【EPISODE10 NEXT IS NAMED BY PAST(ネクスト イズ ネームドバイ パスト)】
ディール♂:
ムーンライト♂:
パウロ♂:
クルス♂:
ラプラス♂:
ズング♂:
フラワ♀:
カリオストロ♀:
ヒメ♀:
ネリル♀:
トロイ♀:
・N
・アークエンジェル戦闘員A・Ba/アークエンジェル部隊員A・Ba
・NOAHZ戦闘員A・B/セイヴァージーク作業員A・B/セイヴァージーク戦闘員/VAILSIDE作業員A・B/NOAHZ隊員A・B
<場面転換。アオオニとナイトスペリオル・FN。
降り注ぐダブルシーボムが防がれた直後。>
パウロ:『何という....事だ..........。
隼の如く空を横切り....。
船をその羽根で守る....。
まるで妖....。』
クルス:『中尉!!! 一体ありゃ....何なんですか....ッ!!!』
パウロ:『分からぬ。分からぬが...。
吾の目が捉えるべきは理では無い。
....NOAHZ全隊員に通達!
空中戦闘基準値の推進剤と燃料を残す機体は空中の戦艦を追従!
空中戦闘が行えぬものは射撃武器の銃身をスペリオル内部の冷却装置で無理やり冷やしながら目標戦艦へ攻撃を行え!』
クルス:『....ッ....、聞こえたなァ全部隊!
近接兵装の部隊も先のパウロ中尉の伝令に従え!
飛べない兵装の奴等はアークエンジェル部隊への攪乱!
深追いはせずに戦況を常にかき回せ!!! これ以上の地上の戦力の減退は可能な限り避けろ!』
NOAHZ戦闘員A:『了解!』
NOAHZ戦闘員B:『了解しました!』
<場面転換 アークエンジェル部隊。上空でダブルシーボムが防がれたのを呆然と眺めながら、我に返ったかのように震えた声でズングソーイが叫ぶ。>
ズング・ソーイ:『むっぐう....ムググググググゥ.....!!!!ぼっっっっっ!!!!ボキの何が間違っているというんだ!!!!
完全にヤツ等の意表をついた!!!!ついた筈なんだァ!!!!!』
ズング・ソーイ:『びゃびゃぁぁっ!!!!』
<ごがんッッッ。ズングのコックピットに唐突に訪れる重たく無慈悲な振動と鼓膜をえぐり取る様な轟音。
NOAHZの地上部隊の制圧射撃が始まったことを意味していた。>
ズング・ソーイ:『それもこれも.....ッ.....!!!あんな艦がのこのこやって来たからだ....ッ....!!!!
.................疫病神め..............ッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
アークエンジェル部隊!!!!!!! 残存燃料は全て空中戦闘に回せ!!!!あの艦とNOAHZを叩き落とし.....ッ、”真の英雄”にボキがなるんだッッ!!!』
アークエンジェル戦闘員A:『しっ...然し、ソーイ様!D-IZは空中戦闘用に作られていません!
エンジンがオーバーロードしてすぐに落下してしまいますよ!!!』
ズング・ソーイ『だま...ッ、だまれだまれだまれだまれだまれええええええッ!
ズングの血を引くこのボキの命令なんだぞ!!!勅命!!!天命!!!!さながら....天帝からの指令なんだぞォォォォッ!!!
着いてこないなら貴様らの家族の居住区画に仕込んだ対建造物爆薬を起動させるッッッッ!!!!!!!
脅しじゃないぞ!!!脅しであるものかッッ!!!!さあ選べッッッ!!!』
アークエンジェル戦闘員B:『そん.....な.....』
アークエンジェル戦闘員A:『わかっ、わかかっ、分かりました!承知いたしました!
ぜっ、全アークエンジェル残存機体!エンジンの回転数に強制的にゲインをかけろ!
ただちに空中戦闘へと移行し、上空の目標戦艦に取り付けェェ!!!絶対にこの空中から出すなァ!
邪魔なNOAHZも全て撃ち落とせェ!!!』
<ぎゅびびびび、と異音が響く。 沼を踏みしめるかのような不快なへばりつくような低音を響かせながらD-IZの機体背部のバックパックが蒼い炎を出して空中へ飛んでいく。>
<場面転換。空中でNOAHZとアークエンジェル、エネルギーフィールドに囲まれたセイヴァージークとその横に密着して飛ぶCT・ARGC。三つ巴と言うべき状況が展開される。>
セイヴァージーク戦闘員A:通達します!地上からの砲撃を確認!然し...CT・ARGCにより発生したエネルギーフィールドにより損害は皆無!
