第一部 後編(5人声劇用)
●配役表(5人)【♂2・♀2・不1】
※※※記号で検索かけてください※※※
Σ▶︎ベリオ♂:
Ω▶︎ラプラス♂:
Ψ▶︎フラワ♀:
β▶︎ネリル♀:(※フラワと兼ね可)
Φ▶︎ディール♂♀:
●キャラクター (詳しい内容は設定資料へ)
・ベリオ……主人公。孤児出身。素行は悪い不良気質(喧嘩は弱い)だが、人の痛みが分かる憎めない性格。親友のディールや幼馴染のフラワ、兄貴分のラプラスとは仲が良い。ディールのお母さんの病気を治すために行動していたが――。
・ディール……ベリオの親友。まっすぐな性格の好青年で曲がったことが嫌い。頭が良く完全記憶能力がある。そして、超人並みに卓越した「聴力と視力」を持っている。軍隊近接格闘術も身に着けており、喧嘩が強い。
・フラワ……ベリオとディールの幼馴染。父親が研究所の所長で、本人も頭が良くラボで研究を手伝っている。サバサバした性格で、つっけんどんな態度をとる。怒ると怖い。父親からは人体実験を施されており、胸の中央にマシンとの接続口がある。
・ラプラス……ベリオに生き方を教えた兄貴分。「テンにい」と呼ばれ、ベリオからは絶対の信頼を置かれ慕われていたはずだったが――。平静で、淡々とした性格。孤児出身だが、今は区長の秘書を務めており、宇宙政府(NOAH)の直属部隊を指揮している謎の人物。
・ネリル……宇宙政府(NOAH)の直属部隊NOAHZ所属のパイロットで、ラプラスの補佐官。非常に理知的な性格で感情を乱すことはほぼ無い。同じ部隊メンバーのヒメとは犬猿の仲。
×フィオナ……死去。ディールの母親。「コールドローズ症」という重い病を患っていた。賢く聡明で、幼孤児だったベリオを拾い、ディールと共に育て上げた心優しい人柄。病気の事はディールには隠しているが、ベリオにはバレてしまい以降、見舞いと称して鎮痛薬を受け取っていた。
【EPISODE5 MYWORLD】
ディールNΦ:
――……朝の04:00(フォーゼロゼロ)に、フラワさんから連絡を受けた。
フラワさんが死亡時の立会いデータを提出してくれたおかげで、事件性の有無の調べ、葬式への調書は存外淡々と行われた。
……死因は、老衰だったらしい。
回復のような兆しを見せて、急激に容態が悪化するのは、ない話ではないとフラワさんが肩を落としていた。
ベリオさんは泣き疲れて眠ってしまっているようだ。
ベリオさんの上司からの鬼のような電話には、フラワさんが一喝して休みをもぎ取ったらしい。
思えば、僕の周りの女性は強い人が多いものだ。
……そんな冷静な自分に少し驚く。いや、冷静ではないんだろう。
心にぽっかりと穴が空いて、連絡がきた直後から2時間ほど涙を流した。
しかし、もう流す涙もない……というのが正しいのだろうか。
流す涙もないほど泣くと、……語弊を恐れず言うと、気分はとても晴れやかだった。
母さんは、熱く、太く生きた。僕が幼い頃から、いや、きっと……。
宇宙で人々と共に生きるとNOAHでの生活を断った時から。
母さんの熱は、胸を焦がすほどのものだったのだろう――。
ディールΦ:
……ダメだな。出し切ったはずと思ったのに。
…………涙というのは、全く。――――……母さん。
―――
――
―
<葬式が行われているムロウル家。葬式の手順は慎ましく行われ、棺への別れの挨拶が終わる。
場面が変わり、ムロウル家の横の土手のような場所で一人座って空を見て居るベリオ。その彼の背後から声をかける黒いスーツを着用しているフラワ>
フラワΨ:……スーツ、持ってたのね。
ベリオΣ:
冗談を聞く気分じゃねえんだ。
……上司に泣きついて貸してもらったヤツだよ。
フラワΨ:私たちにはやることがまだ残ってる。
ベリオΣ:……逆だ。何も残ってねえ。
フラワΨ:
ふざけないでッ。
承認された書類のバックアップデータが消えてるの。
OBLOMについての資料がごっそりとラボから消えて、セントラルのデータベースにも残っていない。
……フィオナさんが亡くなってからの出来事よ。
“OBLOMが人体に効く”というデータが忽然と姿を消し、OBLOM承認の話もいつの間にか立ち消えてる。
……そのままパパの権限でラボの議事録を覗いたら、不自然な点が見つかったのよ。
ベリオΣ:
…………だったら何だよ。
フィオナさんがいない今、OBLOMの何を調べんだよ。
それをやれば、フィオナさんは生き返んのか?
