第二部 前編【EPISODE1~5】通し版
●配役表 最大♂6:♀4 2時間
※※※記号で検索かけてください※※※
Σ▶︎♂️べリオ/ナンパ男A
Φ▶︎♂️ディール/街行く男性A
ω▶︎♂️ムーンライト/ナンパ男C/街行く男性C
Λ▶︎♂️クルス/アークエンジェル戦闘員A/通行人A
Д▶︎♂️パウロ/アークエンジェル戦闘員B/通行人B/スナイパーA、B
π▶︎♂️ズング/NOAHZ兵士/ナンパ男B/街行く男性B
兼枠
●▶︎♂️クルス/ズング/アークエンジェル戦闘員A/通行人A/NOAHZ兵士/ナンパ男B/街行く男性B
Ψ▶︎♀️フラワ/メイ(スリの少女)/街行く女性B
γ▶︎♀️ワカミネ/孤児B
α▶︎♀️カリオストロ/孤児A
μ▶︎♀️トロイ/街行く女性A
【EPISODE1 NEW IS BETTER(ニュー イズ ベター)】
Σべリオ:――ん……。
<病室で目を覚ましたべリオ。体に走る鈍い痛みをこらえながら上半身を起こす>
Φディール:おはようございます、べリオさん。
Σべリオ:……よう。
Φディール:体調はどうですか。
Σべリオ:そこそこだ。…………なぁ――。
Φディール:単刀直入に言いますが。
Σべリオ:……。
Φディール:IOPLANETは、荷電粒子キャノンにより壊滅的な被害を受けました。
Σべリオ:……おい、<Φ被せる>
Φディール:
落ち着いてくださいべリオさん。
べリオさんは、敵の機体に大きくダメージを与えてくれました。
その際の戦闘データは非常に貴重なもので……今後のNOAHZへの対策に大きな貢献を……っ――<Σ言葉を遮るように首を振るべリオ>
Σべリオ:
……ありがとな。でもまぁ……なんだ、今は……冷静だからよ。
不思議と……、遠い遠い過去に見た夢を思い出してるみたいな気分なんだ。
だからこそ……教えてくれ。“壊滅的な被害”……っつうのはよ。
まぁ言えば……IOPLANETは、無くなっちまったんだろ?
Φディール:…………残念です。
Σべリオ:…………そうか。
Φディール:……何と、言えばいいのか。
Σべリオ:
良いんだ。いや、良くは無えよ?
「また守れなかった」って……耳の内側から声が聞こえるんだからよ。
……んでもって、自己嫌悪、無力感、消えねえこの身体の痛み、全てが……唐突に人生を奪われた人達への言い訳みてえでまたイライラして。
でもな。フィオナさんが居なくなった時、オレは腐ってた。
フラワは腐らなかった。
俺がいま居んのは宇宙で、A.F.Sのメンバーだ。
停滞も後退ももう選択肢に入れちゃいけねえんだ……それに、つぎ死にかけても、またお前が起こしてくれるだろ?ディール。
Φディール:べリオさん……!
<医療室の扉が派手に開く。
一人の男が無遠慮に唾を飛ばしながらズカズカと入ってくる>
ωムーンライト:
――――アカンな~~~~~。
湿っぽくしても進まへんでぇ、ハナシっちゅうのは。
Φディール:ちょっと……まだべリオさんは安静必須状態なんですよ!
ωムーンライト:<ガンを飛ばす>
ほなら。なんでおまんは許されるんやっちゅう話やろが?
……オウ、アンタがオレのカワイイ娘をオシャカにしよったタコスケか。
Σべリオ:……んだよ、お前みてえな奴知らねえぞ。あとムスメってなんだよ。
ωムーンライト:<ガンを飛ばす>
トボケなはんな。オレの作ったオリジナルのスペリオルを、初乗りでブン回したやろうがッ。
Φディール:すみません紹介が遅れました。この人は――<ω言葉を遮る>
ωムーンライト:
あーえぇえぇ。セントラルやイーストの連中は堅苦しゅ~てアカンわあ。
――セルゲイ・ムーンライト。A.F.Sのメカニック担当しとります。
好きなタイプは貧乳のちょいゆるメイクが似合う子ぉや。
ウェストホーキング出身、ウェストの鉄鋼建築及び駆動制御部でメシ食うてますわ……あ!食うて“ました”――やな?
<嫌味っぽく最後の文章を言い放つムーンライト>
Σべリオ:
……何が言いてえ。
Φディール:ちょっと、ムーンライトさん――<ω言葉を遮る>
ωムーンライト:
なんや、さっきイチャつきながら言うてたやろが。
IOPLANETは吹き飛んだ。それだけや。
全ぇ~ん部見てたで。べリオ、お前の命令違反の独断行動もや。
Σべリオ:出撃したのは、オレ達だ……!!
ωムーンライト:……なぁんか、勘違いしとんな――。
<ωΣべリオの前髪を掴んで自分の顔に引き寄せるムーンライト>
ωムーンライト:<ガンを飛ばす>
コラ、お前だけでゴンタかませんのかい。おい、目ぇ見ろボケカス。
ランドスタッドが有って初めてドンパチこけるテメェらが、誰に向かってナマこいとんじゃいゴrrrラッ。
オマケに“トライアウトコマンド”まで使いよったなぁナマズ。死にたいなら、生身で死ねや。
誰の作品でカチコミかましよるか分かっとんのか?
ホンマに死ぬか?ハナタレが。
Σべリオ:離、せ……ッ!!!
<力の入らない包帯だらけの手でムーンライトの手を振り解こうとするべリオ>
Φディール:
ムーンライトさん、その辺で十分でしょう!
それに“トライアウトコマンド”の説明もしなくてはいけないのに、こんな状態では――。
ωムーンライト:黙ぁっとれ、カマキリ。
Φディール:か、カマ…………。
<ωΣべリオの前髪から手を離し>
ωムーンライト:
そもそも見よったらイッチャイッチャイッチャイッチャ……。
“トライアウトコマンド”の説明と現状報告やろ?
このセルゲイ・ムーンライトが、オシャレに一発で報告したるわ。
1ッ!
“トライアウトコマンド”は使うな!
俺らも仕組みも発動条件も分かっとらん!
2ッ!
この船は想定してないマジ逃げの為にガソリン使い果たした!
近くのコロニーに緊急着陸する!
3ッ!
ミーティングあるからメインデッキまで這って来いッ!
Σべリオ:……三発だろ。
ωムーンライト:<ガンを飛ばす>
ぁん?なんやコラ。細いこと気にする暇があるんか?ほな待ってんで!
<バァン!!!と自動である事にも構わず医療室のドアを力任せに閉めて部屋を後にするムーンライト>
Φディール:…………カマキ、リ……。
Σべリオ:……なんなんだよ。おい、変な奴しか誘ってねえのか?
Φディール:
……そりゃ、こんな作戦に賛同するのは大なり小なり個性的な方なのかなとは思いますけれどね。
それより、本題に入らせてください。
先程も単語が出ましたが……“トライアウトコマンド”についてです。
Σべリオ:トライアウト、コマンド……。
Φディール:
ドミナントジェイルブレイクを構成するに当たり、パーツの組み合わせや燃料の選定は問題ではありませんでした。僕が設計図を完全に記憶していましたからね。
しかし、動作やレーダー、CPU等の情報は完全に秘匿されていて……作成は不可能でした。
なので、次世代の試作型スペリオルのプログラムを盗んできたんです。それを搭載してべリオさんのドミナントは出来上がりました。
つまり、「システムに不明瞭な部分が有る事を知りながら、無理やりハッキングを行ってドミナントを動かしている」という事なんです。
ここまでは分かりますか?
Σべリオ:
いや全然わからん。ま、「よく分からないけど取り合えず動くっぽいので完成って事にした」っつーとこか。
Φディール:
その認識で構いません。そしてハッキングを進めていくうちに、異常に難解なプロテクトで暗号化されたデータにたどり着きました。
分かっているのは……そのデータは機体に何らかの命令、“コマンド”を発するためのデータだという事です。僕達は何度もハッキングを行い、解明を試みましたが……それは叶いませんでした。
その僕達の姿を見てムーンライトさんが、「まるでトライアウトやな」と――いつしか名前が付きました。
Σべリオ:それが……トライアウトコマンド。
Φディール:
何をトリガーに、どんな命令を下すかも予測不可能。
データの解析をするべく接続した情報機器は内部でエラー、もしくは破損が起きて寄せ付けようとしない。これではデータの削除も行えない。
仕方がなく、そのままドミナントジェイルブレイクとして運用をせざるを得なかったんです。
……まさか、あんなことになるなんて。
Σべリオ:<ディールが差し出した書類を読み上げる>
――『通信を遮断した直後に異常な速度での反応、旋回。レーダーの急激な鋭敏化、射撃正確性の向上』……。
<あるページで手が止まる>
Σべリオ:……これは。
Φディール:
あくまで外部からの計測値ですが……。
ドミナントジェイルブレイクの機体全体に強い電磁波が確認されています。
コックピットの内部までこの電磁波が影響しているかどうかは、まだ機体の修復中で正式に計測出来ていませんが。
Σべリオ:
――『この電磁波がもし仮に人体に流された場合、前頭葉の白質に甚大な影響を及ぼす可能性が大きい。挙げられる症状として、一時的な連続性を伴う動作や状況判断の正確性や即断性の大幅な向上。反射神経の鋭敏化』
……んだよ、いいことずくめじゃねえか。
Φディール:最後まで読んでくださいよ、32行目。
Σべリオ:
ん……『しかし、脳への著しいダメージ。視床下部への大量出血の恐れ。更に懸念すべきは――感情の欠損』
Φディール:…………あくまで予測、ですが。
ΣべリオN:(あの感覚……。)
<脳裏に浮かぶのはトライアウトコマンド発動中の記憶。敵を見下しながら急激に冷静に敵を追い詰め始めた自分を思い出すが、気のせいだ、初めての戦場だからだろうと思いなおし――>
Σべリオ:――……んや。特には何もおかしいことは感じなかった。
Φディール:……そうですか。特に何も、ですか。それなら良かったんですが。
Σべリオ:
それよりメインデッキに行こうぜ。
話があるって……さっきのムーンライトって奴も言ってたしな。
Φディール:
えぇ。今後についてのミーティングです。
恐らくもう始まっているかと思います。
―――
――
―
<セイヴァージーク内メインデッキ>
Σべリオ:……おっす。
ωムーンライト:おお~~戻ってきよったでえ甘ちゃんが。
Ψフラワ:
茶化さないの。結局べリオがスペリオルを退けたのには違いないでしょうが。
γワカミネ:だが。……私が何を言いたいのか分かるな、べリオ。
Σべリオ:…………っす。
γワカミネ:
ん?「す」では分からん。「集団での作戦行動で、命令違反は言語道断である」と言いたいのだが。
Σべリオ:……すんません。
γワカミネ:
私たちは正規の軍では無い。戦力も足らん。本来は懲罰、もしくはランドスタッドの搭乗資格を剝奪されるのが妥当だ。
だが。不本意ながら、べリオにはまだランドスタッドに搭乗してもらう事になるだろう。
今回のような独断行動は絶対にしないと、誓えるか……?
Σべリオ:…………。
<誓う、とは断言できない渋い顔になるべリオ>
γワカミネ:
……素直だな。英雄と呼ばれたからには……という考え方をもしも持っているのであれば、早めに捨てた方がいいぞ。
Ψフラワ:
その辺にしてあげなさい、ワカミネ。トライアウトコマンドは未知の領域。通信も遮断されている状態では作戦を共にする難易度は跳ね上がるわ。
彼だけのせいじゃない。ブラックボックスの技術に頼り、何よりべリオという戦力に頼っている私たちにも非は有るのよ。
でも……分かるわね、べリオ。私たちが救えなかった命の数。
言い訳は無用。結果のみで語られる世界に足を踏み入れたことを自覚しなさい。
今後の独断的な行動は慎んで。
Σべリオ:う……。
Ψフラワ:了解。でしょ。
Σべリオ:りょ、了解。
Ψフラワ:それじゃ今後の予定についてミーティングを――<α言葉を遮る>
αカリオストロ:うわああああああああああああああああああん!!!!
<涙で顔をくしゃくしゃにして飛び込んでくる>
αカリオストロ:死゛ん゛じ゛ゃ゛っ゛た゛か゛と゛思゛っ゛た゛よ゛ぉ゛……。
Σべリオ:今お前に抱きつかれて全身が死ぬほど痛ぇ~~んだが。
αカリオストロ:ぼくゅは、本当ぬゅい、心配でぃえ……。
Φディール:
お、落ち着いてくださいカリオストロさん。
べリオさんはまだ車椅子から立てないんですから……!
αカリオストロ:
眠るぅぇぬゎかったんだからぅわ……。
Σべリオ:何言ってるか分からん。
Φディール:べリオさん血が!!傷が開いてますー!!!