続いて......NOAHZの残存兵力と思しき機体、および....アークエンジェル残存兵力が飛行して急接近!
ディール:ッ....そんな馬鹿な! 何で追ってこられるんだ....!?
重力下での空中戦闘が可能なら最初からそうしていたはずだ!
NOAHZはまだしも...アークエンジェルの機体がまっとうに空中での継戦能力を携えているようには見えないぞ!
フラワ:....自分達は落ちても構わない。 セイヴァージークを堕としさえすれば....。
まるで呪いね。
トロイ:『少しだけ、”羽根”、使うね,,,ッ、皆!』
<そうトロイから通信が入るとセイヴァージークを球状に覆っていたエネルギーフィールドの上部が離れ、CT・ARGCの背中に収まっていく。>
トロイ:『....ごめんなさい。でも。もう...。守る為に、泣いてばかりじゃ何も守れない...ッて、分かったから。』
トロイ:『だから。』
CT・ARGC『FOR THE CHILDREN』
<CT・ARGCの表情の十字架がやや下にずれて、45度ほど回転する。”X”の形に見える表情に変わったその機体が艦を守る様に艦を背にして。>
トロイ:『私も、戦うよ。』
<CT・ARGCの背部から羽根が射出され、自由に飛び回り。空中に飛んでくるD-IZやスペリオル機体を羽根で薙ぎ払っていく。>
NOAHZ戦闘員A:『な....ッ、何だァ!?!!?これはッ....』
NOAHZ戦闘員A:『正体不明の飛翔物体が突如複数出現!
本機目掛けて突撃してきます...ッ!撃ち落とせッ!』
NOAHZ戦闘員B『ぐ...ッ、捉えられません! 予測移動経路演算、間に合いません!』
NOAHZ戦闘員A:『サイドスワンプ部隊からの連絡…ッ、クソっ!汚染物質の滞留…ッ、こんな上空にまで影響するのかッ!通信安定せず!うっ、うわぁぁぁぁぁッ!来るなッ!来るなぁぁぁッッ!』
クルス:『....何だ、報告....、詳細は…、”剣が飛んでいる”....?
....上等だよ。何が来ようが、あの艦を堕とせッて言われてンだよ。
ビビってる暇なんざ、無ェってなァァァァァァァァッ!!!』
<空中に飛行し、セイヴァージークに追いついたクルス搭乗機体 スペリオル・FNが長く伸びたかぎ爪を構えて突撃するが、
二枚のエネルギーを携えた羽根がバツを描くようにスペリオル・FNの行く道を塞ぐ。
そして、上空から羽根の後ろに 祈りをするように両手を握り合わせたポーズでゆっくりと下降してくる。>
トロイ:『....もう、辞めにしませんか。』
クルス:『....あの艦の妙な障壁はアンタのか。
....急に戦闘に介入する理由は何だ?』
トロイ:『ッッッ、私の問いかけに答えてください!
...この無意味な争いを、辞めてください。
あの艦は....私の機体で必ず宇宙に連れて行きます。
だから…。だから。弾薬も、人の命も.....もう、無駄にしないでください。』
クルス:『エラく上から目線じゃねェの。
だが......無理な相談ってヤツだ。
オネエちゃんのお願いは可能な限り聞いてきた人生だったが....。
軍人って仕事を、分かってくれ。』
トロイ:『あの艦に銃を向けるというのであれば、制圧行動を取ります。』
クルス:『...悪ィな。』
トロイ:『残念です...ッ!』
<二つの機体がぶつかり合う。>
<場面転換。>
ソーイ:『何...だ.....?艦の周りのあの光っている壁は....。』
アークエンジェル戦闘員A:『簡易検知の結果、耐衝撃及び耐粒子状攻撃への防御性能を兼ね備えた障壁と予想されます!目視でも確認できますが、NOAHZの機体と交戦中の艦体付近を飛行している機体…仮称“天使”! その天使の軌道データから計算する限りッ…、機体の空中での機動性も非常に高く…いえ、これは…“空中での運用を前提に作られた機体である”と考えられます!地上戦を目的としたD-IZ及びバスケットラースHDでは圧倒的に不利かと…ッ!』
アークエンジェル戦闘員B:『報告です!地上からのNOAHZの部隊による支援射撃が来ます! また、これ以上の滞空行動を続けると…ッ、D -IZ、バスケットラース共にエンジンが焼き切れ落下してしまう可能性が非常に高く…っ、』
アークエンジェル戦闘員A『続き報告です!NOAHZの空中戦闘部隊の集結を確認!3時方向、目視完了!目標艦に向かって射撃を行なっていますが…ッッ、此方にも向かってきます!』
ソーイN:『どうするどうするっ…!!!どうするどうするどうするどうするッ…!!!!』
〈すると、ピピピッッ、とソーイのコックピットにセイヴァージークの最新周辺検知結果が更新される。〉
ソーイ:『んあああああああッッッッッ何だァこの忙しい時にィィッッ!!!!!