フラワΨ:
ッこの……ッッ!!!<ベリオの胸倉を引っ張る>
失ったのは自分だけだと思ってんのか…………喪失感や無念を味わったのは、アンタだけだとでも思ってんのッッ!?!?
そうやって自慰行為に耽ってれば、誰かがアンタの“次のおば様”になってくれるなんて思ってないでしょうね――ッ!!!!
ベリオΣ:……ひょっとして、発破かけようとしてんのか?離せよ。
フラワΨ:っ………………呆れた。あたしに言い返す事すらできないのね。
ベリオΣ:
お前に何か言い返して、フィオナさんは生き返んのかよ。
……意味ねぇ事、したくねえんだよ。
フラワΨ:
…………もうアンタには会わない。
そうやって一人で甘え続けて……衰弱死すればいいんだわッ。
<そう言ってベリオの胸ぐらを乱暴に離して。
尻もちをついても上を見上げようとしないベリオ。
尻もちをついたベリオにフラワは書類を投げつける>
<その書類を拾い上げて読み始めるベリオ>
ベリオΣ:
…………「OBLOM鉱石の人体適用についての危険性レポートに対する追及却下承認」……?
……「OBLOM研究の予算打ち切り決定案」……「OBLOM保存データ破棄承認」……――。
フラワNΨ:
『……ラボの議事録を覗いたら、不自然な点が――――』
ベリオΣ:
………………「決定責任者」。
「テ ン ペ ス ト ・ ラ プ ラ ス」――――――――ッッ!!!!!!!!
―――
――
―
<1年後。階級が上がって更に多忙になったディール。
対してセントラルの軍事基地局の副所長として働いているフラワが久しぶりにカフェSeaCleにて紅茶を嗜んでいる>
フラワΨ:――……お互い、順調なもんね。
ディールΦ:久しぶりにスケジュールが合いましたね、フラワさん。
フラワΨ:……1年経っても、未だに慣れないわ、この静かさ。
ディールΦ:
ひと目で理由は分かるんですが。……言葉にすると、一際重たいですね。
フラワΨ:…………ベリオがいなくなって、1年。ね。
ディールΦ:
そして、IOPLANETのNOAHZの統括すら任されているラプラスさんが、謎の失踪……。
フラワΨ:……偶然かしらね。
ディールΦ:
明確な関わりは見えません。
……しかし、セントラルエジソンの雰囲気も何かおかしいというか。
物資の出入りのバランスが崩れているんです。
輸出の量が異常に多くなっていて……。何に備えているのかも不明瞭なんです。
フラワΨ:…………ん。 ここのコーヒー、少し苦くなったわね。
―――
――
―
<場面は変わり、セントラルエジソンの軍事基地局の封鎖となっているデータバンク。暗く、時折ランプの明滅するサーバーが列となって並ぶその奥に向かって歩くベリオ。奥に到達するとキュイン――、と音がして扉が開く>
ベリオΣ:…………クソッ。ここも外れか。
<小さく呟くベリオ>
ラプラスΩ:――――いや。当たりだよ、ベリオ君。
<ガシュン、と音を立てて再び扉が開く。背後からかかる声に振り向くベリオ>
ベリオΣ:ッッ――テンペスト……ラプラス―――ッ!!!!
