↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/50

ミカエルさんは大物!?

 あれから三週間、猫カフェのオープンを間近に控え、そろそろ俺も自由な時間が手に入りつつあった。

 従業員たちの引っ越し作業が行われている間に、エルナさんの二匹の猫を召喚し、今は幸せに暮らしている。

「主人と出会う前は絵描きになりたかったの」

なんてエルナさんが言っていたので、お絵描きセット各種プレゼントしておいた。


 楓と紅葉も毎回同じ猫たちの匂いに慣れたのか、それとも必死の説得と、ご機嫌とりが効いたのか、普段のように遊んでくれるようになった。


「じゃあ、今日はソフィーさまのところへ行ってくるからね」


 二人を存分にナデナデしてからお屋敷に向かう。


 今日の予定は領主さまのお屋敷、ディップ家でのディナーだ。猫カフェ調理担当のジョンさんへの研修は、どうしても俺がする必要があったのだが、

追加で調理担当が二人増えた。領主様いわく、


「絶対に一人では手が回らなくなる。今ならまだ間に合うだろう」


 と、研修初日の翌日に電話があり、四人が追加で合流することになった。


 何故か四人かって? 領主さまのお屋敷からシェフが派遣されてきたからさ。


 一緒に料理を教えて欲しいということで、派遣されたシェフの研修の成果を、今日のディナーで披露してくれるということ。


 本命の予定は夜なのだが、午前中からお屋敷を訪れた俺は、そのままソフィーさまに連れられ、馬車に乗り、ドナドナされて今は郊外にて絶賛ピクニック中である。


「やっと、タケル君と二人っきりになれました!」


 そう言って、俺のとなりに座る、ご機嫌ルンルンな美少女の膝の上には、一匹のシャム猫ミカエル。


「二人きりと言いましても、護衛の騎士とメリッサもいらっしゃいますよ?」


「大丈夫です、ここからでは聞こえませんから。なので、電話の時のようにお話ししてください」


「そうですね……。それよりもミカエルは大丈夫なんですか? 逃げたりしません?」


 そう、ここは屋敷の外、ミカエルの知らない場所なのだ。普通なら猫ちゃんパニックである。


「ええ、何度かお外で遊んでますが、大人しくわたくしの膝で寝ているか、近くで遊んでいるので、逃げ出したことはないですね。」


 ミカエルさん、肝が座っていますね。


「反対に一人でお留守番をさせると、ずっとわたくしを探して鳴きながらウロウロしているらしくて、可哀想なんです」


 ミカエルさん、寂しがり屋さんを超越した存在になりつつありますね。


「まあ、それならいいけど、気を付けてね」


「はい。でもわたくしもミカエルと同じで、タケルさまと電話できなかったり、会えない日々が続くと、寂しくて泣いてしまうかも知れません……ちゃんと分かってくれていますか?」


「もう少しすれば、猫カフェも落ち着くから、また電話できますよ」


「電話もいいのですけれど、やはりこうして二人でお話出来る時間が欲しいと思いません?」


「そうですね、でもソフィーさまも行儀作法やダンスの練習などで忙しくない?」


 俺が忙しいのはもちろんだが、ソフィーさまだって、ご令嬢教育が本格化して、とても忙しいのだ。


「そうなんです! 必要なことだとは分かっているのですけれど、毎日大変で……ミカエルが慰めれくれますけど、タケルさまに誉めて欲しいのです。お父さまはどうしても厳しい目でしか見てくれません」


 大変そうですよね、誰も誉めてくれないのは辛いですよね。認めてもらうことって大事ですよね。


 気づけば俺は、ソフィーさまの頭を猫のようにナデナデしていた。


「ふひゃぁ! タ、タケル君、にゃに! ふにゃぁ~」


「よく頑張ったね、偉いぞソフィーさま!」


 めっちゃ恥ずかしいが、俺だって手放しで誉めて欲しかったことは何度もあるし、気持ちはわかる。猫だと思って撫でれば、これぐらいどうってことないさ!


「うん……ありがとう……タケル君……。タケル君の手、温かいね」


「ソフィーさまの髪もサラサラですよ、とっても綺麗です」


「毎日メリッサがお手入れしてくれるから。タケル君から貰ったシャンプーとリンス、トリートメント? でしたか? メリッサが色々、迷惑かけてません?」


 地球産の天然素材高級シャンプーセットのお陰で、ソフィーさまのプラチナブロンドの髪は艶々のサラサラで、スキンケアセットでお肌も真っ白、ツルツルです。


「メリッサさんには、美容関連の資料を入れたタブレットを渡しているので、そこまで面倒は掛かってませんよ」


「なら、いいのですけど……タケル君、手が止まっていますよ?」


 止まっていた手を再び動かして、そのサラサラな感触を楽しんでいると、自然とソフィーさまの髪を手ですくようにしてしまい、手が耳を掠めてしまう。


「ひゃ!」


「あ、ごめんソフィー!」


「……タケル君、もう一回……」


 とっさに呼び捨ててしまったが、顔は真っ赤にして潤んだ瞳でソフィーさまは、気にした様子もなく見つめてくる。


「もう一度、名前で呼んでくれませんか」


「ソフィーは頑張ってるよ」


「うん」


 消え入りそうな声で返事をした、ソフィーさまの瞳から目が離せない。


 髪を撫でるその手は、ソフィーさまの頬へすべり、その温かさに俺の鼓動が高まる。

 見つめ合い、自然と近づく艶やかな唇に俺は吸い寄せられ――















「――にゃーう!」


 なかった!


「痛い痛い、ミカエル! 痛くないけど痛いよ!」


 突然のミカエルによる容赦のない猫パンチによって、俺は現実へと引き戻される。


「こら、ミカエル、やめなさい! もう……あとちょっとでしたのに!」


 助かったのか、勿体なかったのか、ミカエルの乱入により、桃色の雰囲気はどこかへ消え去ってしまいました。


「ミカエルさん、しばらくおやつ抜きですわ!」


 そしてソフィーさまはちょっと機嫌が悪かった。


 俺の作ったお弁当を食べて、やっと機嫌が治ったソフィーさまでした。


 なんで、俺がお弁当を作ったかって? そりゃ、ソフィーさまにお願いされたからさ、ピクニックするなんて思ってなかったけどね!

お読みいただき、ありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。