サプライズパーティーでサプライズ!?
めでたく二組の男女が将来を誓いあった宿場町への旅は続き、町まで五キロ圏内へと入ったようだ。猫マップに固まった反応が増えてきた。
「すみません、予定通りこの辺りで馬車を降りて別行動をします。帰りはご心配には及びませんので、無事にアンナさまを送り届けてくださいね」
「本当に大丈夫なのかい、タケルの旦那?」
さすがにおっちゃんから、旦那さま呼びは嫌だったので、今まで通り旦那にしてもらった。
「大丈夫ですよ、おっちゃんこそハッスルするのは、新居に引っ越してからにしてくださいね」
女性二人が顔を赤らめているが、これぐらいの嫌味は許されるだろう!
猫マップでマーキングした馬車が十分に離れたことを確認して、ショットバー「キャッツ」の建物を倉庫から取り出し設置した。
建設可能軒数は猫カフェで三十匹召喚したときに、三軒上限が増えた。なので「キャッツ」はここへ設置したままとなる。
「さて、明日の早朝まで用事はないし、一旦猫カフェに戻るか」
街へ戻った俺は、一応ヘンリーさまへ冒険者たちをヘッドハンティング――自推だが――したことを伝えたが、最初からそのつもりだったようで反応は薄かった。
猫カフェに戻り、冒険者さん二人を警護として雇い、組んでいた女性と結婚して寮に住むことを伝える。
「という事で新しい従業員が増えるので、仲良くしてくださいね」
「旦那さま、仕事が終わってから、四人をお祝いするパーティーをしたいのですが、お店を使ってもよろしいでしょうか?」
「明日の夜だと俺が参加できないから、その日以外ならいいよ。そういった貸し切りパーティーの話とかも将来あるかもしれないし、ちょうどいいかもね」
ウェディングケーキぐらいは用意……あるのかな通販で?
そして迎えた次の日――
「おはようございます。今、宿場町を馬車が出ましたのでよろしくお願いします」
馬車の出発を確認した俺は、マイホームへ戻る。早起きした俺が遊んでくれると期待したのか、楓と紅葉がとっても元気だ。
だが、変に覚えると毎朝早朝に起こしに来そうなので、心を鬼にしてもう一度寝ることにする。
せめてもの抗議なのか、二人は布団の上から俺に被さって寝てしまった。可愛いし、幸せだけど、ちょっと重いぞ~。
通過予定時刻のアラームで目を覚まし、猫マップを確認するがちょうど通りすぎるところだった。
「危なかった、寝過ごすところだ」
リーナさんとのデートで着ただけのコートを羽織って準備万端、転移して猫カフェからヘンリーさまの自宅へ向かう。
「こんにちは」
「いらっしゃい、タケルさん。領主さまもソフィーさまもご到着されてますよ」
「タケルさん、今日は姉のために色々とありがとうございます」
アーサー君はとても礼儀正しいね。ヘンリーさまに似てイケメンだから将来有望だ。
領主様たちも早い、馬車がなかったけど歩いてきた……わけないか。
「タケル君、ごきげんよう! 馬車は猫カフェに戻っているの、アンナが気づくかも知れませんからね」
「にゃ~う」
なるほど、サプライズを理解してるねソフィーさま! ミカエルは知らない場所でもマイペースで、相変わらず大物だな。
「ただいま」
「おかえりなさい、あなた。皆さんお揃いですよ」
「わざわざ娘のために集まってもらい、感謝している。兄上も忙しい中、時間を作ってもらってすまない」
「そこは謝るのではなく、感謝してもらいたいな、ヘンリー」
みんなの笑い声がとても幸せそうだ。しかし、俺だけアンナさまと初対面だよね、場違いじゃね? 頃合いをみて抜け出そうかなぁ……ソフィーさまが居るから無理か!
料理の具合も見てみるが、なかなかの出来映えだね。煮物は昨日作って十分に味が染みているし、ご飯もちょうど炊きたてになる調整をしてある。
豆腐の味噌汁も温め直せば即完成だ。
ハンバーグもいい感じに形成出来てるし、ソースのおろしポン酢も準備万端。
見ているだけでお腹が減ってくるが、我慢、我慢。
そして夕刻の近くなり、馬車の反応がどんどん近くなる。
ご飯も炊きたて、ハンバーグも焼き始め、色々な美味しそうな匂いが食欲を刺激する。
テーブルには生クリームたっぷり、大粒いちごどっさりな、大きな誕生日ケーキ。プレートにはチョコペンでちゃんとメッセージを書いたよ。
参加者へクラッカーを配り、タイミングを計る。ちゃんと中身の出るクラッカーだぜ!
「三、二、一!」
「ただいま!」
「「「「「「おかえりアンナ! 誕生日おめでとう!」」」」」」
パン! パパパパーン!
クラッカーの洗礼を受ける少女はビックリして固まっている。
肩まである黒髪に茶色の瞳、どことなく日本人っぽいその顔立ちに、懐かしさを覚えてしまった。
「な、なに!? え、ク、クラッカー!?」
ん? クラッカー?
「アンナ、お帰りなさい!」
ソフィーさまがミカエルを抱えながらアンナさまを迎える。
「ソフィー! 目、見えるようになったの!」
「はい、ミカエルのおかげなの!」
「にゃ~う」
「ね、猫?」
「うん、猫! って知っているのアンナ? それよりも見て! 美味しそうでしょう、誕生日ケーキっていうの! タケル君が用意してくれたのよ」
「誕生日……ケーキ……ほんとに?」
アンナさまはゆっくりとケーキに近づいて行く。
「たっぷり生クリーム……いちごもいっぱい」
茶色の瞳には、どんどん涙が溢れてきて、ついにこぼれ落ちる。
「炊きたてのご飯の匂いがする! お味噌汁……肉じゃが……なんで、なんで!」
ついにアンナさまは大声で泣き出してしまった。アンナさまってひょっとして……!?
アンナさまが泣き止むまで、俺の抱いた疑問は解決することはなかった。
サプライズしたつもりが、サプライズされちゃったよ!
お読みいただき、ありがというございます。




