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俺、凡人。異世界で世界大戦の仕掛け人になる  作者: 風間 秋
第3章 『信じる者、信じられぬ者』
25/94

25.少しおかしな女の子

 街を出るにはどうすればいいか、話し合いを始めて間もなくのことだった。


「誰か来た」


「ん? ……ん、そうみたいだな」


「あ、いたいた。やっぱりここだったみたいね」


 林道に姿を現したのは、俺も見知った女の子だった。

 黒髪に濃紺の瞳と、黒の民ではよく見る風貌だ。

 顔立ちは、日本人的な感覚で言えば、目鼻立ちがはっきりしている方だとは思うが、周りと比べるとやや地味な印象を受ける。


 風貌と言えば、俺もぱっと見は似たようなものだ。瞳がやや赤みが強く、紫色をしているくらいで、黒の民としては平凡。

 キースは紫の瞳に暗めの茶髪で、こちらは遠目にも分かる特徴がある。


 名前はアライネアと言ったか。

 キースからはアイネと呼ばれているので、俺もそれに倣うことにしている。

 背はキースと同じくらいで、俺よりも高い。


 キースが言うには、仮成人は去年済ませたらしい。キースからは1つ年上となる。ただ生まれとしては季節ひとつ分くらいの差だと言う。

 年の諸々の切り替わりが、日本での年度の切り替わりと同じ頃なので、キースが春生まれでアイネが冬生まれということになるな。


 キースに対して姉のように振る舞う女の子なのだが、キースは逆に妹のように扱っていた。

 2人のやりとりは子供らしく、見ていてなんとも微笑ましい。


 アイネとは、黒の家に来て割と早い時期に、キースを介して知り合うことになった。

 魔獣騒動以降は、それまでにも増してキースを訪ねてくるようになったため、キースと共に居る時間の長い俺とも、必然的に場を同じくすることが多い。


 キースとヘズコウの他で、唯一俺が話をする相手だった。

 もっとも、きちんと話をするようになったのは魔獣騒動以降であるが。


 最初は、うちのキースに変な虫が付いた、といった扱いであった。敵意はあるが、それは印なしや札付きに向けてではない、そんな感じだった。

 それも早々になくなったように思う。

 逆にその頃になってようやく、印なしや札付きを気にし始めた様子すらあった。

 それからどう折り合いを付けたのかは知らない。魔獣騒動が落ち着いた辺りから、普通に話しかけてくるようになった。


 キースは割と人望がある。同年代に限り、と付くが。

 面倒見がいいのが理由だと思う。

 アイネの他にも、キースを頼って部屋を訪ねてくる子供は多い。


「なにしに来たんだよ」


「はいこれ」


 突き出されたのは服だ。

 部屋着であろう。

 それもたぶんキースが普段使っているものだ。


「もうすぐ寒くなってくるんだから。濡れたままの服でいたら、体壊しちゃうんだからね」


「なんでお前がこれ持って来るんだよ」


 俺たちの部屋には鍵が付いている。鍵がないと内側からも開かない、かなりしっかりしたやつが。

 鍵を所持しているのは、俺たちだけ。残りはヘズコウが管理している。

 加えて言うなら、俺たちの部屋のある一帯に繋がる廊下にも、鍵付きの扉がある。こちらも扱いは概ね同様。


 誰かが俺たちの部屋を訪ねる時は、窓の外に取り付けたベルを、1階まで垂らした紐でもって鳴らして、キースが鍵を開けに行くという段階を踏む。

 ヘズコウ経由というのもあるが、そうまでして訪ねてきた人間はいない。


「ヘズコウさんからの伝言です。部屋の片づけはアイネにやらせるから、仕事の方をさっさとなんとかしろ。だって」


 両手を腰に当て、まだ子供のままの胸を張るようにして告げる。


 あのちょび髭親父、余計なことを。

 アイネが部屋に入ってこられるようになると、そちらの方で厄介事が増えそうなんだが。


 そうそう。アイネは他の子供たちと違って、キースを頼って来ているわけではない。

 こちらは世話焼きタイプだ。むしろ頼ってもらいたくて来ている感がある。キースが相手では、中々望むようにはいかないだろうが。

 ああ、俺も頼る気はないので、寄って来ないでくれるとありがたいんだが。


「はい。これヤトイのね」


 渋々受け取る。


 アイネが来ると厄介というのは、彼女自身というよりも、周囲の問題だ。

 特に、キースを慕う子供たちが面倒極まりない。

 他の子供たちの俺に対する態度は、推して知るべしというもの。


 アイネがおかしいのである。それを言ったらキースもだが。

 というかキースがいるからアイネがおかしいのであって、やはりキースが一番おかしいということか。


 結局その日は、街を出ることについて、それ以上の話をすることはできなかった。


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