【EPISODE13 NEVERTHELESS WE ARE(ネヴァーザレス ウィーアー】
べリオ♂
ディール♂
ムーンライト♂
パウロ♂
トロイ♀
フラワ♀
カリオストロ♀
N♂♀
NOAHZ隊員A、B♂♀
セイヴァージーク作業員A、B♂♀
部屋に響く謎の男性アナウンスの声/モニターからの声♂
フラワ:な.....................
トロイ:え.................
フラワ:ッッ!!!
<トロイに向けて警戒するように睨みつけた後にテーザー銃を向けるフラワ。>
トロイ:何を...何をするのフラワちゃん!
フラワ:分かってる!私だって貴女を信じたい.....!
でも、”パイロット”の単語...!見過ごせないわ!
一目見れば分かる、あの天使のような機体のスペックの高さ!
あんな形状、装備の機体が量産化されているわけはない...!
ワンオフの機体なのは明白!
そのパイロットが貴女だなんて...!
トロイ:ち...ッ、違う!本当に心当たりはないの!
今の今まで私は機械に疎くて、戦争だって怖くて、そんな私がどうしてパイロットだなんて...!
フラワ:”そのつもりが無い”人間を兵士に作り替える方法を私はいくらでも知っているわ!
薬品、記憶操作手術、洗脳... 貴女の悪意の有無は判断材料にならないの!
.....分かって。
トロイ:そんな事....言われたって.....!私は...!
部屋に響く謎の男性アナウンスの声/モニターからの声:分かってここに来たのか来ていないのか...。
今この映像を見ている君に時間が残されているのかいないのか...。
済まない。今の私にとってそれを慮ってやれないのが歯がゆいよ。
では...本題だ。
フラワN:....。
先ずは、このモニターの映像を見てから...。ね。
部屋に響く謎の男性アナウンスの声/モニターからの声:このセントロロフス教会。
表向きは孤児院と教会だ。
だが、真実は...。
社会的な地位が低い、NOAHに一定額以上の税金を納めなかった等の理由から──────
労働力としてフェザーポータルに送られた地球圏のCT技術研究所の人間によって作られたラボの隠れ蓑─
それが......
トロイ:そ....んな......。
部屋に響く謎の男性アナウンスの声/モニターからの声:────────────このセント・ロロフスだ。
フラワN:聞いたことがある...!
CTはあくまで作業用の技術...!
ランドスタッド研究が進み、スペリオルの量産レーンが確立されてからはCTの研究者は低く地位を見られた...ッて.....!
まさか...ッ!無理やりフェザーポータルに住まわされていたなんて....!
部屋に響く謎の男性アナウンスの声/モニターからの声:私達はこのコロニーの第一移民であった。
このコロニーは貧しく、NOAHからは明らかに重要視されていなかった。
職業の需要はほぼ無く、技術的な支援や教育の支援もほとんど行われなかった。
....だが、我々は諦めなかった。
トロイ:.....ッ.....。
部屋に響く謎の男性アナウンスの声/モニターからの声:フェザーポータルで、また一から始めようと思った。
何故なら...この広い宇宙で、絶望を持ったまま生きる事が、何よりの苦痛と私達は分かっていたからだ。
このコロニーで、職を生み出そう。私達が作ったCTで。土木、運搬、建築、国防、とにかくCTで生み出せる需要は可能な限り生み出そうと。
相も変わらず貧しいままだったが、私達の努力は身を結んだ。
少しずつ、少しずつ。気の遠くなるほど長い道のりではあったが、少しずつフェザーポータルは豊かになっていった。
私達の次の世代。いや、次の、次の世代。その頃には、きっと豊かなコロニーとして。宇宙への不安など持たずに生きていけるような、そんなコロニーになると私達の誰もが信じていた。
──────そう私達が感じ始めた時。奴が現れた。
....ズング・エルウリ...───。
フラワN:ハッキングした時に見た名前...!確か....ズングソーイより三代前の...!
