第一部 終編(7人声劇用)
●配役表(7人)【♂2:♀4:不1】
※※※記号で検索かけてください※※※
Σ▶︎ベリオ♂️:
Ω▶︎ラプラス♂️:
Φ▶︎ディール♂️♀️:
Ψ▶︎フラワ/ネリル♀️:
γ▶︎ワカミネ/他(女性技術官)♀️:
α▶カリオストロ/他(女性管制官、CSパイロット)♀️:
β▶︎ヒメ♀️: ※ワカミネ役と兼ねでも可
●キャラクター (詳しい内容は設定資料へ)
・ベリオ……主人公。孤児出身。素行は悪い不良気質(喧嘩は弱い)だが、人の痛みが分かる憎めない性格。兄貴分だったはずのラプラスに利用され、ディールの母親フィオナが死去する。ラプラスを追うために、親友のディール・幼馴染のフラワと共にレジスタンス集団『AIM FOR STARZ(通称 A.F.S)』を立ち上げる。
・ディール……ベリオの親友。まっすぐな性格の好青年で曲がったことが嫌い。頭が良く完全記憶能力がある。そして、超人並みに卓越した「聴力と視力」を持っている。軍隊近接格闘術も身に着けており、喧嘩が強い。A.F.Sのパイロット兼データ分析係。
・フラワ……ベリオとディールの幼馴染。父親が研究所の所長で、本人も頭が良くラボで研究を手伝っている。サバサバした性格で、つっけんどんな態度をとる。怒ると怖い。父親からは人体実験を施されており、胸の中央にCTとの接続口がある。A.F.Sの作戦司令塔。
・カリオストロ……A.F.Sのメインメンバー。なぜかベリオを狂信的に崇めている。爽やかな性格だが、根はヤンデレ気質で、ベリオと仲良くする女の子 (フラワなど)には挑発的な態度をとる。パイロット適性診断で驚異的な数値を叩き出し、一騎当千の実力を持つ。
・ワカミネ……A.F.Sのメインメンバー。元NOAHZ部隊に所属していた軍人。弟妹がベリオの孤児院に救われたことから、加入を決意。軍人生活が長かったからか堂々としており、男らしい口調で喋る。ジョークをそのままの言葉で解釈してしまうほど素直。
・ラプラス……ベリオに生き方を教えた兄貴分。「テンにい」と呼ばれ、ベリオからは絶対の信頼を置かれ慕われていたはずだったが、ベリオを利用し、ディールの母親フィオナを死なせた張本人。冷徹で、淡々とした性格。宇宙政府(NOAH)の直属部隊NOAHZを指揮している謎の男。
・ネリル……NOAHZ所属のパイロットで、ラプラスの補佐官。非常に理知的な性格で感情を乱すことはほぼ無い。同じ部隊メンバーのヒメとは犬猿の仲。
・ヒメ……NOAHZ所属のパイロット。普段はぶりっこを演じているが、キレると口調が粗暴になる。同じ部隊メンバーのネリルとは犬猿の仲。
【EPISODE6 AIMFORSTARZ】
ベリオΣ:
……凄ぇ。……けど、オレは何もしてねぇよ。
フラワとディールの実力だろ。……オレは……。
フラワΨ:
(溜め息)……言うと思ったわ。――シュヴァリエ!!来なさい。
???α:なんだい、フラワ?
ベリオΣ:だ、だい?
フラワΨ:
紹介するわ。「シュヴァリエ・カリオストロ」。
ランドスタッド疑似戦闘の適正値がモーーーーーレツに高いの。
別にディールみたいに目と耳がレーダー並みに良いわけでも、私みたいに神経接続機構が埋め込まれてるわけでもなく。ただただ空間認識能力や重火器の扱いがズバ抜けてんの。
ってな訳で、ランドモービルじゃなくて、ワンオフのランドスタッドを急遽製造してるってわけ。
シュヴァリエ・カリオストロα:<舐めまわすようにゆったり喋る>
君がベリオ君だね?……。
その体、まるで秋の紅く染まった落ち葉の如し……。
君というただ1枚の儚い葉を、僕は柔らかく抱きしめる森でありたい……。
ベリオΣ:はよ喋れ。
フラワΨ:優秀ではあるのよ。優秀では……。
カリオストロα:
良いんだよ。彼の心の鍵は暗く深い海の底……。
僕はその海水を掻き分け、君の鍵を見つけてみせよう。そう、この出会いはまるで海底火山……!
ベリオΣ:後半マジで何言ってんだ?
ディールΦ:前半も分からなくないですか?
カリオストロα:この傷……。 ラプラスに立ち向かって出来たんだってね。
<ベリオの手を取り、熱っぽい視線で眺める>
カリオストロα:
「傷とは勲章だ」……ではないのは重々承知なのだけれどね。
楽に得る勝利は真の勝利ではないというのが僕の持論さ。
……君が命がけで建てた孤児院のお陰で、没落貴族の僕の弟は飢えずに済んだ。
そして君は道を切り開こうとしている。
その代償のこの傷……。誇るべきものだよ。
ベリオΣ:
……。勝利に真も偽もあるか。勝ちゃなんだって勝ちだろうが。
おい、触んな。……オレが弱いからついた傷だ、褒められるようなもんじゃねえ。
カリオストロα:
――あッは……♡ 済まなかったね。
おいそれと傷に触れられる容態ではないという事を失念していたよ。
……では、また会おうベリオくん。二人っきりでの特訓、期待しているよ――。
ベリオΣ:…………なんだったんだ。
フラワΨ:
ここにいる約半数は、アンタの孤児院で家族や自分が助かった人々。
私たちは半分くらいしか集めてない。……胸張んなさい。
たった1年でこんなに人を助けたのよ。
そして、これからもっと救うためにアンタはここにいる。
ディールΦ:
そして、僕たちが変えるんです。
火種になれば良い……ではない。後に続く者たちへ、でもない。
僕たちが変えるために。
その為の、この――――機体なんです。
A.F.S (エイム・フォー・スターズ)超短期想定 鎮圧作戦行動用ランドスタッド『ドミナント・ジェイルブレイク』を始めとしたランドスタッドで、NOAHを目指す!
期間は半年以内、電光石火の移動作戦行動を開始します!!!
ベリオΣ:
“します!”……ッて。この……なんだ。
ドミナント……ジェイルブレイク?って、誰が乗るんだ?
