猫カフェお披露目
『猫カフェ「ニャートピア」来月オープン!』
夜の内に、張り紙はしてあるし、注意書も貼っておいたが、朝から人が絶えることない。
一夜にして出来上がった巨大な商業施設、猫カフェ『ニャートピア』の中で俺たちは領主様たちを待っていた。
「さすがにここまで反応があるとは……」
娯楽が少ない世界で、さらにダンジョンが失われ、刺激を求めていた異世界の人々を、俺は侮っていたようだ。
「昨日までなかった建物が突然出来たのだ、騒ぎにもなる」
「エルナさんの家だって、結構騒ぎになってたのよ」
既にヘンリーさまとリーナさんは、猫カフェ内で待機してもらっている。俺が来た頃には、二人とも店の前で待っていた。
昼食時も終わり、二階の窓から人々を眺めていると、騎乗した、二人の騎士に先導され、領主さまのものとおぼしき馬車がやって来た。
それに合わせて、人だかりも道を空けて、馬車が猫カフェの前に到着する。
「ようこそ、領主さま、お待ちいたしておりました」
「うむ、今日はよろしく頼む」
馬車から領主さまと、続いてソフィーさまが降りてくる。ミカエルはお留守番だ、猫の大量召喚をするから怯えてしまいそうだしね。
本当はソフィーさまも来てほしくなかった。知らない猫の匂いを一杯付けて帰って、ミカエルが拗ねないか心配だ。
「ソフィーさまも、ようこそ!」
ソフィーさまの名前を出すと、人だかりから感嘆の声が漏れる。
「こんにちわ、タケル君。沢山の猫に会えると言うことで、楽しみにしておりました!」
ああ、可哀想なミカエル……って俺も楓と紅葉の機嫌を取らないとダメなんだよな……。
セバスチャンさんと、屋敷で見たことのある使用人さんが、周囲の人々に声をかけ、何人かを連れてきてくれた。
「タケルさま、この者たちが、こちらで働く予定の使用人でございます」
セバスチャンさんが代表して、挨拶をしてくれる。
「皆さん、こんにちわ。オーナーのタケルです、ここは騒がしいので店内でお話しましょう」
「タケルさま、領主様の見学もありますので、しばらく騎士たちで周囲の立ち入りを禁止させますが、よろしいですか?」
「そうですね、外観の見学などが終わるまでは、そのほうが良いかも知れませんね」
「では、その方向で対応させていただきます」
「商業ギルドから建物の護衛として冒険者を雇ってあるのだが、そちらも警護で使ってもらって構わない」
ヘンリーさまが指示をすると、男性二人と、女性二人の冒険者が紹介され、警護に加わることになった。
「では、店内へどうぞ」
全員を一度に案内するのは大変なので、領主さまと、セバスチャンさん、ヘンリーさま、店長予定の使用人さんをまずは案内することにした。
ちなみに、料理担当と一部業務に携わる人以外は、女性の人を紹介してもらうことにしてある。
この世界だとどうしても女性の仕事が少ないみたいで、リーナさんからも相談されていたからだ。
「残りの皆様は後程ご案内しますが、あちらの商業ギルド職員のリーナさんから契約と仕事内容の説明を受けてください」
「商業ギルドのリーナです、『ニャートピア』専属担当となりますので、皆さんよろしくお願いします。では、こちらでご説明致しますね」
あっちはリーナさんに任せて大丈夫だね。
「まず、ここがメインの猫広場です」
大きな螺旋階段で二階と繋がっている猫たちの遊び場だ。
「お客様には会員登録をしてもらい、禁止事項や注意事項を確認してもらいますが、あくまでもお願いと言うことなので、登録費用などは頂いてません」
色々と商業ギルドとやり取りする必要もあって、電話を設置するためギルドの建物を管理委託物件化した。
その結果、ギルドカードを発行管理する魔法具を手に入れてしまった。
会員登録はこの魔法具を応用している。
「あまりに酷い場合はどうするのだ?」
「領主さまのご懸念に関しては、ソフィーさまの呪いを解くほどの加護がありますので、ご心配はないかと思います」
「そうであったな」
「この会員制に関しては、説明などの二度手間を省くのがメインですので」
加護が働かないようにするのが一番だからね。
「リーナさんが説明をしているスペースがカフェスペースで、座ってゆっくりとお茶やデザート、軽食などを楽しんで頂けます。猫広場と隔てる壁などはございませんので、猫が遊びに来ることも多々あるでしょう」
「『でざーと』は初めて聞くが、甘味やお菓子のことだろうか?」
さすがヘンリーさま、そこに気づいたか。
「はい、同じものですが、猫カフェでしか提供できないであろう甘味となります。そのうち真似をされるかも知れませんが、その時はその時です」
異世界通販で既製品を提供するだけだから手間はない。
「こちらのショーケースで好きなものを選んでいただき、隣でお茶を注文して、出来上がればお金を支払い、お席で楽しんでいただくスタイルです」
「自分で取りに行くのか」
「はい、それが無理な人であれば、使用人などを連れて来て頂くしかないですね」
領主さまとか身分の高い人には敷居が高いかも知れないけど、一応庶民向けなつもりなんだよね。
「従業員、働いて貰う使用人さんのことです。注文担当者はデザートとお茶の注文を受けてこの機械に入力します」
最近だとタブレットでお客様が入力するセルフスタイルも多いけど、今回は店員が端末で入力するタイプにした。
「軽食は提供まで時間がかかりますが、デザートとお茶はこの場で用意して、お客様へ代金と引き換えでお渡しします。軽食は引換券に番号が書いてあるので、呼び出して取りに来てもらいます」
支払いは、現金もしくは会員登録した各種カードで可能である。
二階にも席はあるが、軽食呼び出し用のモニタを設置したので問題ない。
店長候補さん、がんばって覚えてね。あとでマニュアルは渡すけどさ。
すでにショーケースにはケーキやパイ、和菓子など色々なデザートを陳列してあるので、この後実際に食べてもらう。
自分の働くお店で出す味は、全部知ってもらわないとサービスできないからね。
「店内については以上になります。質問があればのちほどお願いします。リーナさんの手続きも終わったようなので、『ニャートピア』のメインである、猫を皆さんに紹介したいと思います!」
一通り店内を案内した俺は、リーナさんが手続きをしていた皆さんも呼んで、一階の猫広場に集まってもらった。
早めに猫を呼び出して、お店や従業員との生活に慣れてもらわないとね。
『保護猫召喚!』
金色の肉球陣に包まれ、俺の魂は白い世界へ飛んだ。
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