……… “目標艦上部のエネルギーフィールドの消失を確認”……?…………ギヒヒヒヒヒッ………!!!!
そうさ………!!!天帝たるこの私はこんな所で終わる人間じゃないんだ……!!!! ここで大きく手柄を立てるのはこの私……ッッ! アークエンジェルの諸君ッッッ! 目標艦のエネルギーフィールドが一部消失しているッッ! 目標艦上部のスキャンを終えた機体から私について来いッッッ!NOAHZには構うなッッ!目標艦に取り付くぞォッッ!!!!全隊ィィッ、ボキのマーカーした座標まで全速で突っ込めェェェッ!』
<場面転換 パウロ・グランツ率いる地上部隊>
パウロ:『目標艦”セイヴァージーク”にズング機を始めとしたアークエンジェル部隊の接近を確認。
....吾らの役目は無くなりそうだな。例の妖もクルスと刃を交えておる。....それに加え吾らNOAHZとアークエンジェルの絶やさぬ銃弾...。
セイヴァージークを包むあの繭も、早くも軋み始めている様に見える。
あの艦が墜ちるのも最早時の気紛れひとつ,,,,か。
地上部隊。射撃の手を緩めるな。
”今は”...アークエンジェルの邪魔をせず、あくまで...あの艦を堕とす事を主とし、行動せよ。
そして....セイヴァージークの墜落と同時に、アークエンジェルの掃討を直ちに行う。武装の簡易メンテナンスも並行して行っておけ。
...突然に現れた妖よ。そして...鷹よ。蒼きを胸に飛ぶ若人どもよ。
...詰みだ。』
<そう呟いてクルスと戦うトロイの機体にスコープのピントを合わせていく。>
<すると、パウロのコックピットの唐突に回線が開き、聞き覚えのある声が飛び込む。>
カリオストロ:『おやおや。』
パウロ:『何............ッ!?!?!?!?!?』
カリオストロ:『回線を開けっ放しで独り言とは、可愛らしいねえ。
....嫌いではないよ。可愛い男性はね。』
<ズンンッ。 重低音を伴って落下してきたのは、MANTを展開した”ネペンテス”。>
パウロ:『一体....ッ、』
NOAHZ戦闘員B:『パウロ中尉!背後にセイヴァージーク所属の機体と思われる機影を検知!
光学粒子迷彩装備...MANTを展開して接近したものと思われます!!』
カリオストロ:『...馬鹿正直に敵が見えた後に”敵だ!”なんて....。可愛い上司には可愛い部下が集まるのかな?
くっくっく....。...おっと、失礼。思い出してしまったんだよ。小さい頃に...僕に群がる子犬たちを思い出してしまってね。』
パウロ:『ほざけ小娘がァァッ!!!!
単騎で吾らの隊に乗り込んだことを後悔するが良いッッ!!!
全隊ッッッッ!!!目標をこのセイヴァージーク所属機体に切り替えろッッッ!!
構えぃッ....!!!』
カリオストロ:『....吠える犬は....、だね。』
パウロ:『ッッッッッッッ撃ェェェェっ!』
カリオストロ:『ふぅぅっ.....!!』
<VON...と不気味な音を立て僅かに浮き上がるネペンテス。
滑る様に地上を移動して周囲から迫りくる弾丸を回避していく。>
カリオストロN:見てくれているかい、べリオ.....。
感じてくれているかい、べリオ....。
ご覧よ、僕のこの姿を....。
空から舞い降り、鉄槌を下すべく現れた鈍く光る僕のネペンテスを....ッ!
僕達に不義を為す愚劣で矮小な虫けらを、今僕が.....”オレ”が....ッッッッ!!
カリオストロ:『塵も残さず!!!!後悔する暇すら与えずッッッ!!!
覇の道を歩むに相応しく、全てッッッ!!!全て撃ち落として見せるよぉぉぉぉぉッッッッ!!!』
<グパァッ、とネペンテスの背中のバックパックが展開する。中からは うじゃら...とうねる触手の様なケーブルが無数に現れ。
先端がにゅぱぁ...と開くと、黄緑色の光線がネペンテスの周囲を縦横無尽に薙ぎ払う。>
パウロN:『ぐぬうううっ...!!!! 予測移動経路演算には動体情報が足りぬ....ッ!!