ラプラスΩ:
……ここに最後の、OBLOMの研究データが有る。
そしてここはオンラインではなく、オフラインでデータを管理しているうえ封鎖もされている。
データの完全な破壊には、直接足を運ばざるを得ない環境である……よく突き止めたね。
ベリオΣ:なんで…………。
ラプラスΩ:ふむ。何かな。
ベリオΣ:なんで!!!!――オレを騙した!!!!
ラプラスΩ:
騙してなどいない。
実際、OBLOMについての研究は進んでいたし、承認も行われていたろう?
ベリオΣ:っぐ……!!
ラプラスΩ:
“不運にも”、OBLOMについての研究は資金面や技術研究における人員の確保が難しく、凍結という結果になってしまったがね。
ベリオΣ:
フィオナさんが亡くなったその数日後にプロジェクトもすべて凍結、残ったデータもすべて削除されているのも……偶然だとでも言うのかよ!!!!
ラプラスΩ:
…………恣意的な意見だね。
IOPLANETにおける死人は、毎月3000人ほどだ。
誰かが亡くなった直後に廃案とその記録が削除されるという可能性は、むしろ常に存在するものだ。
……身内の死後にOBLOMのデータが削除されるという事例は低確率であるとはいえ。
“偶然では無い”と断ずるには、少々根拠に欠けるのでは?
ベリオΣ:
詭弁だ!!!オレとNOAHZまで出頭しろ――ッ!!
法の場でオレと戦えッ!!!!
ラプラスΩ:
……私には……というより、この大地はもはや時間がない。
そのような無駄な時間は、私は持ち合わせていなくてね。
それに。提出された書類によると、君の保護者にあたる……“ムロウル・フィオナ”なる方は。
コールドローズ症により眠るように亡くなったというデータが出ているが?
ベリオΣ:………………何が言いてぇ。
ラプラスΩ:“『楽になれた』のでは?”と言っている――。
ベリオΣ:き――――ッさ、まぁぁァァァァアアアアアアアア!!!
<扉が開いて拳銃を構えた女性が飛び込んでくる>
ネリルβ:(被せて)大佐!!!!
ラプラスΩ:慌てるな。武器を使うまでもない。
ベリオΣ:ぐうゥウッ!?!?
<直線で突進をすると背中を掴まれ、床に押しつぶされるように叩き伏せられるベリオ>
ラプラスΩ:
――――ベリオ君。暴力で思いを伝えたければ弱くてはいけない。
<Σ抑え込まれたまま、獣のように床でもがき足掻くベリオ。
Ω首を絞めつけて馬乗りになるラプラス>
私に立ち向かうのならば特に。
私の居る世界では君のような拳は認識すらされない。
分かるかね、ベリオ君。拳で思いなど伝わらないのだよ。
拳が可能に出来るのは、自分の“エゴ”を押し付ける事だ。
拳で思いが伝わるなら、何故我らはスペリオルに乗るのか?
フンッ!!
<ΣΩここから先、セリフ中に何発も何発も、顔面に拳を叩き込むラプラス、吐血するベリオの声>
ラプラスΩ:
……ベリオ君。私はね。元来暴力が嫌いなんだよ。
殴り合いでは特にね。理由は相手を殴り倒しても、手に不快な感触が残るからだ。
分かるかね?このように君の顔面を殴り倒しッ、優位にいるはずの私の手に飛び散る血……手に残る肉を打つ感覚。
劣る存在がッ!優位に立つ人間にッ!!淘汰されている時にすら不快な感覚を押し付けてくる!!!!!
……なんという傲慢!!!なんという不遜!!! そうは思わんかね、ベリオ君ッッ!!!!!
無能な人間ほど威嚇を用いてッ!!!非力な人間ほど暴力に訴えるッ!!