フラワΨ:そりゃ、アンタ。
ベリオΣ:……は?なんで?
フラワΨ:
そりゃそうでしょうよ。有能な兵士は全員NOAHZに取られてるんですもの。
CTがアタシ、ディールのスペリオル、あと盗んだ設計図で今造ってる新型のジェイルブレイク、あと試作のランドスタッドが一体に、ランドアームズが一体……。
……ま、人数に余裕がないの。
メカニックやメディカル、管制系統はこっそり引き抜いた若いメンバー。トレーニングメニューをこなして有能そうなのが一人、奇跡的に軍でランドアームズのパイロット経験があるのが一名のみ。
勿論専門じゃないのは分かってるけど……巨大な武装やコックピットに詳しいのはアンタを除けばもう他に居ないのよ。
ディールΦ:
イチからパイロットをトレーニングをするには予算も時間も現実的に足りない……。
流石に僕達だけではそこまでのカバーは……。
ベリオΣ:…………ま、しゃあねえか。
フラワΨ:
最小限の戦力で、最小限の戦闘を……だもの。これが計算上一番現実的な構成。
ドンパチ戦争やるってんじゃないんだから。
ベリオΣ:わ~かったよ。ま、ボチボチやるさ。
フラワΨ:いや死ぬ気でやんなさいよ。
ベリオΣ:も~~~~シャレ通じないこの女~~~~……。
ディールΦ:っくっくっく……。
<ディールとベリオは顔を見合わせて微笑み合っている。
それに呆れつつも、穏やかな顔で一瞥して去っていくフラワ>
―――
――
―
<NOAHへの巡航飛行で移動する【戦艦ヴェイルサイド】内>
ヒメ・ミッシェル・ヤクトβ:――ね~~、大佐ぁ~~~!
ネリルΨ:
……大佐は現在、NOAH本部へのOBLOM保存情報の破壊報告レポートを処理中です。
言伝であれば私が取り次ぎますが。
ヒメβ:
…………えぇ~w?ヤダ~~、なんかヘンな匂いするんだけどぉ~~~~?
オバサンみたいな香ばしい匂いするぅ~~~~☆
ネリルΨ:
先ほど殺菌シャワーと加圧式滅菌ルームにおりましたので、雑菌の苦しむ匂いはするとは思いますが。
ヒメβ:
へえ~……?大佐に媚び売る割には自分だけキレーで居たいんだ~~~~?
ネリルΨ:
媚びではなく“実力”で大佐の補佐をしております。
“媚び”で職務中の大佐に要らぬ時間を取らせる程、薄汚れてはおりませんので。
ヒメβ:
――オメぇあんま上等くれてっとブチ抜いちまうぞ?クセぇんだよババアよぉ。
次のランドスタッドパイロット選抜……流れ弾に気ィつけとけよ?
ネリルΨ:見苦しい。剥がれるような仮面であれば着けるだけ無駄でしょう。
ヒメβ:<血管がピキピキする声>
~~~~☆☆☆?
<口論をする二人の女性。片や冷たく見下すように、片や熱を持って射殺すかのような視線でにらみ合っている。
むにゅんとお互いの胸がぶつかって形を変えるという蠱惑的な光景であるが、周囲の航行管理官を始めとした船員は目を合わせぬようにし、何ともいえぬ緊張感が漂っている>
ラプラスΩ:
――……その辺りにしておきたまえ二人共。他の兵士の士気にも関わる。
ネリルΨ:
……は。
然し大佐。軍規に外れた態度や言動を繰り返しているのはヤクト軍曹であることは明白かと思われます。
適切な対応の検討は必須かと。
ヒメβ:
ねぇ大佐ぁ☆
ダメだよぉ、こんなオバサンに仕事まかせてちゃぁ~☆
時代はやっぱコミュニケーション☆ ジメジメ堅苦しいのはもう古いってぇ~☆
それにランドスタッドだって私の方がうまく乗りこなせてるしぃ☆
ネリルΨ:
選抜において1位を取ったからこそ此処に居る私には、滑稽に響く言葉ですね。
ヒメβ:
ぁん?かかってこいよババァがよ。
たまたまヒメが遠距離狙撃部隊に配属されたからって前線張ってるつもりか?
ラプラスΩ:……――その辺に、
<ぶわっ、と空気が変わるような言葉。言い切られていないその言葉は、ネリルとヒメの背筋を冷たい刃物でなぞるようなプレッシャーを放った>
ラプラスΩ:したまえ。今の私は少々気が立っている。
ネリルΨ:……失礼いたしました。
ヒメβ:
冗ッッッ談じゃあ~~~ん大佐ぁ~~☆
ネリルさんともちょっとじゃれてただけぇ~~~☆
ネリルΨ:では、大佐。
<そう言って二人はメインルームを後にする>
ラプラスΩ:
……NOAHも人類も、所詮は同じ。
書面で現場を把握できない事は明白であるのに……。人類はもはや巨体を横たえる老いた象だ。
立ち上がる事すらできずに、死を待つだけの運命に気付かぬふりをしている。
…………成し遂げねばならない。
――“VAILSIDE DRIVE”の点検を怠るな。
女性技術官γ:はっ!
―――
――
―
<場面が変わり、ランドスタッドのドック(格納庫)。
そこでは四体のランドスタッドが格納されていた。その空間で二人向き合っているフラワとカリオストロ>
フラワΨ:……何で呼び出したか分かる?
カリオストロα:
分からないね。まぁ……慣れてはいるからね、女の子に告白をされるのは。
だが申し訳ない、君という真珠はまだ硬い殻の中……海の冷たさを知るには時期尚早だと言わざるを得ない。
フラワΨ:
黙って。……つーか、んな訳ないでしょうが。
そりゃ盲目なガキはアンタに懐くでしょうね。妙なそのポエムも親しみを覚えさせる為ってトコ?
でもね。一つだけ忠告しとくわ。
ベリオに変な事してみなさい……。コックピットごと引きちぎってやるから。
カリオストロα:
…………。何を根拠に言っているのか分からないが……小鳥は可愛らしく囀るから駆除されないのさ。
人に不利益をもたらす害鳥は……駆除されるのが運命だよ、フラワ君。
子供じみた独占欲でチームメイトを攻撃するのは集団行動において必要かな?