γワカミネ:
べリオが寝ている間、ずっと自室で壁に向かってブツブツ言っていたからな。無事を知って緊張の糸が切れたのであろう。
さて、ミーティングの続きを。
Ψフラワ:
フン、仲がよろしい事。
――さて。現在私たちは、長距離航行用の燃料を確保しないまま宇宙空間で戦闘行為を経てしまったわけ。
最小限の燃料と慣性航行でたどり着けるコロニーを探した結果……運良く一つだけ見つかったわ。
<ヴォン、とメインデッキのモニターにコロニーの図が浮かび上がる>
γワカミネ:『フェザーポータル』……。聞かないな。
αカリオストロ:
産業には主に関わっていないコロニーだね。いや……正確には関わってはいるが、弾薬であったり、即時 消費目的の食糧の生産を、細々と行っているコロニーだね。
……あまり経済的に余裕のないコロニーだと耳にはした事が有る。
Σべリオ:オンオフすご。
Φディール:泣いてたから少し鼻声ですね。
αカリオストロ:
燃料確保とランドスタッドの修理部品に……。
補給が出来るかどうか微妙ではあるね。
γワカミネ:
まぁ、選択肢がないのは確かだ。宇宙を浮遊する鉄屑になるよりはマシだろう。
Σべリオ:…………ままならねーな。
―――
――
―
<場面転換。フェザーポータルの着艦口>
Ψフラワ:
着艦完了。……さ、そんじゃアタシとワカミネ、カリオストロはセイヴァージークのレストア業者を探して交渉。
技術部は、破損箇所の記録と破損の程度を随時知らせてちょうだい。
ωムーンライト:あいよ~。給料は弾んでや。
Ψフラワ:
何言ってんの、キッチリ時給換算に決まってんでしょ。
えーと、医療部は薬品の補充、男性パイロットは……おい、そこの二人。
…………ワカミネ。
Σべリオ:おお~スゲぇ、デッケー教会だぁ!
Φディール:
あっ、あの横にあるのは寺院じゃないですか?特徴的なマークですねえ。
γワカミネ:――――ふん!
<ズッとワカミネが彼らの背後に現れ、ごむすんと拳を頭上に落とす。
ΣΦ痛みのあまり、アメコミのように同時に跳ね回るべリオとディール>
Σべリオ:あらあらあら!!あらあらあら!!!ウェカピポ。
Φディール:あだだいだい!!!かなりあだだいだい!!
γワカミネ:
特殊な痛がり方をするな。指揮官が指令を出しているのだぞ、集中せんか。
貴様らはフェザーポータルの中央街で、このメモのランドスタッドの修理部品が有るかどうか探してきてくれ。
まあ簡単な部品だ、個人で売買可能な部品ばかりだから、パーツショップを覗いてきてくれ。
Ψフラワ:――では、解散!
<場面転換。台湾やフィリピンを彷彿とさせる舗装されていない道路に屋台の並ぶ街を困ったようにメモをちらちらと見ながらパーツショップを探すディール>
Φディール:
――う~~んと……低圧縮式 接着ガンに、対衝撃モニターLED……パーツショップがなかなか見当たらない。裏路地かな?
しっかし……べリオさん、アテでもあるのかな……。
<回想。一時間前>
Σべリオ:おい!ディールはあっちの方を探してくれ。オレはこっちの方を探す!
Φディール:ええっ。べリオさん、そっちは繁華街ですよ……?
Σべリオ:関係ねーだろ!人が多い方がモノだって集まってんだろ!!
Φディール:うぅ……じゃ、じゃあ一緒に探しに行きましょうよ!
Σべリオ:分かれて探した方が効率良いしよ。さささホレ開始!作戦開始!
<回想終了>
Φディール:
ダメだ。全然見つからない……。
やっぱり僕も繁華街の方に行って探そうかな、これじゃあ日が暮れちゃうよ……フラワさんに怒られるのイヤだなあ。べリオさんはパーツショップ見つけたのかなあ……。
――ん、何の騒ぎだ....?
<裏路地の奥の方から人の騒がしい声が聞こえてくる>
Φディール:<呆れたように天を仰ぐ>
あれは……ウソだろ…………。
<地元民と思われる浅黒い肌の若い少女と揉みくちゃでケンカをしているべリオ>
Σべリオ:
――おrrrrルァ返しやがれバカがあ!!!!
人様の財布に手ェ出して生きて帰れると思ってんのかァ!!!
女だろーが関係ねえぞオラァ、男女平等キックで宇宙見せたらァ!!
Λ●通行人A:おいおい何だよ……。
Д通行人B:見ねェ顔の奴だな。血の気が多いのは構ァねえが……。
Λ●通行人A:
ありゃ威勢だけだな。
あんなガキ……しかも女のガキとどっこいのケンカしてよ。
Д通行人B:あっおい、なんか男の方、様子が変だぞ。
<鼻血を垂らしながら急に真顔になりスススと立ち上がるべリオ>
Σべリオ:
ふーーーーーーーー……。よいっ……しょ……も、マジ、返してください。
<土下座>
Ψスリの少女:やーなこった!!!あ~~~ばよ!!!
Σべリオ:
はいもう許さね~~~!!!大人の対応してやったらこれだなァ!!!
待てやオラァ!イオの真紅の雷ことべリオが今度こそ貴様を小麦粉まみれにしてブチ揚げてカリカリのチュロスにしたらァ!!
<怒りの形相で口を風圧でダバダバしながら追いかけるべリオ>
Φディール:
――はいそこまで!
べリオさん、大人げないですよ。それに……君も。
人の物を盗むのは悪いことだよ。さぁ、これでお菓子でも買ってきなさい。
<べリオを抱き抑えながら宥めつつ、少女に微笑んで財布から100ベーゼを出して差し出し――>
Ψスリの少女:
ヘン!これっぽっちで腹が満たされるかってんだ!
ガキだと思って舐めてんじゃねー、やッ!!
<Ψバシッとディールの手をはたいてそのまま逃げだす少女>
Φディール:…………………………。
Σべリオ:むっ……ディール?顔が?アレお前そんなに犬歯長かったっけ?
Φディール:………………怨………………。
Σべリオ:
怖えって!!漢字一文字で喋るキャラじゃないじゃんお前ェ!!
つーか早く追おうぜ、オレの財布が持ってかれちまうよォ!!
Λ●通行人A:……ついてなかったな、アンタ等。
Σべリオ:
誰だアンタ、つーかついてないどころじゃねーよ!
あん中にオレのカードも入ってんだぞ!!
Д通行人B:
まあ、気を落とすな。
多分だが……自治警察の『アークエンジェル』が来るだろーよ。
Λ●通行人A:
ヨソの人にはショックな光景だろうから……そこらのメシ屋で待ってな。
“コト”が終わったら、アンタら呼んでやるからよ。
Φディール:コトって、一体……?
<次の瞬間、趣味の悪い蛍光色の制服に身をまとった白いヘルメットのライフルを構えた男性が二人けたたましくサイレンの鳴る車から降りてくる>
Λ●アークエンジェル戦闘員A:
『そこの少女!!!盗品を直ちに地面において床に伏せろ!!』
Дアークエンジェル戦闘員B:
『おい。面倒だ――“始末”しろ』
<銃口を構える二人の男性。何かの殺気に気付いたのか振り向くメイ。そして銃口を向けられていることに気付き凍り付く>
Σべリオ:おい。アンタ等、それはマズいだろ!
Λ●アークエンジェル戦闘員A:
『なんだ貴様。誰に向かって口をきいている!公務の邪魔だ、失せろ!!』
Σべリオ:
……オメえ等に言ってんだよ、三文コスプレジジイ共。
ガキに銃口を向けんな。笑えねえぞ。
<怒りの形相で銃口をべリオに向けるアークエンジェル戦闘員二人>
Дアークエンジェル戦闘員B:
『我らアークエンジェルの公務の妨害は、死罪!
覚悟は出来ておるのだな!!』
Σべリオ:
何が覚悟だアホンダラ、んなトンチキ布 纏ってはしゃぐな。
あんまうるせえと――ブッ飛ばすぞ……?
Λ●アークエンジェル戦闘員A:
『ッ!!ソーイ様には事後報告で構わん、撃てェ!!』
Σべリオ:ディールがな。
Φディール:――――ふッ!
Λ●アークエンジェル戦闘員A:『チャパティ!?』
Дアークエンジェル戦闘員B:『シャバドゥビ!?』
<戦闘員二人が銃口を構えた瞬間、彼らの背後からブワッと現れるディール。二人を足払いして、喉に強く手刀を叩き入れる。戦闘員二人は即座に気絶した>
Λ●通行人A:おいおい……なんだよコイツ等……。
Д通行人B:しっ……知らねえ……知らねえぞ!!!
<蜘蛛の子を散らすように逃げていく通行人や見物人たち>
Σべリオ:フッ。オレのオーラに完全に気圧されてたな。未熟者が。
Φディール:
はぁ、ソウデスネ。
というか本当に撃たれてたらどうするつもりだったんですか。
Σべリオ:
そん時は大声で泣いて病院に連れてってもらうんだよ。舐めてんのか。
Φディール:
舐め……なんでそんなに自信たっぷりなんですか……。
じゃなくて逃げますよ!そこのキミも!!
Ψスリの少女:あっ……う、うん……!!
<その場から一目散に人をかき分けて少し離れた食堂まで逃げる三人>
―――
――
―
Ψスリの少女:――ありがとう!!強いんだね、「おじさん!」
Φディール:おじっ!?!?
Σべリオ:
だーーーははははは!!!おじさんだってよ!!こりゃ若ハゲも近えなあ!!!
悩むとすぐに眉間にシワ寄るもんなぁ!こりゃマジ傑作だぜウヒラウヒラ――。
Ψスリの少女:静かにしててよ。クサくて弱いおじさん。
<屋台の隅っこで真っ白になって落ち込んで項垂れるようにして座っているべリオと、同じく屋台のテーブルでディールに買ってもらったジュースを飲みながら談笑するディールとメイ>
Σべリオ:
………………………………クサくないんだけどね。強いて言うなら土だけどね。あと薬と包帯の匂いね。なんならキミとの取っ組み合いで匂い変になったけどね。マジ不本意だけどね。ガチマジ不本意のやつだけどねこれ。
<ぶつくさ言いながら木の机に指でくるくると円を描きながら瞬きをせずに呟き>
Φディール:そうなんだ。フェザーポータルって教会や寺院が多いんだね。
Ψスリの少女/メイ:
うん。わたしメイ。このフェザーポータルでも一番大きい教会に住んでるの。
Φディール:“住んでる”……?
Ψメイ:
うん、そうだよ。私みたいにおかあさんやおとうさんがいない子は、皆その教会に住むの。
でも、わたしには弟がいるからさ。ケイって言うんだけど。ケイには学校に行ってほしいんだ。
……だから、クサくて弱いおじさんの財布を盗んじゃったの。
Σべリオ:
クサくねーから。土の匂いだから。お前のせいでそうなってるから。むしろかなりいい匂いだから普段は。いい匂いの語源は俺だって有名だから。
Ψメイ:ぶつぶつ言わないで。きもちわるいよ。
Σべリオ:<声にならない声>
……………………………………。
Φディール:
ま、まぁまぁ。でも、あの大人達は何だったの?銃まで出してきて……。
Ψメイ:
アークエンジェルの事?あれは“ソーイ様”が作った部隊だよ。
えーっと……ケイサツ、っていうんだって。
Φディール:……べリオさん。
Σべリオ:クサくねーし。
Φディール:いつまで言ってるんですか。……それより。
Σべリオ:
…………あぁ。聞いたぜ。
ガキに“様”で呼ばせてたり……私設部隊の警察行為。オマケに殺傷武器の使用も判断が早すぎる。NOAHZは何してんだ?
Φディール:
そもそも……このコロニーは何なのでしょうか。
人口は多いように見えますが、異常に子供が多く、街を見ると人口に比例した発展はしていないように思います。
Σべリオ:…………趣味の悪ィ箱庭みてぇなトコだな。サッサ出てくか。
μトロイ・ロロフス:――もし、そこのお二人様。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【EPISODE2 LIKE FRIDAY】
Ψメイ:あーーっ!トロイー!!!!
<二人の背後に向かって手を振るメイ>
Φディール:どうしたの?保護者の方かな?
Σべリオ:
ンあ?ったく、アンタんとこのガキねえ、元気がいいのはいいですがねえ、ちーっと手癖が悪いと思うんすね!!
こういうのは親のキョーイクが――――。
<そう言いながら振り向く二人。すると、そこには金の美しいウェーブがかった髪を柔らかく風になびかせ、豊かな胸のシルエットを隠しきれない黒い布を身に纏ったシスターが、ハの字で眉毛を下げて涙をうっすらと目に浮かべて立っていた>
μトロイ:うぅ……。
Φディール:あっ……あの……す、すみません、ぼぼボクらがメイちゃんを保護しまして……。
Σべリオ:
おいおいディールニアス。そんな態度じゃこのレイディは困ってしまうよ?ボクたちが“白銀の貴公子”と呼ばれている所以を教えてあげないと。
ところでミセス――いやミス・ビューリホオシスター。この天の川から零れ落ちた困った流れ星ちゃんの保護者様かな?
