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天使みたいにかわいかった年下幼馴染が、激重なヤンデレ騎士になっていた  作者: みーぃ


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4.成長した王子様と、血を差し出す理由

あれから、五年が経った。


私は23歳になり、王立魔術研究所の解析・開発部門で充実した日々を送っていた。


すっかり大人の女性……と言いたいところだが、相変わらず今の人生で彼氏はゼロ。それどころか、未だに心の隅で年下の幼馴染のことを引きずっているのだから呆れた話だ。


(あんなに綺麗で性格も完璧な人を近くで見ちゃったら、他の男性なんて目に入るわけないじゃない……)


いい雰囲気になった人もいたのだが、相手に彼女が出来たり急に連絡が途絶えたりと、相変わらずの人を見る目のなさで……



ヴィンセントは18歳で学園を卒業後、期待通りの目覚ましい活躍を見せ、21歳の若さで王立騎士団の小隊長となっていた。

見た目もさらに完璧な王子様のように成長し、貴族の令嬢たちの憧れの的だ。


学園時代のように気安く「ヴィンセント」と呼ぶこともできず、今の私は彼にとって『昔ちょっと仲が良かった近所の年上のお姉さん』程度の立ち位置だと思っている。

彼の卒業後初めて職場で会った時は、気まずさでまた逃げそうになったが、今後一緒に仕事をすることもあるからと、何とか逃げずに挨拶をした。


ヴィンセントも疎遠になっていた(アメリアが避け続けていた)期間などなかったかのように、たまに館内ですれ違えば「やあ、アメリア」と声をかけてくれるけれど、かつてのように甘えてくることもない。少し距離のある、ごく普通の幼馴染としての会話。


それなのに——彼はなぜか、研究所に異常な頻度で顔を出していた。



「ヴィンセント様、あの……本当に大丈夫なんですか? 今週だけでもう三回目の採血ですよ!?」


研究所の処置室で、私は頭を抱えていた。


目の前の椅子に腰掛けているヴィンセントは、制服の袖をたくしあげ、極上の笑みを浮かべている。その白く引き締まった腕からは、太い注射針でなみなみと血が採取されているところだった。


「大丈夫だよ、アメリア。研究所で高濃度の魔力血液が必要なんだろう? 僕の血なら質が良いから役に立つと思って」


「それはそうですけど! いくらヴィンセント様の魔力量と体力が破格だからって、こんなに頻繁に血を抜いたら身体を壊します! 採血のしすぎは良くないって何度言ったら分かるんですか!」


私が本気で心配して怒ると、ヴィンセントはルビーのような瞳を細め、嬉しそうに目を細めた。


「ふふ、心配してくれるんだ。……でも平気だよ。毎日ご飯もたくさん食べているし、これくらいどうってことない。採血量に応じて手当も出るから、助かってるんだ」


「そういう問題じゃありません!

お金なら、十分稼いでいるじゃないですか!今のお給料で足りないなら使いすぎです」


本当は、お金に困るようなことがあったのかと心配しながら彼を見るが、笑顔のヴィンセントと目が合うだけで何を考えているのか私にはさっぱりだった。


最高級の魔道具を作る際、ヴィンセントのような規格外の魔力を持つ者の血液は良い材料になるため高値で取引される。子供の頃は狙われる対象だったが、大人になり最強の騎士となった今では、彼を襲おうとする命知らずなど存在しない。返り討ちにあうのがオチだからだ。


だからといって、自分からこんなに献血しに来る騎士がいるだろうか?


(私に怒られるのが分かっていて、わざとやってるんじゃないかしら……)


呆れつつも手際よく止血用のガーゼを貼ってあげる。その瞬間、ヴィンセントの手がぴくりと跳ね、私の手元をじっと熱い視線で見つめてくるのに私は気づかなかった。


まさか——ヴィンセントが採血にかこつけて研究所に通い詰めている本当の理由が、「少しでも私との接点を作りたくて、強引に採血してもらっている」とは、この時の私は気づいていなかった。

無茶な採血をする人(主にヴィンセント)が出てこないように、私は一人あたりの採血の上限を決めるべきだという提案書を書いてた。



採血を終えて自分の研究室に戻った私は、デスクの上に置かれた羊皮紙の束に向き直った。


最近、王都周辺で複数報告されている謎の感染症の発症例——その感染症が発生した近くから、魔法陣が発見されていた。

その発見された魔法陣の解析作業だ。


通常、魔道具の研究と魔法陣の解析は部署が別れており私は魔道具の部署に所属しているが、今回は発見された魔法陣は数も多く手が足りないため、魔道具の研究室でも解析を一部手伝うと決まった。

魔道具を作るためには魔法陣を組み込む必要があり、基本的な魔法陣であれば理解出来る。わからない部分に関しては、調べながら解析を進めていく必要がある。


「……ううん、やっぱり気味が悪いわね」


羊皮紙に描かれた複雑な魔術式を見つめ、私は小さく眉をひそめた。


通常、魔法陣に『呪い』が組み込まれているかどうかは、全体を細かく解読・解析して初めて判明するものだ。しかし私のように、見た瞬間に直感で「気持ち悪い」と感じる人がいる。「気持ち悪い」と感じるだけで何が気持ち悪いか、「どんな呪い」か、など具体的には何も説明出来ない。ちょっとしたいたずらレベルの呪いと人を殺す呪いがあったとしても、感覚で見分けることはほとんど出来ない。

なんて中途半端な能力なんだ……


そのため、魔法陣を解読していく必要がある。


この魔法陣からは、ゾワゾワとする嫌な粘着質な気配が伝わってくる。人を害するための『呪い』の痕跡だ。


魔術研究所の職員は、こうした事件解決のために騎士団と連携して動くことが多い。


(もしこれが本格的な事件になったら、騎士団……ヴィンセントたちと一緒に仕事をする可能性もあるのかしら)


胸が少しだけ高鳴るのを誤魔化すように、私は大きく息を吐き出した。


(こんなことが起きているのに、不謹慎よね集中しましょう)


気持ちを切り替えて、魔法陣の解析を始めた。

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