フラワΨ:
アンタ、ベリオは憧れって言っていたわね。
憧れってね……「小さい童」って書くのよ。大人ぶりたい年ごろなの?
カリオストロα:言葉遊びが趣味かな?
フラワΨ:あら、詩人さんが言うのね。
カリオストロα:……可愛くはない言葉選びだね。
フラワΨ:お生憎様。アンタの視界の女が全員アンタに媚び売ってくれると思った?
カリオストロα:……興味深いね。
<二人が向かい合って距離をずんずんと詰めている。必然お互いの胸がむにゅんとぶつかり合う>
―――
――
―
<物陰に隠れているベリオとディール>
ベリオΣ:
バカ、ディール聞こえねえだろ!もっと前行こうぜってば……!
ディールΦ:
なんで僕がこんな事……。フラワさんに観測部からのデータについて話がしたいだけなのに……。
ベリオΣ:
おいアイツら怖い顔してるぞ!!!もうちょいでケンカすんじゃねえか!?!?
ディールΦ:
なおさらこの場に居たくないですよ!普通に話しかけに行きましょうよ~……。
ベリオΣ:
あっ――おっぱいぶつかってるッッッ!!!ディール!!!カメラ!!!!
ディールΦ:
ないですよ書類しかぁ!!!!
ベリオΣ:
くっそ~~~挟まりてえなあ!!しかしフラワもなかなかどうして時の流れというものは――。
<ΣΦ(声有り)ごむん、と柔らかいものをハンマーでたたいたような音が二人の脳内に響き渡る>
???γ:――何をしておるか、貴様らは。
ベリオΣ:ねえディール?オレの頭ある?
ディールΦ:わ……ワカミネさん…………。
ベリオΣ:ディール?オレの頭ある?
ワカミネ・スギウラγ:
コソコソとした盗み聞きは好かん。男子たるもの、隠れる時は涙を流すときのみ。
ベリオΣ:誰゛こ゛い゛つ゛……!!
ワカミネγ:
おお、自己紹介がまだであったな。
ウェストホーキング出身、ワカミネ・スギウラ。
『NOAHZ』で空間戦闘ランドアームズの特殊訓練を受けていた。
ベリオΣ:……ッッ!!!
ワカミネγ:
そう怖い顔をするな。受けて“いた”と言っているだろう。とっくに除隊している。
ベリオΣ:なんで抜けた。
ワカミネγ:
簡単だ。私の下には幼い妹が二人いて…………両親がコールドローズ症で死んだ。
……親戚は居ない。ベビーシッターを雇う事も勿論考えたが、両親の治療費のローンを自転車のように返しては働き、返しては働き、返しては……、の日々でな。
恥ずかしいものだが、最早3人で、とのところでイーストダーウィンの孤児院の話を聞いた。
中等範囲までの学問も安く修められるとも聞き……縋る様に妹二人を預けた。
……設立したのはお前なのだろう?東の英雄、ベリオ。
ベリオΣ:
なんだかむず痒いな。辞めてくれよ。
カネ出しただけ、運営も設備の維持も全部俺より賢い大人がやってる。
俺の懐にはカネも入ってきてねえし……つうかなんだよ、「東の英雄」って。
ワカミネγ:
くっくっく……照れには弱いと見えるな。
そんなことでは今後苦労するぞ、ベリオ。
そして話の続きだが――そんな折に偶然ディールからAFSに誘われ、今ここにいる、といった具合な訳だ。
ベリオΣ:なんか濃い奴ばっかり誘ったんだな、ディール……。
ディールΦ:そんなことより、見てくださいフラワさん。
<手に持った書類を差し出すディール>
フラワΨ:何……?これは……。
ディールΦ:
AFSのIOPLANET周囲 定期周回衛星の、6時間前の観測映像です。
フラワΨ:これは……。IOPLANETの軌道修正スラスター……?
カリオストロα:
隕石を始めとした、外的要因による衝突を避ける為に設置された、コロニー回避行動用のスラスター。
人類を乗せる箱に相応しい……相変わらず巨大なスラスターだね。
ディールΦ:
2枚目の拡大画像を見てください。スラスターの陰に……。
ワカミネγ:まるで…………人、だな。
カリオストロα:
君が最も間近で見て居たんじゃないか?正式名称で呼びたまえよ。
ワカミネγ:――――スペリオル……!
ディールΦ:2体確認できます。そして……。
フラワΨ:“張り付いて何をしている”……?
ワカミネγ:スラスターの点検ではないのか?
ディールΦ:
であれば、通常30分ほどの点検で終了するはずなんです。
しかし今回は5分もかかっていません。――“早すぎる”んです。不自然なほどに。
そして、これが映像です。
<タブレットを出して映像を再生する>
フラワΨ:これは……何かを点検しているというより……。
カリオストロα:“何かを設置している”。
ディールΦ:
セントラルエジソンへの報告は有りませんでした……点検時には報告の義務があるんですが、それがされていない。
僕達の非合法で飛ばした、把握されていない衛星だからこそ撮影できたこの映像。
そして、報告のない水面下で行われる謎の作業。
ワカミネγ:
……イヤな感覚だ。
ささいな疑いが“疑念”に変わる瞬間は、何度経験しても毛穴が開くような不快感に襲われる。
フラワΨ:――偵察の必要があるわね。
ディールΦ:
ですが、ランドスタッドの試運転も不十分です。
最終動作にこぎつけるまでは……甘く見ても2ヶ月は必要です。――が。
フラワΨ:1ヶ月で仕上げるわよ!
ディールΦ:了解!!
ワカミネγ:了解だ。
カリオストロα:了解だよ。
ベリオΣ:えオレの意見は?
―――
――
―
<1ヶ月後>
カリオストロα:
――やあ、ワカミネ。
訓練に精を出している様子、視界に入るたびに感服の思いだよ。
さながら大地に楔を打ち込む開拓者……。
ワカミネγ:
…………?
貴君は不思議な言い回しをするのだな。
私は大地に楔など打ち込まないぞ。
カリオストロα:
あはは、ワカミネのそのあどけなさが時にミスマッチに……然しその非対称さが僕の何かを刺激する…………!!