あまりにも、いやあもりにも美しい二人だからついここを夜空だと勘違いしてしまったよ……パジャマはどこかな、セバスチャン?
Φディール:
ちょっと!僕はディールニアスでもセバスチャンでもないです!なんですか白銀の貴公子ってカッコ悪い!ああもう肩をサワサワしないでください!
μトロイ:
うふふ、面白い方達なのね。
何かお礼をしたいのですが……お昼ご飯はお済みですか?
Φディール:
あぁっいや、嬉しいのですが僕たちは探し物があって――<Σ言葉を遮る>
Σべリオ:
いや~~~もう暇で暇で。逆にオレを忙しくできるならソイツに会ってみたいですね。おっと?貴女を見ていたら恋のスケジュールに出張の予定が。
え~っと、オレ発アナタ行きのファーストクラス。予約完了ッと……コッ。
<前髪をやたらとふっさふっさ触りながら舌を鳴らして答えるべリオ>
μトロイ:
うふふふ♡ それでは、教会へご案内しますね♡
それと……メイ。ダメでしょう?お兄さんたちにゴメンナサイは?
ケイくんのお勉強は、私が一緒に見てあげるって約束したよね。
……私の眼を見て約束して。もう危ないことも、ドロボウもしないって。
Φディール:
仕方ないか……。まあ、ご飯くらいならいいですよね。
それにどうですか?べリオさん。許してあげましょうよ。
Σべリオ:……まぁ、な。ガキっつうのは間違えるもんだし。
Ψメイ:
……はい。ごめんなさい……。
おじさん。それに、クサくて弱くてきもちわるいおじさん。ごめんなさい。
<ΣΦ笑顔で額に5つほど青筋を立てながら拳を握り締めるも、それを後ろから羽交い絞めにされて止められるべリオ>
Σべリオ:ウフ、ウフフ、ウフフ不負フ腐!
Φディール:
じっべリオさん落ち着いてください!
無邪気な子供ですよ!カワイイ女の子じゃないですか……!
Σべリオ:
関係ねーヨ?老若男女平等パンチでヨ分からせてやるヨ?おもっきいってやっからヨ?
μトロイ:お二人共?もしかしたら……おなか、空いておられませんか?
<無意識にやや涙目で上目遣いをしてしまうトロイ>
<ΣΦ瞬時に表情を変えて、とぼけたような口調で“余裕な男性”を演じる二人>
Φディール:べリオさん。今日は、お米何キロいけますか?
Σべリオ:ンー? お米って“トン”で表さない派ー?
μトロイ:うふふふ♡ 腕によりをかけて作りますね♡
―――
――
―
<場面転換。白くややひび割れた土壁で構成される高い天井の作りの教会の大聖堂。そこには横長の椅子が何席も置かれており、子供たちが大勢座っているその空間。大聖堂の視点が集まる舞台上では、トロイが聖書を読んでいる>
トロイ:
――怒りはたった一瞬で、恵みは命ある限り降り注ぐ長いものなのです。
一晩中を泣いて悲しんで過ごしても、御覧なさい。朝と共に喜びが私達を照らすでしょう……。
Σべリオ:おいディール。
Φディール:……なんですか、べリオさん。
Σべリオ:んーだこりゃ。
Φディール:聖書の説法ですね。
Σべリオ:……このイベント必要?
Φディール:
教会では恵みをいただくにはお話を聞く、というのが習わしなんでしょうね。
<15分後>
μトロイ:……今日はここまで。皆さん、最後にお祈りをしましょうね。
Φディール:……。<ちらりとべリオを横目で見やり、溜息をつく>
Σべリオ:
ンガッゴゴ、ゴギガ……むにゃむにゃ……羊が一匹……サンゴが二キロ……ナンパ男の生首が三つ……。
Φディール:
どんな夢見てるんですか……しかもそれ、眠りにつくときにやるやつですよ。
ほら起きてください、終わりましたよ。
Σべリオ:ふおっ……おわたか……。
μトロイ:
さあ、皆さん。 主に感謝して、お昼ご飯を頂きましょうね。今日はシチューを作ったんですよ♡
お皿を持って一列に並んでくださ~い♡
Σべリオ:わあ~~~!!!んーだこのガキ!!オレが最初に並んだんだぞっ!
α孤児A:ずるいよ!僕たちをおしのけたでしょ~!
Σべリオ:関係ねーよフィジカルも大事だから!
γ孤児B:ならぶときは走っちゃだめなんだよ~~~!!
Σべリオ:
聞こえ~ん!!見え~~ん!シスターさんの笑顔だけしか見えてないも~ん!
μトロイ:……仲良く、食べてほしいかな。ね。
<少し悲しそうに微笑むトロイ>
Σべリオ:
さあ皆。おじさんが列を確保しておいたからね。さあさここに並んで。
シスターさ~~ん!!!オレは一番最後で構わないんで~~!!
<キリリと表情を引き締めて子供たちに早口で喋りながら微笑んで、自分はそそくさと最後尾まで移動するべリオ>
Φディール:……はぁ……――。<頭を抱えて溜息をつくディール>
―――
――
―
<場面転換。通信端末でセルゲイと話しながら歩いているフラワ。つまらなそうな顔でそれに追従して歩くカリオストロと、表情を崩さずに同じく追従して歩くワカミネ>
ωムーンライト:<通信>
『不幸中の幸いやが、EMP食らったやろ?
あん時スラスターの制御系イッた~思ててんけど、そこまで酷い損傷は無さそうや。べリオ達に通信端末持たせてんのか?
この分だと、低圧縮式 接着ガンは必要なさげやなあ』
Ψフラワ:
エンジンの破損が無いならいつも通り発電して貯蔵、エネルギーインフラ業者に渡してベーゼを稼げるわね。
ふーー……早速経営破綻するかと思ったわ。
αカリオストロ:OBLOMで得た莫大なベーゼが有るだろう?
Ψフラワ:
セイヴァージークの建造と稼働テストでほぼスッカラカンよ、スッカラカン。
γワカミネ:
まあ、戦艦というのは戦闘や移動のみに用いられるものではない。
積載量を活かした運搬業・採掘業・武装の種類によっては護衛業エトセトラ。
稼働中のエンジンから生まれる莫大な電力は、貯蔵して売却なり艦内に還元するなり……。
αカリオストロ:
『艦一つで三代安泰』と言うからね。
個人で戦艦を所有するという事は、富と権力の象徴だ。
γワカミネ:
安定には程遠い旅に出てしまっているがな。インフラ業者の到着にも予定がかかるというし……。
Ψフラワ:ま、ぶっつけ戦闘で命があっただけ儲けものでしょ。
<その時、三人に不意に背後から軽い男たちの声がかかる>
Σナンパ男A:
ぅいチョリ~~~ス!!!ねえねえ!ソコのマブなチャンネ~達ィ~!
π●ナンパ男B:
てか、パねwガチ、パねw観光?w観光的なヤツぶっかましちゃってるカンジ?w
ωナンパ男C:
ちょ~どボクら三人でヒマしてんのヨw近くの雰囲気パネなBARでお酒オゴオゴさせてチョ~よwwww
γワカミネ:……?すまない、何を言っているのか分からない。オゴとは何だ?
Σナンパ男A:
ちょwwwwwうぃwwwwwうぃうぃうぃwwwwwwこっちの長身オネッスァン俺らにキョーミシンシンwwww
π●ナンパ男B:
オェ~~~イwwwwッドァ!(鳴き声)wwwッドァ!(鳴き声)wwww
ωナンパ男C:
EDM聞くウ?www EDM聞くウ?wwwwww
αカリオストロ:……程度が知れるね。
Ψフラワ:こういうトコのナンパってまだこんな感じなのね。
γワカミネ:どあ……?
Σナンパ男A:ほんじゃそこのBARでウィシリッシャ~~~スwwww
Ψフラワ:これ本当になんて言ってるの?
αカリオストロ:…………。<服の下の武器に触れる>
γワカミネ:
ナイフは出すなカリオストロ。地元の警察に目を付けられるのは避けたい。
π●ナンパ男B:
ちょ、オネッスァン達ノリ急にサゲじゃね?wwwwそれ無くね?wwwほんじゃ、、、、、、
<フラワの方に顔を向けるナンパたち>
ωナンパ男C:BARまで、んGo~~~~~!!!!!
Ψフラワ:……ま、アタシに来るわよね。……どうなっても知らないわよ。
<比較的長身のカリオストロとワカミネを押しのけ、フラワの腕をつかもうとしてくるナンパ男たち。それに対して彼らを難なく地面に組み伏せるカリオストロとワカミネ>
αカリオストロ:フン!
γワカミネ:遅いな。飯は食っているのか?
Σナンパ男A:イタタタタタ、ちょ、マジ。マジマジ。
π●ナンパ男B:ギブっす。ガチでギブっす。
ωナンパ男C:
も……(う無理)っす。も……(う本当に無理で)す。か……(んべんしてください)っす……。
Ψフラワ:
バカね~~アンタら。そーんなほっそい身体にジャラジャラ邪魔なもの着けて動けるわけないでしょうが。べリオでももうちょっと動くわよ。
γワカミネ:
いや、べリオでは無理だろう。身体測定の50mランで11秒をたたき出していたぞ。
Ψフラワ:
ええっ何それ!! おssssっそ!!!!
アタシより遅いじゃん!
αカリオストロ:
み……見たのかい!?べリオが走るところを見たのかい!?!?
嗚呼っ……。きっと緩やかな体の動きなのだろう……大地を現したかのような雄々しい歩み……。
まさに静の中に眠る動……。
Ψフラワ:ただの鈍でしょ。
γワカミネ:……?大地を現す歩みとはなんだ?寝転んでいるという事か?
<雑談をしながらも地面に伏せられたままのナンパ男たちが声を上げる>
Σナンパ男A:もうマジ勘弁してくださいよォ!出来心だったんでぇ!
π●ナンパ男B:
ジロジロ見られてっしぃ!“アークエンジェル”が来ちまったらやばいんすよ!
ωナンパ男C:ホントもうこれ以上何もしないんでぇ!謝るんでぇ!
Ψフラワ:
……離してあげなさい、二人共。
アンタ達ねー、ナンパは結構だけどそんな弱くっちゃ何もできないわよ。
ちょっとぐらい筋トレしなさい。おバカ。おバカ。こっちもおバカ。
<そう言ってナンパ男ABCの額をデコピンして回るフラワ>
Σナンパ男A:もうしません……。
π●ナンパ男B:反省してます……。
ωナンパ男C:出家します……。
γワカミネ:
大丈夫か、少年。痛むか? 脱臼はしない様に手加減はしておいたつもりだ。
念のため、接骨院で検査をしてもらう事を勧める。
……本当にすまなかったな。
<申し訳なさそうに微笑むワカミネ>
μ街行く女性A:カッコ良い……!
Ψ街行く女性B:素敵……♡
αカリオストロ:
そこまで自分を卑下せずとも良い。
確かに僕の心には既に王と決めた男が居るが、君たちの必至な姿に感銘を受けたのも間違いはない。精進したまえ。
その姿は、誰にも汚すことの出来ない覇の道に相応しい姿なのだからね。
μ街行く女性A:きゃぁぁぁぁ~~~~~~っ!
Φ街行く男性A:おっおい!人が倒れたぞ!救急車!
π●街行く男性B:
しっかし今日は変わった連中が多いなあ。そもそも観光客が珍しいってのによ。
ω街行く男性C:
全くだな。さっきなんかよ、2ブロック先の路地でスリのガキと大喧嘩してる観光客が二人いてな!
π●街行く男性B:
オレも見たぜ。オレンジ色の服着た、弱いわりに威勢のいい奴だろ?
もう一人の奴はおとなしそうだったが……“アークエンジェル”の武装した兵士二人もはっ倒してな。賑やかな日だぜ、全く。
Ψフラワ:ちょっと。
<雑談をしている男性たちの話を聞きつけ、顔を寄せて話している彼らの間に顔をズイッと割り込ませるフラワ>
Φ街行く男性A:うおおびっくりした!
Ψフラワ:
楽しいお喋りの邪魔してごめんなさい。気になったのだけど……その、スリとケンカしてる観光客二人の話。
オレンジ色の服を着て……スリの子供とケンカしてたの?
π●街行く男性B:そ、そうだよ。ありゃスッゲエ喧嘩だったなあ。
ω街行く男性C:
わっはっはっは!ありゃ傑作だったなあ。
痩せたスリの女のガキと、揉みくちゃになって喧嘩しててよぉ。
Φ街行く男性A:
大人しそうな片割れもアークエンジェルをサクッと寝かしちまってよぉ。
んで、その後にダッシュで逃げてったなあ。どこ行っちまったんだか。
π●街行く男性B:
それこそちょうど一時間前くらいまで、そこの食堂に居たみたいだぜ。
セント・ロロフス教会のシスターと、その後はどっか行ったらしいが。
ω街行く男性C:
セントロロフスったらあのでっけえ教会か。
孤児まみれって言うし……連れて帰ったんだろうな。
なんで観光客がついていってたのかは分かんねえが。
Ψフラワ:つつつ着いていってたぁ!?!?