我が武装も万全ではない...ッ、想定を超える長丁場に機体の精度も落ちてきている...ッ!』
パウロ:『うろちょろと...ッ、鼠がァァァァァァァァッッッ!!!』
カリオストロ:『君達の将は”耳障り”と吐き捨てたそうだが.....
実に、実に愉快だよォ....ッ!
追い詰められた愚かな存在の吐き出す....怨嗟や苦悶に満ちた....ッッ!!
情けのない鳴き声はねェェェェェェェッ!!!!』
<10分ほど前 セイヴァージークメインデッキ>
セイヴァージーク作業員A:CT・ARGC、交戦状態に突入!従って、セイヴァージーク周囲のエネルギーフィールドが34パーセント消失しました!
ムーンライト:...この壁は無尽蔵に生み出せる訳ちゃうか....。
そもそも、何が目的で造られたんや、あの機体...、CT・ARGCは...。
セイヴァージーク作業員B:セイヴァージーク上部、完全に無防備になりました!
...ッ、それに伴い、周囲のD-IZ及びNOAHZのランドスタッドが急接近!
セイヴァージーク作業員A:このままでは戦闘は不可避です!
フラワ:.....セイヴァージークを守ってるこのエネルギーフィールドもヤバそうね。
時間が経つにつれヒビみたいなものも入っているし...。
セイヴァージーク作業員B:その通りです...ッ、目視でも確認はできると思いますが、セイヴァージーク周囲のエネルギーフィールドの密度が少しずつですが減少しています!
このままでは...ッ、大気圏に到達する前に丸裸にされてしまいます!
ディール:地上からの砲撃があまりにも連携が取れているんだ...ッ、絶え間ない砲撃をずっと疲弊無く守り切れる兵装なんてあるわけがない!
フラワ:セイヴァージークの半数の武装の射角を地上に修正!無いよりはマシ...、威嚇射撃でもなんでもして、とにかく逃げ切るのよ!
カリオストロ:いや。
<頭部に包帯を巻いた姿のカリオストロがメインデッキに入ってくる>
フラワ:!?
ディール:か...ッ、カリオストロ...さん....。
カリオストロ:心配をかけたね。 まだ多少身体がなまっている気もするが....つい先ほど目が覚めてね。栄養補給も終えたことだし。
ムーンライト:”終えたことだし”...ッて....、お前まさか
カリオストロ:そうさ。今ドックでネペンテスにMANTの換装とバックパックのメンテナンス...、そして、地上からの大気圏高速突破用ユニットの換装をしてもらっているところさ。
フラワ:地上からの大気圏高速突破用ユニット....? カリオストロ、貴女地上での戦闘を引き受ける気...ッ!?
カリオストロ:?勿論だとも。 このままジリ貧で盾が無くなり、タマが当たらない様に祈りながら空に向かうのかい?
なに、地上の兵士のあの数を相手に戦うなんて愚かな真似はしないよ。
ただ戦況をひっかきまわして、頃合いを見て離脱...、地上からちょっと飛び上がって大気圏に向かうセイヴァージークに回収してもらうさ。
ディール:......成功確率の低さを知っててそれを言っているんですか!
フラワ:................。許可します。 ...行ってきなさい。
ムーンライト:なっ....マジで言うとるんか!? 夢物語に近いハナシやど今のは!
フラワ:0パーセントか0.1パーセント。どちらに賭ける?...という話なだけ。
ただ、リスクも大きい。ネペンテスが落ちれば無駄死にどころでは済まないわ。
貴女に地上の防衛を任せるの。セイヴァージークの全ての武装は空中戦闘に運用する以上、地上からはほぼ無防備になる。
ネペンテスが落ちれば...セイヴァージークも落ちる。プレッシャーをかけたいわけではないけど...普段以上の空間認識能力を以てミッションにあたって頂戴。
カリオストロ:...信用されたものだね。
では、行ってくるよ。”貝殻のお姫様”。
<そう言って踵を返し、ヘルメットを抱えてネペンテス発進ドックへ向かうカリオストロ>
フラワN:...この言葉を最初に言い現した人間は、余程言語化がうまいのね。
.......、”胸騒ぎ”。
...神様。
ソーイ:うぐっぐっぐっぐ....!!!!(笑い声)
補給もままならずに、空中をモタモタモタモタ.........!!!
ボキ達が見逃すとでも思ったかァ....!!!!