それらは群れ、互いの傷を舐め合い……。
限られた資源が加工され、それを口に含んだ親鳥が口移ししに来るのを無気力に口を開けて待ち続けているッ!!!!
“優れる”という事と自分以下の人間を携える事を同義と捉える愚かな人類共がッ!!!!
足を引っ張り合う事と共存を同義と捉える愚かな人類共がッッ!!!!
媚びを売る事と生存を同義と捉える愚かな人類共があぁッッッ!!!
――拳を振るうとはこういう事だ!!!
生半可な手段で想いを察してほしいなどという児戯が……ッ!
私に通用すると思うなッッッ!!
圧倒的な武力を、垂れ流さぬよう!!!
最小限の痛みで済むように導入する!!!
力を持つものが最後に求められるのが“加減”である事に……ッ!貴様ら弱者の様に我らは不満を垂れないッッ!!!
歩みを止めず視線を上に向け続ける我らこそがッ!!!!
正義であり!!!真実であり!!!!
人類の暗い闇の旅路を導くッッ!!!!!!
唯一の羅針盤の針とッッ――――なるのだあああああああああッッッ!!!!
<そう叫び、血まみれのベリオを殴り飛ばし、横に転ばせる>
ネリルβ:――大佐。頃合いかと。
<ハッとした様子で拳を止め、ゆっくりと立ち上がると襟を正し、ハンカチで手をふく>
ラプラスΩ:
ふーーーーーッ。ふーーーーーー…………ッ。失礼、取り乱したね。
……しかし、私が立ち向かうべきもの。背負うもの。見据える先。
全てが、キミの想像できるような範囲にはとうに無いものなのだよ。
ネリルβ:……大佐。午後には会談のご予定が。スーツを替えられるとよろしいかと。
ラプラスΩ:では、手早く済ませる。……華美なものでは心象が悪い。暗い色の物を頼む。
ネリルβ:承知しました。……では、“手筈”の通りに。
ラプラスΩ:ああ、頼む。
ベリオΣ:に…………――。
ラプラスΩ:……敵を前にして、気絶を精神のみで拒むか。……漢、だな。
ベリオΣ:……げんな…………ひきょ……う……もんが………………。
<顔を近づけてベリオの耳元で囁くラプラス>
ラプラスΩ:
――……人類の向かう先。そして、最適解。
白いままの地図に対して、ペンを握る人間。
“冷たいバラ”の真意。……君の名字がない理由。
NOAHはすべての答えを持ち、君を待つ。
……君を連れていく事は出来ない。……ただ、NOAHを目指せ。
そして、これだけは覚えておきたまえ。
このIOPLANETに残された余生は、長くはない。離脱を考える事だ――。
――ネリル!
ネリルβ:『了解、大佐』
<ごごごごごぉん、という地響きと轟音。次の瞬間、天井が崩れて巨大な手がぬうっと現れる。
胸元にNAZ-24と刻印されたランドスタッドが立っていた。
胸元のコックピッチハッチが開き、ロープが下りてくる>
ラプラスΩ:サーバー群は破壊したか。
ネリルβ:
『物理的に潰して破壊した後に微量の電磁発生ビーズを散布しました。
電磁情報の保存も、物理的な情報も閲覧できる状態では到底無いかと』
ラプラスΩ:そうか。では……――出せ。
ネリルβ:『了解。離脱します――』
<そう告げてラプラスがコックピットに入ると同時にスラスターを吹かして離脱するスペリオル>
ベリオΣ:わ……り……、ディール……フラ……ワ…………――――。
―――
――
―
<場面が変わって、とある病院の病室>
ベリオΣ:
――ん……。<ゆっくりと目を開けるベリオ>
ここは……っぐ!!
ディールΦ:――肋骨粉砕骨折。
ベリオΣ:…………あ?