αカリオストロ:……。<くしゃ、と額に手を当てて呆れたように上を向く>
γワカミネ:
……武装した兵士を二人――地元警察か。
地元警察にケンカを売り、孤児院の教会になぜかついていったバカ共。
…………眩暈がするな。
αカリオストロ:
まあ待とう。まだべリオ達だと判明したわけじゃない。
その観光客は身分や名前を明かしていたかい?
こんな風に互いを呼んでいた、とか。
Φ街行く男性A:おお、それそれ。
π●街行く男性B:おぉ。それだよ。
ω街行く男性C:しっくり来たな。
γワカミネ:何がだ?
Φ街行く男性A:
何って……アンタが今言ったろ。
ここいらじゃ聞かねえ名前だから珍しくってなあ。
π●街行く男性B:ムロ……なんたらと、そのべリオって言ってたぜ。
ω街行く男性C:出身は何処なんだろうなぁ?みょうちきりんな響きだよな。
Ψフラワ:はーーーーーーーーーーーーー…………………。
αカリオストロ:…………。
γワカミネ:…………。読めんものだ……。
αカリオストロ:
……フラワ、彼らの通信端末のコードを教えてくれ。連絡が取りたい。
Ψフラワ:
アイツらに端末なんか渡したら……ディールならまだしも、べリオはどっかに落っことしてくるに決まってんでしょ。
ディールと一緒だから大丈夫だと思ってたのよ……。
γワカミネ:
嘆いていても始まらん。
すまない君たち。その、セント・ロロフスという教会は何処にあるか教えてもらえると助かるのだが。
Φ街行く男性A:そりゃ……アレよ。
<男性Aが指さす先。町からも見える一際巨大な建造物を指さす>
Ψフラワ:……妙に立派ね。
αカリオストロ:不釣り合いとは、この事だね。
γワカミネ:一先ず向かうとしよう。助かったよ、君達。
αカリオストロ:君たちも、君たちの“道”が見つかるといいね。では。
<そう言ってその場を後にする女性三人。それを物陰から眺める二人の男>
Λ●クルス・シストランジェ:――――……匂うねぇ。
Дパウロ・グランツ:――確かなのであろうな。
Λ●クルス:
女に関しちゃ俺に任せてくださいよ。破廉恥な程プンプン匂いますねぇ。
……鉄と――宇宙の匂いだ。
Дパウロ:
……人混みは好かんのう。
“蠢く”の字の如き人間共の群れ。
多さとは……人から虫にもその身を落とさせよる。
Λ●クルス:相変わらず人間嫌いですねぇ。
Дパウロ:“嫌い”程度に収まって見えるか。曇ったのう、クルス。
Λ●クルス:……男の扱いは苦手なのでね。
Дパウロ:抜かしよる。……気分が悪い。先に戻っておるぞ。
<そう言って姿を消す一人の男>
Λ●クルス:
…………向かえ討つだけじゃ務まんねーのさ。やれやれ……。
あの人は偵察に向いてねーなぁ……。
<遠い目で片手に持ったホットドッグを齧りながら呟くクルス>
Λ●クルス:
……にしても、このコロニーの異常さときたら。
報告量が増えんのは、困るんだが……。
<対傍受短針小型インカムを口元に近づけるクルス>
―――
――
―
<場面転換。教会で昼食をとっているべリオ、ディール、トロイ、孤児>
Σべリオ:うんま、うますぎ、薬物のごとし、モガガガ、モガモガ……。
Φディール:確かに、とっても美味しい……!!
μトロイ:うふふ♡ ご飯を沢山食べる男の人、素敵です♡
Σべリオ:すいません、おかわりあと3ガロン貰えますか?
Φディール:
燃料じゃないんですから。……それより、その……お名前。聞かせて頂いてもよろしいですか?
μトロイ:
あっ、そうだ!……じゃなくて、そうでした。私、まだお名前お伝えしておりませんでしたね。
セントロロフス教会のシスター、トロイ・ロロフスと申します。
ΦディールN:(教会が名前に入っている。……孤児出身なのか)
Σべリオ:
さいしょのためぐちもかわよいなぁ、よろしくねぇとろいちゃんモボボボ……。
Ψメイ:おじさん!口からシチュー漏れてるよお!きたないよー!!!
Φディール:
敬語は使わないでもらっても構いませんよ。
……改めて。ムロウル・ティアラです。趣味は……読書。宜しくお願いします。
Σべリオ:
べリオです。特技は機械制御です。結構声はカッコいいって言われます笑。
趣味はー、ローファイのオルゴールアレンジバンドメドレーを聞くこと笑。
オレって結構変わってんのかな笑?オレ、異端なのかな笑?
ΦディールN:(本当はhiphopとダンスミュージックしか聞かないくせに……)
μトロイ:
そうなんだねぇ。べリオくんって、かっこいい趣味してるね♡
……良かった。私、大人か子供としか喋らないから、こうやって同い年と親しみを込めて喋ることが少なくて……。
Σべリオ:か、カコ、カッコいいかなあ、どふ、どふふふ……。
α孤児A:こ、こわい……ぐす……。
Φディール:
べリオさんべリオさん。子供泣いちゃってますよ。
……にしても、へぇ。こんなに立派な教会を、おひとりで回してらっしゃるんですか?
凄いなあ、大変でしょうに……。シスターさんって、何か資格とか取らないとなれないんですか?
μトロイ:
んふ……♡ありがとう♡でも全然大変じゃないよ、子供達もお掃除や食事とか……あと畑だって手伝ってくれるしね!
資格……じゃないなあ。シスターはねえ、選ばれるんだよ!えっへんっ!
先代のシスターがね、老いて死を悟る時……さっきの大聖堂に一人で一晩中お祈りをして、次の日に子供たちの中から次のシスターを任命するの。
そして……。シスターは心残りなく神の下に向かうんだ。
Φディール:
へえぇ。まさに生涯を神に捧げる、って感じですね。
僕のコロニーではそんな文化なかったから、凄く新鮮だなあ……ッて、感心してる場合じゃなかった。
えーっと、本題に戻るんですけども……実は僕たち、パーツショップを探しているんですが。なかなか見当たらなくて。
μトロイ:
ぱーつしょっぷ……かぁ。
多分だけど、そういう工業系のショップは、教会の裏の方のブロックに集中していると思うよ。
…………工業、か。
Φディール:……何か?
μトロイ:
…………私、機械が嫌いなんだ。
だって、人をあまりに簡単に殺せてしまうから。
……最近も、IOPLANETっていう巨大なコロニーが謎のスラスターの不具合によって爆発したんだって。
Σべリオ:…………。
<孤児達と喋りながら食べ進めていたシチューを掬う手をピタッと止めるべリオ>
Φディール:……。スラスターの……不具合。
ΦディールN:(そういう情報統制はもう根回し済みか……)
μトロイ:
「旅立ちへの痛み※」の時もそう。IOPLANETの爆発だってそう。
このコロニーで機械が生産できないからって理由で支援をおざなりにして、苦しむ国民をあざ笑うNOAHの人間たちもそう。
……機械がいつも人間に牙をむくの。
そして機械に支配された人たちは、人を人と思わなくなっていく。
機械がいつも、弱い者から奪っていくんだよ。
Φディール:…………そんな事は――。
μトロイ:
そうだよ!!……そうに、決まってるよ。
私や、この子たちのお父さんとお母さんもそう!
ソーイ様が宇宙を平和にしようとしても……その思いを胸にしても!
結局は銃を握って戦わなきゃいけなくなるんだから……!
Σべリオ:………………そうかよ。
μトロイ:
……最近もね。
“大きな戦艦”が無遠慮にこのコロニーに入ってきたんだよ……戦争なんて大っ嫌い……!!
銃を握ることを強制するなんて、誰にも許される事ではないんだよッ!
Σべリオ:ッッ……。
<机の下でこぶしを握り締めるべリオ>
Φディール:
べリオさん。<べリオの肩に手を置くディール>
…………辞めましょう。
戦いの無い世界では、武器がどういう目で見られているか……分からないわけじゃないでしょう。
Σべリオ:…………ごちそーさんでした……帰ろうぜ、ディール。
Φディール:
ええっ、ちょっとべリオさん!
……すみません、トロイさん。
μトロイ:
…………ううん、私も急に熱くなっちゃって。べリオ君に、謝っておいて。
また時間のある時に遊びに来てね、ディール君。
<悲しそうに微笑みながらディールを見送るトロイ>
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【EPISODE3 INCOMING】
<場面転換 パーツショップへ向かう人気の少ない道程の途中のディールとべリオ>
Φディール:……まだ、怒ってますか?
Σべリオ:…………分かんね。
Φディール:間違っていることを言われたとは、僕は思いませんでしたが。
Σべリオ:
だからムカつくんだよ。……『ソーイ“様”』…………か。
関係ねえ、補給の為に寄ったコロニーだ。貧しい国の王様になんか興味ねえ。
サッサと帰ろうぜ。
Λ●クルス:
――――はぁ~~、教会にずっと居てくれりゃぁな。
“A.F.S”の――ムロウル・ティアラに…………“東の英雄”べリオ。
Φディール:――ッ!!!!
Σべリオ:誰だッッ!!!!!!
Λ●クルス:おお怖。通信記録の通りのキレっぷりだねえ。
Φディール:
ッッ!其処から動かないでください!!
動いた場合、発砲します!!
<腰から小型自動拳銃を取り出して即座に構えるディール>
Λ●クルス:
辞めときな。向いてねえぜ、そういうの。
NOAHZを裏切るのも苦しかったクチじゃねぇか?マジメ君。
Φディール:ッ――!
<そう言って歩みを進めようとするとクルスの足元にガチュン、と火花が散る>
Λ●クルス:
おっとっと。マジで撃つのかよ。
見た目じゃわかんねえが……結構変わったか?
Φディール:
――次は当てます。
…………貴方はいったい誰で、目的は何ですか!!
Λ●クルス:
(ため息)…………すんませんね、今回の報告書を書いて下さる上司の皆さん。
オレも偵察っつうのは苦手みたいですわ。
<小声で自嘲気味につぶやく>
……ま、オレ流って事で。
――NOAHZ所属、クルス・シストランジェ准尉。
ヨロシクな。
Σべリオ:NOAHZ……ッ!!
Φディール:
べリオさんは銃を構えないでください!
“一人手が空いている”というのがアドバンテージなんです。
落ち着いて対処しましょう。
……シストランジェ! 貴方の目的を教えてください!
Λ●クルス:
クルスって呼ばれてんだがな。ま、別に隠すこともねぇ。
お前らの捜索と……偵察だ。常に位置を把握する事。
何を企んでいても即座に対応できるようにする……不思議でもねぇよな?
IOPLANETの爆発の真相を知っているのは、お前らA.F.Sのメンバーのみ。
NOAHZ……いや、“テンペスト・ラプラス”としては注視するってのは当然だろ。
ΦディールN:
(……何故即座に攻撃をしない?泳がせる意味はあるのか?)
Λ●クルスN:
あの“ヒゲ”の機体を含めた、お前らA.F.Sの戦力分析の為……ってのは流石に言わなくてもいいな。
NOAHZってのも一枚岩じゃねえんでな。人間関係ってのがあんのよ。
ドンパチドンパチじゃ、NOAHのエライさんもいい顔しねぇしな。動きにくくなるような事は避けてるってだけさ。
……あ、これ“は”――マジだぜ。
ΣべリオN:(これ“は”…………?)
Λ●クルス:
雑談しに来たわけじゃないんだ……本題の話をしようか。
Φディール:動くなッ!!
Λ●クルス:おっとっと、大きな声を出すなよ。なぁ。
<そう言ってクイクイ、と背後の二階建ての建物の窓を親指で指す>
Φディール:ッ!!べリオさん……動かないで。
Σべリオ:なんだよ……別にこのクルスってのは何もしてねえし、とっ捕まえちまおうぜっ。
Φディール:
後ろの民家にスナイパーです!それに……その隣のビルにも二人!
僕達の声は、シストランジェのインカムから筒抜けです!
恐らく小型のインカム……時折聞こえる電子音は、インカムでの合図……!!
縮めた打音で連絡を取り合っている……!
ΛクルスN:
(ほう……。視力が高いだけじゃねぇな、こりゃ。どういう視野と耳してやがる)
Λ●クルス:
――お互いの状況が分かったみたいだな。
じゃ、本題といこうか。
……簡単だ。“ヒゲ”のデータと機体を渡せ。
お前らがどこで手に入れたかは知らねえが……あの機体が積んでるのは、何だ?
ΦディールN:
(あの機体が積んでいるのは、次世代型スペリオルの物だと知らない……?)
ΣべリオN:
(ぬけぬけとッ…………!!)
Λ●クルス:
これも話としてはシンプルだ。
お前らが乗ってるのは、違法建造された上に未認可のスペリオルもどき。
NOAHZとしては見過ごせねぇ。
大っぴらに破壊も極力回避しろとの命令だ。後は分かるよな?
Σべリオ:
都合のいいことを言うんじゃねえ!!
大量虐殺者が今更手段選んでんのかよ!!!!