ワカミネγ:
私からあどけなさを感じるのか。
……妹も二人いる事が関係しているのだろうか。貴重な意見をありがとう。
ベリオΣ:おい、あれ混ぜちゃダメな二人じゃないのか。
ディールΦ:シュールが売りのコントみたいになってますね。
フラワΨ:
……静かにする。集まるなりぺちゃくちゃぺちゃくちゃしないで。
二徹してんだから頭に響くのよ。……はい、皆さんが静かになるまで、私の脳内タイマーで900フレームかかりました。(15秒)
ベリオΣ:ジャッジが辛いな。
フラワΨ:
まず……。ベリオ。高密骨構成材を一か月飲みながらの訓練、お疲れ様。
ベリオΣ:腕とれるか思た。
ディールΦ:
構成材は文字通り骨を構成する材料を体に入れて骨をメキメキ治すものですからね。
ワカミネγ:毎晩シクシク泣いていたな。
カリオストロα:
……僕が添い寝をしてあげてもよかったのに。
フラワΨ:
はいだまらっしゃい。
……ワカミネのランドアームズも整備が完了。
ディールとベリオのランドスタッドも出撃準備が可能……、そして。ネペンテスも出撃最終調整がついさっき終わったわ。
カリオストロα:なかなかに時間がかかるものだね。
フラワΨ:どこかの誰かさんによる注文が多かったものでね。
カリオストロα:では全部搭載してくれたのかい!?
フラワΨ:
ベリオの心拍数を図るセンサーを始めとした箇所は全~部却下したわよ。
……IOPLANETの軌道修正スラスターへの調査は翌日の06:00(ゼロシックス)。
15分以上の滞在は、恐らくNOAHZに探知される。
ワカミネγ:探知された場合、どうなる?
フラワΨ:……警告無しで撃墜を目的とした射撃が行われるわ。
ワカミネγ:了解した。留意しておく。
フラワΨ:
軌道修正スラスターはあまりに巨大。
全員で随時、情報共有をしながらでないとこのミッションの完遂は不可能。
各自配ったデータに目を通して持ち場を確認しておくことね。
――以上。解散。
<場面転換。星空の下のフラワとワカミネ>
フラワΨ:――――……ひっく。ぐす……。
ワカミネγ:風邪をひくぞ。
フラワΨ:っ!!!……ワカミネ。
ワカミネγ:
この丘は私も好きだ。
この景色は天候操作システムによる表示板の映像ではない。
コロニーが透明化して星が見えている。……この光は確かに本物の光なのだと、どこか胸を子供の様にときめかせてしまう。
そんな甘いむず痒さは、ここでしか味わえんからな。
フラワΨ:カリオストロみたいなこと言うのね。……笑うでしょ。
ワカミネγ:笑う?何故だ。
フラワΨ:
わかってんのよ。私じゃ、完璧なプランを立てられていない。
不信感で挑むには巨大すぎる敵。私が乗れる機体は強くなんかなくて、精密な動きが出来るだけ。あなた達みたいに最前線で機体と対峙する訳じゃない。
……皆の命の責任を取れるわけでもないのに、雲を掴んだようなもやもやがずっと胸の中から晴れなくて……。
ワカミネγ:<堅い表情>
…………フラワは、優しいのだな。
フラワΨ:……ありがと。
ワカミネγ:褒めてはいない。戦場ではお前のような奴から死ぬ。
フラワΨ:っ…………。
ワカミネγ:
命の責任は人間を生み出した神……仮にそんな存在がいるとすればだが……その存在にしか責任は背負えない。
私たちは脅されたわけではない。志願してここに居る。
そんな私たちに命の責任を感じる人間が、敵という人間に引き金が引けるとは――私は思わんな。
明日の作戦は統率として本部で待機していても構わんのだぞ?
“セイヴァージーク”も発艦するだろうが……地上での待機は怯えではない。
フラワΨ:……私が、出たいから、出るの。皆と、この作戦を完遂したい。
ワカミネγ:
そうだ。私も、ベリオも、ディールも。カリオストロも。
A.F.Sのクルーも。出たいから、出る。見たいから、見る。
知りたいから、変えたいから、集まった。
そんな人間しかいないこの場で、何かを背負い込もうとするな。
お前がお前で精いっぱい在れば良いのだ。
無論、作戦も完遂させられれば言う事はないがな。
フラワΨ:…………少し、泣くわね。
ワカミネγ:
……冷えるな。ほどほどにしておけよ、フラワ。
貴君が欠けては遂行は難しくなるからな。
<フラワの肩に自分の上着を被せて去っていくワカミネ>
フラワΨ:……おやすみ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【EPISODE FINAL PRAY】
<翌日 コックピットの中でそれぞれ出撃準備をするメンバー>
フラワΨ:――『全員、聞こえる?』
ディールΦ:
――『通信良好。A.F.S専用秘匿帯域の回線を確立。ベリオさん、聞こえますか?』
ベリオΣ:『なんにもきこえん』
フラワΨ:『ちょっと!!いったでしょ!!そこの青いボタン!!!!』
ベリオΣ:『これ?――』
<ブウゥン――という音とともにベリオの回線が途絶える>
ワカミネγ:『……通信が切れたな』
フラワ:
『ぬわっっんで赤いボタン押すのよ!!!!バカなの!?!?』
ディールΦ:
『同じ光景をNOAHZとのオンライン会議で見ましたね……』
ベリオΣ:
『――――いや~~~ごめんごめん。通信回線確立。これで良しと』
ディールΦ:『カリオストロさん!聞こえますか?』
カリオストロα:『聞こえるよ』
フラワΨ:
『600秒後に当戦艦“セイヴァージーク”上昇!
IOPLANET宇宙搬入口まで移動の後各機出撃。
衛星情報から確認された位置を中心に情報を収集せよ!
観測情報の随時共有を厳として作戦行動は900秒に納める事!