ディールΦ:両靭帯剥離骨折に、左腕粉砕骨折。
ベリオΣ:………………ディール。
ディールΦ:
顔面内出血多数、金属の粉塵の多量吸引による気道の炎症。
…………よくもまぁ、こんな大怪我で生きてましたね。普通は死んでるんですが。
ベリオΣ:……運が良かっただけだ。
ディールΦ:…………ベリオさんの居なかった間の話をしても、良いですか。
ベリオΣ:……。
ディールΦ:
ベリオさんの居ない一年間で、ムロウル家の軍事基地局雇用は停止。
イーストダーウィンの市民の生活水準は大きく下がりました。…………たった1年。
たった1年でイーストダーウィンの工場に捨てられる児童は飛躍的に増加しました。
ベリオさんの建てた孤児院が無ければどうなっていたか。
……僕は、根本の問題を解決する事が何よりも重要だという考えは……今でも変わっていません。
ただ、現状に対応する事も同じくらい必要な事なのだと、痛感しました。
……今の僕は、屍の上に立つ覚悟が出来ていないだけなのかも……知れません。
でも。屍ではなく、人の上に立つには。
いや……人と共に生きるという事は。
未来のみを見つめる事ではないのだと……強く……強く、認識した1年でした。
そして、同じくらい…………あの日、ベリオさんについていかなかった事を、この1年間、毎日後悔していました。
……殴られても、文句言えませんね。
ベリオΣ:……オレが安静必須のケガ人だって分かってて言ってんだろ。……殴らねえよ。
フラワΨ:おら。
<透明なビニール袋に入っているバナナをベリオに投げて渡すフラワ>
ベリオΣ:おっ……――痛ッッッて~~~~~え!!!!
<手の甲で器用に受け取りながら痛みでびりびりびりびりびり、と体を震わせ>
フラワΨ:どっから声出してんの。…………死んだかと思ってたんだから。
ベリオΣ:……死なねえよ。死なねえ理由が出来たからな。
フラワΨ:腕と足、変な方向に曲げて顔を二倍くらいに腫らしたアンタが搬送されてきたら、そりゃ死んだと思うでしょ。
ディールΦ:病室で連呼する単語としてはふさわしくないですね。
フラワΨ:……で。これからどうすんのよ。
ベリオΣ:――NOAHに行く。
ディールΦ:やはり聞きますが。……何故ですか。
ベリオΣ:
深くは言わねぇ。……っつうか、オレにも詳しいことは分かんねえが。
……テン兄に会った。
ディールΦ・フラワΨ:ッッ!!!!
ベリオΣ:
……何も変わってなかったよ。見慣れねえ女が横に居たけどな。
でも……でも、いや……また、届かなかった。歯も立たなかった……。
ディールΦ:歯も立たなかった……って。
ベリオΣ:
……テン兄にボコられた後、女がスペリオルでオレの居た場所をブチ抜いて……テン兄を連れてった。
……んで、言われたんだ。
<回想>
ラプラスNΩ:
このIOPLANETに残された余生は、長くはない。
ラプラスNΩ:
NOAHはすべての答えを持ち、君を待つ。
……君を連れていく事は出来ない。……ただ、NOAHを目指せ。
<回想>
ベリオΣ:
“NOAHに来い、全ての答えが君を待つ”……って。
“冷たいバラ”の真意に……白いままの地図?とかも言ってたな。
あと、“IOPLANETの余生は短い”……とも。
フラワΨ:
真意が不明瞭な表現ね……。
でも、冷たいバラ……。コールドローズ症の事でしょうね。
コールドローズ症についての情報を抹消した彼なら、何かを知っている可能性は高いわ。
……“白いままの地図”に、“余生”……?