Λ●クルス:
ちょい違うな、少年。
大量虐殺“も”手段の一つだっただけだ。
その中のイレギュラーのお前らを処分できなかった今、より良い選択肢を選んでいるだけ。
お前らの気持ちをNOAHZが推し量ってくれるとでも思ってんのか?
……さ、データまで案内しろ。
Φディール:……ッ!……ぐっ……!!
ΦディールN:
(悔しいが数歩先を抑えられている……!
テンペスト・ラプラス――感情を徹底的に排除した合理性の塊……!!
交渉とは言っているが、最早僕たちは“殺される”という舞台にすら上がれていないのか……!!)
Σべリオ:
…………お……?…………イヤダ。
Λ●クルス:……交渉決裂だな。ま、こうなるか。撃て――。
Σべリオ:ディール!伏せろ!!!!
Φディール:ッ!!
Λ●クルス:――!?!? グッ!
<ぎゅいん、と音を立ててクルスの背後から大型のモーターバイクにまたがったムーンライトが走ってくる。飛びのいて回避するクルス。大型のモーターバイクを陰にして隠れる三人>
ωムーンライト:
――――こっちの道のパーツショップやったか!!遅れたわアホンダラァ!
ДスナイパーA:クルス准尉!ご無事ですか!
Λ●クルス:構うな!!目標を狙え!!
<ちゅいん、がぎんと消音されたスナイパーライフルから発射された弾丸が盾にされたモーターバイクに命中する音が響く>
ωムーンライト:
ぐおおおおおオレのカワイイ「イエローパンサーちゃん」がぁぁぁ!!
エネルギータンクには当てんでくれぇ爆発してオダブツんなるからぁぁぁッ!!
<ハンドガンを取り出し、リロードするムーンライト>
ωムーンライト:スナイパーの数は!
Φディール:前方に一人!!3時の方向に一人です!!
ωムーンライト:
隙をついて逃げんど!!――――今や!!!!
<モーターバイクに乗り込み、逃げる三人。それを目を細めて眺めるクルス>
Λ●クルス:…………ふぅ……。
ДスナイパーB:准尉!どうなさいますか!!あと7秒で射程範囲外!!
Λ●クルス:
イヤ……いい。武装を解除しろ。
このコロニーでは燃料補給も時間がかかるだろう。
それに――俺より偵察に向いてない上司が、もう“向かってる”からな。
―――
――
―
<場面転換。モーターバイクのサイドカーにちょこんと座るべリオとモーターバイクにまたがる二人。モーターバイクのエンジンを緩めずに移動している>
ωムーンライト:――このボケカマキリ共!!!!
Σべリオ:オレも?
ωムーンライト:
NOAHZを前に、生身で何をしよったんや!!!!
IOPLANETをブッ飛ばした極悪集団やぞ!!
みすみす死にに行っとんと同じやボケェ!!
Φディール:違うんです、接触はあのNOAHZから……!!
ωムーンライト:向こうから!?…………ボケが!!何を企んどんや……!!
Σべリオ:……ま、お前がオレを殺しそうな顔で合図してくれて助かったぜ。
Φディール:合図?あぁ、あの時。
<回想開始>
Λ●クルス:
お前らの気持ちをNOAHZが推し量ってくれるとでも思ってんのか?
……さ、データまで案内しろ。
Φディール:……ッ!……ぐっ……!!
Σべリオ:
…………お……?…………イヤダ。
<回想終了>
Φディール:
あの時……。それで急にヘタクソな棒読みになったんですね……。
ωムーンライト:
ディールはスナイパーやクルスから目ぇ離さんかったからな。
あらナイスアイコンタクトやったで、べリオ。
Σべリオ:へへへ 流石俺……ってか、どこ向かってんだ?
ωムーンライト:
セイヴァージークや。
ディール、セイヴァージークに着いたらディテクターに乗れ。
んで、オレとべリオはバイクをディテクターに積んで、セントロロフスまで向かう。
Φディール:え?……何故ですか?ッ――。
<そうディールが言うと、べリオ達の上空をごおおっ、と音を立てて一機の機体がすれ違うように飛行する>
ωムーンライト:…………分かったか?
Σべリオ:……まあ、大体は。
ωムーンライト:
セイヴァージークでスペリオルの接近を検知したのが一時間前や。
お前らがバラバラになっとる中で接近――偶然ちゃうやろ。
……しっかし、市街地やぞ。オマケに、女どもは生身。
相当キレた敵さんやな。
Φディール:……急がないとッ!!ムーンライトさん、アクセルをもっと踏んで!!
ωムーンライト:とっくに限界まで踏んどるわダーホ。急ぎはするが……焦んな。
Σべリオ:やけに落ち着いてんな…………。軍経験が有んのか?
ωムーンライト:
……親父の真似じゃ。家族より軍を選んで勝手に死によったクソ親父じゃ。
そやったが……ムカつく事に、今になってアイツの口癖が役に立っとんのが……腹立たしいわな。
Σべリオ:…………余計なこと聞いたな。……急いでくれ。
<グォン、とモーターバイクが唸る音が響く>
―――
――
―
<場面転換。セントロロフス教会にたどり着くカリオストロ、ワカミネ、フラワ>
αカリオストロ:
――唐突の訪問申し訳ない!
ここにオレンジ色の作業着の男と、制服姿の男が訪ねて来なかったかな?
<扉をどんどんと拳で叩きながらそう大きめの声で言うカリオストロ>
Ψフラワ:……ちょっと、なんだかいつになく乱暴じゃない。
αカリオストロ:
そう見えるかい?
まぁ、今時珍しい作りではあるが。インターホンの類が備え付けられていない文化圏では、これぐらいの声量で問いかけるのが普通なのだよ。……お、ほら。
μトロイ:
――……こんにちは。ごきげんよう♡
……えぇ、確かに訪ねてきましたが……。
立ち話も何ですし、お茶でもいかがですか?
αカリオストロ:
……んふふ、美しい純白の神の使いよ。
君のその透き通ったソーダのような声から紡がれる誘いには、僕達としてもフラフラと誘われるような感覚を覚えるのだが、些か今は――。
γワカミネ:いや、単なる人探しだ。有難いがその誘いはお断りさせて頂く。
μトロイ:それは……ごめんなさいね、お急ぎだったのかしら。
Ψフラワ:
アンタ達ね……。ホント、黒か白かみたいな奴ばっかりだこと。
それで、オレンジの作業着と制服姿の男、どっちに行きました?
……っていうか、なんでこんな協会にまで来たんでしょうね、アイツ等。
μトロイ:
え、えぇと……。
実は……この教会の子がオレンジ色の男性の方に……その、粗相をしまして。
その上……警察に射殺される所を救って頂けたんです。
γワカミネ:………………あの噂は本当だったのか。
Ψフラワ:バkkkkkkッカよね…………。
αカリオストロ:んぁん……武力をも気にせず子供を救うジロぉ……。
γワカミネ:恐らく、ディールが武力での解決を担当したのだと思うぞ。
μトロイ:
べリオさん……あそこで遊んでいるメイとケンカをして、傷だらけになってしまわれて。
手当をする暇もなくパーツショップに向かうと、早々とこの場を後にしてしまわれて……。
<孤児がサッカーボールをして遊んでいる。その中に交じってサッカーボールを追いかけるメイに視線を向けるトロイ。そして、げんなりとする女子三人>
Ψフラワ:……あんな小さい子と、ケンカが成り立つのね……。
γワカミネ:傷を負っているとも言っていたな……。
αカリオストロ:
…………。とにかく。
それではシスター。彼らの向かった道は?
μトロイ:
ええ、それでしたらこちらの道を――――きゃぁぁぁっ!!!!
<ズズズン、と揺れる地面。瞬時に境界付近の玄関はヘルメットをした青いスーツの兵士に包囲される。
そしてなんとも特徴的な頭部に二本の鋭いアンテナが装備されたシルエットのランドスタッドが一機膝立ちでこちらを睨むように俯いていて。 そして、ランドスタッドから拡声器を通しての音声が響く>
Дパウロ:
――――『動くな。手を頭の後ろで組み、地に伏せろ。 吾の頭部機銃を含む20を超える銃口がうぬらを包囲している』
γワカミネ:なんとも大掛かりな仕掛けで脅すものだ……ッ!!
<γΨワカミネが一歩足を後ろに下げた瞬間、パウロのランドスタッドの頭部のバルカンから弾丸が発射される。その弾丸は正確にワカミネの足元に吸い込まれ、地面をえぐり取ったかのような穴を残した。>
Ψフラワ:きゃぁぁっ!
αカリオストロ:どういう精度だ……。
Дパウロ:
『対人間にこの機体を持ち出したのは視覚的に脅すためでは無い。
“この機体で制圧をする”からだ。いまいち理解が出来ていないのか。マヒしているからかは知らんが……。
二度手間は好かん。最後だ、「地に伏せろ」。
この状況に抵抗を思案する程、幼くはあるまい……』
Ψフラワ:くっ……。
<フラワ、カリオストロ、ワカミネ、トロイは頭を上で組んで地に伏せる。孤児たちは不安げに教会の扉や窓から顔を覗かせている>
ДパウロN:
(……明らかに異常な量の捨て子。
――民の命を吸い、何を企む。……ズング・ソーイ)
πNOAHZ兵士:
『パウロ中尉。教会内の敵戦力はありません。速やかに作戦行動に移れます』
Дパウロ:
……諾了。警戒態勢を維持し待機せよ。
さて、交渉……では無いのう。吾としてはこう言い換えようか……。
これは命令である。
NOAH所有の多角戦略作戦用ランドスタッドスペリオルの未認可の違法改造。加えて未認可の所有、使用を確認。
データと機体を我らNOAHに引き渡せ。
Ψフラワ:
渡せるわけないでしょう!!どこまでツラの皮が厚いのよ人殺し共……!!
Дパウロ:
『……生娘のような事を言うでない。吾、ひいてはテンペストは貴様らの抹殺に使う弾薬を無駄と考えている。
既に貴様らは、その身に過ぎた玩具を持つだけの子供程度の存在。
“粗相が過ぎて玩具が取り上げられる”のは世の常であろうが』
γワカミネ:……虐殺をその身で行っておきながら弾薬の無駄を語るか。
Дパウロ:『必要な分は撃つ。必要でない分は撃たぬ。それだけだ』
αカリオストロ:
……長話が好みかな?結論を先に教えてあげよう。
答えはNOだ。
機体のデータも、機体も渡さない。ロックのコードも吐かない。
ザマを見ろ。
Дパウロ:
『…………成程。見事なり。その体躯の幾倍と想像のつかぬ鉄の巨人を前にして折れぬその心。敬意を表して一撃で終わらせてやろう』
μトロイ:うううっ……あなた達、一体何なんですかっ……!!!!
Ψフラワ:
……ごめんなさい。
私達、追われていてね。巻き込んでしまったわね。
――そこのスペリオルのパイロット!
手にかけるのは私達三人だけと約束しなさい!シスターやその教会の子供たちに罪は無いわ!
Дパウロ:『……心得た』
<ジャキン、とパウロの搭乗する機体の頭部バルカンが起動する音が響く>
ΨフラワN:
(――ごめんなさいべリオ、ディール、A.F.Sの皆……。
そして、お父さん……パパ。
どんな顔をして再会すればいいんだろ……もっとおばあちゃんになってから行く予定だったんだけど……。
……………。
………。
……?
…………やけに、長いわね――)
<顔を上げたフラワ。そこには、太陽を背にしてスラスターを吹かし空中に浮かんだ鈍く輝くドミナントが銃を構えていた>
Φディール:
――――『付近のNOAHZ兵士及びスペリオルに告ぐ!諸君らは当機体によってロックオンされている!
速やかに人質の無事を保証し、武装を解除されたし!
繰り返す!速やかに人質の無事を保証し、武装を解除されたし!
遂行されない場合、武力をもって人質を確保させてもらう!!』
<ドミナントディテクターのコックピット内。ディール、べリオ、ムーンライトの三人でぎゅうぎゅうになった状態でいて>
Σべリオ:――狭ぇんだよハジに寄れ!!
ωムーンライト:
なんやと!!オマエのその服がボッワァなっとるから無駄に場所とってんちゃうんか!
オマエが寄れや!!
Φディール:
んああああああああああもう静かにしてくださいよ!
今どういう状況か分かってるんですか!
通常のスペリオルとは異なった形状の機体!しかもフラワさんたちは生身!
僕達を追いかけてこうなったんですよ!
Σべリオ:でもそれはさぁ、運というかさぁ。
Φディール:
とにかく!ここは一瞬も隙を見せてはいけないんです!
絶対に、彼女達を救出する……!!
―――
――
―
<場面転換。コックピット内で一人呟くパウロ>
Дパウロ:
……ほう。クルスから逃げたか。然してなかなか判断の速い。
吾を探知して、その足でランドスタッドに搭乗して引き返すとは。
……侮れんのう。
Φディール:
『聞こえないか!こちらのレーダーはスペリオルのみならず、人体もロックしている!!脅しではないぞ!!』
<ギュゴン、とディテクターの肩が開く。そこには小型の銃口がびっしりと見える。弾幕形成用のマシンガンがそれぞれ独立して動き、すべてのNOAHZ兵士をロックオンしていた>
Дパウロ:
『……恐らく脅しでは無かろう。無駄に戦力を消耗する事もあるまい。
歩兵は武装を解除、ランドモービルにて撤退せよ。
あの機体と吾の機体は“同じ匂い”だ。長引く戦いは目的の趣旨と反する』
π●NOAHZ兵士:はっ!