部屋に響く謎の男性アナウンスの声/モニターからの声:恐らく、私達のコロニーが自分の力で立て直しを図っているのを見て、目を付けられたのだろう。
このコロニーに早いうちから権力者として君臨する事で、己の名誉となる、とでも思ったのであろう。
ズング・エルウリは嬉しそうにコロニー代表の演説をしていた。
──────結果、このコロニーは死の大地となり果ててしまった。
私達のCT技術に目を付けたズング・エルウリは、私設軍の兵隊用ランドスタッドを秘密裏に設計させ──────
人々は再び飢え、宇宙海賊をむやみに刺激し敗北を続け、大地は荒れ果てていった。
────今度こそ、限界だった。私達は、最早武力を手にするしかないと悟った。
...『PROTOCOL GOSPEL』(プロトコル ゴスペル)。
ズングの為に設計した機体を圧倒し、ズングの政府を転覆させるだけの機体を量産しようという計画....。
孤児院兼教会の下にラボを構え、そして出来上がったのが───CT・ARGC。
だが....この機体の量産レーンは確立が難しかった。ズングの軍の為の機体の建造から出た余剰パーツで組み上げていく作業は、量産などできるはずもなく...建造のペースは遅く、効率的ではなかった。
そして同時に、パイロットを選ぶ必要もあった。
トロイ:.....!!(目を見開いてモニターを見る)
フラワ:それが...!
部屋に響く謎の男性アナウンスの声/モニターからの声:CT・ARGCは、空間を三次元的に動かす専用武装...W.I.N.G(ワイヤレス インタラクティブ ニューロン ジェネレーター)を主武装としている。
これを操るには、非情に柔軟...且つ、システムに拒否反応を示さない脳組織受容体を持つ人間にしか動かせない。
....私達には、時間も、物資の余裕も残されていなかった。
何せ、寛容性の高い脳組織受容体を持つのは統計で見れば若い女性の割合が圧倒的に大きい...。
私達では老いてしまい、動かせはしなかった。
だがこの計画が露呈すれば私達は殺され、技術はズングに押収されてしまう。
大手を振ってパイロットを募集など出来るはずもなかった。
...だが、私達の居るこの教会には、大勢の人間がいた。
フラワ:そんな!!!
非人道的過ぎるわよ!
本人たちの了解も得ずに...こんな幼い子達しか居ないこの教会で!
部屋に響く謎の男性アナウンスの声/モニターからの声:...我々は教会に来た孤児たちに、片っ端から”洗礼”という名目で聖堂の懺悔室で簡易脳組織受容体調査を行った。
合格した能力値を持つ子供たちの中でトップの数値を持つ人間を最初の”シスター”とし、初代シスターに真実をこの映像で伝えた後にCT・ARGCのパイロット手術をここで行い...、
初代以降のシスターは初代シスターによって”次のシスター”として任命される。
ある日...それは、パイロットとしての適齢期───つまり、この映像を見ている今。
先代に教えられた聖堂で決まった順番に蝋燭に火をつけ...ここに来て、真実を知り、君もパイロットとなるか選ぶこととなる。
トロイ:.............嘘...............。22歳の誕生日の儀式.....って.....。
<とさっ、と穴から腕が抜け、そのままへたり込んでしまうトロイ>
フラワ:....このラボへの道が開けるんでしょうね。
トロイ...。
部屋に響く謎の男性アナウンスの声/モニターからの声:何故”シスター”が一人なのか....。
それは、我々のCT・ARGCが完全な完成をしなかったから。量産も絶望的であったから....。
そして......”情報漏洩のリスクが低く、また漏洩した場合でも情報の回収が容易であるから”だ。
フラワN:一人の孤児なら...”どうにでもできる”って意味でしょうね。........どうして。
部屋に響く謎の男性アナウンスの声/モニターからの声:
もしパイロットとしての手術を行う選択を選ばないのも、一つの選択だ。
悪政に耐え続け、立ち向かわぬのも立派な選択だ。
この事実を伝えずに、ただCTに適応する体質の持った人間を次のシスターに任命するのもいいだろう。
....だが、完全な完成をせず、一体しか建造できなかった現状でも、タイミングを見計らえば、きっと。
きっと、このコロニーの運命を切り開いてくれると。我々は信じている。
何年後なのか分からない。
この映像を見ている君が“何代目”なのかも分からない。
しかし確実に言えるのは、ズングのこの愚かな悪政は、ズングの一族の威光がある限りきっと続いていく。
..........託させてくれ。
............謝る事など、出来ようもない。
呪うのならば、呪ってくれ。
勝手に選ばれ、勝手に使命を背負わされ。
勝手に戦えと武器を押し付ける我々が、呪われぬ道理などない。
挙句教会の下で、天使を模した殺人兵器に君を無理やりに乗せようというのだ。
こんな言葉でしか今の私達には表現できないが....