N:最早焦点の定まらぬ目を血走らせ、ズングソーイの率いるアークエンジェル部隊は、空を切り裂いて飛翔していた。
帰還に用いる燃料を明らかに計算していない急加速。
金属の軋む音を響かせ、高速飛行による空気抵抗によって鈍く光る金属片をばら撒きながらセイヴァージークに接近するその姿は、皮肉にも──
ディール:.......天使......!!!!
セイヴァージーク作業員A:アークエンジェル部隊の接近を確認!
機体数多数!エネルギーフィールド消失個所を目掛けての直線飛行です!
フラワ:撃ち落としなさい!!!
対空防御を前方に集中!ジェイルブレイクへの射撃振動を計算に入れつつ一機でも多く撃ち落とすのよ!
セイヴァージーク作業員A:了解!
セイヴァージーク作業員B:対空防御射撃、命中率68パーセント!続きマガジンリロード完了まで30秒!
フラワN:っぐ...ッ!当たらないわけじゃない、それより問題なのは......ッ!
N:”当たっても構わない"。制空圏内に入りさえすれば──。
自が命を問わぬ、文字通りの捨て身の特攻。
────圧倒的に、間に合わない。
眼前の緑色の群れ。
湖を汚す微生物の群れによく似た其れは、誰の目に見ても明らかなほど。
振り払うには、絶望的な大きさとなってセイヴァージークのメインデッキモニターに映った。
ムーンライト:フラワ。
フラワ:何よ!!!忙しいのよこっちは!!!
ムーンライト:整備班に連絡。
プランが有る。
フラワ:..........聴かせて。
<場面転換 コックピット内ソーイ>
ソーイ:ボキは天才.....!!!ボキは天才.....!!!!ボキは選ばれし天帝......!!!!!
この無駄にでかい船を地上に叩き落とし!!!!!
このフェザーポータルを踏み台に僕はのし上がるんだァァァ!!!!!!!!!!!!!
N:隣の機体が1つ。2つ。自分の周囲の機体がひしゃげ、対空バルカンに撃ち抜かれ、墜落していく姿も、ズングソーイには見えていなかった。
いや....見ないフリをしていた。だからこそ、なのだろう。己が部隊から目を逸らしていたからこそ。
目の前の”それ”に。 ズング・ソーイは一瞬早く気付いた。
フラワ:『はぁっ.....、はぁっ......!!!!準備、良し!!!!』
ディール:『フラワさん!!!今です!始めてください!!!』
フラワ:『言われ....なくた.....っって......んんんにゃりゃああああああああああああああああああああああッ!!!!』
N:響くのは釘打機を打ち込むような音。
ソーイ:何....だ............。 なんだそれはァァァァァァァァァーーーーッッッッ!!!!!!!!!
<場面転換 数分前 セイヴァージークメインデッキ内>
フラワ:絶ッッッッッッッ対無理。
ムーンライト:ワガママ言いなや。
フラワ:だだだ大体私は司令官!
戦況の状況を
ムーンライト:総合的な戦場把握が必要な戦闘においては、お前はメインデッキに居てもらうわそら。
ただ....今は目の前のあの群れを何とかせにゃあアカンやろ。
フラワ:..............。
ムーンライト:ディールもオレも、セイヴァージークの人員全員がお前を殺させん為に動く。
信じろ。
セイヴァージーク作業員A:....メンテナンス、終了いたしました。
セイヴァージーク作業員B:フラワさん。ご決断を。
<場面転換 セイヴァージーク甲板上>
N:ムーンライトの考えはシンプルだった。
セイヴァージークの武装はほとんど使えない。
残された武装は自動リロードのタイムラグが大きい。
であれば。
ムーンライト:弾ァかついで
N:そこに、武装が有るのなら。
ディール:敵に向かって
N:船の武装を取り外し。
フラワ:吹きと.........べぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!
N:手動で撃ってしまえば良い───。
ソーイ:さ、避けられないぃぃッ!!!!弾幕が厚すぎる......ッ!!
N:至極単純。子供ですら思いつかない程の、策とも呼べないアイディア。
だからこそ。”誰も思い付かない”というオリジナルだからこそ。
ソーイ:ぐゎばぁぁくぁwせdrftgyふじこlp;!!!!!!!!!!!!!!!!
N:そのムーンライトの思い付きは、致命的に。そして、それが当然であるとでも言うように呆気無く。
ズング・ソーイの機体、バスケットラースHDを貫いた。
<場面転換 数分前のセイヴァージークメインデッキ>
フラワ:CTでセイヴァージークのバルカンを外して使うううう!?!?!?
