【EPISODE11 FIRE INSIDE US(ファイア インサイド アス)】
べリオ♂
ディール♂
ムーンライト♂
クルス♂
パウロ♂
トロイ♀
フラワ♀
カリオストロ♀
N♂♀
NOAHZ兵士A、B♂♀
セイヴァージーク作業員A、B♂♀
<場面転換 数分前。剣を携え、ぶつかり合うトロイとクルス>
トロイ:退いて下さいッ!!もうこれ以上は....命のやり取りに意味を感じませんッッ!
クルス:そもそも意味を求める行為が無駄なんだよォォッ!意味を生む人間!!そして意味が生まれる過程!!!
この二つに俺たちの居る戦場が関わる事は無ェ!!!!
ペンと剣を握る人間が真の意味で交わる事なんざ無ェんだよ!
見ろよ!お前の機体を!!!
軍事武装のオレの機体を遥かに圧倒する機動性!
数を頼んだ空中戦闘を単騎で乗り切る多角多段攻撃!!!!
そしてその羽根の操作精度!!
お前の機体が持つ意味を教えろよ!!
お前の機体が持つ武装!性能!全て命のやり取りを有利に運ぶ為の機体じゃねェかよ!!!
そんなモンをぶら下げて正義の味方気取りかァ!?
ズングと何が違う!?
トロイN:.....ズングと.......私が.......
クルス:そうだ!今更お互い退けねェんだ!!!
誰かを守るために必要なのは盾じゃねェ!
爪だ! 敵を切り裂いて、引き裂いて、ズタズタにする爪が必要なんだ!
そうして初めて人間は守りたい物を守れる!!!
降り注ぐ悪意や邪魔なモノを見過ごす事で守れるものなど.....この世には無ェェェェッ!!!!!!!!
トロイ:ッッッ.....それが....ッ...!
それが人殺しの理由ですかッ!!!
クルス:そうやって世界は回ってんだよォオオオオオオオオ!!!!!
トロイ:だから世界から悲しみが消えないッッッ!!!
CT・ARGC:<GOSPEL>
<CT・ARGCの顔面のX字に展開された十字架が後頭部に移動する。
次の瞬間、後頭部に移動した十字架はやがて十字架は光の輪の様に見える錯覚を生み出すほどの速度で回転していた。>
トロイ:.....ッ....もうこんな段階で使わされるなんて....ッ!!!
クルス:.....ッ....!?何だ....?
<そして、クルスの機体の上空には六枚のCT・ARGCの背部に装着されていた羽が円を描くように浮いている。>
クルスN:ックソ!熱くなりすぎて上空のデータを確認していなかった...ッ。
どうする...?上空の羽を撃ち落とすか?
イヤ!それじゃ奴の機体がオレの死角になる....ッ、ナイトスペリオルの防弾性能は高くねェ....!
ましてやファングネガティブのスピードに合わせて装甲はより軽量化のカスタムを施してある.....
なら...!小細工で何か策を弄される前に.....ッッッッ!!
クルス:その機体を潰すッッッ!!切り裂くぜッ!!ファァァングネガティブゥゥゥゥッ!!!!!!
N:クルスが次に感じたのは、衝撃。
クルス:な.............
N:その衝撃は、決して機体を破壊したときの”手応え”では無く。
クルス:何が....
N:”急発進した機体が急激に停止した事による強烈なG”による痛み。
クルス:ごっぼ...!!!
塩気.....?
.....ッ.....血......!!!
N:Gによって痛んだ内臓からこみ上げる血を吐き出しながらも、クルスは現状を飲み込めずにいた。
トロイ:.....動かないで。
...動けないでしょうが.....。
クルス:何を....しやがっ......
トロイ:.....ごめんなさい。
CODE・BETHLEHEM。
私のCT・ARGCの背部にマウントされた羽根を円を描くように配置...そして試作型の超高振動波を六枚の羽から一気に放出。
放出された振動波は六枚の羽を無数に反射し、増幅され...
六枚の羽に囲まれた範囲内に存在する機体の関節部や操作系統のシステムを麻痺させる。
クルス:っへ........クソが.......。
ぐッ.....ぶはッ....!!!
それだけじゃ...ねェよなァ....?
トロイ:......ッッ....!分かっているなら!
クルス:....くっく.....
こんなデケえ鉄の塊を麻痺させるモンなんざ....
コックピット内部の人間も安全じゃねえ....だろ?
いや...機体の麻痺もあくまで一時的な物...。
無限に増幅する振動波によって機体は分解されていく。
ッフ...。人間が作ったものである限り....”隙間”のない物体など存在しねェ...。
振動波は染み込み、範囲内の遍く物体を最終的に破壊する....。
トロイ:武装を!!!
武装を解除し、投降してください!!!