───これが、君の『運命』なのだ。
もし君がシスターとして......“パイロット”になる選択をするのであれば。
このコロニーの為に、ズングの動向に目を光らせてくれ。
そして、時が来たなら。
我々の造った天使と羽根で、未来を切り開いてくれ。
...................我々は明日、ズング・エルウリに下へ出頭命令が出ている。
恐らく...処刑されるのであろう。
逃げ場など何処にも無い。覚悟はもう決まっている。
─────神の下で再会は出来ぬだろうが。
せめて、君の為に祈らせてくれ。
..............以上。
<モニターがブォン...と暗くなると、対照的に地面から4畳ほどの狭さの個室がせりあがってくる。>
フラワN:これは....自動手術室...!
こんなものまで....!
フラワ:手術を受ける必要は無いわ!
かつての先代のシスターだって、真実を知っても手術をしなかった人もいた筈...!
今起きているズング・ソーイだって弱っているわけでは決してない!
貴女が介入する義務なんか何処にも無いわ!
トロイ:.....なんにも。
フラワ:.....え...?
トロイ:なんにもね、私が知らなくて。フラワちゃんたちに出会って無くて。
それだったら、きっと...来年22歳になって、ここにきて。ちょっとショックだったけど、涙を流して...秘密を守って、次のシスターを選んで、波風を立てないように生きて、死んでいったと思う。
フラワ:..........。
トロイ:でもね。ここの教会はもう空っぽ。
....メイもね。フラワちゃんが私に合流する前にね。
喉から血が止まらなくて。お腹がすいた、って言いながら、でも、何も食べられなくて....。
私も、凄く苦しい。怖い。”天使様”になんて、乗りたくない。
でもね。私の心はもう空っぽじゃなくなったの。フラワちゃんに、べリオくんに、ディールくん、それにフラワちゃんの船の皆。
だから....。
私も、欲しい。
皆と肩を並べられる力が。
...そんな顔しないで。
泣く以外に何かできるなら。
もう迷いたくないの。
フラワ:──────トロイ.....!
トロイ:さようなら。
私は、手術を受けるよ。
私も、戦ってみる。
皆と一緒には戦えないかもしれないけど。
このコロニーに生まれてくる次の世代の子たちの為に、頑張ってみるよ。
フラワ:.....ッ......!
トロイ:このコロニーを出ていっても、私はみんなのこと忘れない。
だから、フラワちゃん。私の事、忘れないでね。
N:何も、言えなかった。
フラワが何かを言うには、トロイのその姿は美しすぎた。
“決意”という気高さを纏った彼女の姿は、天使のように見えた。
<そして、踵を返してオートオペルーム(自動手術室)に入っていく。>
フラワ:........っう...ッ!トロイ.....ッ!
