手をかけさせない横綱相撲で、中日給金直しを決め、優勝争いをリードする前半戦となった。一方、綱取りの大関武蔵山も中日給金直し。試練の後半戦に臨む事になった。

「稽古は嘘をつきませんね?」

「山中?」

「時間があれば、しこを踏み摺り足をして鉄砲をする。家族との時間を削ってな。まぁ、家の家族はこれが親の仕事だって理解があるからな。何も言わないんだ。つーか、家でリモートワークって訳にはいかんからな。」

「まぁ、確かにそうなんですけど、たまには三つ子さんの所へ帰ってやって下さいよ。」

「まぁ、今は場所中だからな。とは言え、先場所後から三つ子には会っていない。」

「え?マジすか?」

「妻ともライン電話以外で顔を合わせる事もない。」

「たまには家に…。って今は無理がありますよね?」

「テレビの前で応援してくれているとは聞いている。」

「大記録もかかっていますしね?」

「山中?心配してくれてありがとう。」

「そりゃ、心配しますよ。先場所後から何かに取り憑かれたように、狂った量の稽古をしていましたからね。」

「そう見えたか?」

「はい。師匠は基本コシ関には何も言いませんから。」

「放任主義だからな。」

「いや、きっともうコシ関は師匠のカバー出来るレベルを超えちゃってるから、師匠も何も言えないんですよ。」

「いや、まだ改善の余地はある。」

「親方!?」

「左寄つや左まわしの可能性については、まだ開拓していないはずだ。」

「神の右がとれなくても、勝てるようになればきっと突き押しに頼らなくとも楽に勝てる幅が広がるかもな。」

「山中との会話全部聞いていたんですか?」

「稽古場から声が聞こえていたからな。丸聞こえだよ。」

「左も神になったらもうその先どうなってしまうんですかね?」

「まぁ、それは容易な事じゃないよ。」

「確かに。ぶちかましもかち上げももろはずも、基本的にはまわしを取らせないためにやっている訳で、まわしを取られたら右寄つに行くという二段階作戦を狙っていますからね?」

「左が上手く使えるなら、とっくの昔にやってるよ。そこだけは横綱越乃海のWEEKポイントとも言える。」

「対越乃海戦では、左寄つにさせる。これは昔から研究されているが、コシは出稽古に滅多に出ないから中々、突破口を見出せていない力士が多いのは確かだな。」

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