仰る通り、この兵器は時間が経つごとに威力が指数関数的に増加していきます!
文字通り貴方に残された時間は少ないんですよ!
クルス:...親切だねえ。
ごっほ...、そこまで教えてくれるって事ぁ...オレを生かして返すつもりがない....ッて事だろ?
....やれよ。
参った。
降参、だ。
トロイ:ッッ違う!殺すつもりなんてありません!
...ッ、どうして貴方たちは命を軽く見るんですか!!!
世界が憎悪で満たされていると決めつけて!
平気で殺し合う!
銃を捨てるのがそんなに怖いんですか!?
臆病を勇敢と言い換えて、血を流し続けて!
そんなものを良しとして生み出された平和なんて、すぐに綻ぶと貴方だって分かっているんでしょう!?
クルス:......だぁ~めだねぇ....
トロイ:ッ何を!
クルス:指先がまだちょっと動いちまう....。
指先さえ動かせんなら....まだ足掻けちゃうんだぜ?
自爆スイッチを押す....とかな。
トロイ:辞め───
クルス:その機体....まさに”天使”だねえ。人類に神からの裁きを告げる...。
天使の輪の中に入った愚か者を....不条理に砕いていく.....
死ぬ前に見るには、縁起が良い....。
───っくっくっく.........。
お先に失礼しますよ、パウロ中尉..........───..........。
N:トロイが叫ぶより一瞬早く、爆風がトロイの機体を襲う。
その衝撃は、クルスからの通信が急に途絶えた事よりも。モニターに無残に映るナイトスペリオル・ファングネガティブの残骸よりも、雄弁に、且つ一瞬で。
クルスの自死をトロイに伝えた。
トロイ:はぁっ....!はぁっ、はぁっ、はぁっ...!!!
死っ、死ん...ッ!
死んでしまうなんて...ッ!
どうして...ッ!
N:混乱する思考。一気に背筋を伝う嫌に冷たい汗。パニックになりかけた自分を現実に戻したのは、
コックピット内のモニターによる敵機の熱源反応への甲高い警告音。
それは、地上でネペンテスが敵機体に囲まれていることを知らせる警告音であった。
トロイN:次から次へと.....ッ....。
N:死に怯えた羊の様に震えている自分から発せられたのは、唸りに似た怒りの声。
こみ上げる吐き気を抑えるようにコックピットで背中を曲げ、丸まりながら呟く。
トロイ:死なないと....ッ、分からないんですかッ!!!貴方達は....ッ.....!!!!
そうやって....殺して....殺して.....そうせねば通らぬ理屈を振りかざして.....ッ!!!
だから......!!!だからあの子たちは.......ッ!
N:恐怖に塗りつぶされたはずの脳裏に浮かぶのは、祈る様な最期の声。
メイN:おなか.....空いた。
トロイ:───人間共ッッッ.......!!!
NOAHZ兵士A:貴様ァァァッ!!!
<場面転換。吹き飛ばされ、転がったアオオニが立ち上がり、周囲のNOAHZ射撃部隊が突如現れたトロイとカリオストロの機体に銃を向け取り囲む。>
NOAHZ兵士B:上空から未確認登録機!動体情報を更新!
NOAHZ兵士A:パウロ中尉!ご無事ですか!
<周囲のNOAHZ兵士の射撃部隊のうちの一機がパウロ中尉の機体アオオニを助け起こす。>
パウロ:『貴様....ッ、妖ィ!!!
何故その下郎を庇う!!!』
トロイ:『黙れええええッ!!!!』
パウロ:『....ッ...!』
トロイ:『あなた達は満足でしょう....!!
”正義”をぶつけあって!吠え!切り裂いて!
積み上げる勝利はあなた達を酔わせるのでしょう!
だから分からない!だから踏み躙り続ける!
力のない人間の怯えも!平和の本当の意味も!』
カリオストロN:何だこの女は....ッ.....。
先の女と同一人物なのか.....?
あの怯えた甘ったれた声はもう影も形もない...。
それにこの武装は一体....?
トロイ:『もう....。もう沢山です。
そこの触手の方!』
カリオストロ:『触手って.....』
トロイ:『セイヴァージークのエンジンは起動し、順調に空へ移動中。
フラワさんからの通信により、地上の貴女の攪乱行動も私は把握しています。
時間です、ブースターを起動して離脱しましょう。』
カリオストロ:『....ッ、分かってる!だが....ッ、ダメなんだ!ブースターの残量はもう...!
敵の機体にネペンテスの弱点を看破され..ブースターを使わないと状況を突破できなかったんだ!』
トロイ:『.....ッ....!』
トロイN:どうする....ッ...!
通信は電磁障害の所為で上の船まで通じない....