N:オートオペルームの扉が閉まり、赤いランプが点灯する。
フラワ:........さようなら。トロイ・ロロフス。
N:そう呟いて、梯子を上る。
月が、慰めるように輝いていた。
<場面転換 時間は現在に戻る。セイヴァージークが地表に向かってエンジンを点火したのを悟り、カリオストロとトロイがパウロとその部下からの射撃を耐えている>
<セイヴァージークのメインデッキ内。>
セイヴァージーク作業員A:ネペンテス、CT・ARGCまでの距離、およそ4.7キロ!
ディール:『この速度でいくと40秒で作戦域です!』
ムーンライト:気ィ張れよォお前らァ!
ディールの眼で見えた地面以外見えてへんのと同じや!
温ィ操縦しよったら死ぬどォ!
べリオ:『さ~~~~~~~~~ァ.....
いつでも来いやァ~~~~!!!』
<場面転換 地表のカリオストロとトロイ>
カリオストロ:『本当だ...!凄い...!!!地面スレスレの飛行だ....!
だがしかし....回収方法は何なんだ...ッ!?
ランドスタッドを掴むアームがあったはずだが.....片方はべリオのジェイルブレイクを固定しているはずだし....もう片方のアームをあの速度で運用できるのか....!?
それにあの船の角度....傾き過ぎている!
.....ん............?』
パウロ:『何じゃァ......アレは.....ッ................
────────────っく....くっくっくっく.............!
餓鬼共ォォォォ~~~~~~~~~~~!』
N:金属が組み合わされ、繋がり、結合していく音。
何かがぶつかり合う音。
次の瞬間、パウロの駆るアオオニの右腕にアオオニの抱えていた銃が連結されていた。
トロイN:......不味....ッ....
N:トロイの直感は当たっていた。
カリオストロ:異常な熱源反応...!?
まさか、このエネルギーそのまま撃つつもりじゃ....ッ!
NOAHZ隊員A:...!!!パウロ中尉機"アオオニ"のイオンエンジン直結レーザーキャノンの軌道を検知!
NOAHZ隊員B:簡易脚部衝撃緩衝剤を持っている隊員はアオオニ周囲脚部への投擲!
<周囲の量産型スペリオルが手りゅう弾をアオオニの足元に投げる。その瞬間手りゅう弾が破裂し、アオオニの足元に灰色の液体が満たされる。
其の液体は瞬時に固まり、アオオニと地面を強く硬く固定した。>
パウロ:『機体への負担が大きいゆえな....!!!こんな餓鬼相手に使いたくは無かったが....!!!
手段を選んではおられん....ッ!
────ッ射撃部隊!半数は頭上のあの艦を狙えィ!
残りの半数と吾で艦が来るまでにこの二匹を消すッッッ!!!』
カリオストロ:『不味い....ッ!
天使擬き!あんなものを撃ち込まれてこの盾は保つのか!?』
トロイ:『....ッ......』
カリオストロ:『クソッッ!!!!!
武装の数も質も差が有り過ぎる......ッ!』
トロイN:『フラワちゃん....ッ!早く....ッ.....!』
パウロ:『充填率....ッ....78パーセント....ッ!クックック....!!!!
貴様ら等塵も残さん...ッ!
地面ごと抉り取ってくれるわ...!!!』
<次の瞬間、パウロのコックピットに”異物検出”の通知が出る>
べリオ:『つぶれ.........。』
NOAHZ隊員A:パウロ中尉!目の前に....ッ!
カリオストロ:『..........!!!べリオの声.....ッ!!!!』
トロイ:『本当だ...!幻聴じゃない...、べリオ君の声..!!!』
N:弱弱しく、そして音質の悪い声がコックピットに響く。
然し、二人はそれをひどく懐かしく、そして鮮明に聞き取っていた。
パウロN:分かっておる...ッ!
これは...ッ....何故...ッ!
こんな...ッ....!
これは...ッ!
べリオ:『目ェ....つぶれ......!!!!!』
パウロ:ランドスタッド用の白兵戦用の────...ッ...!!
トロイ:『カリオストロさんッ!』
カリオストロ:『指図するなッ!分かってるッ!!!!』
パウロ:閃光手榴弾....ッ...──────!!