ムーンライト:エネルギーフィールドは消えとる。
...ま、不利な事に間違いはないが....。
敵が来る方向は分かっとんや。
ある一方向のみから敵が攻めてくると分かっている場合、複雑な射撃演算処理も要らん。
そこにタマぁブチこみゃええだけや。
フラワ:だからって.....
ムーンライト:CTなら身体に弾薬巻いて、手動で弾薬を補給....、射撃も行えるはずや。
幸いセイヴァージークの対空武装は後から溶接したもんや。外したって使える.....筈や(”筈や”は小声)
フラワ:筈やって聞こえてんのよ!
ムーンライト:ッッッしゃあないやろ!!!!今動かせる船の武装じゃ間に合わん!
飾りのバルカンちゃうんや、一丁くらい担いで敵追っ払ってこんかい!!
フラワ:.......分かってる......、分かってるわよ!!!
ディール:『フラワさん。』
フラワ:...ディール.....。
ディール:『信じて。』
<場面転換 フラワがソーイを撃ち落とした直後。>
ディール:『アークエンジェル部隊の機体、撃墜達成率82パーセント!!!!』
セイヴァージーク作業員A:『敵部隊残存兵力、39パーセントまで減少しました!』
セイヴァージーク作業員B:『!!! アークエンジェル部隊、撤退していきます!』
<場面転換 アークエンジェル部隊>
アークエンジェル部隊員A:『そっ、ソーイ様が撃ち落とされたぞ!』
アークエンジェル部隊員B:『馬鹿な....ッ!!し、信じられん...ッ!!』
アークエンジェル部隊員A:『もうやってられるか...ッ!!!逃げるぞ!!!』
<場面転換 ズング・ソーイコックピット内>
ソーイ:何.....で.........。
私.....が.....私は間違っていないはずなのに........。
私.....が.........。私こそ.........が......。私こそが.....統べる.......んだ.......。
N:割れ、暗くノイズの走るモニター。正面のモニターの後ろは裂け、空が見えている。
その様子から、自分が落下しているのだとソーイは悟った。
やけに長く感じる落下。死が迫っていることを実感させるには、あまりに長すぎる落下時間。
然し、怯えは無かった。
彼が感じたのは、深い絶望。愛以外の全てを用意された彼の人生で、唯一思い通りにならない、イレギュラーの存在。
自分に頭を垂れぬという、全くの未知の存在。
船に乗って現れたそれらは、自分の悉くを否定した。その身を懸命に張り詰めさせ、抗った。
何故だろう。自分と何が違うのだろう。自分の何が足りなくて....いや、自分の何を捧げれば。
あの様に。気高く居られるのだろう。
ソーイ:パパあ.....カナあ.... ごめんなさ
ラプラス:撃て。
ヒメ:了ぉ~解ッ⭐︎
N:初めて自分以外の人間について脳を回転させた彼のこのつかの間の平穏は、意外な形で終わりを遂げた。
N:NOAHZ戦艦VAILSIDE内。
ラプラス:…報告を。
VAILSIDE作業員A:ヤクト軍曹による超長距離貫通射撃、命中を確認!アークエンジェル部隊隊長機、駆動部を撃ち抜いたものと思われます!
ラプラス:………そうか。
VAILSIDE作業員B:ヤクト軍曹のスコープからの映像、送ります!
N:低い唸り声の様にモニターに光が灯る。
そのモニターには、両腕と右脚が消し飛び。
不自然な方向に曲がった左脚が痛ましく映える、墜落したバスケットラース・HDであった。
ネリルN:バカな…。そんな…。
落下する機体に照準を合わせ、機体が爆発しないように駆動系を撃ち抜くなんて…。本当に…、本当に遂行するなんて…ッ!!!
─────しかも、宇宙空間から地上への狙撃でッッ……!!!!
ヒメ:ど〜ですかぁ、大佐ぁ⭐︎ ヒメぇ、じょ〜ずに出来ましたかねぇ?⭐︎きゃははっ⭐︎
ラプラス:上出来だ。 遠距離狙撃部隊には是非とも君に指揮を取ってもらいたいのだがね。
ヒメ:えぇ〜っ⭐︎そぉ〜んなの退ぁ〜い屈だも〜んッ⭐︎ ヒメはぁ〜、血湧き肉オドル〜、ってのが良いのっ⭐︎あっでもぉ〜、死にたくはないから〜、退屈な狙撃部隊でもいっか〜⭐︎ でもでも、やっぱり敵を近接でブチ抜いた時の気持ちよさは忘れられないしぃ〜…⭐︎ 迷っちゃう〜っ⭐︎
ネリルN:……この……ッ……
N:『化物』、と。素直に怯えられたらどれほど良かったのだろう。
然し。幾多のミッション。冷たい己の出自。
そして、軍の生み出した道具であれと囁く彼女の過去が──それらが彼女の刹那に満たない怯えを拭い去り、表情の僅かな歪みは次の瞬間には消え失せていた。
ネリル:...残す手順は僅かです、大佐。
ラプラス:……。 進めろ。
ネリル:は。 ─降下シークエンスを急がせます。
VAILSIDE作業員A:VAILSIDEよりMANT装備ステルスポッドの降下シークエンス、承認願います!