ディールΦ:
……IOPLANETは巨大ではあります。
NOAHからも人員は比較的多く割かれ……長期維持を目的としたコロニーのはずですが。
ベリオΣ:
考え込んでもしょーがねぇ。……オレはNOAHに行く。
…………余生ってのは気になるが、まあ、しばらくIOPLANETから離れててくれ。
オレが今度こそテン兄ぶっ飛ばして、全部説明させる。
IOPLANETの謎を、すべて説明させて。IOPLANETの人々を救ってみせる。
ディールΦ:……ですって、フラワさん。
フラワΨ:バカが頭使うとロクなことになんないわね、ホント。
ベリオΣ:っっんだと!!もうお前らを巻き込めねえつってんだよ!
ディールΦ:
……NOAH本部によるIOPLANETについての情報の提出要請がここ一年で異常な数なんです。
それに加えて、IOPLANETの“余生”という単語……。
まるで死にゆく故郷から人々が逃げていくかのように……この言葉は比喩ではありません。
セントラルエジソンやイーストダーウィンの上級役員がここ2か月で転勤に異動……と、少しずつですがIOPLANETからの離脱が確認されます。
情緒のある街並みと人々との距離の近い市政で知られるウェストホーキングの代表ですら、ほぼ無連絡でIOLANETを後にしています。
フラワΨ:
加えて、指数関数的に増加しているコールドローズ症の患者。
全てが40代後半を中心にした人間……。もはや何かの関連が有ることは決定的。
……そこに、ラプラスの発言。
あんたがそこまで全身ボロボロにして嘘をつくわけでもないだろうし。
ディールΦ:
僕も、ベリオさんについて行きます!
もう……進むことを躊躇いたくない。
後悔をしたくないんじゃない。前進するという意思を――殺したくない……!
真実を暴いて。IOPLANETの上層部をイチから作り直すッ。
フラワΨ:
あたしもついてく。
NOAHにあるとされる18次元型 演算処理記憶装置「H.U.M.A.N」を奪取するの。
……失敗しない経済を計算する。
そして完全に人間をデータ化して、人体実験の必要のない世界を作る!
……勘違いしないで、ベリオ。
貴方に心を打たれたから、なんて1ベーゼにもならない曖昧な物じゃなく。
明確に目標を持って向かうの。……むしろ、アンタを引っ張って連れてくつもりだったのよ。
――さ、移動するわよ!見せたいものが有るの。
ベリオΣ:
んあ?いや無理だよ。一か月の要安静だぞ!
……いやちょっと!ベッド無理やり動かさないで!!
あっ点滴抜けた!!血出てる!!!
<看護婦がベッドの周りを取り囲む。暴れるので点滴が抜けたりしながらもベッドがガラガラと音を立ててランドスタッドドッグに運ばれていき――>
―――
――
―
ベリオΣ:これは…………。
<目の前に広がるのは、まるで巨人の人体模型。鉄鋼により組まれた骨格。
血管の様に張り巡らされた絶振動コーティングされたケーブル。NAZ-24と刻印のされた頭部をペイントで塗りなおしていく作業員たち。
ふと見上げると、軽く顎を引いたような体勢のその巨人と目が合う感覚に陥る>
ディールΦ:
僕の瞬間記憶で、設計図を記憶。メカニックと組み上げたんです。
コアの動力演算システムと物理計算システムのみ、“拝借”して作り上げました。
フラワΨ:
爽やかにあたしたちも行く!なんて言ったけど、要するに宇宙法の反逆項目のぜ~んぶの文字に違反する行為だもの。
この1年間、ぼーっとしてたわけじゃないのよ。
戦闘行動が起きてもいいように……最後まで、抵抗できるように。
ディールにスペリオルの設計図をそっくりそのまま覚えこませて、ランドスタッドを三機と、IOPLANETに起きている異変を私の知り合い、ディールの友人……主にランドスタッド工業や軍事基地局関係に共有したの。
それで、レジスタンス……って訳じゃないけどね。
NOAHに殴り込むための集団を作った訳。
ディールΦ:
「AIM.FOR.STARZ」(エイム・フォー・スターズ)。
ベリオさんの様に、僕たちも上を向いて走り続けられるように。
貴方の背中を見て、僕とフラワさんとベリオさんで作ったチームです――――。
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