また…………。
また、射撃行動を受けた場合は……絶対にやり返さないで。
絶対に反撃や威嚇行為にとられるような行為は自制して、即セイヴァージークに帰投する事。 ――……誰も、死なないで』
<9分後>
ベリオΣ:<コックピット内>
すーーーっっ……ふーーーー…………いつでも来いや。
フラワΨ:『セイヴァージークエンジンオンライン!!!!』
女性管制官α:『オンライン!』
ベリオΣ:
『うううううううううっっっお……!!!!』
ディールΦ:
『さすがに――Gがきついですね――』
フラワΨ:
『力を抜いて!スーツの適圧調整のおかげで呼吸はすぐに楽になるわ!!』
ベリオΣ:
『……――っっっっ、はぁ……!』
ワカミネγ:
『セイヴァージークからの発艦がまだ残っている。気を抜くなベリオ』
カリオストロα:
『……ッ(僕だけのベリオに偉そうに…………ッ!!!)』
<次の瞬間、コロニーの搬入口を通り抜けて宇宙が全員の視界に広がる>
ベリオΣ:『――おぉ……』
フラワΨ:『全機!!発艦!!!!』
カリオストロα:『……ネペンテス』
ディールΦ:『ドミナント・ディテクター!』
ワカミネγ:『サイドホーン』
フラワΨ:『CT!!』
ベリオΣ:『ドミナント・ジェイルブレイク!!!!』
ベリオΣ:――――発進。
<全機が宇宙に放たれる様に発艦>
―――
――
―
ディールΦ:『あわわわわわ……!』
<ふわふわと宇宙空間を回転するように漂うディテクター>
フラワΨ:
『落ち着いて!姿勢制御はオートで行われる。
ディテクターはC地点からの調査をお願い。各機もマーカーに従って調査を行って』
カリオストロα・ワカミネγ:『『了解』』
ベリオΣ:『うん』
フラワΨ:『うんじゃないのっ。作戦行動中は了解って言いなさい』
<ベリオ視点>
ベリオΣ:
『……いや、特に何もねぇが。見たとこ変なモンもねぇし……』
<そう言っていると、ピピっとレーダーが反応する>
ベリオΣ:
『んお?なんだこりゃ……フラワ!この……ウンコナウン?』
フラワΨ:『アンノウン!!!!これは……』
ワカミネγ:
『対象に付着させるタイプの誘導マーカーだな。何かの目印として用いられるものだが……』
ベリオΣ:
『ほーん。……ま、もっと爆弾とかかと思ってたが、案外普通のもんだったな』
ディールΦ:
『ベリオさん。マーカーの横の赤い光……ちょっと動いてませんか?』
ベリオΣ:『ホントだ。なんじゃこりゃ』
ワカミネγ:『スナイパーライフルだ!!!! 回避しろ――ッ!!!!』
ベリオΣ:『あ?――――』
<刹那、がごん、という鈍い音。
唐突に亜音速の質量弾がドミナント・ジェイルブレイクの左腕を吹き飛ばした>
ベリオΣ:『ッッッッっじゃこりゃあああああああ!?!?』
ディールΦ:
『質量弾検知ッ!!
そんな、ディテクターの探知を潜り抜けるなんて!!どこから……!』
ワカミネγ:
『射角から狙撃位置を予測!7秒くれ!!』
フラワΨ:
『ベリオ、スラスターを全速で吹かして!!撃墜されるわ!!!!』
カリオストロα:
『……まだ4分しか経っていないが。妙だね』
<ドヒュン、ガヒュン、とスラスターを吹かして逃げるベリオを襲う狙撃攻撃。
それに追い打ちをかけるようにランドアームズがVAILSIDEから多数出撃。
五人に襲い掛かる弾幕をいなし、時折撃墜をしながらも五人は消耗をしていく>
ワカミネγ:
『真上だ!!各機警戒のうえ、セイヴァージークに向けて帰投!!』
ディールΦ:
『敵機補足――超・長銃身 狙撃ライフル装備のスペリオルが一体!!!!
そして……ッ、該当スペリオルの背後80km!!!
こちらに対してソナーを発信している超級戦艦を補足……ッ!!!』
カリオストロα:
『不審者を発見して飛んできた……にしては、大掛かりだね』
ディールΦ:『僕たちはすでに探知されていた……ッ!!』
フラワΨ:『“何故”は後!!全機離脱!!!!』
<全機がようやく体制を整えたその瞬間、長銃身を構えたスペリオルがEMP弾(電磁障害を引き起こす弾丸。あらゆる電子機器がシャットダウンされる)を射出する。
スナイパーライフルからやけにゆっくりと射出されたその弾丸はセイヴァージークの付近で炸裂。
次の瞬間、セイヴァージークはゥゥン……と弱弱しくエンジンの止まる音を最後に動きを停止した>
ワカミネγ:『対戦艦用のEMPバレットだ……!!』
カリオストロα:
『セイヴァージークからの通信が途切れた。
……完全に退路を断たれたね。ハッチも開かなければ火力支援も行われない。
僕達に影響がないという事は、範囲は狭いが非常に強力なものという事だ』
ベリオΣ:『皆弱気だな~、おい?』
ディールΦ:『ベリオさん!』
フラワΨ:『ちょっバカ、前に出るんじゃないの!!殺されるわよ!!』
ベリオΣ:
『俺らの戦艦は確かに封じられてる。
でも、目の前の奴らは距離を詰めても来ねえ。後ろの戦艦も何もしてこねえ。セイヴァージークは一時的にシャットダウンしただけだ。
完全に電子機器を破壊するEMP弾はあんな細え銃じゃ撃てねえ。つまり……ッ!!』
<ぐおん、と加速して敵機に迫るベリオ>
ベリオΣ:<コックピット内>
軽くボコして、周りのヒコーキ全部ぶっ壊しつつビンタ2、3発入れてセイヴァージークが起きたらダッシュで逃げろ作戦!!!!
全機援護しろ!!!!
<ドミナントJBが迫ると、くるりと身を翻すして回避行動をとるスペリオル>
ベリオΣ:
『うははははは!!怖えかよ!!
スナイパーライフル以外の武装はねぇのか?
近接じゃあ何も出来ねえのかぁ!?』
ディールΦ:
『ベリオさん、すごい……!
1ヶ月で仕上げたとは考えられない機体操作です!
慣性移動もスムーズで……!!』
カリオストロα:『援護するよ!!!!』
ディールΦ:『は、はい!!』
<ネペンテスの背後の長いバックパックがばかん、と口を開けるように開くと、うねうねと触手のような砲塔が現れ>
カリオストロα:<コックピット内>
ロックオン。……対高機動射撃兵装、「PETUNIA」――照射開始。
<うじゃあ、と現れた触手のような先端が開いてビームが一斉に照射される。
それらを間一髪で間を縫うように回避していくスペリオル。
ディール、ワカミネ、フラワも射撃支援を行うがすべてスペリオルをとらえることが出来ない>
ディールΦ:『ッ!?全弾不発ッ!!なんて起動操作だ……!』
カリオストロα:『…………成程。どう思うね、皆』
ワカミネγ:『逃げているのではない……“時間稼ぎをされている”』
ベリオΣ:『おい!!!オレの腕ぶっ飛ばした分くらいは殴らせろ!!!』
ディールΦ:
『――なッ!?後方の未登録 超級戦艦に熱源反応あり!!!