VAILSIDE作業員B:アナライズシステムのフィルターをアプライ!ステルスポッドのMANTの周波数を設定!ポッドの位置の随時の把握、完了です!
M
ネリル:…………大佐。承認を。
ラプラス:分かっている。…移動しよう。
N:ラプラスは表情を変えず。
ただそう告げて、歩き出した。
N:同時刻。セイヴァージークを頭上に構える地上。
飛行用ブースターを背に携え、異形の出で立ちで降り立ったネペンテス。
ネペンテスの多方位迎撃武装”ペチュニア”により、地上のアークエンジェル、NOAHZは縦横無尽に暴れまわる緑色の直線に明らかに統率を乱されていた。
NOAHZ隊員A:パウロ中尉!敵機の射撃、予測出来ません!演算による処理では回避ルート算出不可能!
NOAHZ隊員B:なんだこの武装はッ...!!ぐっ、ぐあああああああああああっ!!!!
パウロ:彼奴から離れるな!
視認できる距離を保て!
彼奴の背中から粒子が射出されておる!
遠方からでは弾道の予測は困難!だが......そこを突くッッ!!接近するのだッ!
見てみろッ!
動き自体は俊敏に程遠い!近接戦に分が有りしは我等なり!
各機....ッ、多少の被弾は覚悟!回避による機体の速度減少を何より警戒!!
援護せいッッッ!!
カリオストロN:......やり辛いな。
.....。
順応してきている....。
あの青い機体を中心に、僕のネペンテスの弱点を分析して立て直しに来たという訳か....。
NOAHZの射撃部隊....。
生半可では無い....ッ!
パウロN:成程考えてはおるようだな。
背から生える射出口からの空を平と捉えぬ....立体の射撃。
さらに”銃を構えぬ射撃”による射撃数の豊富さ....。
対集団における絶好の能を持ちよるわ。
然し....。
パウロ:吾の目にッッッ!!
吾という”個”の存在にッッ!!
”多数”を前提とした小細工なぞがッッッ!!!!見抜けぬ筈も無かろうがァァーーーーッッッ!!!
N:パウロの分析は、寸分も違わずに的を射ていた。
ネペンテスの多方位迎撃武装”ペチュニア”の弱点。
接近戦に持ち込まれてしまった際に、ペチュニアによる優位は半減する。
それはカリオストロの空間把握能力をもってしても、変わらぬ事実であった。
接近戦において自分の機体にペチュニアのレーザーが当たらぬよう捌き、加えて敵の機体に攻撃を与えるという一連の作業は...人間の脳で処理するには複雑過ぎる。
もし仮に、万が一.....ネペンテスが”速度”も”接近戦”もクリアした機体なのであれば....最初から戦法に組み込んだ動きをするのであろう。其れを行えぬ今、接近戦を仕掛けられるのはある種必然であった。
現にペチュニアを使わぬネペンテスのスペックはスペリオルの改良版程度でしかなく...接近戦による数値に突出した箇所は存在しない。
目の前で起きる全てを隅々まで見渡すパウロ・グランツの眼。
そして注意深く。鳶を撃つ狩人の様に、淡々と採取したデータ。それらがネペンテスを追い詰めた。
───筈であった。
カリオストロ:───君たちは、本当に────....。
パウロN:......何だ.....?
何だその熱反応は.....!!
何が....ッ、ぐっ...!臆するな....ッ!!!
カリオストロ:分かっていない。分かっていないのだよ。
パウロ:総員!!!!!!何をしておるッッッッ!!!!!
この間抜けを叩き潰せぇぇぇぇぇぇぇええぇぇぇええーーーーッッッ!!!!
カリオストロ:『オレ』達が─── そして、『オレ』が。
どれほどの怒りと絶望をををををををォォッ!!!胸に滾らせているかをなァァァァァアアァァアア~~~~ッ!!!!