N:直後、猛烈な破裂音と閃光が戦場を満たす。
それらは一瞬ではあるものの、目をつむったカリオストロとトロイは閃光の衝撃から免れた。
パウロ:『ぐ...ッ....!ぬ.....!!!小賢しいッ....!!!』
べリオ:『とろちゃああああああああああああああああああああああああん!!!!
カリオストロおおおおおおおおお~~~~~~!!!!!』
トロイ:『べリオ君の通信の音質がどんどん良くなってる...!
距離が近づいてるんだ...!』
カリオストロ:『どこだ!?どこなんだい、べリオ!?』
トロイ:『っていうか、もしかして....艦が傾いてるのって....!!!』
べリオ:『気付いてええええええええええええええ~~~!!!
お願ぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~い!!!!』
カリオストロ:『ふ...っ...艦に....!!!
くっついてる......!!!!!』
トロイ:『えっ....あの.....逆さまになって手を振ってるのって....べリオ君~~~~~!?!?!?!』
べリオ:『手ぇ伸ばせぇぇぇぇぇぇ~~~~~~~~~~~!!!!!!!!
ほんで掴めぇぇぇぇぇぇ~~~~~~~~~~~!ガシッとぉおおおおおおおおおおおお~~~~~ッ!』
カリオストロ:『わ...っ、分かったッ!天使擬きッ!
ミスは許されないぞッ!』
トロイ:『う...うんっ....!!!
べリオくん、重かったらごめんね....!』
べリオ:『よろしくおねがいしまああああああああああああああああああああああああすッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!』
N:べリオのジェイルブレイクが、セイヴァージークからぶら下がって万歳をするように手を挙げる。トロイとカリオストロの機体を手で摑まえる算段なのは、見て取れた。
フラワ:『どう...!?
どうなったの!??!?』
N:砂嵐の様なノイズの後に、べリオのコックピットからの通信が入る。
べリオ:『──────取ったぜェッ!!!!』
ムーンライト:うおおおっ....!!!
ディール:『ジェイルブレイクのスペースアンカーの起動を確認!演算によると....宙域までの飛行の固定に耐えうる数値です!』
フラワ:成.....功....ッ!!!!!
セイヴァージーク作業員A:高熱源反応!射撃特化武装と思われる敵機体によるロックオンを検知!
フラワ:く...ッ...そ...!
簡単には逃がしてくれないか.....!!!!!
パウロ:『逃がすものかァァァァァァッ!!!
この際残骸でも構わん!!!
”髭”ごと堕ちろォォォォオオオオオオオオッ!!
“金剛・武御雷”(こんごう・たけみずち)ィッ!!!!!
放射ァァァァァァァッ!』
N:大気が一瞬冷える。
それに付随するかのように、一瞬音が消える。
そして光が吸い込まれるかのようなノイズの後に、絶望的なまでの轟音と共に、地面を抉りながら上空のセイヴァージークを貫かんとする金色のレーザーがアオオニの銃から発射された。
カリオストロ:『....──────...ッ、こんな.....ッ!クソッ!!!!
ペチュニア!!!!』
<ネペンテスがビームを照射するが、アオオニの放ったレーザーにかき消されてしまう。>
カリオストロ:『チッ.....!!!
出力が違い過ぎる!ペチュニアでは....ッ!』
フラワ:弾道計算!急いで!
ムーンライト:ディール!
フラワ:ラストホルスシステムは地上の高速障害物演算でもう限界よ!
今度こそディールの眼が焼き切れるわ!
セイヴァージーク作業員A:『弾道計算完了しました!
このままでは...直撃です!
安全宙域到達前に撃ち落とされます!』
ディール:『もう”視”ています!
助かる為の“図面”をッ!』
フラワ:『演算をしちゃダメッ!聞いてなかったの!?今度こそ失明するわよッ!』
ディール:『違います!
僕が今行った演算は....迫るレーザーに対していかに効果的に”回避”するか....ッ!