………これは――――――』
ディールΦ:
『……巨大な荷電粒子キャノン――――!!!!』
―――
――
―
<場面転換。NOAHZ戦艦ヴェイルサイド内>
ネリルΨ:――……誘導マーカーとの交信完了。誤差、プラスマイナス1メートル内。
ラプラスΩ:……賭けではあったが。
ネリルΨ:ヤクトも損傷は軽微。作戦の続行は可能かと。
ヒメβ:<通信モニター>
『あの片腕のガキがチョロチョロうッッぜえんだよ!!!
ヒメもうブッチ切れるまであと2秒~~☆』
ラプラスΩ:
急くな。
……圧縮荷電粒子プラズマビームキャノン「VAILSIDE DRIVE」発射用意。
ネリルΨ:……よろしいのですね。
ラプラスΩ:――無論だ。
―――
――
―
<場面転換。スペリオルと四機のAFSランドスタッドとランドアームズの対峙する宇宙空間>
ディールΦ:
『――敵戦艦の搭載キャノンのサイズから爆撃範囲を予測!
……被害区域……――IOPLANET全域!?!?
住民の生存確率は……ッ、0.9パーセント……!!』
ワカミネγ:
『絶対に撃たせるな!!!!
目標を変更、スペリオルではなく正面戦艦にありったけの火力で弾薬をぶち込め!!
……ッ、セイヴァージークの再起動はまだか!!!』
フラワΨ:
『通信応答なし……ッ、仮にセイヴァージークが起動していても、あのサイズのレーザーキャノンは止められない……!!』
ベリオΣ:
『――んならオレに考えがある。……やっぱり、全機俺を援護しろ』
<そう言うとゴゥン、と音を響かせてスラスターを吹かしてスペリオルに急接近するベリオ>
ヒメβ:<コックピット内>
ッ!!急に近寄ってくるなハエがッ!!
ベリオΣ:<コックピット内>
んはははは!!!!
完全に使い方違うけど思いついたからやっちゃうもんね~~~~ッ!!!!
<残ったドミナントJBの右腕。
その手首の付近には無重力下でランドスタッドを降りてのミッションの場合、宇宙空間に機体が流されてしまう事を防ぐため簡易的なアンカーが装備されている。
そのアンカーを起動するベリオ。ガギュンと鉄に何か硬いものが食い込む音>
ヒメβ:<コックピット内>
ハァッ!?!?なに、スペースアンカー……ぐぁぁッ!?
<機体ごと引っ張られる>
ベリオΣ:『オラオラオラオラオラフルパワー握手じゃい!!!!』
<ドミナントJB右手のスペースアンカーの鋭く太い爪がスペリオルの右手首に深く食い込んでいる>
ディールΦ:『……何だ、あれは……』
カリオストロα:『何て強引で、男らしい……!』
ワカミネγ:『軍であんなことをやったら軍法会議ものだがな』
フラワΨ:
『だめベリオ……ッ!!もうあのキャノンはいつ発射されてもおかしくないのよ!!』
ベリオΣ:『うおおおおっ――らあああああああああああああ!!!!』
<多数のランドアームズを振り切り。右腕に固定したスペリオルを盾にしながらヴェイルサイドに肉薄。VAILSIDE DRIVEの砲口に小さく光球が生まれ、明らかに発射シークエンスが開始されたのを知らせる光景。見る見る内に砲口に生まれた光球が大きくなっていく様子を気にもせず、ベリオの機体とそれに腕を掴まれたヒメの機体は一直線に砲口の上部に向かっていく>
ベリオΣ:
止めらんねぇのは分かってる……ッ!でもよォ……オレがどこで働いてたか知ってっかァ!?
弾ァ撃つには“狙い”が要る……ッ!こんなデケえテッポーならなおさらだ!!!
さっきテメェらがウチの船に打ち込んだEMP――その瞬間オレは熱感知モニタで見てたんだよォ!
ディールNΦ:
あの短い一瞬で、モニターを切り替えて熱反応データによる状況判断……!?
ベリオΣ:
スナイパーライフルからEMPが射出された瞬間……ッ!
戦艦にも熱反応がわずかにあったッッ!!
無重力の空間で標的を定め、射撃をするつったら……“外しちゃいけねえ一撃”の筈ッ!
スナイパーの照準システムに加えて観測手が要る筈だが……この場所じゃ開けすぎている……つまり!あの戦艦が観測補助を担ってるんだよなァァァ~~~!?!?
熱反応のあった部分はスナイパーライフルの照準センサーの位置!!
つまり――砲口の照準管制はその部分が一任してるよなァ~~!?!?
まさか銃をぶっ放す前に目ェ潰されたらよォ~~~!?!?!?
明後日の方向に弾ァ飛んでくなんざガキでも分かるぜぇぇぇぇ~~~ッ!!!
それは、そのデケえ砲口の真下ッッ!!!
ここだろォォォ~~~ッッ!?!?!?!?
ヒメβ:<コックピット>
嘘ッ!?!?ちょっ……ざけんなぁぁぁぁこのガキィッ!!!!!!
ベリオΣ:
『イーストダーウィン流ゥウ…………人間ハンマァァァァァ―――――ッッッ!!!!』
ディールΦ:『ほっ……砲塔を……』
カリオストロα:『スペリオルで……!』
ワカミネγ:『ぶん殴っ――』
フラワΨ:『たぁぁあ~~~~~~~~~~~~!?!?!?』
<鼓膜に訪れる不快な高周波の直後に訪れる全身を砕くほどの轟音。
VAILSIDE DRIVEが発射されたのだ。
然しずれた砲塔は狙いが僅かに逸れ、IOPLANETに到達する頃には直撃を回避する形となっていた>
ベリオΣ:<コックピット>
オラァ見たか!!!!誰が乗ってるかは知らんが……。
どーせ、ラプラス!!お前が噛んでんだろ!!救ってやったぜアホタレが!!!!