<キュゥゥン、とパウロの機体が立ち上がる。それに合わせるようにNOAHZの兵士はトラック型のランドモービルに乗り込み、去っていく>
ωムーンライト:…………こら……な~んか匂うで。
Σべリオ:やけにあっさり引き下がんな。クルスといい……。
ΦディールN:(僕達の機体とデータの確保以外にも何か目的が……?)
Φディール:
……とにかく、べリオさんたちは降りてください。
ディテクターの足に格納されている簡易バイクでセイヴァージークに戻りましょう。
<そう言いながら、コックピットから降りるムーンライトとべリオ。ディテクターの左足がガシュン、と展開して三輪のバイクが現れる。後部座席には複数人が乗り込める作りになっている>
Φディール:よし、これで一先ず……――ッ!?――何だ……!?
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【EPISODE4 GOODBYE MY ANGEL(グッドバイ マイ エンジェル)】
<場面転換。教会内の子供が窓からパウロの機体を眺めて呟いた>
α孤児A:ね……ねぇ……あのおっきいののひとつがね……。
“こっちにおっきなじゅうをむけてる”よ……?
<そしてべリオとムーンライトがドアを蹴破る様に入ってくる>
Σべリオ:――ッ全員出来るだけ教会の奥に隠れろ!!
Ψフラワ:べリオ!?外で何が起きてるの!!
Σべリオ:
この教会にあの機体が銃口を向けてやがる!!
発砲されたら、下手すりゃ全員死ぬ!!
フラワも早く教会の奥に避難しろ!!!!
ωムーンライト:
足で逃げるのもアリかと思たんやがな。
あの機体の開けた穴。ピッタリ人間撃ち殺さんかった精度で撃たれた銃撃や。
……恐らく、人間の極少サイズも打ち抜けるはず。
あとはディールの腕と、おてんとさん次第やな。
な~むな~む……。
<必死の形相のべリオと、慣れたものといった表情で手を合わせるムーンライト。その傍ら、孤児たちの避難をカリオストロとワカミネが行っている>
αカリオストロ:
さぁ、こっちだよ。お姉ちゃんが居るからね。
ゆっくり一列で奥の方においで。
γワカミネ:
泣かないのか。良い子だな。きっと君は強くなれるぞ。
こらこら、女の子が優先だ。男の子は私と一列になって待つのだ。
―――
――
―
<場面転換。ディールのコックピット内。
唐突にそのコックピット内にVUUUUUUNと警告音が響く。コックピットのディスプレイには赤い文字で“WEAPON DETECTED”の表示がされている。
すっかり対応が遅れてしまったと頭で考えるより早くディールは座り直す>
Φディール:なんだ…………?――ッッ!! 何をしているんだ……アナタはッ!!!!
<パウロのスペリオルが太い筒の様な形状の銃を教会に向けている。その銃身には小さな棘が幾数も密集して這えているように見える>
Дパウロ:
『“諦めた”と吾は口にしておらぬ。
……二度も言わせるでない。“機体とデータを寄越せ”。
二度も己が非力に倒れる無辜の民を見たくはなかろう』
ΦディールN:(――市街地だぞ!?)
<ジャキンとディテクターがライフルを構える。
それに伴ってディテクターのエンジンが小さくUhhhhh____________と稼働し始める。戦闘態勢の為のモードにディールが切り替えた>
Дパウロ:
『その距離で吾を撃つか?それも良かろう。
子と仲間の命を賭け金に、吾を一撃で仕留めて見せよ』
<ガシャン、とパウロの機体の構える銃のセーフティが外れる音が響く>
Дパウロ:
『選べ。レジスタンスのままごとを続け、子らを殺すか。
その武具を捨て、民として過ごすか。
――慣れぬ博打に興じるか』
Φディール:最後の警告だ……!銃を下ろせ!!
Дパウロ:『…………聡く見えたのは吾の迷いであったか』
Φディール:LAST HORUS 強制起動――――!!!!
□ディテクター:『――NOW WE HUNTING.』
<ごしゅん、と音が響くとディテクターの機体の顔面に下からバイザーが競り上がる。
コックピット中に一気に目の前のパウロの機体の様々な角度から拡大された映像が流れる>
Φディール:見える……――当たれ―――ッッ!!!!
<次の瞬間、ディールのディテクターの頭部バルカンから2発の弾丸がガチュン、と発射される。その弾丸はパウロの機体の腕の継ぎ目をすり抜け、腕の内部のコードに掠った。
結果、パウロの機体の腕は急激に動力が低下、キュゥゥゥン、という音と共に腕がだらんと垂れ、銃器を地面にどしん、と落とす。
そのままディテクターは一歩歩を進め、パウロの機体を蹴り転ばす。倒れたパウロの機体を足で踏みしめるように地面に固定するディテクター>
Дパウロ:『ッ何…………!!』
Φディール:っハァっ、っハァっ、ハァっ……――!!
ΦディールN:
(目がジリジリと痛みなく焼けるような感触――これが超深度 宙域探査ソナーシステム『LAST HORUS』……!!
自分を取り囲む全てが、明確にクリアに見え、聞こえるのにッ……一瞬後にはブラックアウトをしてしまいそうなこの情報量……!!)
―――
――
―
<場面転換。パウロコックピット内。倒され、不利であるはずの彼は姿勢を崩さず冷静に呟く>
Дパウロ:
……成程。構えた長銃は陥穽。
本命は頭部内蔵の機銃という訳か。
……然して、吾の機体の、腕の継ぎ目を狙い撃つとは。
静止しているとはいえ……。
侮ったか。
Φディール:
『形勢逆転だ……!
搭乗パイロットは武装を解除した上でコックピットをアンロックしろ!!
両手を上に挙げ、ゆっくりと出てこい!』
Дパウロ:……見誤っていた。……許せ。
Φディール:
『ッ何が許せだ!
脅しも殺しも平気な貴方達を許す人間など、何処にも居ない!』
Дパウロ:…………――言い換えようかの。
□アオオニ:『OGRE』
Дパウロ:覚悟せい。
□アオオニ:『BLUE TYPE』
<スペリオル・アオオニの顔面にバイザーが下りてくる。口元のマスクがバカン、と割れて放熱板が露になる>
Φディール:……ッ……――鬼……!
<パウロの機体の豹変を見て、子供のころに本で見た化け物の名前を口にしてしまうディール>
Дパウロ:『ふむ……。こうか?』
<アオオニの頭部のバルカンがギュインと稼働する。
アオオニのバルカンがバラララ、と音を響かせた次の瞬間にディールの機体が突如体勢を崩す>
Φディール:ッッなんだ!?何をされた――!
□ディテクター:『LEFT LEG DAMAGED.』
Φディール:
……左脚部、損傷!?バカな!!
僕に押し倒された直後にッ、左足のフレームの隙間をバルカンで狙撃……!?
ディテクターは太陽を背にしているんだぞ!しかも狙うまでの速度が、速すぎる……――!
Дパウロ:
『こんなものかのう。成程。止まっておれば斯程のものか。
芸にもならぬな。さて……御返しだ――』
<膝をついたディテクターを蹴り倒すアオオニ>
Φディール:うわあぁぁぁぁぁぁ――ッ!!!!
Дパウロ:
『恨むのであれば、慣れぬ手慰みを選んだ己を呪え』
<アオオニの握っている細い銃の銃口が一瞬光ったかと思うと目にもとまらぬ速度で三発のビームが発射され。ディテクターの右足、両手のフレームの継ぎ目に吸い込まれていく。そして、ディテクターの四肢は火花を散らし、腕をだらんと垂らし、跪いたような体勢に>
Φディール:
イヤだ……くそッ……何が、何がNOAHだっ……!!
人を人とも思わない人間が、武力を持っているだなんて吐き気がする……ッ!
イヤだぁぁ!!!!こんなところで負けられないんだ!!動け!!動けよ!!
ディテクターッッ!!!!
Дパウロ:
『見苦しい。……これだから言語とは御し難いのだ。
敗北の鳴き声を解してしまう事がどれ程吾の神経を逆に撫でるか』
Дパウロ:
『……だが。逃げずに立ち向かううぬの姿勢に敬意を表し、一つ教えてやろう。
うぬらも気づいておろうが……このコロニーには、腐敗という単語では片付かぬ外道がおる。うぬらを片付けたら、次はその外道よ。
青き理想に胸を焦がした若人よ。安心せい、歪みは正される…………』
―――
――
―
<場面転換。時間は戻り、ディールとパウロの対峙の瞬間の教会内>
μトロイ:
説明して……!説明してよべリオ君!!
いったい何が起こってるの!?
どうして――あんな大きな機械が私達を狙ってくるのッ!!
Σべリオ:…………ごめん、トロイちゃん。
μトロイ:
酷い……っ、ひどいよ……!!
べリオ君も機械を使ってたなんて!
こんなに追われるって事は、きっと――きっとべリオ君も人を殺したんでしょッ!!!!
私達を守ってくださるソーイ様だって!
卑劣なNOAHと戦って……宇宙海賊と戦って……!たくさん、たくさん人を殺してる!
――っ、どうして殺さなきゃ何もできないの、アナタたちはッ!!!
Σべリオ:…………本当に。ごめん。
αカリオストロ:……オマエ――――ッッッ!!
トロイ:……っ……!
<トロイの服の胸元をつかみ、自分の顔に引き寄せるカリオストロ>
αカリオストロ:
ッッッ僕の前でべリオを侮辱するな!!!!
こんな地獄でひとかけらもパンをくれない何かに祈り……っ、いや!縋り続ける貴様たちが……ッ!!
何もかもを諦めた人間が、前に進む僕のべリオを愚弄するかッッ!
このコロニーの人間たちは全てを諦めている!
諦め続け、止まった思考に疑問を持たない貴様たちが……ッ、何を偉そうにッ――。
γワカミネ:カリオストロッ。
<拳を振りかぶり、トロイを殴り飛ばそうと振り上げられたカリオストロの手首を寸前でワカミネがつかむ>
γワカミネ:
……そこから先は、言わせられない。
私達が来ることが無ければ、この教会にあんなものが押し寄せる事などなかった。
揺るがぬ事実だ。
αカリオストロ:――っ。
<ワカミネの腕を振り払うカリオストロ>
αカリオストロ:
…………すまなかった。
だが……。僕は、君のような人間が嫌いだよ。
疑う事も足掻く事も忘れ……ただ食物を通過させるだけの管のような存在。
苦しみは一時的にしか無視できない。
育ち過ぎた枝に、命を吸われるのをただ見ている様に。
僕は、嫌悪以外の感情を現せないよ。
μトロイ:……。
μトロイ:
……どうしてっ……。ただ、苦しくても……、貧しくても生きていたいだけなのに……。
Ψフラワ:
……ごめんなさいね。この教会の人間を巻き込んだことに間違いはないもの。
許してちょうだい。必ず私達が何とかするから。
<悲しそうな表情で目を伏せて謝罪するフラワ。然し、小さく口の中で独り言をこぼす>
……ただ、不可解な点が多いわ。
「ソーイ様」……?卑劣なNOAH……?
―――
――
―
<場面転換。時間は現在。跪いたディテクターにトドメを刺す直前のアオオニ。銃からビーム状の銃剣がVON……と現れ>
Дパウロ:
『では。……さらばだ。若きパイロットよ。
何、殺しはせん。……つもりではあるが。何せ四肢を切り取り、コックピットを引き抜くのだ。
潰れぬ様に祈っておれ……――ッ!?』
<あわやディテクターのコックピットに銃剣が突き立てられるかという次の瞬間、アオオニが急激に飛びのく>
Φディール:…………なん、だ…………?
Дパウロ:『――――………何処から、嗅ぎつけたか』
Дパウロ:『ズング・ソーイ』
π●ズング・ソーイ:
『――――うん。
私はね。本当はやりたくないんだけどね。うん。教会の人質に“女のシスター”が居ると聞いたから。うん』
<インカムから聞こえるのは、ディールの神経を逆なでさせるような、喉を締めて出しているかのような気取った声。わざとらしく上擦った滑舌。声が鼓膜に張り付き、蠢くような錯覚を覚えさせるような不愉快な声。そんな声が、ディールのコックピットを満たした。
そして次の瞬間、ひょうたんに手足をはやしたような格好の機体がアオオニの背後からぬう、と現れた>
π●ズング:
『うん。やぁ、パウロ中尉。うん、こちらの独自の情報網でね、うん。君達NOAHZの追う“重要参考人”の人質を私ズング・ソーイも協力してね、うん。捕まえてやろうとね、思った訳なんだよね。うん。ところで、教会の中の人質には女性が何人くらい居るか把握してる?うん』
Дパウロ:『…………成人女性が四人ほど。あとは孤児。成人男性が二人』
π●ズング:『ふぅぅ~ん……。うん。じゃあ、私も協力するよ』
Дパウロ:
『必要は無い。うぬの機体は後方支援兵装であると聞いている。
それに加えてこの現状だ。最早吾が行うのは戦闘では無く解体行為。支援は無用』
π●ズング:
『うんうん。そうかもね、うん。でもね、うん。もう少し弱らせた方がいいんじゃないかな、うん』
Дパウロ:
『馬鹿者ッ!コックピットは可能な限り無傷での回収が目的なのだ!