私が飛んで報告をしてもその時にはネペンテスが持ち堪えられる可能性はかなり薄い...!
私の羽を使っても....、この数の部隊相手じゃ足りない!
船のシールドを解くわけには....
<セイヴァージーク メインデッキ内>
フラワ:....おかしい....。
まだなの!?このままだとネペンテスのブースターでは届かない所まで上がってしまう!
ムーンライト:....ミスったか。
フラワ:...ッそんな....
セイヴァージーク作業員A:セイヴァージークのメインカメラからの情報、解像度未だ上がりません!
しかし...ネペンテス及びCTARGCの機影は確認できています!
ロストはしていない模様!!
フラワ:では何故....ッ...
ムーンライト:とにかくトラブルやな。
......。
フラワ:どうにかして回収するべきよ!
セイヴァージークを降下させて回収は!?
セイヴァージーク作業員B:現実的ではありません!
降下飛行までは可能ですが、ハッチの開閉によるタイムロスによって攻撃を受けるでしょうし....ッ、加えて地表の汚染濃度は危険域です!下手をすれば内外からセイヴァージークが破壊されます!
ムーンライト:─────....速度を維持。
大気圏の突破を主とし、直進する。
セイヴァージーク作業員B:ちょ...っ、直進ですか!?
フラワ:ムーンライト!?貴方何を言ってるか分かってるの!?
ムーンライト:生存が難しいミッションなのは伝えてあるやろ。
本人も了解した筈や。
フラワ:ふざけないで!
最後まで模索しなさいよ!
現実的にこの船の戦力も大幅に削れることになるのよ!?
ムーンライト:戦力は後からでも補充できる。そもそも俺たちは正面切っての戦闘を行うプランで宇宙に出てない訳や。
戦力の減少はこのコロニーから距離を取ってからまだ対策はとれるやろ。
フラワ:”対策”!? ”補充”!?人間に言う言葉な訳!?
ムーンライト:人間として向き合ってるから!!
カリオストロに俺たちがもたれかかって結果全滅しないようにしとんやろが!!!!
フラワ:”全滅しない様に”の選択肢の次に”見捨てる”が真っ先に来るなんて馬鹿げてるッ!
トロイだって私達の船を助けてくれてる!
まだ離脱可能空域を抜けるまで時間もある、ディールに連絡して演算を地表部分からの離脱に切り替えて計算してもらえば
ムーンライト:それでディールの目と耳がブッ壊れたら責任取れるんかい!
お前こそ失う事を恐れて血を流し続ける選択肢を真っ先に取っとるんちゃうんかい!
ディール:『辞めてください二人共!今使えるセイヴァージークの火器を総動員して時間稼ぎをすればハッチの開閉と改修作業の時間くらい...』
ムーンライト:強がんなや!
簡易計算でもハッチ開閉と改修作業の時間は”捻出が難しい”と出とる。
教会のお姉ちゃんの盾も耐久度が限界なのは見て明らか。
わざわざディールの目と耳の寿命削って出た結果を計算すんのは無駄や!
オマケにこれ以外にも汚染濃度の数値のパラメータもあるッ!
そこまで分かってて計算をやり直して無駄な時間を過ごして、一体誰が救われる!?
NOAHのお宝は歩いてこっちに来る訳ちゃうぞ!
フラワ:....っぐ.....!
べリオ:『おお~...。珍し~モン見れたぜ....。』
<くぐもった弱弱しい声ながら揶揄う様な声がメインデッキに響く。>
フラワ:────...!べリオ...!
べリオ:『ごっほ.....ちょい前に目ェ覚めて......聞いてたけどよ~...胸がスッとしたぜ......
あのお前が言い負かされてんのを見るのはよォ~...』
ムーンライト:...フン、生きとったんはええけどや。
この話はもうここで終わりや。
─宙域を突き抜けるまで少し揺れる、休んどれ。ちゅ~か気絶しとった方が楽やど。
べリオ:『や~だね....気絶なんかよ....だってよ....必要だろ?
対立するオメーらを一気に納得させる”解決策”....。』
フラワ:───ッッ....!?
そんなことが.....!?
ムーンライト:無理や。
この船の残存戦力で状況をひっくり返して、且つ宇宙に行く方法なんざ無ェわ。
後はもうこれ以上の損失をどこまで減らすか、の話や。
スッ込んどれや。
べリオ:『バカが。....ったく、すっかり軍人ボケしてら。
ハッチを開けるだの開けねーだの、回収作業だのなんだの...。
オレが....いや、ジェイルブレイクが船の外に居んだろうが。』
フラワ:....、べリオ。嬉しいけど...。
私.....。
べリオ:『んだったら、この船地面のギリギリにまで下ろして、オレがとろちゃんとカリオストロの手を掴む。
さっきジェイルブレイクの手首はブッた斬られたから...スペアの手を付けてよォ...。
流石に手ェ掴むだけで宇宙に出んのは厳しいだろうから───
オレの手首のスペースアンカーを直接アイツらの手首に打ち込んで固定する。』
ムーンライト:.........................は?