ヒメβ:<コックピット>
はれほれひれはれ……<目を回しているヒメ>
ラプラスΩ:『――…………見事だ』
ベリオΣ:
やっぱりな。回線を開けたら返事すると思ったぜ。
どうだ!!宇宙まで追っかけてくるとは思わなかったろうが!!!!
ラプラスΩ:
『ああ。予想外だったよ。“短期間で追いかけてくる”という点については』
ベリオΣ:
……ッッ妙な言い回しすんじゃねえ!!
お前の負けだ、テンペスト・ラプラス!!!!
ラプラスΩ:
『私が砲塔がずれた程度でとん挫する作戦を取るとでも思っているのか?
――……だとしたら、私の見込み違いだったな。ベリオ君』
ディールΦ:『ベリオさん――!!!!!!』
<悲痛な叫びがインカムから飛び込んでくる>
ベリオΣ:
あんだよ、嬉し泣きにはまだ早……何……だ……これは…………ッ。
<ぞわぞわぞわぞわ、と宇宙空間を埋め尽くす蟻のような黒い影。
それはIOPLANET周囲のNOAHZの飛ばした人工衛星。
それらが外れたビームの行き先に、壁の様に現れている>
ワカミネγ:
『――計算は後にしろ!一つでも撃ち落とせ!!絶望する暇など無いぞ!!!!』
ワカミネNγ:然し……この圧倒的な数は……ッ!!
<ガチン、ガチンとフラワのCTの備えるスカウトライフルが弾切れを知らせる音を響かせる>
フラワΨ:『ッッ撃ち落としきれない……!!!!これじゃ……』
ワカミネγ:『何が押し寄せてきている……ッ!?』
ディールΦ:<コックピット>
衛星…………だ……。
ディールΦ:
『膨大な数の衛星が……反射板を装備して巨大な鏡になっているんだ……!
NOAHZが飛ばしていた膨大な数の、IOPLANET周辺の軌道人工衛星を操って……ッ!!
これじゃあッ、どこにビームが飛んで行こうとも――IOPLANETに直撃する……!!!!』
カリオストロα:
『……まさかそもそも詰んだ盤面で戦わされていたとはね。
その頭脳を虐殺に使うか、暗君……!!』
ベリオΣ:
『テンペスト・ラプラス――――ッッ!!!! 降りて来い!!!!
降りて戦え卑怯もんがぁあ!!!!!』
ラプラスΩ:
『私の戦争は既に始まっている。戦いに乗り遅れているのはベリオ君、君の方なのだよ。
君が、上がって来い――――』
<インカムから無慈悲な声が響いた瞬間、ズゥゥゥゥゥン――と不快な大震動が機体を襲う。
やけにスローモーションに感じるその振動を振り払うように、振り返るベリオ>
フラワΨ:『――……ッ!!!!』
ベリオΣ:<コックピット>
そん……な…………。
<真っ二つに破壊されたIOPLANET。それを呆然と眺めるベリオ。
右腕をパージしてドミナントJBから距離を取り、回線を繋げたヒメが煽るように叫ぶ>
ヒメβ:
『――あはっっ――あっはははははははははァ!!!
お前らみてェなハエが考えなしに突っ込んできたって関係無ェんだよ!!!
大佐に追いつけるとでも思ったかァ!!!!』
ベリオΣ:『…………――――』
ディールΦ:『IOPLANET爆散の衝撃波到達まで7分!!!』
フラワΨ:
『……ッ!!
――セイヴァージークとの通信リンク確立!!全機セイヴァージークへ帰投!!!!』
―――
――
―
ベリオΣ:お前ら――――。
ドミナントJBΣ□:――――――。
『T-T-TRYOUT COMMAND ONLINE』
ベリオΣ:――……いや。喋んのは後だ。
ワカミネγ:
『ベリオ帰投しろ!!これはミッションだ!!!!』
<遠のいていく声。ベリオには届かない>
ドミナントJBΣ□:『TOOFAST JAILBREAK』
ベリオΣ:覚悟しろ。
ドミナントJBΣ□:『――COUNTING』
―――
――
―
ディールΦ:
『ドミナント・ジェイルブレイクとのリンクが一方的に遮断されました!!!!
――いや、まさかあの速度……。うわぁっ!!』
<ディールのドミナント・ディテクターをワカミネのランドアームズ
「サイドホーン」がフックを引っかけてセイヴァージークへ引っ張る>
ディールΦ:
『ワカミネさん……!
離してください!!ベリオさんが!!!!』
ワカミネγ:
『馬鹿者ッ!貴様も命を捨てたいのか!!
怒りに任せて命を軽視するのは二流の兵士だ!!』
フラワΨ:<震えを抑える声>
『……ワカミネの言う通りよ、ディール。
いま私たちがやらなければいけない事は、生きる事。
……ベリオの回収はセイヴァージークのランドスタッド捕獲クローで動きを止めて強制的に離脱するわ……落ち着いて帰投しなさい』
ワカミネNγ:
声が震えている。……無理もない。
この若さにはあまりに不釣り合いな地獄……ッ。
カリオストロα:
『見たまえ…………あれこそが覇の道を行く姿ッ……!!!
ベリオ……、どうして君はこんなにも僕の胸を焦がすんだい……?
折れた腕をも構わず敵機の前に立ち塞がる君の背中が……!君の機体の軋む音色が……!!
僕をどうしようもなく愚かにさせる………ッ!!』
フラワΨ:
『カリオストロ!!!!武装をオフラインにしなさい、味方をロックオンしているわ!!!!』
カリオストロα:
『チッ、水を差す……!!!すまない。帰投する』
―――
――
―
<場面転換。ベリオに襲い掛かるヒメ>
ヒメβ:
『――たかだか寄せ集めのゲリラがァァ!!!
ヒメの機体にキズつけやがって!!!ラクに死ねると思うなァァァ!!!!』
ベリオΣ:
『……テメーこそ死ねると思ってんのか?
コックピット引っこ抜いて機体粉々にして洗いざらいラプラスの作戦を吐かせてやるよ――このッ』
<二人の機体は弧を描いて時折ぶつかり合う。
互いのビームサーベルが衝突する度網膜に焼き付くようなプラズマが散る>
ヒメβ:『ほざくなハエぇぇぇぇぇぇ!!!!』
ベリオΣ:『――このッッ……人殺しがァァァァアアアアア!!!!』
<ビームサーベルを放り出したかと思うと、裏拳を繰り出すドミナントJB>
ヒメNβ:速――いや、何だこれ……!?!?
