ビビりの母は子離れできない
ママのターン☆(°▽°)
☆
昨日はありがとう記念日だ。
ふわほわな気持ちが溢れる日だった。
……悲しみに打ち据えられたあの夜から、一年。
うちの息子達が1歳に。
もう、一歳祝なのねー。
オギャ~って言ってたと思ったら、もう歯が生えて。
オムツ交換で泣き続けていたと思ったら、歩き始めたり。
おっぱい飲んで。
ねんねして。
ふふっ、離乳食も良く食べてくれる。
アタシは燕麦粥、嫌いだったなー。
美味しく思ってもらいたくて、ヨーグルトとジャムを混ぜたり、山羊ミルクでふやかして練って薄焼きクッキー作ったり手を加えてみてる。
今日の朝食は、木苺ジャムと牛乳入れただけのフツーな燕麦粥だけど。
「おいちーっ」
って言ってにこーっとされたら、やる気満々に次の料理に取りかかるわ!
ごめんね、手抜きして!
もっと何かが出来た筈よ。
次こそもっともっと美味しくするわー!
うちの子マヂ天使。
さぁ、長くなってた髪の毛を、神殿に行く前に切らなくちゃ。
「スライーおいでー」
「あいっ」
「ここに座って、じっとしててー。髪の毛切るからー」
「あぁいっ」
大変良い笑顔貰いました~!
もうっ、キュン死しちゃいそう。
アタシは欲張りだから、まだまだ死ねないけどねー。
昔使ってた深緑色のマントをスライの首周りから下げて、特注のハサミと櫛を構える。
指が太いのよ、悪かったわね。
ハサミは高かったけれど、これも仕方ないの。
長め丈で、切り揃える。
「よっし、こんなモノかなー」
「おかさん、ありあとー」
「どーいたしましてー」
にぱっと笑い合って、頭を撫でながら切れ端を払い落とす。
と、肩の上の髪の毛を抓んで、じっと見てる?
「おかさん、おとさん、一緒」
「あ」
切っているときのキラキラは、可愛さ効果じゃなかった。
私達の髪色が、混在してたんだ。
金髪の束に、銀色の髪が入り混じって光ってる。
「一緒だねー。嬉しい?」
「さいっこう」
最高、って、可愛さが、かな!?
「嬉しいのはアタシもだぞー!!」
わしゃわしゃ撫でると、為すがままの首がフルフル揺れる。
「えへへー」
……転生者。
やっぱり良くわかんない。
だってこの子。
夜泣きこそ無かったけど、生まれて直ぐはお腹が減ると泣き続けて、おしっこしちゃって泣き喚いてと、ごく普通の赤ちゃんだったし、何処が違うのか何て、忙しくて考えられなかった。
初めての子供だから、かも知れない。
面倒でも可愛くて、ウルサくても柔らかくて、手間取るけど温かくて、見詰められたらムズムズして、笑い掛けられたら幸せになる。
逆に泣き顔は悲しくて焦る。
苦しくなる。
中身がオッサンかも知れないとか言われても、ねえ。
可愛すぎ。
……夫に惚れた時より重症じゃない?
我が子には何をされても親の所為って言うし、自分が与えた全てが子供を育てる感動って、凄いわー。
愛情込めて育て上げるからね。
ミュゼラは、起きるかわからない眠りの中だと言われたけれど。
この子がお兄ちゃんって。
言ってるのを聞いちゃった。
「……お兄ちゃ、ちゃんとかやだかえしゅね」
お昼寝の寝言にしては、ヘビーよ。
でもね、アンタがそんな覚悟してくれてるなら、親であるアタシ等だって決めちゃうわよ。
アンタが何をしようと、何かしでかそうと、変わらない。
私達二人の子供だから、全力で育てるし。
何かやりたいなら、相談して。
まぁ、アタシは頭の仕事向きじゃないから、夫に考えてもらって。
皆で、生きていこう。
……親離れだけは、もう少し待ってね。
…………………………
一歳祝は神殿にある黒石盤へ、一歳を迎えた赤児を近づけ、神の恩恵、加護を発現させる儀式。
そのギフトが、二つ現れた。
二人分の、加護。
スライが石盤を指さし、呟く。
「にぃちゃの」
そうね、お兄ちゃんの分だよね。
「ふぅっ……」
ダメ、泣きそう。
ミュゼラの分も、現れた。
ちゃんと、存在してるんだって、言われた気がした。
思いっきりキいた。
良かったよぅ。
良かったああ。
何かに向けて叫びたくなる。
黒石盤に映し出された、この子達の、ステータス。
如何しよう?