直線的に迫る攻撃への防御配置の計算の負荷は大したものではありません!!!
フラワN:嘘ばっかり...!!
バイタルデータの視神経部分の数値はとっくにレッドゾーンを越えて、なおも数値が悪くなってるというのに...!!
本来は装置に任せるものを、レーザーの成分と射角を目で割り出し、計算に当てている....!
カメラと違って貴方の眼は替えがきかないのよ....ッ!
ディール:トロイさん!
今配置図を送ります!
羽根をこの通りに設置してください...ッ!』
トロイ:『.....!!
──────分かったよ、ディール君ッ!
W.I.N.Gッ!
複重層配置形式ッ!』
パウロ:『な......』
N:CT・ARGCの羽根がセイヴァージークの周囲から離れ、CT・ARGCの前面に集まる。
それらは小さな壁を形成し、列を作るように並んだ。
その壁の列はアオオニの発射したレーザーが簡単に蹴散らしていくように見えるが、レーザーの勢いは少しずつ勢いが弱まり、最終的に──────
セイヴァージーク作業員B:『発射されたレーザーですが..ッ、CT・ARGCのエネルギーフィールドにより、エネルギーベクトルが変更されました!』
カリオストロ:『うおおおおおおおお....──────ッ!!!』
N:ズレたレーザーはネペンテスの頭部を軽く掠っただけで半分を溶かし、セイヴァージークの装甲の掠めた部分を削ぎ落した。....が。
NOAHZ隊員A:っくそッ....クソッ!!!!!当たれ!!当たれェェェツ!!!射撃の手を緩めるなァァァァァッ!
NOAHZ隊員B:パウロ中尉!如何なさいますか!パウロ中尉!!!!
パウロ:『..............................っぐ.............!!!
があああああああああああああああああああああああああッ!!!!!』
N:モニターを殴りつけるパウロ。
アオオニのコックピット内に表示される、『TARGET OUT RANGE』の文字。
射程範囲の外に離脱されたという旨を知らせるその通知。
パウロ・グランツのキャリア史上、初の標的喪失であった。
<場面転換 セイヴァージークメインデッキ内。カリオストロ、トロイ、ディール、べリオはドミナント回収作業がまだ行われていないので、まだ通信のみでコミュニケーションを行っている。>
フラワ:...................嘘..................。
セイヴァージーク作業員A:セイヴァージークの航行速度に更にゲインをかけます!
ランドスタッドでは高機能の空中推進武装を搭載しない限り追尾は不可能かと!
セイヴァージーク作業員B:後方にセイヴァージークの対空射撃展開完了!
ムーンライトN:バカな.......。
ディール:『何とか.......なりました.....よね......?』
ムーンライトN:そんな....バカな!!!
あんな杜撰な作戦で.....!
フラワ:.......成.....功.........<ぐにゃりと力が抜けたように倒れる>
ムーンライトN:ホンマに潜り抜けよった.....!!!
カリオストロ:『.....フン。天使擬きまで助けたのには納得がいかないがね。
船の脱出への協力は認めるが...当たり前の様に救出プランに君が入っている事にも納得がいかないよ。
教会を捨ておいてもいいのかい?』
トロイ:『.........うん。
...だって、教会に居た子たちね。....皆、神様の下に召されたの。』
カリオストロ:『...ぐ....。』
トロイ:『だから、次私がすることはね。”外の世界で同じ子供を作らないようにする”こと。
フラワちゃんが...ええと...』
フラワ:『...H.U.M.A.Nね。』
トロイ:『そう。誰も飢えなくなる方程式が計算できるっていう、凄いコンピューターがある...って。
私でよかったら、ついていきたいな...って。戦力にもなるでしょ?』
ディール:『.....恥ずかしい話ですが。あの戦力は僕達A.F.Sにおいてかなりのアドバンテージになるかと....。』
フラワ:分かってる。それに、私が納得しているの。これ以上何かある?