べリオ:『どーだ。』
ムーンライト:ッむ...無理に決まっとんやろ!!!
地表までの飛行だってあくまで数値上可能なだけや!
べリオ:『どうだ?フラワの後ろのインテリ君。
無理な事言ってっか?』
セイヴァージーク作業員B:........。
ジェイルブレイクでネペンテス及びCT・ARGCをロックオンし、機体で掴む。
スペースアンカーで固定して安全宙域までの離脱。
ネペンテス、ジェイルブレイク両機のスペック...、そしてCT・ARGCのスペックは概算値でこそあるものの────
セイヴァージークの速度に対してジェイルブレイクの腕を掴むという難易度はさほど難しいものではないと思われます。
ジェイルブレイクのスペースアンカーも高難度宇宙業務用のモノを使用しています、現状残された達成率の高いプランであると考えます。
べリオ:『よく分からんが”おおむねいけそう”って事だろ?』
ムーンライト:........。
べリオ:『何不満そうな顔してやがる。』
ムーンライト:不満やあるかボケ。
分かりやすい懸念点があるやろが。分かりやすく見落としよって...。
セイヴァージーク作業員B:...おっしゃる通りです。
ムーンライト:────”情報共有”。
近域通信しか出来ない今、ネペンテスとCT・ARGCがジェイルブレイクの伸ばされた手に気付けるか...。
セイヴァージーク作業員B:情報共有も無く我々の意図を汲み取り、依然戦闘行動の中ジェイルブレイクの伸ばされた手に気付き、ジェイルブレイクに飛びつけるか...。
また、このプランを実行した場合、二機の機体の上を飛べるのは当然一度のみ。
この二つの要素を加味すると、達成率の大幅な見直しが必要かと。
ムーンライト:船を囲む盾もいつまで持つか分からん中、地表スレスレを移動する操艦をやってのけるリスクもある。地表の建造物や障害物のスキャンは電磁障害で満足にできひん。
べリオ:『それでもだ。』
ムーンライト:───....ッ...。
べリオ:『それでも、やる。』
べリオ:『それ以外のプランも、時間も残されてねぇ今、オレのこの提案以外他に道は無ぇ。分かってんだろ、ムーンライト。』
ムーンライト:.......────────....ッぐ...........!!!
ぐ........!
べリオ:『オレたちはまだまだ弱え。戦争のノウハウもねえ。それに....ワカミネに何があったか気付かねえオレじゃねえよ。最後に見送ったのが恐らくお前ってのもな。』
ムーンライト:........ッ違う!!!あくまでオレが言うとんのは達成率や!
人をメソメソしとるとでも言いたいんか!?こんなレベルの低い子供のやるような口喧嘩.......───ッ、
べリオ:『メソメソしてねえ人間はな。”オレがメソメソしてると言いたいのか”なんか言わねえんだよ。』
ムーンライト:そんなことは...───ッ
べリオ:『分かるとは言わねえが。オレもオレの所為で恩人が死んでる。だが今回はそれとは訳が違え。
アイツらもオレらも、覚悟をしての行動だ。』
ムーンライト:──────...、だからって!!ッッなんで.....!
べリオ:『さあな。...だが、もう分かってんだろ。』
ムーンライト:......................................──────..........。
セイヴァージーク作業員B:作戦行動可能空域、離脱間近!
...ご決断を。
ムーンライト:..........フラワ。
フラワ:....ん。
ムーンライト:頼む。
フラワ:.....分かった。有難う。
ムーンライト:.......。
フラワ:...(力なく微笑む)
...どういたしまして。(聞こえるかギリギリの音量)
セイヴァージーク総員。
当艦はこれより地表のセイヴァージーク所属ネペンテスとセイヴァージークへの支援行動を行った機体、CT・ARGCの回収を行う。
回収作業直後、タイムラグを極力排除の上で剛推進段階飛行エンジンを上昇制御、及び安全宙域への全速飛行に移る!
回収においてはドミナント・ジェイルブレイクでの二機の機体の固定を行うため、船体を傾けつつの超低飛行の演算を用意!
地表付近での演算はディールによるラストホルスシステムに一任!
....あと少しだけ、耐えて頂戴、ディール!
ディール:『了解!』
べリオ:『さー....やりますか。』
フラワ:剛推進段階飛行エンジン.....スタンバイ!
ムーンライト:スタンバイ!
セイヴァージーク作業員B:スタンバイ!
フラワ:点火───ッ!!!