そのような乱雑な方法では……――ッ!!』
<もたもたとした動きでひょうたんのような形状のソーイの機体「B・R HD」が、腰に下げている対ランドスタッド用投擲手りゅう弾をディテクターの四肢に投げつける。手りゅう弾は大きく音を立てて炸裂し、ディテクターの四肢を爆砕し吹き飛ばした>
Φディール:ぐぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!
<ディールを襲う全身が砕けてしまいそうな衝撃。煙が晴れるとディテクターの四肢がちぎれ飛びかけ、無残に横たわる痛ましい光景が目に飛び込んでくる>
π●ズング:
『ちゅしゅ、ふしゅしゅしゅしゅ!(笑い声)見たかなパウロ中尉。忌々しい賊をこのズング家の人間である僕が成敗しているんだよ。……うん、別に興奮などしないよ、うん。賢い人間は興奮などしないからね、うん』
ДパウロN:
(動けぬ敵の解体に火器を使うか。……なんと醜悪で愚かな。
己が動くは、指令ではなく欲の為……か。
ズングの血の脈々と続く汚点。兄弟の多いズングの家系に必ず現れるとされる愚劣な”失敗作”。
優れた兄達に追いつけず。その“失敗作”共が脈々と与えられて、むしゃぶりつくしてきたこの薄汚れた箱庭……そして、その扱いを恥とも思わぬ。
――無邪気とは、とんだ言葉よ。
邪気が無いとは……斯様に邪悪であると言うのに)
Φディール:う……ぐ…………――。
<激しい衝撃で全身を強く強打したディール。頭部を強く打ち付けたのか視界はぼやけ、意識は朦朧としている。髪の毛をかき分けて瞳に向かってぬるりと垂れる血に更に視界を狭くされながらうめく>
Φディール:ただ……じゃ、僕も――負けられない…………ッ……――!!!!
□ディテクター:『SELF DESTRUCTION MODE』
<グビュウウウン……とくぐもったような音を立ててディテクターの両腕がわずかに動く。最後の力を振り絞るように動いたその腕はB・R HDとアオオニの右足と左腕にガシュン、と突き刺さり、手首のクローが下りて両機体の足を固定する>
Дパウロ:…………ッ!!!!
πズング:
『うっ、うそお!?!?なっ、なんだこれわあ!?』
Φディール:
…………NOAHには情報も渡さない……!
そして、このムロウル・ティアラは!!ただで負けたりなんかしない……ッ!!
あなた達も道連れだ!!!!
即刻、退避しろ……!!退避しない場合、この機体のエンジンを超稼働回転させて爆発させる――ッ!!!!
Дパウロ:『ッッッ小癪なッ!!』
<ジャキン、とディテクターに銃口を向けるアオオニ>
Φディール:
撃ってみろ……!!
もしこの機体に現状の2パーセント以上の損傷が確認された場合、即刻エンジンは駆動する!!
死にたければ撃て――――ッ!!!!
π●ズング:
『どうしよう!どうしようパウロ中尉!私まだ死にたくないよ!もっともっと崇められたいよお!!』
Дパウロ:
『…………ッ小僧――ッ!!
賭けには貴様の命も卸していたか……ッ!!』
π●ズング:
『何ブツブツ言ってるんだよぅ!私はもう逃げるよ!私は死んでいい人間じゃないんだ!私はズング家の最高傑作なんだ!私の人生はこれからなんだ!あとは君達でなんとかしたまえよ!離せ!離せと言っているんだよこの――下等階級があああああ!!』
<よたよたと揺れながら暴れるB・R HD。パニックになったのか““携帯グレネードランチャーを暴発させた””――>
μトロイ:……ねぇ……あれ――――。
ωムーンライト:
アカン―――ッ!!!!全員伏せろぉぉぉぉおおお!!!!
<呆然と教会の窓から見える外を眺めるトロイ。
小さく見える黒い点は加速度的に巨大になっていく。それがズングの放ったグレネードランチャーの弾薬であると気付くのは、ムーンライトが声を枯らした直後であった>
―――
――
―
μトロイN:(――――…………何も…………聞こえない)
μトロイN:
(灰色。これは……煙?
冷たい……あ、床。――そっか。私、倒れてるんだ。
頭が痛い。立ち上がらなきゃ。
流れ弾が飛んできたくらいで、私は負けちゃいけない。
子供たちを守らなきゃ。
そう思って振り返る。
……………………え……)
γワカミネ:
――カリオストロ!!カリオストロ!!
Ψフラワ:
―――いけない、脳震盪を起こしているわ!――体を揺らさないで!
ωムーンライト:
――――ガキ共はどこや――かき集めろ!!――人っ子一人離れさせるな!!!!
μトロイN:
(叫んでいるように見える。
叫んでいるように聞こえる。
耳には聞こえているのに。
イヤな耳鳴りが耳から離れない。
.....この光景が、まるで悪い夢みたいで――)
ωムーンライト:
――おい!!シスターちゃん!
―――“残った”ガキどもは何処や!ボーーッとしなはんなや!
次が来たら今度こそ終いやぞ!!!
μトロイN:
(肩を揺すられる。
触られているな、と感じる。
ただ、それだけ。
私が着ている黒い服、こんなに重かったっけ。
……まるで、服を着たまま海に入ったみたい。
…………何を吸ったら、この服はこんなに重くなるの)
ωムーンライト:
――おい!!オレを見ろ!!!!切り替えるんや!!!!
目は見えとんな、傷は無いか!!!
μトロイN:
(そんなに大きな声、出さないでよ。子供たちが怖がっちゃうでしょ?
…………あれ、手が真っ赤。
床は?どうしてこんなに赤いの?
教会に倒れる大きな主の石像。
その下から溢れる――血の海。
…………近くに落ちているのは、ケイが肌身離さず持っていたノート。フィルの靴。あの小さなメガネは、カリンのものかな。
――それと――“あれ”は――“誰”の――“何”?)
ωムーンライト:――立てぇ!こんなトコにおったらここは崩れる!!
<トロイを引っ張ってムーンライトが教会の外に逃げる>
Ψメイ:…………んん…………。
Σべリオ:――うぐ…………っぶ…………。
Ψメイ:っ……!?!?
<べリオの腹を貫く、主の石造の石槍。メイの上に覆いかぶさったべリオにより、辛うじてメイは直撃を免れている。上に覆いかぶさったべリオの吐血でメイの顔に血がかかる>
Ψメイ:おじさん……ッ!!おじさん!!!!
Σべリオ:うるせーーーな……。これだから、ガキは…………。
Ψメイ:おじさんッ!!……やだ!いや!おなかにあなが!!
Σべリオ:これはな…………ッオレが男だって証だ…………。
Ψメイ:
お姉ちゃん達は!?トロイは!?!?いやだよ!!おじさん死んじゃうよ!!!!
Σべリオ:
死なねーよ……。お前……よ……あんま……バカ言ってると…………他のガキに……笑われっから……よ…………。
Ψメイ:
絶対戻ってくる!!絶対私戻ってくるからね!!助けを呼んでくる!!
死んじゃダメだよ!!おじさん!!!!
Σべリオ:
オレは……まだ……22だぞ…………クソガキが…………――――。
<べリオの意識が途絶える>
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【EPISODE5 NOW IS】
<場面転換。教会が崩れた直後。ディール、パウロ、ソーイの三人の場面>
Дパウロ:
――――『馬鹿者オ!!!!先のうぬの無意味な足掻きに何の意味があった!!』
π●ズング:
『だって、だって!!私は死ぬべきではないんだから!!
きっとあの教会の人質も生きている……生きているさ……私は殺していない……私は悪くないんだ……!』
Φディール:べリオ……さん…………。皆…………。
<呆然とするディール>
Дパウロ:
『…………ッ……。よい。うぬの駄々は吾より上の者に吐くが良い。
…………おい、聞こえておるか』
<ディテクターに通信をするアオオニ>
Дパウロ:
『自爆をされてはかなわん――三日やろう。
……崩れた教会の中から“生き残り”を探し、うぬらの戦艦で機体とデータの受け渡しの支度をせい』
Φディール:
……勝手なことをッ……ここで自爆してやる!!人殺し共……!!!!
無関係な子供にまで、ついに手をかけたなッ……!!!!
Дパウロ:
『漸く自覚したか?
……うぬらに銃弾が向かうのは、むしろ幸運なのだ。
戦事では、うぬらが立ち上がる限り無辜の民にも銃口が向く。
……では、良き返事を期待しておるぞ』
Φディール:逃がすか……!!このロックが有る以上お前たちはどこにも――――。
<そこに、回線に割り込んでくる声>
Λ●クルス:
『やーどーも、遅れちまいました。……おっとっと。
――――…………人質を巻き込むとは。
曇っちまったのはお互い様ですかね、パウロ中尉』
<上空からスラスターを吹かして急下降してくる機体。
騎士の様な槍、巨大な盾。それを背に懸架し、構えたバズーカから電磁障害弾が発射される。ディテクターに当たる寸前に爆発したその弾丸により、ディテクターは脱力。B・R HDとアオオニはディテクターのクローから逃れる。
そしてやってきた飛行補助型ランドアームズ『ラックスワンプ』に掴まって空中に離脱していく>
π●ズング:
『たっ……助かった……!!
ほっ、ほら見ろ!!ほら見ろ!!!!
私は死ぬべきではないんだ!私は優れているんだ!!…………うん。
そうなんだ。こんなところを任せられても文句を言わずに収めている私が、報われないわけがないんだ……!!』
Дパウロ:
『……――地に這う鷹よ。
何かが違えば、吾も貴様の横で宇宙を見上げていたかもしれんな』
Λ●クルス:『何か?』
Дパウロ:『……下らぬ独り言だ』
Λ●クルス:『……珍しいですね、中尉』
Дパウロ:『……集中せい』
Λ●クルス:『……aight、中尉』
ΦディールN:(……もう……目が開かない…………)
ΦディールN:(べリオさんは……フラワさんは……教会の皆は無事だろうか………)
ΦディールN:(…………すみま……せん…………)
―――
――
―
<場面転換。教会崩壊から丸一日。カリオストロの個人用寝室のドアの前に食事を持って立っているワカミネ>
γワカミネ:
――……調子はどうだ、カリオストロ。
あれから食事をとっていないだろう?
αカリオストロ:
……軽い脳震盪だったさ、あんなもので医務室の枠を埋めていられないよ。
僕は大丈夫さ。実際、精密検査でも安静が必要だとされているだけで……医務室からは離れてもよいとの診断だったよ?
γワカミネN:(確かに……いつも通りの声だな)
γワカミネ:そうか……。では、扉の前に置いておく。
αカリオストロ:ああ。有難う。
γワカミネN:
(……何か、引っかかる。
至近距離では気付けない仕掛けのトリックアートを見ている様な。
目の前で自分の知らない何かが羽化を進めていて……見逃してしまう、根拠のない焦燥感の様な……)
<場面転換。カリオストロの自室>
αカリオストロ:――あぁ…………網膜に焼き付けたかった…………。
αカリオストロ:脳震盪などと、つまらぬ邪魔のせいで……。
αカリオストロN:
教会にランドスタッドのグレネードが命中した際に、孤児たちは一人を除いて全員死亡。
…………だが。
一人だけ、助かった。
一人だけ、“助けられた”のだ。
ジロぉ…………。
聞いたよぉ……。
腹に大穴を開けてまで、孤児の命を庇うだなんて。
痛かったよね……?今も、集中治療室と手術室を往復しているそうじゃないか……。
君はパイロットだ。救助隊ではない。
なのに……。そして、嗚呼……きっと、きっと……体が勝手に動いたのだろう。
自らの運動神経の悪さなど計算のうちにも入らぬのだろう。
べリオの覇の道を進むには、きっと……目の前の命の燈火を消すという選択肢はそもそも無いのだろう。
守らな“ければ”ではない。
守るもの“だから”なのだ。
だから――道なのだ。決まっている道程。
それこそが、王へと自らを導く道なのだ。
自ずと自らを歩ませるから……道なのだ。
ンっふ……ダメだよジロぉ……。
僕が僕で居られなくなってしまう…………ッ!!
……………………でも。思うのだ。
……きっと。このままでは僕は、あの女の様になってしまう。
王の横に居ることが人生の全てであり、王の横に居る事のみが自分の証明である、あの女に。
血を分けた程度で王を忘れる、弱い弱いあの雌狐に……。
……でも。……いや、では。
――何が王の道なのだ?
親の下から逃げた僕は、べリオの光を浴びて居るだけでは無いのか?
僕は……道の先にある覇では無く。覇の道だと信じた道に映る自分を、見つめているのではないか?