カリオストロN:二匹.....!!カンに障る話し方だ...!
カリオストロ:『...そうかい。まあ、勝手にするといいさ。
それが君の覇の道であるのなら。
休ませてもらうよ、フラワ。』
<VUN,と通信とモニターが切れる。>
フラワ:....優秀さってのは人格を犠牲にしないとダメなもんなのかしらね。
ディール:『まあまあ...カリオストロさんのおかげで艦が飛べたのも事実ですし、大目に見てあげましょうよ。』
フラワ:甘いのよアンタは!
ムーンライト:さ~~雑談は終いや。回収できたとはいえ、ジェイルブレイクはじめ機体はボロッボロ。
宙域に出られたとはいえこのまま飛べばジェイルブレイクの腕なんか千切れてトロイちゃんもカリオストロもべリオもすぽォ~~ん宇宙に投げ出されて死ぬまで宇宙旅行や。
いや死んでからも宇宙旅行やろな。
ちゅーことで、整備班総出でジェイルブレイク、天使、CTの3機体の回収、その後はべリオをメディカルに連れてって....やる事は余裕で山積み。
敵はNOAHZやアークエンジェルだけやあれへんど。宇宙は厳しいでよォ。
フラワ:なによ急に。やめてその早口。分かってるわよそんな事。
...さ、分かったわね!補給の為にコロニーへ移動する前に、パイロット回収!
さ~さ皆働く!働く!
トロイN:...みんな...、忙しそうなのに、楽しそう...。これが、友達...。
凄くあったかくて.....うれしい....。
トロイ:ふふふ....、あははははははっ!
フラワ:『あに笑ってんのよ!』
トロイ:ごめんね、ごめん...!嬉しくって....!
N:セイヴァージークの搭乗員は、皆、故郷を“失った”人間たち。
家族も、恋人も、友人も、恩師も、すべてを破壊された人々。
そんな彼らが、トロイの“居場所”になれることが、セイヴァージークの人間たちは嬉しかった。
故郷を去り、辛い旅路を共にすると言われた事が、何よりも彼らの心を温めたのだった。
ただ一人を除いては。
カリオストロ:クソぉぉッ!!!!!
女狐が...ッ!!!
N:通信を切ったコックピット内。
暗いその鉄の檻の中で、レバーを殴りつける。
そして独りカリオストロは声を絞り出すように呻いた。
トロイN:死んで世界が変えられるものですか!!!死んで銃の引き金が止まるものですか!
カリオストロ:あぁ~~~~~弱い弱い弱い弱い......弱者の理論をこの僕に....!この僕に向かってよくも.....!!
カリオストロ:僕の道にあんな不純物....!
どうしてべリオはあの女に優しくするんだい!?
どうしてべリオはあんな軟弱な寄生虫を許容するんだい!?
......................。
N:一瞬の沈黙ののち、ぐにゃりと不気味に首だけ上を向く。
そして、まるで誰かに話しかけているような声で。
自分だけが発見した秘密を共有するように、笑みを浮かべて呟く。
カリオストロ:あぁ~~~~~~~~~~~~~~~ぁあ....♡分かったぁ.....♡
カリオストロ:あんな弱い寄生虫に優しくするのは....“あれ”が寄生虫は寄生虫でも....益虫“だから”.....。
そうだよねぇ.....気付かなかった.....。
わざわざ払いのけるよりも...利用した方が良いんだよねぇ....?
寄生虫として向こうはべリオに寄生して...べリオはその寄生虫を武器として使う.....。
さぞいい気分だろォ~~~が.....。
くっくっく.....。あァ~~~~はっはっはっはァ!
虫は虫....!いずれは“駆除”されるのが運命とも知らずに.....!
人間である僕達に利用されて愚かに死ぬとも知らずに...!
そうだよねぇ...?そうに決まってる......。
あぁん...
それでこそ僕の王......。
僕だけの、“吊るされた男”......。
N:まさしく、“檻”だった。