N:パウロの眼は、捉え切れなかった。
いや、見えてはいる。
捉えてはいたのだ。
ただ、その眼は教えてはくれなかった。
ネペンテスが背中に背負った物が、飛行用ブースターなどと。
カリオストロ:『オレ』は勝ちに来たんじゃあ無い。
君達を一人でも塵に変えるだけで良いんだ....!!!
だが。....全員......
覚悟しろォォォォォォォッ!!!!!!!!!!!!!!
N:空間が歪む。
錯覚でも比喩でもない。
陽炎が生まれていた。
そして。蒼く、歪んだ音を撒き散らしながら明滅するブースターを携えたネペンテスのみが全てを理解していた。
カリオストロ:さぁ、さぁ、さぁ.......!!!!
オレに近づいてご覧よ...!!!オレに触れてご覧よ....!!!!
このオレの歩みに!!!!!
覇の道を歩むに相応しい人間は!!!このオレだけなんだッッッ!!!!!!!!!!!!!!!
N:上空へ飛び去るセイヴァージークへこの地上から移動し、着陸するための飛行用ブースター。
カリオストロは自分の機体 ネペンテスの弱点が看破されたと見るや否や、躊躇をせずブースターに点火をした。
NOAHZ隊員A:パウロ中尉!!とても追いつけません!ぎゃぁぁぁぁぁっ!!!!!
N:強烈な速度で移動をするネペンテス。
近接戦など行える訳もなく、NOAHZや周囲のアークエンジェル部隊はネペンテスのレーザーによって薙ぎ払われていく。
パウロN:恐らく点火したのは成層圏までの頭上の戦艦へたどり着くための補助上昇装置....ッ!!
ぐ....ッ、速過ぎる...ッ!!!追いつけん..ッ!
おのれ....ッ、この時間にもあの艦は飛び去る...ッ!!!
回避するにも限界が....ッ!!!
パウロ:...............こっ.....の..............!!!!妖共がァァァァアアァァァアァァァアアァァアアーーーーーーーーッッッ!
カリオストロ:オレが妖ならお前は犬だろォ.............?
自惚れるな..........ッ!!!
大人しく....ッ、薙ぎ払われろォォォオオォォォォオオォォォオオォォォオオォォッ!!!!!!!!
N:次の瞬間。
カリオストロ:な...........。
N:音が止んだ。
カリオストロ:想定より早...ッ....
N:本来は直線飛行の為に用いるブースター。
強弱。左右。想定外の方向へのエネルギーの噴射の多用。
それらは事前に計算された予測時間よりも遥かに短い時間でエネルギーを使い果たし。
パウロ:.......一手。見誤った様だな....!!!
N:優劣の天秤は、再び逆に傾いた。
パウロ:全隊ッッッ!!!!!前方機体に....ッ、突撃ィイイイィィィーーーーッッッ!!!!!
カリオストロN:そ...........んな..................馬鹿...........な...........
こんな..........僕が..........
こんな...........!新兵の様なミスを.........!!!
N:聴こえる。
脆いカリオストロの心。
その心にヒビが入り、泣き声の様に軋むのが、確かにカリオストロの耳に聞こえていた。
カリオストロ:だ....から..........ッ........!!!!だからどうしたァァァッ!!!既に距離は十分とってある!
撃ち落としてやるッ....、”ペチュニア"!!!!全員消し炭にしてやれエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!!
N:カリオストロが我に返り、ネペンテスを再起動して...ペチュニアを掃射するまでの数瞬。
ほんの刹那に満たないその数瞬は、周囲を包囲され、攻撃をされるに余りにも足る致命的なタイムロスであった。
パウロ:無駄だァッ!!!
ここまで接近すれば回避するのも最早演算処理に任せても構わぬほど...ッ!
貴様を即刻処理し...ッ!!!あの艦を撃ち落と(途中でセリフを遮られる)
トロイ:『うあああああああああああああああああああああ────ッッ!!!』
N:カリオストロに向けて怒号と共に発射された弾丸が、
空中より地面に突き刺さった巨大な羽根の形の盾によって轟音を響かせ防がれる。
パウロ:ぐううううううッ.......────!!!
トロイ:このっ....───このぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!!
<そして、次の瞬間。アオオニに向かってCT・ARGCが体の前に羽をX字に展開させ、猛烈な勢いでスラスターを吹かして体当たりをしてアオオニを吹き飛ばす。>
パウロ:妖ィィィィ~~~~~ッッ!!!
<吹き飛び、何度も地面を弾むように転げながらも、アオオニから怨嗟の声が響く。>