……僕が成るべきなのは王だ。王への道を歩まねばならない。
ただ……僕は今覇の道を歩めているのかが分からない。
……べリオは眩い(まばゆい)ばかりの覇の道を歩んでいる。
その光に――僕は生かされている。
では…………僕が――いや――““オレ””がなるべきなのは―――……。
<時計を見てゆっくりと体を起こし、着替えるべく備え付けられたクローゼットへ移動する>
<そして、足を止めて呟く>
αカリオストロ:――――……気持ち悪ぅ……………………♡
<そのまま気を失って鼻血を垂らしてどさっと倒れるカリオストロ。
通信に出ないカリオストロを不審に思った作業員が部屋に駆けつけて、倒れたカリオストロを治療室へ運んでいく>
―――
――
―
<場面転換。夜の月の光に照らされた教会。そこに居るのはほぼ無傷であるフラワとトロイ。
子供たちの遺品やがれきの整理をするべくセイヴァージークの救助員と教会を歩き回り、遺品を拾い集めている>
Ψフラワ:――……なんか、喋りなさいよ。
μトロイ:……。
Ψフラワ:…………気持ちは分かるわ。
μトロイ:
…………わかんないよ。分かるわけ。ないよ。
Ψフラワ:
……いいえ。分かるわ。いえ……完全には理解できないけど。
μトロイ:
急に宇宙から人が押しかけてきて。
そして、大きな機械と軍人まで追いかけてきて。
……そしたら。そしたら。
ソーイ様が……暴れて。
その弾丸で…………!!
Ψフラワ:
…………薄々、気付いていたんじゃないの?
このコロニーの為、と声を上げるだけ。
戦っている、と声を上げるだけ。
宇宙海賊に立ち向かうのはいいけれど、見たところ軍事的なノウハウも施設もこのコロニーには見当たらないわ。
武勲欲しさに兵士を無駄死にさせているだけの腐敗した権力。
……一方、為政者が見せなければいけないのはビジョンと成果。
…………成果の伴わない声に縋り続けた結果、化け物が生まれてしまうなんて。少し考えればわかるでしょう……。
μトロイ:
だって……だって!!
縋るしかないじゃない!
主に!!ソーイ様にッッ!!
誰も助けてくれないって分かっていながら!
お父さんやお母さんが消えていくこの異常な世界で生きていくには!
もう……何かに縋らないと生きていけないんだよ!
運良く大人になれたって……、飢えていく子供を直視し続けさせられる!
出来る事なんて何もない!
祈り以外に私たちに何が許されているんだよ!
祈り以外に私たちが正気で居られる方法ってなんなの!?
……そうやって憐れんでくれてもね!
生まれるところを選べなかった私たちと同じ視点で居ようとすること自体!!間違いなんだよッッ!!!!
Ψフラワ:
…………まず一つ。
セイヴァージークで調べた結果。
フェザーポータルの私設警備組織“アークエンジェル”……まともなシゴトがないこのコロニーでは多くの人間が就職するこの組織だけれど。
“周辺宇宙海賊とほぼ無計画に戦闘行為を行い、且つアークエンジェル側のパイロットは……ほぼ撃墜をされている”わ。
<回想開始>
μトロイ:
私達を守ってくださるソーイ様だって!
卑劣なNOAHと戦って……宇宙海賊と戦って……!たくさん、たくさん人を殺してる!
――っ、どうして殺さなきゃ何もできないの、アナタたちはッ!!!
<回想終了>
Ψフラワ:
……貴女のおかげで思い出したのよ。
宇宙海賊と戦っている勇猛な君主が、教会の前での戦闘であんなに狼狽えるかしら?
……そして、軽くハッキングしてみたら出るわ出るわ、悲惨な戦績の数々。
このコロニーの人間はハッキングなんてしてこないって高をくくってんのかしらね。
<そう言ってトロイに死亡者リストと書かれた紙を手渡す>
Ψフラワ:
見覚えのある名前は見つかったかしら?……見つかった、って顔ね。
そもそも、おかしいと思わない?
貧しいコロニーとはいえ、私設の警備部隊に就職してからほぼ確定で一定数の人間が連絡が取れなくなってしまうなんて。
μトロイ:…………ッ……。
Ψフラワ:
加えて。卑劣なNOAH……その言葉の意味。
セイヴァージークでこのコロニーの放送電波を受信したから、見てみたの。
コロニーにカネを出さない卑劣なNOAHと断固戦う……ですって。ご立派。
……そして、調べてみたの。
相も変わらず杜撰なデータベース管理で、ハッキングも情報収集も容易だったわ。
その結果……呆れた。
NOAHからの支援金は、八割が使途不明金として処理されている。分かる?
“あなた達に渡るべきお金がフェザーポータルに額として計上された瞬間、渡された額の「二割」に削減されている”って事よ。
μトロイ:
うッ……嘘だ!!嘘に決まってる!!!!
ソーイ様は、生きている限りNOAHと戦うと、仰っておられて――。
Ψフラワ:
その言葉はただの音なの!意味なんか持っていない!
……どこにそのお金が流れているか分からない。
ただ……フェザーポータル上層部はカネを横取りして、NOAHを仮想敵に仕立て上げている。
……ここからは確証がないから私の推測として聞いてほしいけれど。
まぁ……NOAHから重要視されず、監視の緩いコロニーで退屈な仕事さえしておけばカネをネコババしてもお咎めは無し。
国民は飢え、疲弊している。自分を疑う気力など残ってもいない。
自分を英雄の様に見せておけばころっと騙されてくれる。更に宗教施設をオマケしてやったら涙を流して縋り始めた。こんな楽なことは無い。
さぁ、これからも戦争の真似事を余ったカネで続けよう。
宇宙海賊との戦争に勝ち目はないけれど、命とカネは沢山ある。
勝つまでやればいつか勝てるに違いない。
…………って、ところでしょうね。
μトロイ:
…………ッッ!
――出てって……。さっさと……!補給でも何でも終えて……っ、このコロニーから出て行ってよっ!!
……いいよね、恵まれている人たちは!そうやって私たちを憐れむことが出来て!
そんな綺麗な服を着ているあなた達には、私たちの気持ちなんて絶対分からない!
結局人殺しを連れてきた時点で、あなた達も同罪!!
もう顔なんて見たくもないよッ!!
……こんな地獄しか知らない私に!
帰る場所が有るあなた達が!!!!
知ったような事…………言わないでっ……。
Ψフラワ:…………。――……私の故郷はね。
μトロイ:っ…………。
Ψフラワ:
……いえ。べリオやディール、そしてセイヴァージークに乗ってやってきた人間は全員……IOPLANETからやってきたの。
μトロイ:…………え。
Ψフラワ:
そうよ。貴女も知る……。“謎の事故”で爆発したコロニーの事。
私は、目の前でそのコロニーの爆発を見た…………。
……だから、分かるの。
貴女のその、ぽっかりと心に穴が開いた気持ち。
自分の無力さに、吐き気を覚えるその自己嫌悪も。
μトロイ:…………。
Ψフラワ:
隠していた理由は、今の貴女と同じ。憐れんで欲しくなんかないから。
そして……、貴女を巻き込みたくないから。
だけど伝えたのは……私は貴女を憐れんでないって知ってほしい、から。
一人じゃないって、知ってほしい……から。
μトロイN:
(この人は……一瞬で愛する家族が死んで……コロニーに住む人が蒸発しても……)
(…………でも……――)
μトロイ:
…………分かん……ないよ。
機械のせいで……。貴女の大切なものも、そこに生きていた人が沢山……沢山死んでいるのに……っ。
どうしてその機械を使うのっ!!
Ψフラワ:それはね。――機械じゃないと戦えないから。
μトロイ:……ッ!!
Ψフラワ:
プライドの為に死ぬくらいなら、前に進まないといけないって、私が決めたから。
私のプライドだけじゃ、私の無力さで死んでいった人たちとは釣り合わないって……知ったから。
……私たちの船。セイヴァージークはNOAHに向かう。
理由は詳しくは言えないけど、私たちを追ってやってきたNOAHは奇しくも偶然このコロニーの現状を見た。
ディールが言うには――。
<回想開始>
Дパウロ:
『……だが。逃げずに立ち向かううぬの姿勢に敬意を表し、一つ教えてやろう。
うぬらも気づいておろうが……このコロニーには、腐敗という単語では片付かぬ外道がおる。うぬらを片付けたら、次はその外道よ。
青き理想に胸を焦がした若人よ。安心せい、歪みは正される…………』
<回想終了>
Ψフラワ:
おそらく、このコロニーの腐敗にNOAHも気づいたと見えるわ。
....もう少し。
もう少し、耐えて頂戴。
μトロイ:…………っっう……!!
<目に涙がたまっていくトロイ>
μトロイ:
……っごめん…………!!!
ごめんね、フラワちゃん……!私、自分の事ばっかりで……!
でも、辛くて、くるしくて……!!
Ψフラワ:
……良いの。いくらでも、やり直せる。
貴女にはまだ、帰る場所が有るんだから。
<教会を照らす月の光が、二人を優しく包む>
<が、次の瞬間。二人のすぐ目の前の床がズズズン、と崩れる。その下に何か影が見えた>
Ψフラワ:ッ!?
μトロイ:きゃぁぁっ!!
Ψフラワ:
トロイ!!……危ないわね、地盤がぼろぼろになってる……。
なんて威力のグレネードなの、こんなものを市街地で撃ったなんて……!
……ん…………?
あれは……――――?
<教会の抜けた床の下に見えるのは、土埃や風化でやや茶色く色を汚してはいるものの、大部分が白くペイントされたランドスタッド。背中にマウントされた複数枚の盾の様に見えるプレートはまるで羽の様で。膝をついてまるで頭を垂れているように見えるソレは、微動だにしない>
μトロイ:…………あれは……。天使様…………。
<月明かりに照らされたその機体を前に呟くトロイ。そして、その機体を見つめ、悲しそうにつぶやくフラワ>
Ψフラワ:――――…………CT…………?
―――
――
―
<場面転換。教会崩壊から一日後。朝を迎えるA.F.S。
集中治療室の“手術中”の赤い光を眺めながら、沈痛な表情でベンチに座るディール>
ωムーンライト:――よう。……いつまでそうしとるつもりや。
<つかつかと足音を響かせながら缶コーヒーを片手にディールに話しかけるムーンライト>
Φディール:……。
ωムーンライト:
この缶コーヒーも、ラスト5本やってんて。
……。んで、いいニュースや。補給船がなかなか来れんらしい。
なんでも、このコロニーに接近しようとすると未登録の機体に銃撃されるねんて。
……ほれ。
<ばさっ、とディールの前にその機体らしきものが写った写真が無造作に投げ置かれる>
Φディール:……これは。
ωムーンライト:
視認された機体の影や。肩んとこに下ッ品にロゴ塗っとるわ。
……AA、やと。
ほんで、天使の羽のデザイン。
…………子供でも分かるわなあ。
Φディール:…………アークエンジェル……。
ωムーンライト:
……こーりゃ、八方塞がりっちゅう奴やな。
ズングのぼっちゃんがオレ等をぶっ殺そうと、いよいよマジになったっちゅうことや。
なんちゅったか……。せや。
兵糧責め、っちゅう奴やな、こら。
Φディール:…………今後のビジョンは。
ωムーンライト:
まず……二日目の夜。
光学迷彩……アレや、“MANT”を装備をさせたワカミネのサイドホーンとフラワのCTで、補給船と宇宙でおち合う。
サイドホーンとCT、燃料はまあまあ残っとるし、いけるやろ。
……ま、損傷もヤベェが。ジェイルブレイクとディテクターよかマシやでな。
んで、そこでランドスタッド用の修繕物資と……、セイヴァージークの燃料を受け取る。
そらチョビ~っとしか持ってこられへんやろうが……。
ま、このコロニーからNOAHZに豆鉄砲撃ちながら脱出する分くらいはギリ持ってこられる筈や。
ほんで、残りの分の補給物資は宇宙で受け渡しを行う。
宇宙海賊やらがおるから本来は好ましくはないが……。このコロニーで補給が邪魔される以上、しゃあないわな。
Φディール:…………とても、危険なミッションです。
ωムーンライト:
そうやな。突貫工事に装備をケチったスニークミッション。
……死ぬかもなあ、フラワかワカミネのどっちか――もしくは二人共が。
Φディール:……ッ縁起でもないとこを!
ωムーンライト:現実や。
Φディール:ッ……。
ωムーンライト:
……ったく。フラワは通信に出たかと思えば、ワタシまだ戻らない!やることが有るぅ~!って教会から戻らんし。
甘ちゃんばっかやの。
――疲れが顔に出とんど。ちった休みや。
ほれ、コーヒー。
アンタの分、貰っといたわ。
<ディールにコーヒーを投げてよこすムーンライト。それをパシっと受け取るディール>
Φディール:…………ありがとうございます。
<つかつかと去っていくムーンライト>
ωムーンライト:…………――フン。
――To be continued.
※「旅立ちへの痛み」・・・第一次宇宙移民大量虐殺事件の通称。