ねえバァン……。
あ、夫もう泣いてる。
声も無く。
それ見たらアタシも堪えきれなくなってしまった。
「はあっ…… く…… うぅっ……」
口を押さえても漏れ出る嗚咽は、儀式の最中だけれど許して欲しい。
無理。
「スライ…… ミュゼラ…… ありがとうー……」
「ここに新たなる命が歳を重ねるも全てが良き神の恩恵……」
ティグルさんがスライを抱えて祝詞を上げて、続いてマブリさんが映し出されたステータスを蝋板に写し取る。
後で清書してもらうのが楽しみ。
「えっ…… 称号?」
その手が止まる。
「……神の、愛し子!!」
称号に、そんなモノがあったから。
「既に称号が、しかも、神の愛し子と」
うわ、周りがザワついてる。
参加者がスゲー居るんだもの。
ご近所さんだけじゃなく、うちの村長から隣村の山羊人村長、海の国の商売姉妹と、人魚王妃まで(!)何故か座ってる。
ちょっとバァン、お祝いだからって増やすのはもいいけど、増やし過ぎでしょー。
「かはっ……」
あれ?
マブリさん興奮気味?
や、違う、これアレだ。
神降り? ってヤツだ。
[……此の辺に告ぐ……]
有難い事に、カミサマが説明に来てくれた?
[彼の者へ祝福と加護を…… しかし、望まぬを塞き除けよ]
あれ、説明に来たんじゃないの?
つまり、この子を愛してやって、この子の希望通りにするべし?
[囲い、担ぐは厳禁]
政治に使うな?
[是等が護られる限り、此の辺に繁栄を]
約束通りにしてくださいね。
[違うならば絶望を……]
じゃないと酷いぞ、と。
うわ、カミサマもスライに肩入れし過ぎじゃない?
はっはーん?
このカミサマ、女だわ。
しかもスライにべた惚れだし、甘々だし。
教育上良くないんじゃない?
……アタシは母親だもの、いーの。
お、ザワつきが非道くなった。
ネレイスとパーンが言い合ってる?
あ、村長に取り入ろうとしてるのね。
[我が望むは、安寧と静寂]
瞬間的に音が消え去る。
言い合ってた二人は倒れ、その倒れ込む音さえ無い。
あー、チョイ怒?
[従わぬは厳禁]
うん、怒ってるね。
[ただ緩やかに見守るを、健やかな未来を]
あ、音が戻った。
倒れた二人は介抱されて、椅子に座らされている。
意識はあるみたい。
空気読めー。
[聞け]
……どこからか、子供の声が、聞こえる。
「この村を発展させたい……
父に教わりたい……
母に鍛えられたい……」
これは、スライの、声。
[彼の者の目標、希望、願いは優しく、此の辺に幸をもたらすだろう]
……泣かすわねえ。
さすがアタシの子。
[村長、是を守るを誓うか]
村長は満足顔で肯き、喝采が上がる。
[良き日よ、大地に海に繁栄を]
一歳祝が何か分からない祭りになっちゃったね。
夫に寄り添い、溜め息を吐いた。
……母親の勘だけどね。
カミサマも、人魚王妃も、多分うちの村長も、倒れた二人以上に下心あるんじゃないかなー?
でも、あげないわよ。
ロギー・オーニス Level=73
状態=溺愛(永続化)
職業=狩猟者 称号=騎士
ギフト=「空気の階段」高低差無効、跳躍、登攀
スキル=跳躍力向上(大)
剣術特化
槍術特化(大)
防御力増加(大)
弓術特化
調理(中)
直観力(小)
魔法=無し