ヒメβ:<コックピット>
うぐっぁぁあア……!!!!
<高速で繰り出される裏拳を回避できずに、思わずうずくまったような態勢で隙を見せるスペリオル>
ベリオΣ:
『……今からお前の機体の四肢を全部引っこ抜く。
コックピット事お前を潰すかもしんねえけど――ハエに潰されるようなタマじゃねえもんな?』
ヒメβ:<コックピット>
なぁ………ッッ!!!!!
<グギギギギとヒメの耳に響く恐ろしい悲鳴のような金属のねじり切れる音>
―――
――
―
<場面転換。戦艦「セイヴァージーク」>
ディールΦ:
――ランドスタッド捕獲クローの充電を急いでください!
電圧が強すぎると回路が焼き切れる為、精密電圧調整の際は必ず僕を呼んでください!
フラワΨ:ディール!!!!
ディールΦ:……フラワさん。
フラワΨ:
どうなっているの。スペリオルのスペックを異常に越えた、ドミナント・ジェイルブレイクのあの加速は……ッ。
……何故隠していたの!
ディールΦ:
……すみません。でも隠していたわけでは――ッグ!
<殴られるディール>
フラワΨ:
ふざけないでッッッ!!
機体情報の完全な開示と点検は絶対の義務よ!!結局突っ走るベリオを予測できなかった!!
――これでアイツが死ぬようなことが有れば……。分かってるわね。
ディールΦ:
…………。あぁ、大丈夫。電圧調整班に合流するよ。
フラワΨ:<ディールの背中を見つめる>
…………。もうッ。
―――
――
―
<場面転換。戦艦ヴェイルサイド、メインブリッジ>
ネリルΨ:大佐。作戦外での戦闘です。ヤクト軍曹の援護と保護を。
ラプラスΩ:本来であれば、そうすべきだ。……だが何かおかしい。
ネリルΨ:恐れながら……、猶予の残された戦闘ではない様に見られます。
ラプラスΩ:
勿論だとも。
“ヤクト軍曹の命という観点では”、猶予は残されていないだろう。
……だが、あの機体。スペリオルの設計図をベースに作られたはずだ。
多少の外見の差異も説明がつかないわけではない。
……引っかかるのは、速度だ。
剣を振るう速度。スラスターの角度修正時の速度。反応速度。
あれは生身の人間の限界を超えている、様に見える。
あの速度を維持するには、莫大な出力維持のために体躯は大きくあるはずだが……スペリオルとサイズは変わらない。
――であるのなら、スペリオルのスペックを優に超えているあの動きは何なのだ……?
訓練された兵士の様に理に適った動きをするでもない……。
にもかかわらず、戦闘においてヤクト軍曹の歯の立たぬほどの優位を担保するあの速度は、何なのだ?
……未知とは脅威。
羅針盤たる我らには、未知があってはならないのだ。
故に。例え現時点で未知であっても、限界までデータを取らねばならない。
“見”に回る……。古い兵法にも現場のデータの重要性は説かれている。
優先するものを見誤ると討たれるぞ、ネリル。
ネリルΨ:…………浅学でございました。
ラプラスΩ:
責めているわけではない。
私も、ヤクト軍曹を見捨てるつもりは毛頭ないよ。
……40秒後にスペリオル・CSの出撃。ヤクト軍曹の生還を主とし、援護せよ。
CSパイロットα:はっ!
ラプラスNΩ:
私の勘だが。……あの機体は速いのではない。
例えば、殴られた時のスペリオルの腕の傷つき方。
……何かに“挟まれて”いる…………?
<場面転換。ベリオVSヒメ>
ベリオΣ:
『ああ?もう終わりか?ジタバタジタバタしやがって』
ヒメNβ:
何なんだ――何なんだこいつ!!!
ビームサーベルも反応して避けられる……っ、攻撃は全て受け流すこともできないッ!!
モニターで見えている映像と機体が殴られた衝撃が遅れている気すらするほど速い……ッ!!
ベリオΣ:
『ラスト足一本。死なねえようにバカみてえに縮こまって怯えてろ。カカシがッ』
<コックピットのある位置を手で掴んで、スペリオルの足を引き千切ろうとするドミナントJB。
すると、ドミナントJBの顔の横をビームが掠める>
ベリオΣ:『ッ――あぁ?先に死にてえのか?』
<スペリオルから手を放すベリオ>
CSパイロットα:
『ヤクト軍曹、サポートに参りました!早く離脱を!!』
ヒメβ:『か……。必、ず……次は。殺……す…………』
<そう言いながら手元のレバーを引くヒメ。
すると、コックピットが脱出ポッドとして機体から射出される。
簡易的なスラスターが吹かされてスペリオルCSまで向かっていき――>
ベリオΣ:逃がすワケねーだろうが。……面倒臭え、死ね。
<そう言うとゆっくりとビームライフルを片手で構え、引き金を引こうとしたその瞬間>
ドミナントJBΣ□:<OVER>
<がくん、と動力が切れて動かなくなるドミナントJB。そして次の瞬間、巨大なマジックアームがドミナントJBを鷲掴みにする。
そしてベリオの機体のインカムが復活したのかフラワの声が飛び込んでくる>
フラワΨ:
『――――……ベリオ!!ベリオ!!!!
生きてるのよね!?話はあとで聞く!!
今は、抵抗しないで。貴方を回収してこの宙域から離脱するわ!!』
ベリオNΣ:――声が……出ねえ……。
ベリオΣ:<コックピット>
う……――。
フラワΨ:
『絶対に死なないで、必ず貴方を回収してみせる!!
死なせないんだからッ!!!!』
<フラワからインカムを取り上げ、回線にカリオストロが割り込んでくる>
カリオストロα:
『ベリオ!!!!死なないでくれ、いやだ!!!!僕も君の傍に行く――ッ!!!!』
ディールΦ:
『カリオストロさん落ち着いてください!!間もなく数千万人クラスの居住コロニーの爆破による震動が来ます!何かにつかまって揺れに備えてください!!
これ以上は――――――』
<ブツン、と通信が途切れる>
ベリオΣ:<意識が途絶える>
…………くそ…………――。
第一部【EPISODE1~7】ends
- To be continued -




